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■春分(6)

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青葉は左倉さんには、娘さんと充分話し合ったら、心の中に溜まっていたものが解消されたし、悩んでいたこともかなりスッキリしたと言ったこと、青葉から見ても、精神科医などに更にかかる必要は無いと思うと言った。ただ娘さんと話した内容に関しては、娘さんとの約束でお母さんにも話せませんので、相談料は無料でいいですと言った。
 
しかしハルは自分は凄くスッキリしたから、相談料弾んであげてと母に言ったので、お母さんは青葉に相談料を5万円も払ってくれた。
 
それを現金で頂いてから青葉はハルにちょっと席を外してくれるように言う。そこでハルは2階の自分の部屋に上がっていった。
 
そこで青葉は言った。
 
「実はこの一家に呪いが掛けられていました。先日奥様に肩凝りを起こしていたものを祓いましたが、それもこの呪いの一環だったようです」
 
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「え?そんなものが」
「お嬢さんは、最近その呪いに気づいて、色々自分で防御策をしていたようですね。ハルさん最近、植木鉢の場所を動かしたりしてたでしょう? そこに置いてある大きな金魚の水槽も、ハルさんが買ったそうですね」
 
「そうなんですよ! 金魚飼いたいと突然言い出して。水槽のサイズもあのサイズを指定して、あの場所に置いたんです。窓を塞ぐじゃんと夫は文句を言ったのですが」
 
「呪いの仕掛けがその方角から来ていたのをその金魚鉢で塞いだんですよ。もうその大元の仕掛けを私が破壊しましたから大丈夫ですけどね」
 
そのあたりは青葉の後ろにずっと付いている《姫様》がG峠に祠を作ってくれた御礼に『サービス』と言ってやってくれたのである。
 
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「そうだったんですか。あの子なりに色々骨を折ってくれていたんですね」
「ここ10年くらい、色々おかしなことが起きてませんでしたか?」
 
左倉さんはしばらく考えていたが「あっ」と言う。
 
「10年前というと、車の事故を起こしたのがその時です。雪道には充分慣れているはずだったのに、夫が国道でスリップ事故起こして車は大破。夫が1ヶ月、私は半年も入院したんですよ」
 
「それは大変でしたね」
「その後、義父が経営していた薬屋さんが倒産して、結果的には破産もすることになって苦労しましたし。あ、まさか」
「はい」
「奈津が死んだのも、ひょっとしてその呪いのせいでは?」
 
「可能性はあると思います。でもこの呪いを掛けたのは素人なので、怪我くらいはさせても人を殺すほどの力は無かったと思うんです。呪い半分、ほんとうの不幸な事故半分ではないでしょうか」
 
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「そうですか。でもその呪いを掛けたのは一体誰なんでしょう?」
 
「イメージですけど」
と言って、青葉は紙に自分が感じ取った、呪いの掛け手の似顔絵を描いた。
 
「あいつだ・・・・」
「ご存じですか?」
「夫の元恋人なんです。実は結婚後も夫としばしば会っていたようなんですよ」
「なるほど」
「その女もその女ですけど、夫も酷いと思いません?」
「そうですね」
 
と言いつつ、ああ、ちー姉にこういう話を聞かせたいぞと青葉は思う。
 
「そいつ、今どこに居るんですか?」
「死んでますよ」
「あら」
「10年ほど前です。ですから死に際に自分の命を代償にこの呪いを掛けたんです」
 
「そうだったんですか・・・」
「でもこういう人は成仏とかはできないんですよ。然るべき所に行ってもらいました」
 
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「地獄とかですか?」
「地獄より辛いかも知れませんね」
と言ってから青葉は笑顔になり
 
「ハルちゃんもこれからは元気になると思います。左倉さんも気を取り直して頑張ってください。呪いのことも忘れましょう。その女を恨んでしまったら、こちらが結局闇に引かれることになって、その女の思うつぼですよ」
と言った。
 
左倉さんはしばらく考えていたが言った。
 
「怒りに対して怒り、恨みに対して恨みを持っても何も生まれないんですよね」
 
「そうです。キリストは右の頬を打たれたら、左の頬を差し出しなさいと言いましたが、それは聖者の心持ちではないのです。そういう生き方をすることが自分自身の心を豊かにする、これは生きる知恵なんですよ」
 
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と青葉は言った。
 

「川上さんって高校生じゃないみたい。私、何だか80歳か90歳くらいの老賢者と話している気分。あ、ごめんなさい」
 
「いえ。私、6-7歳の頃から、そんなこと言われていました」
 
「へー。あ、でも済みません。ハルのことで相談に乗ってもらっただけだったのに、呪いまで処理して頂いて。さっきの相談料では足りませんよね。今日は用意していなかったので、あとで追加してお送りしますので、口座番号を教えて頂けませんか?」
 
「あ、いえ。ハルさんのことを解決するために、先にその呪いを処理してしまう必要があったんです。それでハルさんは私を信頼してくださったので。ただ」
 
「はい」
「私、お姉さんの形見のボールペンの壊されてしまったのを修理できる人を紹介する約束をしたんです」
 
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「修理できるんですか?」
「そういう名人がいるんですよ。それで良かったら彼女に確認してもらいながら修理作業を進めたいので、ハルさんをその人の所に私が連れ出すのを許可して頂けませんか?」
 
「もちろんです!お願いします!」
 
「その時の彼女の旅行代金を、呪いに関する処理料ということにしませんか?修理代自体は私が出しますので」
 
「それ、もちろん川上さんの旅費と職人さんに払う修理代もこちらで出させて下さい!」
 
「じゃ私の旅費まではお願いしようかな。でも職人さんへの支払いは、私が今回受け取った相談料で払うというのをハルちゃんと約束したので、それは守りたいのです。余分に頂くと、なんだ結局これで儲けるのかと、ハルちゃんに思われてしまうので」
 
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「はい、でもそれでは川上さんに申し訳無いです」
「私はハルちゃんにとても面白いものを見せて頂きましたから。それにあの子、凄く勘が良いから。あの子との約束は守らないと」
 
「分かりました」
と左倉さんも納得してくれたようである。
 

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しかし青葉は最後に衝撃的な話を聞くことになった。
 
「でもアキちゃんというのも可愛い子ですね」
と青葉は言った。
 
「アキ??」
と左倉さんは不思議な顔をする。
 
「あ、写真でも見られました?ほんとに可愛い子だったんですよ」
と左倉さんは少し考えてから言った。
 
だった? 今度は青葉のほうが戸惑う。
 
「三毛猫ですよね?」
「ええ。珍しいオスの三毛猫で」
「そうです。そうです。珍しいですよね」
 
「ちょうど奈津が死んで、お葬式の晩にうちに迷い込んで来たんです。なんか娘が猫になって戻って来たみたいな気がして。それで奈津の次でアキって名前付けたんですよ。当時子猫でたぶん生まれたのも秋頃だろうと思われたのもあって。可愛い子猫で。ほんとに奈津の身代わりのように可愛がっていたんですけど、翌年、ハルが野犬に襲われそうになったのをかばって大怪我して。それでうちに来てから1年もしない内に亡くなってしまったんですよ」
 
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え!?
 
アキは死んでいた!?
 
これほど大きな衝撃を受けたのは、青葉は久しぶりであった。
 
「その猫が亡くなってからハルがほんとにいつも泣いてるので、ハルちゃんどこかで子猫もらってきて育てる?と訊いたのですが、また死なせたら可哀想だからいいと言って。それで今年金魚を飼うことになるまで、ペットの類いもうちには居なかったんですよ」
 
「確かに小さい頃、ペットの死に遭遇すると、そういう方向に行く人も結構いるみたいですね」
 
「あの子にとって、姉の奈津って、年も離れているし、ずっと遠くで暮らしていたから、憧れてはいても必ずしも身近な存在ではなかったかも知れない。かえって、その三毛の子猫のほうが愛情を感じる存在だったかも知れないなんて私は考えました。とても夫には言えませんでしたけどね。その猫も、ほんとにハルになついていたし、ハルもよく可愛がって毎晩一緒に寝ていたんですよ」
 
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「でも短期間でもそういう猫ちゃんがいたことで、今もハルちゃんはそれを心の支えにしているんだと思いますよ」
 
そんなことをお母さんと話しながら青葉は心の中が実は大パニックだった。
 
むろん職業柄、そんな驚きを顔や声に出したりはしない。しかし、しかし・・・
 
じゃ、あのアキって猫は一体何なのよ!?
 

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2014年12月31日。青葉が母と一緒にお正月の準備をしていたら車の停まる音がする。台所の窓から覗くと見慣れたミラである。
 
「ああ、桃姉とちー姉が帰ってきたのかな」
と言って青葉が玄関に出て行き
 
「お帰りー、桃姉、ちー姉」
と言ったのだが、入って来たのは桃香だけである。
 
「あ、千里は北海道に行った」
と桃香は入ってきながら言う。
 
「ちー姉、もしかしてお父さんと和解できたの?」
と青葉は訊く。
 
千里は2012年の春に性転換手術を受けることをお父さんに話しに行った所、お父さんが激怒して、床の間に飾ってあった日本刀を抜き「殺してやる」などと言われる騒ぎになり、お母さんが必死に停めている間に妹さんがうまく逃がしてあげて、取り敢えず警察沙汰にはならずに済んだのである。そのあと千里はお父さんから勘当を言い渡されていた。
 
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「いや、千里の就職が決まったんで、保証人のハンコをお母さんに押してもらうのに行ったんだよ」
と桃香は居間のコタツに座って言う。
 
「あら、千里ちゃん、就職決まったんだ!」
と母は嬉しそうに言うが、青葉は「うっそー!?」と思った。
 

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「でも保証人って2人要るんじゃないの? もうひとりは?」
「旭川に叔母さんが居て、その叔母さんに押してもらうと言っていた。留萌の実家は出入禁止になっているから、お母さんとも旭川で会うらしい」
 
「ああ、そういえばそんなこと言ってたわね。高校時代にその叔母さんの所に下宿していたんだっけ?」
「そうそう。そんな話だった」
 
「でもちー姉、どこに就職すんの?」
と青葉は訊く。
 
「東京都内のソフトハウスらしい。昨日先輩から紹介されて面接に行ったら、即採用されたという話で。いや、私もびっくりした」
 
などと桃香は言っている。
 
ソフトハウス?? 確かちー姉、自分はプログラミングの才能は無いみたいだなんて言ってなかったっけ??大丈夫なのかな。
 
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「でも昨日そういう話が決まって、よく北海道に行く便が取れたね。帰省ラッシュが凄いだろうに」
と母が言うと
 
「ちょうど車で帰省する友だちがいるから、その人に同乗させてもらうと言っていた」
と桃香は言った。
 
「なるほどねー」
「確か、同じ旭川出身の中嶋さんとか河合(旧姓溝口)さんとかと仲が良かったはずだよ」
と青葉は言った。
 
ふたりは千里と40minutesのチームメイトだ。ただバスケットの話を桃香にしていいのかどうか青葉はこの時は判断がつかなかったので、青葉は単に仲がいいということだけ言った。
 
「まあ、それで千里のミラが空いてるから、それを借りて運転して私も帰省してきたんだけどね」
と桃香。
 
「桃姉、安全運転で来た?」
「いや、それが途中渋滞にあって疲れて、ついウトウトとしたら、左側を縁石に擦ってしまって。あとで千里に謝らないといけない」
 
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「まあ、そのくらい、ちー姉は気にしないと思うよ」
「あんた、ちゃんと休憩しっかり取りながら運転しなきゃダメじゃん」
 

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その頃、千里は青函フェリーの中で半分まどろみながら、(森田)雪子、(若生)暢子、(中嶋)橘花とおしゃべりしていた。要するに40minutesの旭川組である。もっとも雪子は留萌、暢子は名寄である。この4人で交代で暢子のフリードスパイクを運転して青森まで走ってきて、それでフェリーに乗ったのだが、暢子は旭川経由で名寄の実家まで行くので、雪子は旭川から留萌までJRで帰ることにしている。
 
「ガソリン代・高速代を4人でシェアするとかなりお得だもんな」
「4人もいると結構寝ていられるし」
 
なお同じ旭川組の河合麻依子(チーム登録名:溝口麻依子)は夫・娘(1歳10ヶ月)と一緒に飛行機で帰省している。麻依子と夫は夫婦関係がとても良好なようで、麻依子がひたすらバスケの練習をしたり大会に出ても、夫がしっかり子供の面倒を見てくれているようである。
 
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「でも橘花、すんなりと教員採用が決まって良かったね」
と暢子が言う。
 
「うん。正直、コネとかも無いし、1年くらい待機しないといけないかも知れないなと思っていたから、採用してもらったんでマジ嬉しかった」
 
「橘花、高校時代にインターハイと国体に出て、undergraduate(大学の学部生)の時にもインカレ、国体、皇后杯と出ているし、国体は今年も出たし、それだけの経歴があれば受けがいいと思うよ」
と千里は言う。
 
橘花は茨城のTS大学で学部課程(4年間)を修了した後、研究している分野に詳しい先生がいた東京のLA大学の修士課程に進学し、この3月で修了予定である。バスケ部も最初はLA大学のバスケ部に移籍したものの、そこの顧問と折り合いが悪く退部してしまう。それで練習相手を探していたとき、千里と偶然会って一緒にトレーニングしようかという話になり、そこから40minutes結成に至ったのである。
 
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「まあ私自身は2年間国体には出られないけどね。でもどこの学校に行くかは分からないけどバスケ部の顧問をやらされそうだ」
 
大学を卒業した者は就職などによる引越先の住所または勤務地の都道府県から国体にそのまま出場できるが、大学院を卒業した者にはこの特例が適用されない。通常の転勤者と同様の扱いで2年間国体に出場できなくなる。(転勤の多い仕事をしている人は「ふるさと」の都道府県から継続して出場する選択が可能である。橘花も北海道代表になるつもりがあれば来年も国体参加は可能である)
 
「赴任先はまだ決まってないの?」
「神奈川県内で教員している先輩に訊いたら、3月下旬になってから突然言われるから、それからバタバタと引越先探しらしい」
「それは大変だ」
 
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橘花の40minutesへの参加自体に関しても、引越先から練習場所に交通網的に出てこられるかどうか次第と本人は言っていた。
 

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「でも千里さんは留萌までは行かないんですね」
と雪子が訊く。
 
「うん。うちのお父ちゃんが私が性転換したこと怒ってて、勘当が解けてないから」
と千里は言う。
 
「そのあたりが不思議なのだが、千里って結局いつ性転換手術したんだっけ?」
「昨日部屋を整理してたら古い書類が出てきたんだよ」
 
と言って千里は英文の書類を見せる。
 
「これは・・・?」
「私の性転換手術の手術証明書」
「へー」
「July 18, 2006か」
「それが私の公式の性転換記録」
 
暢子が指を折っている。
「やはり高校1年の夏なんだ?」
「インターハイの道予選が6月に終わってその年はインターハイに行けなくて、そのあと手術を受けたんだよ。そして夏休みいっぱい身体を休めていた」
 
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と自分で言いながら「歴史上の事実」としてはそういうことになるんだろうな、と千里は思う。
 
「なるほどねー。じゃ秋の大会の頃はもう女の身体になっていたのか」
「ああ、体育館の裏手で細川君とセックスしてたって時か」
「セックスした以上、女の身体だった訳だよね」
 
うーん。なんかもうそれでもいいや。
 
実際に千里が初めてヴァギナを使って貴司を受け入れたのは2006年12月8日である。
 
手術を受けるために桃香と一緒にタイに渡ったのは実際には2012年7月14日で検査などをされた上で7月18日に手術をされた。しかし後からもらった手術証明書を見たらなぜか年は2012ではなく2006になっていたのである。このあたりは時間がモザイクになっているので、美鳳さんにもなぜこうなってしまったかは分からないと言っていた。強引なことをしている故にあちこちにしわ寄せが来ているようだ。2006年の夏は実際には学費を稼ぐために巫女さんのバイトに精を出していたのでバスケ部の練習には(偶然にも)顔を出していない。
 
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「だから実は6月にドーピング検査をされた時はまだ男の身体だったんだよ」
「でも女性検査官の前でおしっこしたんだろ?」
と暢子が訊く。
 
「あれ、私も1度受けたけど、無茶苦茶恥ずかしいね」
と橘花が言う。
 
「あれね、お股自体はいつもタックって技法でおちんちんが見えないようにしていたんだよ。だから見た目は普通に女性のお股に見えたと思うよ。ただ、それやると、普通の男性ではおしっこはかなり後ろの方から出る。ところが私のおちんちんって凄く小さかったから、結果的に女性のおしっこが出る場所とほぼ同じ場所から出ていたのよね」
 
「ほほお」
「私のって元々が小さかった上に中学1年の時から大量の女性ホルモンを投与されているから、かなり萎縮していたんだよね」
 
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「なるほどねえ」
 

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