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■春演(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-07-25
 
このゴールデンウィーク、まともに休めたのは大企業に勤めている桃香だけであった。千里が仕事で会社に泊まり込んでいる様子なので、桃香はひとりで帰省しようと思ったものの、出遅れたので飛行機も新幹線も満席である。それで車を運転して帰ろうかとも思ったものの、千里は「今の時期に車で移動なんて渋滞にハマりに行くようなもの」と言うし、テレビを見ていたら「○○トンネルで30km渋滞、○○ICを先頭に50km渋滞」などというニュースが流れている。
 
こらあかん!
 
ということで桃香は普通列車乗り継ぎで高岡まで帰ろうと考えた。千里が「それもしんどいよ〜」などと言うものの「何とかなるだろう」と言い桃香は旅行鞄とお土産の「ひよこ」を持って経堂駅まで行った。時計を見ると8:23であった。
 
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ちょうど小田急線・新宿行きの急行が来たので乗るが、これはそんなに混んでいなかった。それで、なーんだ、ゴールデンウィークといっても路線によってはそんなに混んでないのでは・・・などと思ったのだが、新宿駅は凄い人であった。
 
なかなか思う方向に行けないのを何とか埼京線の乗り場まで行き、川越行きに乗る。赤羽で高崎行きの快速に乗り換え、1時間半の行程で11時すぎに高崎駅に着いた。信越本線の時刻表を見る。桃香は取り敢えず長野方面に行きたかったのだが、なぜか列車がみな横川行きである。それで仕方なく次の横川行きに乗った。
 
11:53に横川に到着。とりあえず「峠の釜めし」を自分の分と母の分と2個買い、それで長野方面の時刻を見ようとしたのだが・・・・
 
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「なんで長野方面に行く電車が無いんだ?」
 
それで駅員さんに訊く。
 
「新幹線が長野まで通ったんで、横川−軽井沢間の信越本線は廃止されたんですよ。もう18年ほど前ですが」
「え〜!? じゃ長野に行くにはどうすればいいんですか?」
 
「長野に行かれる方はみなさん高崎から新幹線に乗るのですが、ここからなら軽井沢までバスで行って下さい」
 
それで仕方なく駅前からバスに乗る。12:10のJRバスに乗り軽井沢駅前まで行く。そこから13:05の《しなの鉄道》に乗り長野で乗り換えて15:58に妙高高原に到着。ここから今度は《えちごトキめき鉄道》に乗って、直江津乗換で泊まで行く。更にここから《あいの風とやま鉄道》に乗り、富山乗換で20:10高岡着。ここからJR氷見線に乗って伏木駅に到着したのは20:34であった。
 
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■小田急
経堂8:34→8:47新宿
■JR東日本
新宿9:22→9:36赤羽9:41→11:13高崎11:20→11:53横川
■JRバス
横川12:10→12:44軽井沢
■しなの鉄道
軽井沢13:05→14:50長野15:17→15:58妙高高原
■えちごトキめき鉄道
妙高高原16:04→16:55直江津17:33→18:48泊
■あいの風とやま鉄道
泊19:03→19:48富山19:53→20:10高岡
■JR西日本
高岡20:22→20:34伏木
 
実に7つの会社線を乗り継いで12時間掛けての帰宅であった。
 
なお、桃香が使ったルート以外に、もうひとつ3月13日まで《特急はくたか》が走っていたルート通りに六日町まで行って北越急行を使う手もある。その場合は小田急/JR東/北越急行/えちごトキめき/あいの風とやま/JR西、と6つの会社線で済むし、実はそちらの方が早く到着することができた。
 
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経堂8:34(小田急)8:47新宿9:22(JR東)9:36赤羽9:41→11:13高崎11:33→12:38水上13:42→14:42六日町14:49(北越急行)15:51犀潟16:02(JR東)16:11直江津16:12(えちごトキめき鉄道)17:26泊17:28(あいの風とやま鉄道)18:14富山18:25→18:43高岡19:03(JR西)19:16伏木
 
更にここで北越急行を使わずに長岡(正確にはひとつ手前の宮内)までそのままJR線に乗っていく手もある。この場合会社線は5つで済むが到着は桃香のルートと同じになる。
 
経堂8:34(小田急)8:47新宿9:22(JR東)9:36赤羽9:41→11:13高崎11:33→12:38水上13:42→15:31宮内15:43→17:05直江津17:33(えちごトキめき鉄道)18:48泊19:03(あいの風とやま鉄道)19:48富山19:53→20:10高岡20:22(JR西)20:34伏木
 
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「いや疲れた」
と桃香は言ったが
「これが金沢方面まで行くのなら最後はJR西日本じゃなくて《IRいしかわ鉄道》に乗ることになっていたね」
「大変だ! 新幹線ができたのはいいけど、ローカル線が細切れになりすぎだよ」
「うん。利便性を著しく落としていると思うんだけどね」
 

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桃香が横川で買って来た「峠の釜めし」を一緒に食べる。
 
「普通の炊き込み御飯という気がする」
と朋子。
「まあここは記念碑的なものだから。碓氷峠は一度千里の運転する車の助手席で越えたこともあるが、目が回った」
と桃香。
「ああ、そういう車には乗りたくない」
「あれはドライバーは割と平気らしい。それで次は私に運転させろと言ったが千里は嫌だと言った」
「あはは」
 

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「だけどあんたと2人だけのゴールデンウィークなんて、いつ以来かね」
「うーん・・・。大学1年の時も2年の時もバイトしてて帰省しなかったから、高校の時以来かな。まあたまには親孝行しようか」
 
「・・・・・」
「どうしたの?」
「あんた何か悪いことしたんじゃないよね?」
「なんで〜〜?」
「あんたが親孝行だなんて凄く変」
「変と言われても」
「誰か女の子を妊娠させたり・・・・はしないか」
「さすがに私には精子は無い」
「いや、あんたなら分からん。妊娠させないまでも、向こうのお父さんが娘を傷物にした責任、どう取ってくれる?とか怒鳴り込んでくるとか」
「うーん・・・・。セックスする時はちゃんとお互い同意の上でしているつもりだけどなあ。無理矢理やっちゃったのは千里くらいだよ」
 
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「・・・・それどっちがどっちに入れた訳?」
 
「大学2年の時一度だけ千里が私に入れてくれた。その後、私が何度か夜中に千里を襲ったことがあるんだけど、千里のちんちんはふにゃふにゃしていて、どうしても私のに入れることができなかったんだよ。仕方ないから私が千里に入れた。だから無理矢理結合したのは全部私が千里に入れたパターンだ」
 
「うーん・・・」
 
「千里は優しいから自分がレイプされたなんてことは人には言わずに、自分が私と自主的にセックスしたみたいな言い方をしていたから、聞いた人は千里がまだ持っている男性器で私の女性器と結合したのだろうと思ったと思う。でも色々考えてみると、千里はたぶん私と出会った時、本物のちんちんは既に取ってしまっていたんじゃないかと思う。だから、一度だけ千里が私に入れてくれた時もあれは私が使ってるのと同様の作り物だったのではという気がするんだよね」
 
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「でもあんた千里ちゃんの性転換手術に付き添って行ったよね?」
「うん。そこら辺がどうにも謎なのだよ。こないだこんなものが出てきた」
 
と言って桃香は1枚のレシートを見せる。
「ジュエリーショップ・コロン?」
「あの千里の性転換手術でタイに行った時、青葉にイヤリングをお土産に買ってきた。その時のレシートが唐突に出てきたんだよ」
「ああ、日星月のイヤリングね」
「で日付を見てみ」
「July 15, 2006?」
「不思議だよなあ。あれは2012年だったはずなのに。お店のレジの日付がくるってたのかも知れないけどね」
 

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翌日3日は2人で一緒にスーパー銭湯に行ってきてから夕食は桃香が作った。カレーライスを作ったのだが・・・・・
 
「ごはんがちゃんと炊けてない。これメッコ飯(芯が残った御飯)になってる。あんた圧力弁を外してるじゃん」
「あれ〜〜?」
 
「じゃがいもが生煮え。ちょっとこれ再加熱するね」
「ごめーん」
「それにこれ辛すぎる。あんたカレーパウダー入れすぎたのでは?」
 
「いや千里がいつも市販のカレールーに加えて香り付けと言ってパウダーとかガラムマサラとか入れているからなあと思ってやってみたのだけど」
「入れすぎると超辛口になっちゃうから」
 
朋子が頑張ってリカバーしたのだが、カレーの方は牛乳を加えたりして何とかなったものの、御飯の方はどうにもリカバーできなかった。
 
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桃香が千里に電話してみたら、千里は「いったん冷やしてから水を充分吸わせた上で少し日本酒を加えて再度炊飯してみて」と言ったので、やってみたものの、それでもあまり改善されなかった。
 
「まあ今日はこれで食べよう」
と朋子も言って食べるものの
「美味しくない」
と桃香。
 
「あんたお嫁さんにはなれないみたい」
「まあ行く気もないけどね」
「いつも千里ちゃんが御飯作ってるの?」
「うん。自分が帰って来られなかった時のために常に冷凍ストックがあるから食べるものが無い時はそれを解凍して食べている」
 
「千里ちゃんがもし他の男の人と結婚したら、あんた餓死するのでは?」
「その時はひたすら外食だな」
 

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ゴールデンウィークが終わって普段の日常が戻って来る。青葉は部活と受験勉強に励んでいたし、桃香も何とか頑張って毎日スカートを穿いてお茶の水の会社でOLをしていたし、千里Aは日々バスケの練習で汗を流しながらも音楽制作活動をしていた。
 
「私もう辞めたい」
と千里Bが文句を言っている。
 
「まあ、そう言わずにせめて1年くらい勤めてくれると嬉しいなあ。短期間で辞めると後輩に影響があるから」
 
「ほんとに辛いんだよ。青龍代わらない?」
と千里B。
「俺はスカート穿いて女子社員を演じるのは嫌だ」
と《せいちゃん》。
「じゃ男に性転換しましたと言うってのは?」
と千里B。
「それは勘弁して〜」
と千里Aは言った。
 
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「じゃさ、システムの設計とかプログラミングは私や青龍でやるから、千里、営業的な打ち合わせとかは自分でやってくれない?」
と千里B(きーちゃん)が提案する。
 
「私、コンピュータは素人だよ」
と千里。
 
「実は営業的な打ち合わせは素人の方がいいんだ」
「へー!」
「だってコンピュータを使う側は素人だもん」
「なるほどー」
 
「確かにメーカーの営業とか、コンピュータのこと本当に分かってない奴がいてイライラするよな」
と《せいちゃん》も言っている。
 
「専門家みたいな顔しているだけで相手は結構信用する」
と《きーちゃん》。
「うん。逆に知識が豊富でも自信無さそうな感じのSEは信用してもらえない」
と《せいちゃん》。
 
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「要するにハッタリか」
と千里が言うと
「営業なんて9割がハッタリと演技力だよ」
と《せいちゃん》は言う。
 
「それに営業的な仕事は、システムの仕事とは頭の中の全然別の部分を使うんだよ」
と《きーちゃん》。
 
「ふーん。じゃ難しい技術的な話が出たら教えてよ」
「もちろん」
 
そういう訳で千里は営業的なレベルの打ち合わせでは「SEを演じる」ことになるのである。
 
結果的にJソフトに2015年春から2019年春まで(名古屋に行っていた2018.05-09を除く)勤めていた「千里」は、千里A(本人)、千里B(きーちゃん)、千里C(せいちゃん:結局女装させられたが、他の女子社員と一緒に着替えたり女子トイレを使うのを物凄く恥ずかしかっていた)が状況に応じて交代で演じていたのである(お芝居で言えばトリプルキャスト)。これは実は千里本人が巫女の力を失っていた時期(2017.08-2019.04)も、本人が意識しないまま継続していた。
 
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そういう訳で2017.07に川島信次が「一目惚れ」してしまったのは間違い無く千里A本人なのである。もっとも元々男性同性愛の傾向がある信次は女装の千里C(せいちゃん)にも、かなりドキドキしていたようである。
 

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2015年5月15日(金)。
 
千里Aは珍しくナチュラルメイクした上で、17時前まで大田区内のカラオケ屋さんで楽曲のまとめ作業をしていた。この日はレッドインパルスの練習・W大学での練習ともにお休みにさせてもらっている。
 
千里Bから『そろそろ代わろう』と言われてパソコンをハイバネートさせ、荷物をまとめて精算しカラオケ屋さんを出る。あまり目立たないように路地に入ってから「OK」と言うと、次の瞬間、Jソフトの社内に居た。
 
画面に何かのソースコードが表示されているが、ちんぷんかんぷんだ。このワークベンチの基本的な操作だけは教えられていたので念のためメニューから全保存を選んだ上で閉じておく。1年先輩の竹下さんが応接室の片付けに立ったのを見たので、千里はお盆を持って社内のテーブルに乗っている茶碗の回収を始めた。
 
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さりげなく専務を見ると何かを考えている風。これは絶対に目を合わせてはいけない状況である。誰かを捜している雰囲気。ちょっとやばいな。千里は《こうちゃん》に頼んで、矢島さんの机の上に乗っていたマーカーを落としてもらった。それを拾うのに矢島さんが席を立つ。すると専務が
 
「あ、矢島君、ちょっと」
と声を掛ける。矢島さんが専務の机の所に行き、何か話している。
よしよし。
 
千里が茶碗の回収をしているのを見て石橋さんもその作業に合流する。ふたりで茶碗を洗い場に持っていき洗って拭いて食器棚に片付けた。17:18。まだ少し時間があるな。千里は一度トイレに行ってきた後でマシン室に行き、壁の棚に立っているSQLのマニュアルを取り出すと、何かを調べるかのようにめくって見る。内容は全然分からん!
 
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『だいたいSQLって何だったっけ?』
などと思うと、《せいちゃん》が
『Structured Query Language。RDBを操作する言語だよ』
と答える。
『RDBってパソコンとハードディスクとかをつなぐケーブルのことだっけ?』
と千里が言うと《せいちゃん》は呆れている様子。それはUSBである。
 
マニュアルを閉じて元のところに戻してから自分の席に戻ると、自分の机の上の端末で適当な電子マニュアルを開いて何かを調べているふりをする。さりげなく靴をローファーからウォーキングシューズに履き替える。
 
17:27。机の上に乗っている仕様書を棚に返してくる。その時、石橋さんが千里に声を掛けた。
 
「村山さん、済みません。ここ教えてくれません? どうしても文法エラーになるんですよ」
 
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え〜?そんなの分からないよぉ。せいちゃーん!
 
石橋さんが訊いてきた内容を《せいちゃん》に教えてもらって、さも分かっていたふうに教えてあげる。
 
「なるほどー! そうだったのか」
 
と彼女が納得した所で千里は自分の席に戻る。せいちゃん、サンキュ。(なお、今《きーちゃん》は千里Aの代わりにバスケの練習と音楽の作業に使った荷物を持って羽田に向かっている最中である)
 

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17:30。
 
時計の秒表示が00になった瞬間、千里は
 
「失礼しまーす」
 
とみんなに声を掛けると荷物を持ち、タイムカードの所に行って退社スタンプを押す。そしてオフィスを出ると走り出した。
 
走りやすいようにバッグは背中に背負う。
 
階段を3階から1階まで駆け下りる。更にビルの出口を出ると全力疾走する。54秒で駅の改札口に到達する。パスモをタッチして中に飛び込む。人の居る場所を避けて細かい切り返しで走り抜ける。敵が何人いようともそれを抜いてゴール目指して走り抜けるバスケのわざがこういう所で役立つ。全く休まずに階段を駆け上る。
 
電車が動いているのが視界に入る。
 
嘘!?間に合わなかった?
 
と思ったものの、それは電車が到着する所であった。千里が階段を駆け上がった時、電車が停止してドアが開く。千里は待っている人の列に並んで渋谷行き急行電車に乗り込んだ。
 
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