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■春想(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-09-10
 
佐織は2月1日(水)-2月28日(火)の間、東京のエヴォンに研修に行くことになっていた。1月28-29日の土日にボニアート・アサドとTKRのセミプロアーティストの貸し切りライブがあり、2日置いて2月1日の日中に東京に移動する。佐織の大学は期末試験が3月上旬に行われるので、この日程で研修が入れられたのである。ノートは友だちに頼んでおいた。ついでに自分のスマホを友だちに預けて教室に入る時に出欠チェック用のボードにタッチしてもらう。ここの大学はこれで出欠を取るのだが、結果的に友人にスマホを預けてこれをやってもらう学生を大量に生み出している。
 
なお連絡用にはその期間、レンタルのスマホを1ヶ月間使用することにした。
 
29日のイベントが終わって、月山オーナーと2人だけで片付けをしていた時に、オーナーが突然ハッとしたようにして言った。
 
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「私、うっかり、研修に行く3人、同じ部屋に泊めるつもりでいたけど、マキコちゃん、まだちんちん付いてたよね?」
 
やはりその問題に気付いてなかったのか!
 
佐織は微笑んで言った。
 
「実はタマタマだけじゃなくて、ちんちんも取っちゃったんですよ」
「え!?そうなの?」
「見ます?」
「うん。確認させて」
 
それでいったんお店の片付けは中断して、オーナーの自宅の方に移動し、2階のC室まで行ってから、佐織はスカートとパンティを脱いでそこを見せた。
 
「女の子の形になってる!」
「とっても調子いいです」
 
「これタックじゃなくて?」
「本物ですよ。触っていいですよ」
 
それで使い捨てのビニール手袋(調理用に大量ストックしている)をした上で触られる。わざわざあそこを開けてみる!
 
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「本物だ!いつの間に手術したの?」
「実は私も、半分夢でも見ている感じだったのですが」
 
と言って、佐織は正直に、青葉と夢の中で会って、去勢してもらったこと、その後、仙台の街で千里と会って、彼女のホテルの部屋で手術?されてこの形になってしまったことを言う。
 
「どこか痛かったりはしない?」
「全然痛くないです。手術跡とかも無いし」
 
「これ誰かに言った?」
「誰にも言ってません。信じてもらえるとは思えないし。親にも言ってないから知られた時にパニックになりそうですけど」
 
「青葉ってあまりにも強力な霊的能力を持っているから、あの子の周囲では時空が歪んでいるんだよね」
「ああ。歪みは何となく感じました」
「それで時々不思議なことが起きてしまう。でも佐織ちゃん、こういう身体になっても良かった?」
「嬉しくて嬉しくてたまりません。つい、ビキニの水着とかタンガと買っちゃいました」
 
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「あれが付いていると、タンガはさすがに穿けないだろうね」
「そうなんです。今まではこぼれてしまっていたんですよ」
 
「でもこれなら、他の女の子と一緒に生活しても全く問題無いね」
「そんな気がします。もっとも私、高校の合宿とかで他の女子と同室になってましたから」
「へー!」
「少なくとも男子と同室にはなれないし」
「そうだよね!」
 
なお、研修に同行するルシアとリズはそもそもマキコが男の娘であったことを知らない・・・と思う。
 
佐織はひょっとして、青葉あるいは千里から手術代金の請求書が来ることはないだろうか?と聞いたが、和実はそれは無いと断言した。
 
「そもそも、それって本物の青葉とか千里じゃないと思うし」
「ああ、やはり?」
 
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それで結果的に去勢手術代は使わなかったので借りた32万円を返却したいと言ったのだが、
 
「東京で何か思わぬ出費があるかも知れないし、それ取り敢えず預けておくよ。出張の仮払いということにしよう」
 
と言って、先日佐織が書いた借用証書を出してきて、その場でシュレッダーに掛けてしまった。
 
「それでこちらに戻って来てから、精算して」
「分かりました!」
 
「ルシアとリズが何かお金が必要になった時も出してあげて」
「はい」
「でも領収書を取っておくようにね」
「それは2人にも言っておきます」
 
その後で、和実は「そうそう。忘れない内にマキコちゃんにはこれあげておこう」
と言って、1月分の給料をくれた。
 
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「とりあえず3月までは1ヶ月6万円と言っていたけど、マキコちゃんには今月特に頑張ってもらったから色付けておくね」
 
などと言う。封筒の中身を見ると10万円入っている!
 
助かったぁ!「使い込んじゃった」分を母に泣きついて出してもらわなくても済む!!と思って佐織は安堵した。
 

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2月1日の朝、佐織はルシア(光恵)・リズ(鈴香)と仙台駅に集合した。月山オーナーも一緒である。そして9時に到着する新幹線で東京から戻ってきたライム(美登利)たち3人を迎える。
 
「お疲れ様。大変だったでしょ?」
と月山オーナーが彼女たちをねぎらう。
 
「ええ。でも楽しかったです」
と美登利は答えた。
 
「それはよかった」
 
駅近くの和食の店で簡単な報告会を開く。向こうのオーナーさんも各店の店長さんや先輩たちも親切で優しく、とても楽しい研修であったと彼女たちは言っていた。
 
ライムはエヴォンに過去に夏休みの間2ヶ月間務めたことがあり、コリンは盛岡のショコラにやはり夏休みだけ務めたことがある。クロミはショコラに約1年間勤めていた。
 
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「みなさん凄く意識が高くてびっくりしました」
とコリン。
 
「エヴォンは将来自分でカフェとかレストランとかを経営したいと考えている女の子が多いんだよ。それで凄く意欲が高いよね」
 
「私最初接客時間が長すぎると注意された」
とクロミが言っている。
 
メイドカフェなので客席にオムライスを運んでから、お客様の希望の文字をオムライスに入れるのだが、その時の会話が長すぎると注意されたのだろう。
 
「うん。エヴォンは2分以上お客様と話してはいけないことになっている。長く話すと、それは接待行為とみなされるんだよ。エヴォンにしても、うちにしても飲食店営業だから接待行為は厳禁なんだよね」
 
「ショコラではあまりうるさく言われなかったんですけどね〜」
「うん。あそこはオーナーがアバウトだから」
「ああ、それはあるかも」
 
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「でもショコラでも初期の頃、メイド全員にカラータイマーを持たせようかという話もあった」
「ウルトラマン?」
 
和実は実はショコラの創業以来のスタッフだった。
 
「そうそう。それではメイドカフェではなくて、ウルトラマン・カフェになっちゃうということで、その案はボツになった」
 
「なるほどー」
「それも楽しい気がするけどね」
 

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一通りの報告を受けた所で、美登利が3つまとめたマンションの鍵を佐織に渡したので、佐織は光恵と鈴香に1個ずつ渡した。
 
それで11:30の《はやぶさ》に乗り、3人は東京に出た。上野駅で降りて山手線で移動し、神田店に入る。ここが都内に3店あるエヴォンの中でいちばんオーソドックスな営業をしているし、だいたいオーナーの永井さんか、奥さんで元メイドの麻衣さん(メイド名もも)がここに詰めているというのもあり、最初の一週間はここで勤務することになっていたのである。
 
この日は麻衣さんが詰めていて歓迎してくれ、簡単にシステムの説明を受けた。その後、神田店チーフを務める秋菜さんから制服を渡され、簡単な応答の練習をする。それで即お店に投入された。
 
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光恵と鈴香はショコラに過去に務めたことがあるが、佐織はこの手の店が初めてである。しかし高校時代に普通のカフェに勤めていた経験で、何とかうまく対応できる。普通のカフェと違う所はフロアスタッフと調理スタッフが分離されておらず、基本的には注文を受けたメイドが自分でコーヒーやオムライスを作って客席に持っていき、オムライスの文字とかを入れることである。またスタバなどのように自動でエスプレッソを入れるのではなく、全てが手作業になる。なお、一部のメイドは注文と給仕だけをするが、佐織たち3人は調理までする前提で作業に入った。
 
3人がお店に到着したのが13時半頃、店内のオペレーションに投入されたのが14時すぎで、お客さんの少ない時間帯でまず慣れてもらおうということのようであったが、結果的にこの時間のお客様の対応をほぼこの3人でやることになる。しかし光恵や鈴香が戸惑っている所を佐織がうまくカバーして何とか回していったので、レジの所に座って見ていた秋菜チーフが感心していたようである。
 
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もっとも佐織は未経験で、光恵や鈴香は経験者なのだが!年齢も佐織は他のふたりより10歳近く若い。
 
なお、エスプレッソを作る時にいちばん難しいタンピング(抽出の前に粉を圧縮する作業)は3人とも1発で合格と言ってもらった。カフェラテのラテアートについては、佐織だけができたので、今日の所は佐織が全員の分を作ってあげた。光恵と鈴香は個人的に材料費を払って練習すると言ったのだが、秋菜は「常識的な範囲では仕事の練習するのにお金を払う必要は無い」と言って、2人にまずは簡単な形のものを何度も練習させてくれた。
 

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この日は19時であがって、マンションに帰還する。マンションは吉祥寺の住宅街にある3LDKのマンスリーマンションで、3つの個室を3人でひとつずつ使用することになっている。光恵が朝に弱いという話だったので、夜23時までには寝よう、というのも話した。
 
「ところでですね」
と鈴香が言った。
 
「佐織ちゃんは実は男の娘なのではという噂もあるのだけど」
「あははは」
 
性別のことはオーナーたちに言った他は、他のスタッフには話していなかったのだが、どこかから漏れたのかも知れない。カウントダウンやボニアート・アサドの最初のライブで手伝いに入っていた伊藤さんあたり怪しいよな、などと佐織は思った。いかにも口が軽そうである。
 
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佐織はバッくれることにした。
 
「私、性格が男勝りだから、時々誤解されることあるんだよ。でも正真正銘の女だよ。何なら、あそこ見せようか?」
 
「うん。見せて」
 
それで佐織はスカートとパンティを脱いで、あそこを2人に見せた。
 
「本当に女の子だね!」
「ごめんね。変なことで疑って」
 
「お詫びに私のも見せてあげるね」
と言って鈴香もスカートとパンティを脱いでしまう。
 
「だったら私も」
と言って光恵も脱いだ。
 
「私たちお互い、確かに女であることを確認したね」
「まあ、銭湯とかに行っても分かったことだけどね」
「ああ。銭湯に行ったようなものか」
「何ならお風呂一緒に入る?」
「さすがに3人で入るには狭すぎる気がする」
 
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バスケット日本男子代表は12月に68名もの強化選手を発表し、その内の50名を12.11-13あるいは12.18-20の合宿に参加させた。そして1月17日は30名の選手を発表して1.23-24あるいは1.30-31の合宿に参加させる。その上で1.31日に最終的に15名に絞った日本代表を発表した。貴司はこのメンバーに選ばれていた。
 
このメンツでの試合は2月10-11日に札幌でイランを迎えて国際強化試合が行われる。貴司は10日の試合では第2ピリオドに出て得点に絡み、日本に流れを呼び込む活躍をしたものの、11日の試合では一度も出番が無かった。
 
そして・・・結果的にはこの大会が貴司が日本代表として出場した最後の公式試合になってしまったのである。
 

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