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■春演(12)

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千里と青葉が協力してスーパーで買って来たものを冷蔵庫に入れたりテーブルに置いたりしていると、桃香が服を着て出てくる。
 
「済まん、済まん」
と桃香。
「レイプされるかと思った」
と青葉。
 
「ごめーん。しかし参った。青葉にちんちんを見られてしまった」
などと桃香は言っている。
 
「まあ、そのちんちんを入れる相手の裸までは転がってなかったから今日はいいことにしておこうかな」
と千里。
 
「千里に入れようと思って待機していたんだよ」
「それはいいけど無理矢理ってのは勘弁して欲しい。ところで御飯何か食べた?」
「食べてない。お腹空いた」
 
既に22時すぎであるが、桃香はむろん夕ご飯など作っていないので今スーパーで買って来た材料をホットプレートで焼いて焼きそばにして食べる。
 
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「やはり焼きそばは豚コマがいい」
などと桃香は言っている。
 
「まあ安いからね」
「牛肉も美味しいが高いのが問題だ」
「午前中にお買物に行けばシールの貼ってあるのもゲットできるんだけどね。さすがにこの時間帯は残っているものを買うしかない」
 
「私、レスビアンってよく分からないんだけど、あれ入れる側も気持ちいいものなの?」
などと青葉が訊くと
「栗の所に当たるようになっているんだよ」
と桃香が答える。
 
千里は渋い顔をしている。高校生とする会話では無いという表情だが、青葉から切り出したので取り敢えず容認しているようだ。
 
「あ、そういうことか」
「今日のは違うがダブルヘッダーもある」
「あ、それは写真で見たことある」
「でも正直私は入れられるのはあまり好きではないので、シングルヘッダーの方が好きだ」
「あぁ、入れられたくないんだ?」
「入れられるんじゃ男とするのと変わらないし。実はトリバディ、いわゆる貝合せがいちばん気持ちいい」
「まあ、あれがビアンの醍醐味だよね」
などと千里も言っている。
 
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「道具は千里を虐めて精神的にいたぶるお遊びだよ。だから千里以外には使ったことない」
と桃香は言うが
「それ、全然信用できない」
と千里は言っている。
 
なんか桃姉も浮気を開き直ってる!?
 
「ちなみにさっき付けていたのはバイブ付きだから電動でも気持ち良くなれる」
と桃香。
「今は付けてないよね?」
と青葉が訊くと
 
「うん。あのサイズのは付けたままは服を着られない。男物のブリーフとズボンを穿いた状態で装着することは可能だけど、出しっ放しの状態になる」
などと桃香は言っている。
 
「それで外は歩けないね」
と千里が突っ込む。
 
「まあ、おまわりさんに捕まるな。本物は小さくして収納できるから便利だ」
と桃香は言うが
 
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「本物は取り外せないのが不便」
と千里は言う。
 
「ああ君たちはふたりとも自分で取り外せなくて困っていたんで、お医者さんに取り外してもらったんだな」
と桃香は言う。
 
「うん。無茶苦茶痛い手術だったけどね」
「大変だな。たまにまた欲しくなることないの?」
と桃香は訊くが
「要らない!」
と千里も青葉も即答する。
 
「だって立っておしっこするのとか便利なのに」
「立ってしたことは無いなあ」
と千里が答える。
 
「幼稚園とか小学校とかのトイレで立ってしてないの?」
「私は個室しか使ったことないよ」
「ほほお」
 
へー。やはりちー姉って「男の子生活」をしたことが無いんだろうな、とその返事を聞いて青葉は思った。きっと自分と同様に小さい頃から「女の子」していたのではと想像する。
 
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「でもちー姉は、たぶん小学生の頃は男子トイレ使ってるよね?」
「まあ20歳頃までは男の子の格好の時は男子トイレを使ってたね」
 
「そこが問題なのだが、本当に男の子の格好してたのか?」
「私は中学高校は男子制服を着て通ってるし、大学でも2年の時までは男装だったじゃん」
「それが嘘だというのは既にバレバレなのだが」
「本当なのに」
「いや千里は嘘つきだ」
 
と言い
「今夜はこのネタで責めようと思っていたのに」
などと言って数枚の写真を出す。千里が頭を抱えている。
 
「わあ、凄い!」
 
と青葉が声を挙げる。
 
それは桃香が出した順に、大学の入学式?でスカートスーツを着ている千里、高校の女子制服を着て何かの賞状をもらっている所の千里、そしてセーラー服を着て学生服を着た細川さんと並んでいるスナップまである。
 
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「個人的には細川君との最近の関係についても色々追及したいのだが」
「それはまた今度ね。今日は青葉もいることだし」
「そうだなあ。さすがに高校生の前でレイプはできん」
 

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翌日朝御飯を食べて桃香を会社に送り出した後、千里は青葉を今日はインプレッサに乗せて東名・名神・北陸道を走って福井県の∽∽寺まで行った。
 
「このインプってよく借り出しているみたいだけど、実は借り物ではなくてちー姉の所有品ってことは?」
と青葉が訊くと
「少なくとも法的な所有者は私ではない」
などと千里は言う。
 
なんか微妙な表現だなあ。
 
「まあ都内程度を走り回る時はミラの方が小回りが利いていい。インプは主として遠出する時に使わせてもらうんだよ」
と千里は更に言っている。
 
確かに合理的な使い分けである。特にインプは走りは良いものの燃費は軽やエコカーと比較すればずっと落ちる。しかも千里は燃費を犠牲にしてグリップのいいタイヤを履いていると言っていた。
 
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「ちー姉、ドリフトとかもするの?」
「できるけど一般道じゃしないよ」
「なるほどねー」
 
この日は交代ドライバーとして矢鳴さんが同乗してくれて、実際には最初矢鳴さん、新東名の掛川PAから名神の養老SAまでを千里、その後を矢鳴さんが運転した。朝8時に桃香のアパートを出たのだが、∽∽寺に着いたのは13時半くらいであった。
 
千里が入口の所で
「長谷川一門の瞬里と申します。独鈷杵の行方について導覚猊下にご報告に参りました」
と言うと、少し待たされただけで寺院奥の貫首の居る浮楼閣に案内される。檜造りの明るい雰囲気の建物である。導覚はにこやかな表情でふたりを迎えた。
 
「こんにちは。こちらは私の妹で瞬葉と申します」
と青葉を紹介する。
 
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「ああ、君たち姉妹だったのか。いや、あの法事の時に、前に並んでいる人の中にいやに強烈なオーラを持っている若い子が居るなと思っていた」
と導覚は言った。
 
千里が今回の事件について自分たちが関わることになった経緯から順を追って話すと
「僕もその大きな流れの中に組み込まれていたようだね」
と導覚は語った。
 
「それじゃ君の般若心経を聞かせてよ」
と導覚が言うので
 
「それでは失礼して」
と言い、千里が
 
「観自在菩薩、行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空度一切苦厄。舎利子、色不異空、空不異色、色即是空、空即是色、受想行識、亦復如是・・・・」
 
と唱えると
 
「これは面白い。ほんとに祝詞(のりと)に聞こえる」
とひじょうに喜び
「これはみんなに聞かせなくては」
などと言ってお堂に寺の僧を大集合掛ける。
 
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千里は苦笑していたが、半ばやけくそで、300人あまりの僧の前で「祝詞風般若心経」を奏上した。
 
「観音経はできませんか?」
などと声が掛かる。それで千里は唱える。
 
「爾時無尽意菩薩、即従座起偏袒右肩合掌向仏、而作是言。世尊、観世音菩薩、以何因縁名観世音。仏告無尽意菩薩。善男子、若有無量百千万億衆生・・・・」
 
へ〜、ちー姉、観音経もそらで唱えられるんだ! でもやっぱりこれ祝詞だ!
 
若い修行僧たちが、かなり面白がっていたようである。導覚さんは笑顔で頷きながら聴いている。娯楽と話題の少ない修行場では、この話がたぶん3ヶ月はネタにされるなと青葉は思った。
 

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お堂でのイベントの後で浮楼閣に戻るが、導覚は
「ところで君たち、印可はもらったの?」
と訊く。
 
「妹はもらいました。私は仏教とは無縁なので」
と千里。
「いや、ふたりともうちの寺に欲しい感じだ」
と導覚。
 
「こちらのお寺は男性の修行僧だけでは?」
「そうだなあ。君たち変成男子(へんじょうなんし)するつもりは?」
「遠慮しておきます」
「マラがあると便利だよ。煩悩付きだけど」
「実はあったんですけど、取っちゃったんですよ」
 
「へー、そうだったの?」
「ですから変成女子(へんじょうにょし)なんですよ、私は」
「なるほどね。煩悩は消えた?」
「今でも煩悩だらけです」
 
「だろうな。あれを取るだけで煩悩が消えるなら、修行僧のマラは全部切り取りたいところだけど」
「そういう修行場もありかも知れませんが」
「やってくる修行僧のタイプが変わりそうな気がします」
 
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∽∽寺を出たのは16時くらいであった。それから矢鳴さんの運転するインプで17時半頃青葉と千里は高岡に帰還した。
 
「そういえば今日はバスケの練習は良かったの?」
と青葉が訊いたら
「水曜日はレッドインパルスの練習が休みなんだよ」
と千里は言っていた。
 
「ねえ、ちー姉、ひょっとして会社には全然行ってないなんてことは?」
と青葉が言うと
「行ってるよ。先週は専務と一緒に国土交通省まで行って打ち合わせしてきたしね」
などと千里は言っている。
 
なんか怪しいなあ。
 
どうも千里は毎日あのプロチームの練習(15-18時)に参加しているようである。しかしその時間帯は本来、ふつうの会社の勤務時間帯のはずだ。
 

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その日は高岡で青葉・千里・朋子の3人で夕食の卓を囲んだ。矢鳴さんも一緒にどうですか?と誘ったのだが、遠慮すると言ったので「心付け」と称して、きときと寿しの食事券を渡したら「ここ好きなんですよ」と喜んでいたようである。
 
「まあ1人で食べた方が気疲れしなくていいんじゃない?」
などと朋子も言っていた。
「後藤先生担当のドライバー、金子さんは日々後藤先生の食事や接待に付き合わされて、体重が増えちゃうというので毎日5kmジョギングしているらしいよ」
と千里。
「それは大変そう」
「そのあたりは女性作曲家の担当者の方が気楽っぽいね」
 
「だけど青葉も最近随分曲を書いているみたいだもんね。年間何曲くらい書いているんだっけ?」
と朋子が訊く。
 
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へ?
 
と青葉は思う。
 
あ、そーか。
 
母は矢鳴さんは★★レコードが青葉に付けてくれたドライバーと思い込んでるんだ!? ま、いいか。
 
「去年はなんだかんだで30曲くらい書いているよ」
 
冬子さんから随分押しつけられたからなあ、と青葉は思う。
 
「多いのか少ないのか分からない」
「だいたい多くの職業作曲家が書く曲数は年間20曲くらいだと思う。中には量産型で50曲とか100曲とか書く人もいるけど、そういう人の多くは粗製濫造になりがちなんだよね」
と青葉。
 
このあたりあまり言うと年間120曲くらい書いている冬子の批判になるので、青葉としても言葉が慎重である。ただ冬子の場合、政子・和泉という優秀な作詞家に恵まれて、そのイメージを借りて作曲しているからこそ書ける曲数である。またローズ+リリーあるいはKARIONが歌う以外の曲のアレンジは全て下川工房に委託しているのもある。
 
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「木ノ下大吉さんも年間100曲くらい書いていたんでしょ?」
「あの人の場合は最後はもうほとんどがゴーストライターの作品になってたね」
「うん。もう最後は単に作曲家を演じているだけの人になっていた」
 
「松原珠妃の『黒潮』は本人の作品だよね?」
 
「だと思う。翌年の『哀しい峠』もね。『黒潮』はいい出来だったけど『悲しい峠』は駄作。津島瑤子の『出発』が恐らく売れた作品の中では最後の本人作品。世間的に最後のヒット作と言われている粟島宇美子の『雨の中の告白』は本当に書いたのは、たぶん弟の藤吉真澄さんだと思う」
と千里。
 
「そうだったの!?」
と朋子が言うが
 
「私もその意見に賛成。サビとAメロは木ノ下さんだけど、Bメロと全体の仕上げは藤吉さんだと思う。たぶん木ノ下さんの作品に藤吉さんが補作したんだよ。サビの着想は天才的だけどBメロはありがちなんだ」
と青葉。
 
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「ああ、その可能性はあるかもね。木ノ下さんの波動と藤吉さんの波動は似ているから、見分けにくいんだけどね」
「うんうん。似てるよね」
 
「あんたたち、よく波動とか言ってるけど、それ何?」
「作品を聴いたら感じられる一種のイメージだよね」
「うん。美術作品とかでも、どのくらい本人の手で描かれているかが分かる」
「漫画とかも、これ作者本人はほとんど何も描いてないよね?というのがよくあるよね」
「まあ、あれはアシスタントさんたちとの共作みたいなものだから」
「『アシスタントさんたちとの共作』ならいいけど『アシスタントさんたちの共作』になってたりしてね」
 

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千里は22時頃、矢鳴さんに迎えに来てもらい、ふたりで交代で運転して東京に帰還したようである。
 
翌日6日ぶりに学校に出て行った青葉は水泳部の朝練で
「今日の青葉は気合いが凄い」
と杏里から言われた。
 
昼休みに青葉がチンスコウの箱を開けると、みんなが群がってきた。
 
「青葉、沖縄に行ってたんだ」
「うん。今回は大きな物事の進行をただ見守るだけという感じになったけどね」
「へー」
 
「なんか剣と魔法の世界という感じのものを見たよ」
「テーマパークか何かに行ったの?」
「そうだなあ。あそこテーマパークになっちゃったりしてね」
 
昨夜木ノ下先生の奥さんと電話で話したのだが、あの不動産会社の社長は別荘の付加価値を高めるのと地域住民へのサービスを兼ねて屋内型のレジャープールを作ろうかとか(屋内型にするのは沖縄の強い日差しを避けるのと騒音防止を兼ねる)、ウタキのそばにイザイホーの資料館でも作ろうかなあ、などと言っていたらしい。
 
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