広告:ここはグリーン・ウッド (第5巻) (白泉社文庫)
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■春想(7)

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この時期のクレールは土日にイベントをしているだけで、月曜から金曜までは休みである。それで佐織は16日の月曜日は普段通り大学に出て行った。
 
ライダースーツに身を包み、ヘルメットと手袋をして愛車Ninja-H2にまたがり大学まで行く。学校のトイレで女子大生らしい、ブラウスとプリーツスカートといった出で立ちになる。そして授業を受けながら、佐織は例の問題について考えていた。
 
朝起きてから再度確認したが、やはり睾丸は消失していた。体内に入り込んでないよな?と思い探ってみるも、無いようである。取り敢えず朝一番に病院に電話して去勢手術はキャンセルした。これでは去勢のしようが無い!
しかし不思議なのは、手術したのなら傷口が痛みそうなものだが、全然痛く無いし、そもそも傷口が存在しないように見えるのである。
 
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これもしかして、いわゆる心霊手術ってやつだったりして!?
 
そして青葉さんから請求書が送られてきたりして!?
 
佐織は手術代もオーナーに返さなきゃと思っていたのだが、もし青葉さんから請求書が送られてきた場合に備えて少し待つことにした。
 

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そんなことも考えながら1日過ごしたのだが、佐織は
 
これいい!!
 
と思った。
 
凄く調子がいいのである。
 
ひとつはやはり邪魔にならないという問題である。睾丸があると、トイレのあと、いちいち睾丸を体内に押し込んで、おちんちんでふたをするようにしてパンティを穿く。この操作が不要で、単におちんちんを後ろにやってパンティを穿くだけで済む。
 
佐織はタックもするが、タックした状態でバイクに乗ると痛いので、特に必要な場合を除いてはあまりしていない。お風呂も家族と暮らしているので内風呂で済み、銭湯に行く必要が無い。
 
そして、もっと大きかったのは「衝動」が完全消失したことである。佐織は小学生の時から女性ホルモンを飲んでいて、睾丸の機能は停止していたはずなのに、それでも日に数回は男性型の衝動を覚えることがあった。しかし今日はそれが全く来ないのである。やはり睾丸ってほとんど死んでいても何らかの機能を果たしていたんだろうなと考えた。
 
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(それで実は衝動が来ないので、あれの中身が大きくなることもなく、炎症を起こしている所が傷まず、凄く助かっている)
 
唐突にアクアのことを考える。
 
彼は自分は恋愛には興味が無いんですと言っていた。それは普通にアセクシュアルなのだろうと思っていたのだが、女の子の裸を見ても何も感じませんよ、とも言っていたなというのを思い出し、ひょっとしたら物理的に去勢しているのではという気がしてきた。そもそも彼は小さい頃、大きな病気をしたという。その治療のために強い薬を使い、髪の毛も全部抜け落ちて、おちんちんも縮んじゃったんです、などとラジオの番組で言っていたのを聞いたことがある。
 
ひょっとしてその時、睾丸は治療の必要か、あるいはそこに転移したか何かで取ってしまっていたのだったりして? それだと彼の成長が遅いこと、男性的な身体の発達がまるで無いようであることとも符合する気もするのである。
 
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その日は学校が終わった後、バイクで町に出た。来月は1ヶ月間東京暮らしになるので、少し可愛い洋服とか買っておこうかなと思ったのである。一緒に研修に行くルシア・リズと同じマンションで共同生活になるから、下着も新しいのを少し買っておきたいし。
 
(男性部分が残っているマキコが純粋女性のルシア・リズと同じ部屋で暮らすことについて、オーナーは特に心配している様子は無かったが、実は単に何も考えてないだけかもという気もした。むろん佐織は普通の女性とプライベート空間を共有するのは平気である。高校の合宿でも普通に女子の友人と同室で過ごしたり、一緒にお風呂に入ったりして何の問題も無かった―解剖されて確かに女子であることも確認されたが!)
 
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それで街を歩いていたら、バッタリと千里さんに会う。会釈を交わす。
 
鴨乃清見という名前を使ったらまずいかなと思い、実名で呼びかける。
 
「千里さん、こちらお仕事ですか?」
「あ。ちょっと食事しに来ただけ。マキコちゃん、おくずかけの美味しい店、知らない?」
 
「おくずかけと言ったらおたま茶やとか有名かな」
 
おくずかけなどといったものに興味を持つというのは、牛タンとかは既に食べ尽くしているのだろうなと思う。
 
「じゃ、一緒に行かない?おごってあげるから」
「ご一緒します!」
 

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それで佐織の案内で地下鉄で移動し、おたま茶やに行く。
 
お店に入り、おくずかけとずんだ餅のセットを2人前頼んだ。
 
「マキコちゃん、普通に使っている名前教えてもらっていい?」
「はい。佐織(さおり)です。もう法的に改名しているんですよ」
 
普通なら「本名教えて」と言う所をわざわざ「普通に使っている名前教えて」と言ったというのは、自分がMTFであることを知っているのだろうと思った。妹さんから聞いたのかな?などと思いながら佐織は話す。
 
「ああ、改名しないと色々問題が起きるよね」
「そうなんですよ。小学生の頃、変な名前書かずにちゃんと本名書きなさい、とか言われたりしましたよ」
「ありがち、ありがち」
 
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「でも私の性別のことは、妹さんから聞かれました?」
と念のため聞いてみる。
 
「え?そんなの見ればすぐ分かるよ」
「わ、そうでしたか」
 
自分はわりとパス度には自信があり、中学以降は、女の子でないことを一発で見破られたのは、過去に3回しか経験が無い。今日の千里さんで4回目だ。
 
「それに青葉は守秘義務に厳しいから、他人のことを安易に言ったりしないよ」
と彼女は笑顔で言う。
 
「それはしっかりしてますね」
 

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「あ、でもそれなら、あの後、青葉と会ったの?」
「はい。先日、ローズ+リリーのライブが仙台であったので、そのついでにいらっしゃって、オーナーと話しておられましたよ」
 
佐織はたぶんこのくらいは守秘義務違反にはならないだろうと思いながら話した。大宮万葉がローズ+リリーの宮城ライブに出演したのは公開された事実でもあるし、と考える。
 
「あの子も忙しいよね〜。あの子、物事を断るのが下手だし」
「ああ、気が良いんですね」
「うん。性格が良すぎる」
 
「そういえば、その後で、青葉さんが私の夢の中に出てきたんですよ」
「へー。あの子に何かされなかった?」
 
佐織は夢のことは何気なく言ったのだが、この千里の言葉に“その話”までしてみることにした。
 
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「実は・・・私、夢の中で青葉さんに去勢手術をしてもらったんですが・・・」
「それ本当に去勢されていたりしない?」
 
「・・・実はそうなんですけど」
 
「去勢されても良かった?」
「それは全然問題無いです。実は近い内に去勢手術を受けに行く予定だったんですよ」
 
「あの子の悪い癖でね。色々よけいな親切を起こしてしまう。過去にも友人を性転換手術しちゃったことあるんだよ」
 
「あのぉ・・・あれって現実なんですか?」
「夢と現実が入り交じっているよね。だから夢の中で起きたことと、実際の結果が微妙に違うこともある」
「へー!」
 
「登山中の事故で指を4本切断した人の縫合手術をしてあげたことがあるらしい」
「そういう手術もするんですか?」
「夢の中では2本だけ接合したのに、実際は夢が覚めたら4本ともつながっていたって」
「凄い」
 
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「佐織ちゃんも、去勢だけのつもりが実はおちんちんも無くなっていたりしない?」
「えっと、おちんちんはまだあると思いますが」
「ほんとに?」
「そうあらためて言われると自信が無くなってきた」
「どこかで確かめてみない?」
「トイレに行って来ようかな」
 
と言って佐織はお店のトイレに行こうとしたのだが、あいにく塞がっている。しばらく待ったものの、中の人はなかなか出てこない。
 
「なかなか空かないね。何なら、私の泊まっているホテルにでも来る?」
「あ、はい」
 

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それで何となく、千里についてホテルまで行ってしまう。まさかこの人レスビアンで私を襲ったりしないよな?と一瞬考えたものの、自分の性別を知っているのだから、それもあり得ないだろうとすぐ判断する。それに佐織はこの大作曲家さんが、どんなホテルに泊まっているのだろうというのも少し興味があったのである。
 
果たして連れて行かれたホテルはウェスティンホテル仙台なので、さっすがぁと思う。私はここにはたぶん一生泊まることは無さそうだ。それもスイートルームである。これは多分1泊10万円する。佐織はお部屋が広いので思わずあちこち見渡してしまった。
 
「確かめてみる?」
「そうでした!」
 
それでバスルームを借りようとしたのだが
「私も見てあげるから、ここで脱いでごらんよ」
と言う。
「あれって偽装されていて、付いているように見えても無くなっていることあるから」
 
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「そうなんですか!?」
 
それでその場でスカートを脱いで、パンティも下げてみた。
 
「やはり付いているように見えます」
と佐織が言うと
「どれどれ」
と言って、それに触っちゃう!
 
「これ本物かなあ。ちょっと確認してみよう」
と言って、千里さんはそれを、ひょいと引き抜いてしまった。
 

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えぇ〜〜〜〜!?
 
千里さんは佐織から引き抜いたちんちんを灯りにかざしたりして調べている感じだ。
 
「確かに本物っぽい。じゃおちんちんまでは切らなかったんだね」
などと千里さんは言っている。
 
佐織は自分の股間を見てみる。そこには何も無くなっている。陰嚢があるが中身が無いので、ぶらさがったりせずに、肌に張り付いている。
 
「ごめんごめん、戻すね」
と言って千里さんはそれをお股にくっつけようとしたが、ふと手を止めて
 
「今考えたけど、これ外したままの方がいい?」
 
佐織は半ば思考停止しているので、目をぱちくりしたものの、
 
「無い方がいいです」
と言った。
 
「じゃこれ預かっておこうかな。それとも要らないなら、これ欲しがっている子にあげたりしてもいい?」
などと千里は言う。
 
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「あ、欲しい人がいたら、あげていいです」
と言ってから、佐織は考える。
 
「でもそれ無くなっちゃうと、私、ヴァギナ作る時に材料に困るかな。もっともS字結腸法で作る手もあるけど」
 
「ああ。ヴァギナ欲しい?」
「欲しいです」
 
「じゃ、作ってあげるよ。そこのベッドに寝て」
「はい?」
 

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それで佐織はお部屋のベッドに寝た。
 
凄い柔らかい!!
 
これが高級ホテルのベッドかと思う。
 
そして千里は
「じゃヴァギナ作ってあげるね」
と言い、佐織のおまたの付近をなにやらいじっていた。たくさん指で触られる。金属の感触も感じるものの、痛くは無い。もしかして麻酔されている?と思うものの、麻酔をされていたら、そもそも指や金属の感触も感じないはずだ。何かが身体に入ってくる感じがある。今トンネル工事中かな?と考える。でも痛くない。むしろ心地良い感じだ。佐織はそこに1時間近く寝ていた。
 
「できたよ」
という声に起き上がって、そこを見た。
 
わぁ。。。。
 
そこには完璧に女の子の股間ができていた。
 
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きれ〜い!と思う。
 
やはり男の子のお股って美しくないよね。やはり女の子のお股の方が美しいよね、と佐織はあらためて思った。
 
「ちゃんと大陰唇、小陰唇作っているからね。ここクリトリス作って神経は全部つないでいるから、ちゃんと感じると思う。おしっこの出る所はここ、ヴァギナはここにある。普通に性的に興奮したら濡れるようにできているから」
 
「これどうなっているんですか?まるで魔法みたい」
「夜12時になったら、元に戻ったりして」
「そうなんですか!?」
「まあ今夜12時になったら、どうなるかは分かるね」
 
佐織はこんな素敵なこと、夜12時までの時間限定でもいいと思った。
 

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