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■春弦(11)

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「で、何なの?」
とヒロミが訊くので、柚女が
 
「呪いの竪琴なのよ」
と言う。
 
「きゃーーー!!」
 
「どういう呪いが?」
 
「この竪琴を弾いているとひとりで弾いている気がしないんだって。それで物凄く疲れるらしい」
 
「貸して」
と言って青葉はそのライアを手に取った。
 
『こんにちは』
と青葉は話しかけた。
『あれ、私が見えるの?』
 
青葉は真剣な顔でその琴に憑いている霊に語りかける。
 
『もうあなたの時間は終わってますよ。次のステップに進むべき時です』
 
この霊は話せば分かりそうだというのでそういう選択をした。相手次第では問答無用で祓わなければならない場合もある。というか、青葉の所まで持ち込まれてくるのは、そういうやっかいな相手が多い。
 
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『私はまだまだ練習したい』
『来世でまた練習できますよ』
『また琴弾きになれるか?』
『あなたの思いが強ければ自然とそういうことになるでしょうね』
 
『・・・でもどこに行ったらいいんだろう?』
『上を見てごらんなさいよ。明かりが見えるでしょ?』
『・・・あ・・・』
『お経を唱えてあげますから、それであの光を見失わずに行けますよ』
『うん』
 
それで青葉はバッグから愛用の数珠を取り出し、般若心経を唱え始める。
 
「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空度一切苦厄・・・・」
 
周囲のみんなは静かに聴いている。
 
青葉が最後の「羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提娑婆訶 般若心経」
という所を唱えた時、その霊は静かに目を瞑って上に上がっていった。
 
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「明るくなった」
と日香理が言う。
 
「うん。私も感じた」
と柚女。
 
「何か感じた?」
と美由紀。
「さっぱり」
と早紀。
 
まあ、この2人は霊感は無さそうだ。
 
「もうこのライア、大丈夫だよ」
「やはり何か憑いてたんだ?」
「琴弾きの霊だね。生前自分の演奏に満足できなくて、たくさん練習してたんだけど納得できる所まで弾けるようにならなかった。それでこの琴を練習する人に自分の分まで練習させてたんだ」
 
「それって悪くないかも」
「強制的に練習させられる訳だし」
 
「それはそうかも知れないけど、不自然な状態で留まっているのは良くないから上にあげたよ」
「あげるって、どこに行くの?」
 
「どこだろうね・・・・」
 
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と言って青葉は天を見上げた。
 

お料理はごくふつうの「温泉旅館の料理」という感じではあったが、海の幸・山の幸をふんだんに盛った、ボリューム感のあるものであった。
 
「わあ、サンマだ! もう出てるんだ?」
「美味しい−」
「こちらはサバだっけ?」
「うん、サバに見えるよ」
「これも美味しいね」
 
その時、青葉の後ろに居る女神様が、チラッと視線を送ったので、そちらを見る。大皿に天麩羅がまとめてどーんと盛ってあるのだが・・・
 
「仲居さん、その天麩羅が盛ってある大皿って、何だか良い皿ですか?」
と青葉は近くに居た仲居さんに尋ねてみた。
 
「あ、そういえば何とかいう高い皿なんですよ。でも名前忘れちゃった。ちょっと待ってね」
 
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仲居さんはわざわざ連絡用の電話で女将さんに問い合わせてくれた。
 
「それ、コイマリとかいう皿だそうですよ。先代の主人の趣味でその手の皿が全部で30枚くらいあるんです」
と仲居さんが答える。
 
「へー!」
「古伊万里ですか!」
「高そう」
「そういえば、趣味の良い皿だと思った」
 
青葉は女神様がその皿に興味津々な感じなのを見て、ふーんと思った。
 
「でもそういう高価な皿を普通のお客さんに出すんですね!」
「私もここに入った時、びっくりして女将さんに訊いたんですけどね、皿は食べ物を盛るために生まれてきたもの。それを食器として使わないのは可哀想じゃない、って言われました」
 
「へー、なるほど」
「でも割ったら大変」
 
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「実は震災で3枚割れたんですけどね」
「ひゃー、損害額が凄そう」
「専門の接ぎ屋さんに頼んで修復してもらって、内輪で使っているんですよ」
「なるほどー」
 
「凄くきれいに接いであって、見た目は接いでいるって分からないんですけどね。さすがにお客さんに出すのは失礼かなと言って。片栗粉を使って接ぐ特殊な技法らしいです」
 
「へー。片栗粉で陶磁器の接ぎができるんですか!」
「金で接ぐのは有名ですよね。でも耐久性に問題があるらしいです。片栗粉でつないだのは結構丈夫みたいですが、これできる人は少ないらしいです。食器として使わないのであれば瞬間接着剤でくっつけちゃう手もあって、それだと耐久性も高いらしいのですが」
 
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「瞬間接着剤って、何でもくっつきますもんね」
「あれ、元々は医療用だったんでしょ?」
「そうそう。内臓とかを切ったのをくっつけるのに開発されたんだよ」
 
「へー。だったら、おちんちんでもくっつくかな?」
「なぜ突然おちんちん」
「おちんちんくっつけるって、どういうシチュエーション?」
「いや、おちんちん要らない人から切り取って、おちんちん欲しい人にくっつけちゃえばいいのではないかと」
 
「でも血管とか神経とかもつながないといけないのでは?」
「うん、それも瞬間接着剤でつなぐ」
 
「うーん。。。ぜひ医学部に行って、そういう研究を」
「じゃ誰か、おちんちん切ってもいい男の子と、くっつけて欲しい女の子を見付けなければ」
「ああ、それは募集掛けたら、たくさん来そうだよ」
 
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青葉は笑っていたが、ヒロミは恥ずかしそうに俯いていた。
 

食事が終わってから、またお部屋に戻る。既に布団が敷いてある。4×2の配列である。
 
「えっと、誰がどこに寝ればいいかだけど」
「ヒロミ、左上に寝なよ」と青葉が言う。
「あ、うん」
「その隣に私が寝るから」
 
「ああ、そこまでは確定かなと思った」と日香理が言う。
「私がヒロミの下に寝るね」
 
「じゃ、私がその隣かな」と美由紀。
 
「じゃ、私は青葉の隣に」と早紀。
「その下が私かな」と椿妃。
 
「じゃ、私は早紀の隣」と咲良。
「残った所が私ね」と柚女。
 
「あ、きれいに定まったね」
「ごく自然な配列という感じ」
 
「要するに夜這いを掛けたい人の隣に陣取った人が数人いると」
「何だか怖いな」
 
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「Hする人はあまり音を立てないように」
「うんうん、安眠妨害しなければ恋愛は自由」
 

「じゃ、取り敢えずヒロミを解剖してみる?」
と早紀が言う。
 
「えーーー!?」
と本人。
 
「いや、私、すっかりヒロミを解剖するつもりでいたんだけど、解剖するとシャレにならん気がするので、今夜は控えようかなと」
などと美由紀が言う。
 
「同感。お風呂での会話で、ヒロミはどうやら性転換済みということでほぼ確定した感じだし」
と椿妃。
 
「いや、性転換はしてないよ」
とヒロミは言うが
 
「今更そういう見え透いた嘘は言わないように」
などと言われてしまった。
 
結局危険な遊びはやめて、椿妃持参のトランプでナポレオンをやりながらその晩は12時近くまでワイワイと騒ぎ(但し消灯時間以降は他の宿泊客の迷惑にならないよう会話のボリュームを落とす)、12時の時報を聞いたところで「お休み」を言って寝た。
 
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盛岡から戻り、2学期も始まって、部活で軽音の練習に行くと、空帆が何だか目を赤くしている。
 
「どうしたの? 寝不足?」
「うん。ここしばらく深夜2時頃までギター弾いてたから」
「凄い熱心に練習してるね!」
「でもそんな時刻までやって近所から苦情が来ない?」
 
「ああ、うちは左右が空き家だから」
「へー、それは音楽を練習するには良いね」
「でも頑張るなぁ」
 
「いや、自分としてはそんなに頑張るつもりなくて、もっと早く寝たいんだけど、何故か寝られないんだよ」
「なんで?」
 
「ギター弾いてると、誰かが一緒に弾いているような気がするんだよね。それでその人に促されるように練習を続けてしまうんだ」
 
「・・・それって、よくある呪われたギターって奴じゃない?」
「きっと、ギタリストの霊が憑いてて、そのギター弾く人に強制的に練習させるんだよ」
 
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「ああ、それなら問題無いな」
と空帆は言う。
「問題無いの〜?」
「それでたくさん練習できるなら。私、プロを目指してるから、自分でも怠けたくなったような時にも叱責して頑張らせてくれるような霊なら大歓迎。ずっと憑いてて欲しいくらいだよ」
 
「おぉ凄い」
 
青葉はチラッと後ろに気をやる。女神様が慌てて視線を逸らす。自分の守護霊がくすくすと忍び笑いをしている。やれやれ、この女神様の仕業か。眷属を送り込んだか? まあ、少なくとも悪霊とかが憑いてる訳じゃないから、このままでもいい・・のかな?
 

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青葉が自宅に戻ったら、桃香が「杏那から電話があったよ」
 
と言うので連絡してみる。
 
「ね、青葉ちゃん、こないだのヴァイオリンだけど、何か変なんだけど、また見てくれない?」
「どうしたんですか?」
 
「いや、あのヴァイオリン、伯父さんが自分はヴァイオリンなんて弾いてもノコギリみたいな音しか出せないし、自分が持ってるのはまさに宝の持ち腐れだから、杏那ちゃんヴァイオリン弾くならこれ弾いてよと言われて。私、1億なんて出せませんと言ったんだけど、無償貸与するからと言われて預かったんだけどね、あのヴァイオリン弾いてると、ひとりで弾いてる気がしないのよ」
 
青葉はまた後ろに気をやる。女神様は余所見して口笛など吹いている。守護霊は大笑いしている。
 
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「何だか誰かに指導されている感じでさ。その指導者が弾く通りに弾くと、自分でも信じられないくらいに上手く弾けるんだよね。そしてついつい長時間練習してしまって、練習終わるとクタクタになるの。で、こないだお母ちゃんから訊かれたのよ。お前、誰か先生に来てもらってるんだっけ?って。お母ちゃんにもヴァイオリンの音は2つ聞こえたらしい」
 
「あぁ・・・」
「ね、見てもらえない?」
 
電話で伝えてもいいが自分が行った方が安心するなと思い、夜ではあったが桃香に車を出してもらい、杏那の家まで行った。
 
「大丈夫ですよ。ここに入っているのは悪霊ではありません。良き霊が入っています」
と青葉は言った。
 
「そうですか!良かった!」
「どちらかというと善意でレッスンを付けてくれているみたいですね」
「わぁ、面白いかも。じゃ、ヒカ碁の佐為みたいなものかな?」
「ああ、それに近いかも」
「どんな人ですか? 美形の貴族?」
 
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「女性ですよ。だから、おやつなど・・・・あ、この人、お団子が好きだそうです。あ・・・、みたらし団子が好きなんて言ってます」
 
青葉はその美しい装飾ヴァイオリンに触りながら説明した。
 
「へー!」
「だから、みたらし団子をレッスン料代わりにお供えするといいですよ。そしたら丁寧に指導してもらえますよ」
 
「それ悪くないかも知れないな」
「1年後くらいにはヴァイオリンのコンクールに出られたりして」
「よし、それなら頑張ってみよう!」
 

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杏那の家でクッキーと紅茶など頂いてから、帰途に就く。
 
青葉は女神様に話しかけた。
『姫様は弦楽器が好きなのですか?』
 
『その昔、琴(こと)の上達を願って大勢の娘たちが私の所に祈願にきたものだ』
『へー。琴(こと)というと、琴(きん)とか箏(そう)とか和琴(わごん)とか琵琶(びわ)とかですか?」
 
『まあ、色々だな。撥弦楽器も擦弦楽器もあったよ。神前で演奏を奉納する者たちも多く居た。その中には波斯(はし:ペルシャのこと)由来の琵琶というか、本来はバルバットであろうな。そんなものを持ってきた者もおった』
 
『それ、まるで宇津保物語みたいですね』
『それは何か? お話か?』
『ええ。波斯由来で弾くと天変地異が起きる琵琶の物語です』
『おお、天変地異は楽しいなあ。起こしてみようか?』
 
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『それは勘弁してください。でも、ご存じないのでしたら、今度本を買ってきましょうか』
『うん。実物を奉納してもらえたら、中身は読めるぞ。最近の電子ブックは苦手だ。中に入っているビット列は細かすぎて読みにくい。普通の紙の本なら読める』
 
『なるほどー』
と言ってから青葉は考える。
『でも奉納するって、どこに奉納すればいいんですかね?』
『取り敢えず青葉の机の上に置いておけば良い』
『うーん。あそこが祭壇代わりか』
 
『何なら祠とか作ってくれてもいいぞ』
『お金が無いです!』
『お金ねぇ。どーんと1億くらい儲けさせてやろうか?』
『どんな仕事なんですか!?1億もらえるって』
 
『まあでも私が画策しなくても近い内に大金が入るかもよ』
『うーん。。。怖いなあ。じゃお金が入ったらそれでできる範囲で祠作ってあげますよ』
『よしよし』
と女神様は楽しそうであった。
 
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