広告:ここはグリーン・ウッド (第6巻) (白泉社文庫)
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■春想(6)

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延長戦は両軍ともベテラン選手を出してきた。
 
取り敢えず観客が名前を知っている選手が多いのでスタジアムは大いに沸く。これも点の取り合いになったものの、最後は西軍が1点差で逃げ切った。
 
大会のMVPは花園亜津子になったものの、得点女王・スリーポイント女王はいづれも千里が獲得しMIPに選出された。アシスト数1位は西軍の武藤博美であった。
 
大会後、亜津子と千里がお互いに
「負けたぁ」
と言い合っていたので、日吉紀美鹿が
「あんたたちは本当に面白い」
と言っていた。
 
「まあ最後、Wリーグ・プレイオフのファイナルで優勝して、スリーポイント女王も取ればいいんだけどね」
「まあそれがいちばん大事だよね」
 
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Wリーグは1月21日から再開される。
 

青葉は束の間の《甘い生活》の後、15日夕方の新幹線で高岡に帰還した。この後大学は今月いっぱい講義があり、2月4-10日に後期試験がある。その後は春休みに突入する。
 
10日から15日までは東京に滞在し、妊娠中のフェイと桃香のメンテ作業には行っていたものの、彪志との甘い《新婚生活》で心が充足していた。ああ、私やはり東京の大学に出てくれば良かったかなあ、などと若干後悔もするがそれだと堕落していたかも知れないなという気もする。
 
彪志とまた分離生活が始まるのが、ちょっと寂しいなという気がした。そのせいか、その夜は“いつもの”夢とリアルの境界のような夢を見る。
 
この夢は、本当に半分リアルで、この夢の中に出てきた人物は向こうも同じ夢を見ていて、起きた後それを覚えているのである。要するに青葉の精神が様々な人の精神の中に勝手に侵入しているもので、青葉の昔からの悪い癖だ。被害者は多数だが、青葉がこの夢で侵入できないのは、親しい人の中では菊枝と桃香だけである。
 
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菊枝に侵入できないのは、菊枝が青葉より遙かにレベルが高いからで、桃香に侵入できないのは桃香が唯物論者で心霊的なものを全く信じておらず、入り込む隙が無いからである。
 
ただ、千里姉は微妙だよなあという気がする。こちらが勝手に侵入して好きなようにしているのだが、ひょっとしたら、孫悟空がお釈迦様の掌の上で弄ばれたように、自分も千里姉の掌の中で勝手なことをしているのかも、という気もしないではない。
 

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この夜、青葉がまたいつもの夢空間にいることを認識すると、寝る前にずっと彪志のこと考えていたし、これ彪志とつながったかな?と思った。
 
向こうの方に誰かいるので歩いて行ってみると、そこに居たのは彪志ではなく先日会った、クレールの女子大生メイド・マキコちゃんだった。
 
「こんばんは〜」
「こんばんは〜」
と挨拶を交わす。
 
マキコが積極的に話しかけてくる。
 
「青葉さん、やはり19歳なら19歳っぽい服を着ようよ」
「それここ1年ほどひたすらみんなに言われ続けた」
「以前は言われたことない?」
「高校の時は、制服だったからかも」
「なるほどー!」
 
するとマキコは
「洋服見てあげますよ」
と言って、青葉をファッションビルに連れて行く。
 
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「青葉さん、取り敢えずリズリサとか、ハニーズとか、オリーブデオリーブとかのお店で服を買うようにしません? 青葉さん、お金の心配はしなくてもいいだろうから、ユニクロやしまむらとかセシールを使う必要無いですよ」
などと言われる。
 
「そのブランド名は聞いたことある気がする」
 
「ちなみに、青葉さん、高校生の時、どっちの制服だったんですか?」
「女子制服だよ。マキコちゃんも女子制服でしょ?」
「えへへ。これ内緒にね」
「だってマキコちゃんの体型で男子制服が着れるわけない。バストが収まらないでしょう?」
「着てみたことあるけど、確かに収まらなかった」
「やはりね〜」
 
「あそこの炎症収まった?」
「実はまだ」
「痛いでしょう?」
「痛いんですよ〜」
「ちょっと見せてみて」
「あ、はい」
 
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それでマキコはスカートをめくり、パンティを下げてその付近を見せてくれた。この美少女にこんなものが付いているなんて、絶対間違っている、と青葉は思った。
 
手かざししてヒーリングしてあげる。
 
恥ずかしい場所を見られてマキコはドキドキしているようだ。しかし性的に興奮してしまうと傷むのでそれは気持ちをコントロールして興奮しないように努力しているように思われた。女性ホルモン優勢の状態にある人は結構意志でこれを押さえ込むことができる。
 
「これあんまり痛いんで、もう根本から切り落としちゃおうかと思ったんですけどね〜」
「根本から切り落とすともっと痛いよ」
「ですよね〜。でも青葉さん、これ自分で切ろうとしたことありません?子供の頃?」
 
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「何度もあるよ。少し切って血が出てきたこともある」
「私も〜」
 

その時、突然青葉は《余計な親切心》が出てしまった。
 
「これ切ってあげようか?」
「え!?」
「これ夢の中でしょ?」
「そうみたいですね」
「だから切っちゃっても問題無いよ」
 
本当に夢の中で済むといいけどね。
 
「・・・・切ってもらおうかな」
「じゃ横になって」
というと、マキコは近くにあったベッドに横になる。都合良くベッドがあるのが、やはり夢の中である。
 
「じゃ取り敢えず剃毛〜」
と言って、まずはハサミと電気カミソリで毛を剃ってしまう。
 
そして患部を消毒し、切り落としてあげようかとしたのだが、その時マキコが言った。
 
「でもおちんちんだけ切って、タマタマが付いてたら、おしっこする時に邪魔になりませんかね?」
 
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「ああ。だったら、先にタマタマ取っちゃおうか?」
「でも私23日に去勢手術受けることになっているんですけど〜」
「そちらはキャンセルしてもいいんじゃない?。これ要る?」
「要りません。邪魔で邪魔でしょうがなかったです」
「じゃ取っちゃおう」
 
と言うと、青葉は麻酔を打ち、まずは麻酔が効いてくるまで待つ。
 

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「この辺、感触ある?」
「ないです」
「ここ感触ある?」
「ないです?」
 
「じゃ、取っちゃうね」
と言って、青葉は陰嚢を少し切開すると、睾丸を取り出し、精索を結索してから切断した。
 
「1個終了。もうひとつも取っちゃうね」
「はい」
 
それで2個目も取り出して切断した。
 
いったん傷口を縫合する。
 
「じゃ、いよいよ、おちんちん切っちゃおう」
「痛いかな」
「夢だから大丈夫」
「あ、そうかも」
 

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それで青葉がペニスの裏側根本にメスを当て、包皮を本体から分離しようとした時のことであった。
 
「あっ」
とマキコが声をあげると、青葉の視界から消えてしまった。
 
ありゃ〜。起きちゃったかな?
 
と青葉は思った。
 
おちんちんは切ってあげられなかったけど、睾丸は除去できたから、手術代が助かるよね?
 
などと考えながら青葉は自分を深い睡眠に導いた。
 

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佐織(マキコ)は1月14-15日のクレールでのイベントが終わった後、自宅に戻って寝ていたのだが、その夢の中に先日会った青葉さん(大宮万葉)が出てきた。
 
佐織は彼女に「もっと可愛い服を着た方がいいです」と言って、リズリサ、オリーブ・デ・オリーブ、ハニーズなどを勧めておいた。自分もそのあたりを主力にしている。一般的に女子大生に人気のローリーズファーム、レッセパッセ、ミッシュマッシュ、ロペなどは「背伸びしたい女子」には良いのだが、佐織のようにそもそも大人びて見えるタイプはよけい上の年齢に見られてしまう。だからむしろハイティーンに人気のブランドの方が良いのである。
 
その後、青葉に「あの付近の炎症治った?」と訊かれる。
 
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「まだです。痛くて痛くて、もういっそ根本から切り落としたいくらいです」
と言ったら、
「切り落としてあげようか?」
と言う。
 
それでなぜかベッドに寝せられて、
「じゃ、切っちゃうね」
と言われたのだが、ちんちんだけ切ると、おしっこする時にタマタマが邪魔になるかもと言う。
 
「だったら先にタマタマを取っちゃおう」
と言われ、部分麻酔を打たれる。それで青葉は佐織の陰嚢を切開すると睾丸を取り出して切っちゃった!
 
あはは。私、男の子廃業しちゃった。
 
「この睾丸どうする?庭に埋めると次は男の子になって生まれて来て、屋根に放り投げて捨てると、次は女の子に生まれてくるんだよ」
 
「じゃ女の子になれるように屋根で」
と佐織が言うと、青葉は佐織の睾丸を屋根に放り投げた。
 
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佐織はその屋根のある家が、震災で崩壊した昔の自分の実家だということを認識した。
 

そしてその震災のことを考えたせいかな、と佐織は後で思った。
 
「じゃ次はいよいよおちんちん切っちゃうね」
と青葉が言うので
「お願いします」
と佐織が言い、青葉が佐織のおちんちんの根本にメスを当てた時のことであった。
 
強い揺れを感じる。
 
地震!?
 
それで佐織は「あっ」という声をあげて、夢から覚めてしまった。
 

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しかし地震は現実だった。
 
結構強く揺れている。佐織の部屋はかなり物を積み上げている。本とかが上から落ちてくるかもと思い、取り敢えず布団の中に潜り込んだ。
 
揺れはわりとすぐ終わった。
 
結構大きかったなあ。震度4くらいあったかなと思う。しかし震災以降余震が頻繁に起きるので、何だか地震に慣れてしまった感もある。
 
震度が大きかったせいで、少し部屋の中の物が落ちている。それを片付けていたら、母がこちらに来て、ドアを開け
 
「地震、大丈夫だった?」
と言う。
 
「うん。大丈夫だよ。お母ちゃんたちは?」
と佐織は可愛いキティちゃんのパジャマ姿で母に言った。
 

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「こちらは大丈夫。じゃ、おやすみ」
「おやすみ。あ、トイレに行ってから寝ようかな」
 
と言って、佐織は母と一緒に1階に降りて行くと
 
「サト、大丈夫だったか?」
と心配そうに言う父親にも
「だいじょうぶだったよ」
と答えてトイレに入った。
 
父親はいまだに自分のことを出生名の佐理(さとし)の変化である「サト」という愛称で呼ぶ(母は「さっちゃん」と呼ぶ)。
 
それで便器に腰掛けておしっこをしていたのだが、した後で拭こうとして何か違和感がある。
 
ん?
 
と思ってその付近を触ってみる。
 
嘘!?あれが無くなっている!!?
 
さっきのは夢じゃなかったの〜〜〜?
 

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