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■春泳(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-11-22
 
病院の駐車場に冬子のリーフを駐め、5人で上の階にあがっていく。面接時間は過ぎているのだが、元々遅い時間に産まれたので、12時までなら御見舞いいいですよと言ってもらった。
 
小夜子はベッドに横になっていて、隣の小さなベッドで生まれたての赤ちゃんがスヤスヤと寝ている。
 
「可愛い!」
と政子が真っ先に声をあげた。
 
「自分で産みたい気分だったんだけどね。小夜子が私の分まで産んでくれると言うから」
などと、まだ色留袖を着たままの、あきらはよく分からないことを言っている。
 
「結局性別はどっちなんだっけ?」
と五十鈴が訊く。
 
「ちんちんは見当たらないから、そのあたりに落ちてなかったら女の子だと思う」
と小夜子は言っている。
 
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「おちんちんって落ちてるもんなんだっけ?」
と政子が訊く。
 
「ああ、落ちてるの見たことはあるよ」
と小夜子。
 
「嘘!?」
 
「我が家にもよく落ちてるなあ」
と桃香が言うと、千里からド突かれていた。
 

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「名前は決めた?」
「うん。ほたるにしようかと」
「可愛いね!」
「ひらがなね」
 
「名前はひらがな3文字で付けるのが、浜田家の流儀か」
「みなみ、ともか、ほたる」
 
「4人目はどうしようかな?」
と小夜子が言っている。
 
「やはりまだ子供作るんだ?」
 
「あきらがまだ射精能力残っているから、射精できる間は作るよ。まあ1年後くらいまで残っていたらの話だけど」
と小夜子。
 
「それかなり怪しい気がする」
「1年後にはもうおちんちん無くなってたりして」
「おちんちんは微妙だけど、タマタマは確実に無くなっていると思う」
とギャラリーからは声が出る。
 
「まあその時はこの子で打ち止めかな」
 
「何なら精液冷凍保存しておいたら?」
「それやると10人くらい欲しくなるから、自然の摂理に任せるよ」
「ふむふむ」
 
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30分ほど病室で話していて、青葉はトイレに行きたくなったので病室を出る。青葉も既に振袖を脱いで高校の制服(セーラー服)に着替えている。それでトイレを探しながら廊下を歩いていたら、向こうから10歳くらいの男の子が走ってくるのを見る。
 
「君、廊下を走ってはいけないよ」
と注意してから、青葉は、あれ?この子、どこかで見たことがあると思った。
 
「ごめんなさい!おばちゃん」
 
おばちゃん!?? それって、それって、私のこと〜〜〜!????
 
青葉はあまりのショックでしばらく口が聞けなかった。
 
「あのねぇ、私高校生なんだよ。この制服が見えない?」
「あ、そういえば女子中学生みたいな服を着てるね」
「まあ女子高校生だけどね。まだ10代なんだから、おねえちゃんと言いなさい」
「はーい」
 
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と男の子は無邪気に返事をする。青葉は気を取り直して訊く。
 
「君、でもかなり遅い時間だよ。お母さんか誰かと来たの?」
 
その子が病院着ではなくふつうの服を着ているので、青葉は入院患者ではなく見舞客なのだろうと判断した。
 
「お母さんがこの辺にいるみたいだから探してたの」
「お母さん、入院してるの?」
「入院ってよく分からないけど、さっきこの階に行ったよって泳次郎様が言ってたんだよ」
 
じゃ見舞客か? でもこの時間に見舞客って・・・・自分たちだったりして!?と考えた時に、青葉は唐突にこの子をどこで見たのか思い出した。
 
この子って・・・・春にちー姉のアパートを留守の時に勝手に訪問した時、『開けちゃダメよ〜ダメダメ』と書かれていた箱の中にあったアルバムに入っていた写真に写っていた男の子だ! それって多分・・・・
 
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「坊やのお母さんって、千里さんでしょ?」
「うん! どうしてお姉ちゃん、知ってるの?」
「私、千里さんの妹なんだよ」
「へー!そうだったのか。あれ?だったら、お母さんの妹なら、僕のおばちゃん?」
 
ぐっ・・・・
 
それは確かにそうだ!
 
「そういうことになるかな」
「じゃ、やはりおばちゃんと言った方がいいの?」
「関係上は君のおばちゃんかも知れないけど、呼ぶ時はおねえさんとかおねえちゃんと呼びなさい」
「はーい」
 
まあ素直な子のようだ。
 
「ちなみに私は青葉。君の名前は?」
「僕は京平。青葉って可愛い名前だね、おねえちゃん」
「京平というのも格好いい名前だね」
「えへへ。お母ちゃんが付けてくれたんだよ」
 
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青葉は目の前にいる京平を観察した。この子、おそらく精霊の類いなのだろうけど、存在感がかなり強烈である。この子の正体を知って初めて青葉はこの子が人間ではないことに気づいた。ひょっとしてちー姉が近くにいるから、それで更に存在感が強くなっているのだろうか? ちー姉って巨大なバッテリーだからなあ。
 
「でも君、もうすぐ産まれてくるんじゃないの? こんな所で何してるの?」
 
「なんかお母ちゃんが結婚式に出てたから、お母ちゃん結婚するのかなあと思って、ちょっと出てきた。でもお母ちゃん、巫女さんしてた」
 
「うん。千里姉ちゃんはとってもえらい巫女さんなんだよ」
「うんうん。泳次郎様も、この人すごいって褒めてたよ」
 
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えいじろう・・・って誰だろう?? 先輩の精霊か何か??
 
「じゃ、ちょっとそこの自販機のある所で待っててくれる?お母さんを連れてくるから」
「ほんと? ありがとう、青葉お姉ちゃん」
 

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それで青葉は病室に戻り、千里に声を掛けた。
 
「ちー姉、京平君が来てるよ。ロビーの所で待っているって」
 
すると千里は顔色ひとつ変えずに答えた。
「ありがとう、青葉。ちょっと行ってくるね」
 
それで千里は病室を出て行った。
 
「京平君って、千里のボーイフレンド?」
などと政子が訊く。
 
「違うよ。知り合いの子なんだよ。まだ小学生くらいだよ」
と青葉は答えた。もっとも心の中で「10年くらい先にはね」と付け加えた。
 
冬子や若葉が「ふーん」という感じの顔をしていた。
 

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千里は病室を出るとロビーに行った。京平が自販機を眺めている。
 
「京平、今から帰るの?」
「うん。帰る前にお母ちゃんに会っていこうと思って。ね、ね、ここのジハンキって言うの? 中に並んでいるの、美味しそう」
 
「じゃ、どれか買ってあげるよ。どれがいい?」
「じゃ、これ」
 
と言って京平が指したのはQOOのオレンジである。それで千里はお金を入れて1個買ってあげた。
 
「これ甘くて美味しい!」
「まあ今度生まれて来てから、幼稚園か小学生くらいになったら、お母ちゃんに買ってもらうといいよ」
「うん、そーするー」
 
と言って京平はほんとに美味しそうにQOOを飲んだ。
 
「飲み終わったら、そこのゴミ箱に入れてね」
「はーい」
 
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と言ってペットボトル入れに放り込む。
 
「そうそう。泳次郎様がお母ちゃんに会ってもいいって」
「ありがとう。どこで会える?」
 
「304号室が空いてたから、そこで待ってると言ってた」
「了解。京平はここで待ってて」
 
そう言ってから千里は心を引き締めて、304号室に向かった。
 

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ノックをする。
 
「入って来られよ。ただし目は瞑っておいた方がよいと思うぞ」
「ありがとうございます。入ります」
 
と言って千里は目を瞑って部屋の中に入った。
 
「麿(まろ)に何か用か?」
 
それで千里は妹の知り合いの霊能者が稲荷神社のトラブルに関わっているということを言った上で、青葉から聞いた細かい経緯を話した。
 
「なるほど。その狐は麿が連れて帰ろう。伏見に戻れば次第に心も穏やかになっていくであろう」
「ありがとうございます」
 
「いつそこに行く?」
「そちら様のご都合の良い日に合わせます」
「では明日行こうか?」
 
「はい、それは助かります」
 
「これを渡しておく」
と言って泳次郎は千里の手に何か紙のようなものを握らせた。
 
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「その場所でこの紙を使って麿を呼ぶが良い」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。あのぉ」
「ん?」
 
「その場所には小さな物でもよいのでお稲荷さんを建てた方がよいのでしょうか?」
 
「必要無い。ただ、作った方がそこに居る者たちの心が落ち着くなら作ってもよい。あらためて伏見より勧請するがよい」
「分かりました。そう申し伝えます」
 
「ところでそなた、麿の尾は何本に見える?」
「え?9本あるように見えますが」
「あはは。やはり、そなた目を瞑っていてもちゃんと麿が見えているではないか」
「目を開けていても閉じていても、私の視界はそんなに変わりません」
 
「そんな気がした。じゃ、また明日」
「はい、よろしくお願いします」
 
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「あ、そうそう。京平は26日にそちらに送るから、お世話よろしく」
「はい。頑張って育てます」
 
と答えてから千里は「へ?」と思う。26日〜? 予定日より2日早いのか!
 

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それで304号室を出た千里は、ロビーにまだ居た京平に泳次郎様の所に戻るように言い、京平が向こうに走って行くのを見送ってから小夜子の病室に戻った。
 
そして青葉に、今泳次郎からもらった紙を渡した。
 
「お偉いさんに話が付いたから。明日、この紙を持って例の場所に行って」
「明日!?」
「私も付いて行くよ」
「うん。お願い!」
 
それで青葉はもう時刻は23時過ぎではあるが、火喜多高胤さんに電話をした。向こうは驚いていたが、明日現地に駆け付けると言い、明日の午後、F駅で落ち合うことにした。
 
「でも青葉、大会の直前なんでしょ?」
「うん。大会、頑張らないと何と言われるか分からない」
「まあどっちみち放課後は合唱の方の練習じゃないの?」
「本来はそうなんだけど、今週いっぱいは水泳部の方に放課後も顔出すことにしてたんだよ。今日だけが例外で」
「じゃ明日も例外で」
「仕方ないね。お偉いさんが動いてくれるなら、それに合わせなきゃ」
 
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結局0時過ぎに全員で病院を退出した。遠くまで帰らなければならないのが千里・桃香・青葉(世田谷区)、冬子・政子・若葉(東京都H市)なので、話し合いの結果、小夜子のウィングロードを千里が借りることにして、あきらと五十鈴はタクシーで帰宅した。冬子・政子・若葉はリーフを冬子が運転して若葉を自宅に送り届けた後、政子の実家に入って泊まったらしい。都心の恵比寿まで行くよりは随分距離が近い。
 
そして千里は助手席に桃香・後部座席に青葉を乗せてウィングロードを運転して経堂の桃香のアパートまで帰った。
 
「眠い、もう寝よう寝よう」
と言ってそのまま3人とも布団を敷いて潜り込んだ。
 
翌6月18日。青葉が5時に目を覚ますと、既に千里が起きていて朝御飯を作っていたので青葉も手伝う。
 
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「京平君も何とかここまで無事辿り着いたね。予定日は28日だったっけ?」
と青葉が言うと
「うん。ほんとにやっと、という感じだね。ただ予定日はあくまで予定だから少しずれるかも」
「確かにそれはあるね」
 
「でもほんと青葉に助けてもらわなかったらここまで来れなかったよ」
と千里は言う。
「けっこう何度かヒヤヒヤしたよね」
 
「出産の時も青葉のサポートが必要だと思うんだ。遠隔でもいいから協力してもらえないかな?26-28の週末って青葉予定ある?」
「補習が入っているけど、遠隔でのサポートくらいなら大丈夫だよ」
「ありがとう。ごめんね」
 
「いいよ。でも京平君って、いつちー姉の子供になったの?」
 
「まだ私が高校生だった頃なんだよ。あの子と偶然某所で会ってさ。それであの子のお母さんになってあげる約束をしたんだよ」
 
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「そうだったのか。でも素直でいい子だね」
「うん。私に似ていい子だよ」
 
「結局、物理的に京平君の身体を作った卵子って、やはりちー姉の卵子?」
と青葉は訊いたのだが、千里は困ったような顔をした。そして
 
「その件、私も教えてもらってないんだよ。聞いても何かはぐらかされてさ」
と千里は言った。
 
そして千里は青葉に重大な示唆をした。
 
「青葉もさ、私もさ、生理があるじゃん」
「うん」
「女の子に生理があるってことはね。赤ちゃんを産めるってことなんだよ」
 
その千里の言葉を青葉はあらためて深く考えた。
 

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