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■春弦(4)

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それを持ち、3人はロビーに入った。物販の人たちがスタンバイしているのを見る。
 
「あ、パンフレットを買っておこうかな」
と父は言うと、コンサートのパンフレットを買う。
 
「ひゃー、パンフレットだけで3150円もするのか!」
などと買ってから父は驚いているが
「このチケットは買えば1人8400円だよ」
とヒロミが言うと
「ひぃー!! 3人で25200円?」
と更に驚いている。招待券なので金額が印刷されていなかったのである。
 
ロビーのソファに座りパンフレットを開けてみる。
 
「ふーん。この2人が、ローズたすリリー?」
などと父が言うので
「ローズ・プラス・リリー」
と母が訂正する。
「ああ、『たす』じゃなくて『プラス』か」
と父。
 
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「ローズとかリリーとか英語なのに、なぜ『たす』と日本語になる?」
と母が少し呆れたように言う。
 
「その左側がケイちゃんで、右側がマリちゃんだよ」
「ふーん。ローズちゃんとリリーちゃん、という訳じゃないのか」
 
「ジュディ・アンド・マリーがジュディちゃんとマリーちゃんじゃないのと似たようなものかな」
と母が言ったが
 
「あ、そうなの?」
と父。母はその父の反応に、額に手を当てて「うーん」とうなっている。
 
ちなみに父はピーター・ポール・アンド・マリーは、ピーター・ポールさんとマリーさんの2人組と思っていたらしい。
 

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「あ、そうそう。その左側に立ってるケイちゃんは、元男の子なんだよ」
とヒロミが言う。
 
「えーー!? この子が? 普通に女の子にしか見えない」
と父。
「ヒロミも女の子にしか見えないね」
と母が言うと
「そうだな」
と父はあらためてヒロミを見詰めながら言った。ヒロミはまたドキっとした。
 
「まあ、ケイちゃんはもう3年くらい前に性転換手術を受けて戸籍も女に変更済みだけどね」
とヒロミ。
 
「あぁ」
と言ってから父はあらためて
「お前も、性転換手術受けるの?」
とヒロミに訊く。
 
「受けるよ」
とヒロミは明解に笑顔で答えた。
「そうか」
と父は言って頷くようにした。
 

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「でもなんだ」
「何?」
「性転換手術って高いの?」
「だいたいタイで受ける人が多いけど、男から女への性転換手術は100万円くらいだよ」
「あぁ」
「女から男への性転換手術はもっと高い」
 
「それ、男から女に変えて、再度女から男へとかもできるの?」
「できないことはないけど完全に男に戻れる訳じゃないよ。生殖能力も最初の手術で放棄することになるし。今の技術では勃起するような、おちんちんは作ることができないし」
 
「じゃ、お前も子供ができなくなるのか?」
 
「ごめん。私、もう子供はできないと思う」
「え? まさかお前、既に性転換手術してるとかはないよな?」
 
「まだだけど、女性ホルモン飲んでるから、男性能力は既に無くなってるの。ごめんね」
 
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取りあえず《性転換手術を受けた覚え》は無いんだけどな。まあ性転換される夢なら、何度でも見てるけど。
 
「そうか。。。。まあ、仕方無いか」
 

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「お前、女になったら、子供が産めるようになる、ということは無いんだよな?」
「子宮が無いから無理」
 
無い・・・はずだよなぁ。でもなぜ生理があるんだろう・・・。レディスクリニックの先生は「異常無しですよ」と言ったけど、異常無しってどういう状態?どうもヒロミは自分でも分からなかった。
 
「性転換手術って、子宮は作らないの?」
「子宮の素材になるようなものが無いから。ヴァギナはおちんちんの皮を再利用して作るんだよ」
「へー!!」
 
「20年後くらいには、IPS細胞使って、子宮や卵巣を作れるようになるかもね」
「あぁ」
「私がまだ40代くらいの内に、そんな技術が確立したら、実験台ででもいいから子供産んでみたい。そうしたら、お父ちゃんの孫を見せてあげられるかも」
「あはは。それに期待しておくか」
 
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全く可能性が無い訳でもないということだけでも、父は随分違うようだとヒロミは感じた。
 

やがて一般の入場者が続々と入ってくる。ヒロミたちも座席に移動して開演を待った。1階席の最後尾の列、中央ブロックの端の席である。このホールは1階と2階がスロープ状に一体化しているので、1〜2階として捉えると真ん中付近ということになる。
 
「これ、割と良い席なのでは?」
と母。
 
「うん。結構良い位置だと思う。こういうのの関係者枠って、無茶苦茶良い席も出さないけど、あまり悪い席も出さないんだよ。ほどほどに良い席を渡すんだよね」
とヒロミは以前ライブに熱心に行っている友人から聞いた話をする。
 
「わぁ。これ良い席なのか。申し訳無いな」
 
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やがて照明が落ち、緞帳が上がる。拍手と歓声が上がり、みんな総立ちになる。ヒロミと母も立ち上がるので、それを見て父も立たないといけないのかな?という顔をして立ち上がる。
 
ステージ上に浴衣を着た女性がふたり居る。ひとりは椅子に座って胡弓を弾く。越中おわら節の胡弓の伴奏だ。そしてもうひとりがその伴奏に合わせて踊る。ヒロミは胡弓を弾いているのがケイ、踊っているのがマリと認識した。静かなオープニングに観客は拍手をしてみんないったん座る。
 
充分うまいなとヒロミは思った。恐らくこの富山公演のために猛練習をしたのだろうが、それにしてもうまい。元々ケイは胡弓を弾くのであろうか?ただヒロミはケイの胡弓の弾き方に微妙な違和感を感じた。マリの踊りの方は、まあ一応ちゃんと練習したよなという程度のレベルである。
 
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おわらは「唄の町だよ・八尾(やつお)の町は・唄で糸とる・オワラ・桑も摘む」
というように、七・七・七・(オワラ)・五というのが基本でこれに沿って踊るのを《平踊り》と言う。ケイはこの平踊りの伴奏を2度繰り返し、マリもステージ上を左端から右端まで往復しながら2度踊った。
 
その後、突然胡弓は調子を変えて、西洋音階の何かの曲の前奏っぽいものを弾く。ヒロミの記憶のどこかにその旋律があったが、すぐには思い出せない。その内マリが歌い始める。それでヒロミもこの曲の正体が分かった。『聖少女』だ。
 
ローズ+リリーではなくローズクォーツで出した曲だったと思うが、その辺りは割とアバウトに流用するのだろうか。そしてヒロミはケイの胡弓に感じた違和感の正体も分かった。
 
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この胡弓はまるでヴァイオリンを弾くかのように奏でられている。
 
そうだ。この人はヴァイオリン弾きなんだ。それがケイの胡弓のおわら節を聴いた時に感じた違和感だ。
 
でもケイがヴァイオリンを弾くという話は聞いたことがなかった。ローズクォーツでも電子キーボードは弾いていたけど。
 
隣に座っている父が小声で訊く。
 
「今胡弓を弾いてる子が元男の子だったという子だよね?」
「そうそう」
「やはり男みたいな声だから歌わずに伴奏してるの?」
 
「違うよ。ケイちゃんの声はマリちゃんより高い、ハイソプラノだよ。胡弓は弾き語りがしにくい楽器だから伴奏に集中しているだけだと思う」
「へー」
 

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そして歌は1番が終わり間奏に入るが、そこでピンク色のサックスを持った少女が出てきて、サックスソロを吹き始めた。ローズ+リリーのバックバンドには確か凄く上手い女性サックスプレイヤーが居たと思ったので、ヒロミは最初その人かと思ったのだが、その女性はかなり若い気がした。
 
で、顔を見たら青葉だ!
 
「わっ」
と思わずヒロミは声を出してしまった。
 
嘘!なんで青葉がここで出てくる訳!?
 
「どうしたの?」
「いや、あのサックス奏者、うちの学校の生徒」
「へー」
「隣のクラスの子だよ。ってか中学の時は同じクラスだったんだけど」
「ほほぉ。高校生でもプロのミュージシャンなの?」
「ううん。プロではない筈。だいたい、あの子サックスを練習し始めたの今年の4月なんだよ」
 
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「それにしてはうまいね。そこら辺のライブハウスとかで演奏してもおかしくないレベルだと思う」
 
父は接待でその手のライブハウスにも良く行っているから、アイドル歌謡とかよりはその方面に強そうだ。
 
「うん。凄くうまい。よくここまでレベルアップしたなあ」
とヒロミは本気で感心していた。
 
「でね、お父ちゃん」
「うん?」
「あの子も元男の子なんだよ」
「へー!」
「更に去年性転換手術受けて、女の子の身体になっちゃった」
「去年って、お前と同級生なら中学生だったのでは?」
 
「うん、彼女の場合、特例中の特例中の特例で15歳で手術してもらえたらしい」
「特例ねぇ」
「普通は特例でも18歳以上なんだけどね」
「ふーん」
 
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サックスソロの後、再び歌に戻る。青葉はケイの弾く胡弓にハモるようにサックスを吹いている。そしてマリの歌は2番、3番まで歌って演奏終了した。
 
ケイが胡弓を手に持ち椅子から立ち上がり
 
「『聖少女』の共同作曲家、Leafさんでした」
と紹介する。割れるような拍手が起きた。青葉がお辞儀をして退場する。
 
そしてあらためて
「こんばんは! ローズ+リリーです」
とケイとマリで挨拶し、ライブはスタートした。
 
ふたりの歌声や時折挟まれるケイのMCを聞いていて父は
「とても男の子だった子の声には聞こえん」
などと言っていた。
 

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前半のステージが終わり、幕間のゲストが紹介される。出てきた女の子2人を見てヒロミは苦笑いして頭を抱えた。
 
「どうかしたの?」
と父が訊くので答える。
 
「あの子たち《鈴鹿美里》っていって双子なんだけどさ」
「ああ。そういえば似てるね」
「男の子と女の子の双子なんだよね」
「はぁ!?」
 
「片方は男の子です、と公表されているけど、どちらが男の子なのかは公表されていない。ファンの意見も鈴鹿説と美里説の真っ二つに分かれてる」
 
父はしばらくふたりが話すのを聞いていたが
「分からん!」
と言う。
 
「どちらも普通に女の子にしか見えないよね」
 
「今日はどういう日なんだ?」
と父。
 
「女の子になりたい男の子、というか女の子になっちゃった男の子が随分出てくるね」
と言ってヒロミも本当に凄い日だなと思った。
 
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