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■春弦(7)

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青葉は木曜日は部活に出たものの、金曜日は休ませてもらい、高園家の菩提寺にある淡島堂に籠もらせてもらい潔斎してずっと観音経を唱えていた。夕方、普通の服に着替えてサンダーバードに乗り大阪に出る。菊枝・瞬高さんと合流する。
 
「青葉、今何か呪い系の案件抱えてるね?」
と早速菊枝から指摘されてしまった。
 
「ああ。もうその兆候が出てますか? まだ引き受けるかどうか返事してないのに」
「呪い系は、こちらの身を削るような対処になるからね」
「まあ、仕方無いですね」
 
「ちょっと他の人に影響ができないように一時的な封印掛けるよ」
と菊枝は言い、何かの真言を唱える。青葉の聞いたことのない真言だ。菊枝のこの手の知識や能力というのは、どのくらいの規模なのだろう? 青葉にはまだまだ菊枝の「全容」の見当が付かない。
 
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そういえば昨年の4月も呪いの事件を抱えて、高野山に師匠を訪ねたのだった。青葉は1年ちょっと前のことを思い出していた。その師匠はもう居ない。これからは何とか自分で対処して行かなければならないのだ。
 
むろんどうにもならない時は菊枝、瞬高、瞬醒、瞬嶺らが助けてくれるかも知れないが、それは本当に最後の手段だ。
 
「瞬葉(青葉)ちゃん、性転換手術の痕はもう痛まないの?」
「完璧OKです」
「師匠を送った時も、葬儀の時もそんなこと言ってたけど、まだ7−8割の状態と見た」
と瞬高さん。
 
「でももう大丈夫です」
と青葉は言うが
「私に言わせればまだ50%だね」
と菊枝。
「ああ、やはりそんなものか」
と瞬高さんは納得したように言った。
 
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高野山の奥での回峰行は8月10日から16日まで一週間であった。その後、東京に出てサックスの先生・鮎川ゆまさんのレッスンを受け、18日深夜に高岡に帰宅した。帰りは上越新幹線と《はくたか》を乗り継ぐのだが、越後湯沢までの新幹線では彪志が同乗してくれて、束の間の車内デートをした。
 
その彪志と別れた後、ヒロミからメールが届いた。
 
《多分そろそろデートが終わった頃と思ったから。ヴァイオリンの件、お願いしますという連絡があったよ》
 
青葉は溜息をつく。まあ、こうなるとは思ったけどね。
 

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自宅に戻ると、桃香と千里が帰省してきていた。ふたりは8月中旬から9月いっぱいまでが夏休みだが、9月中旬くらいに向こうに戻る予定らしい。それまでこちらに滞在する。帰省してきたのは、ちょうど青葉が大阪方面に行くのと入れ違いになったようである。
 
青葉が帰宅した夜はふたりとももう寝室に入っていたので、翌19日朝に朝顔を合わせた。
 
「青葉がどんなサックス使ってるのか、ちょっと見せてもらおうと思ってケースを開けたらバイオリンが入っていた」
などと桃香が言う。
 
「サックスは東京に持って行ってレッスン受けてきたから」
と青葉は笑顔で答える。
 
「しかしわざわざ東京まで行ってレッスン受けてくるとは凄いな」
と桃香。
 
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「いやぁ、北陸方面で適当な先生を紹介してもらおうと思ってたら、いつの間にか東京でレッスン受ける流れになっててびっくりしたというか」
と青葉。
 
「何か有名な先生とかに付いてるのか?」
「鮎川ゆま先生というんだけど」
「Lucky Blossomの?」
「うん」
 
「凄い。今度のレッスンの時にサインもらってくれ」
「桃姉、Lucky Blossomとか聴くんだ?」
「解散したのが惜しいよ」
 
母親の朋子がジャニーズフリークである反動で、娘の桃香は専ら洋楽を聴いていたのだが、技術の高い人ばかり集まって結成された Lucky Blossom はそういう桃香の耳にも受け入れられたのであろう。
 
「でも昨日で鮎川先生のレッスンは終わりだったんだよ」
「残念!」
「また秋にレッスン受けに行くけどね」
「その時、ぜひ」
「忘れてなかったらね」
 
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あまりレッスンの時にサインをねだるというのは、したくない。
 

「ところでヴァイオリンの方はどのくらい弾くの?」
 
「それはもらっちゃったんだよね。もらっちゃったから、練習しようとは思ってるけど、今はサックスの練習で忙しいから、後回し」
と青葉は答える。
 
正直、先日のカラオケ屋さんで杏那さんに少し習った以外は、ほとんど弾いていない。
 
「取りあえずバイオリン何か弾いてごらんよ」
と言われるのでケースからヴァイオリンを出して弾いてみる。
 
念のため音合わせからする。まずは音叉でAの音を出し、これにA線(第2弦)を合わせ、それと響くようにD線(第3弦)を合わせる。そしてG線(第4弦)・E線(第1弦)と合わせていった。
 
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で・・・・G線だけを使って!『アマリリス』を弾いてみせた。
 
「青葉、1つの弦だけで弾くなら4本とも合わせなくても良かったのでは?」
と桃香に指摘される。
 
「いや、気持ちの問題で」
 
などと言っていたら、
 
「青葉、そのヴァイオリンの持ち方、少しおかしい」
と千里が言う。
 
「あれ、ちー姉、ヴァイオリン弾くんだっけ?」
 
「自己流だよ。でも自己流の私が見ても、青葉の構え方はおかしい」
 
と言い、千里は実際に触りながら、青葉に正しい持ち方・支え方を教える。杏那さんには指摘されなかったが、恐らくは、短時間だったので、そこまで指摘しなかったのだろう。
 
「左手でヴァイオリンを支えたらダメだよ。そしたら自由に左手を動かせないから。ヴァイオリンはあくまで肩と顎で挟んで支える」
 
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「何か違和感がある」
と青葉。
 
「慣れたら、こちらの方が楽になるよ」
と千里。
 
「青葉、たくさん弾き直しながら弾いてたね」
と桃香が言う。
 
「まだどこを押さえたらどの高さの音が出るかという感覚が分からないんだよね。だから高すぎて下げたり、低すぎて上げたりの繰り返し」
 
「それはたくさん弾いていたらちゃんと分かるようになる。さっきG線だけで弾いてたけど、最初はそれでいいと思う。G線で感覚がつかめたら、他の線もすぐできるようになる。移弦の練習はその後でいいよ。私がこちらに居る間は毎日教えてあげようか」
 
「うん。じゃ、お願いしようかな」
「大会前でサックスたくさん練習しないといけないだろうから、毎日30分ずつヴァイオリンの練習しようか」
「よろしくー」
 
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20日(火)。ヒロミと待ち合わせた上で、杏那さんと落ち合うことにするが、杏那さんに会うと言ったら、桃香も付いて行くと言った。実際、母の車を桃香が運転して、ヒロミを拾い、杏那との待ち合わせ場所に行ったのだが、桃香の荒い運転に青葉はキャーっと思う。信号も赤に変わってから突っ込んで行くし!田舎だからいいけど、都会だとすぐ切符切られるのでは?
 
「おぉ、桃ちゃん!」
「杏那さん、ご無沙汰です!」
としばし再会に伴う交歓。
 
「まだ千葉に居るの?」
「ええ。修士課程行ってるから、来年度いっぱいまで」
「だったら就職はその後か」
「まあ、就職しても関東方面に居座るつもり」
「そうだねー。こちらあまり良い仕事無いだろうし」
「杏那さんはどこに勤めてるんですか?」
 
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「私は***」
「大手じゃないですか!」
「大手だから、よけいそうなんだろうけど男女差別をひしひしと感じるよ」
「ああ、一般社会はそうなんだろうなあ。学生の内はまだいいけど」
「やはり日本は男社会だよ」
「私、男になっちゃおうかなあ」
 
「桃ちゃん、昔からよくそんなこと言ってたね」
「男として生きて行く自信はあるんだけどなあ」
「男装とかするの?」
「あまりしたことない」
「なるほど。少しはするのか」
 
「でも可愛い妹さんね」
「うん。可愛い。元男の子だとは思えんだろ?」
「は?」
 
「この子、生まれた時は男の子だったのだが、去年中三の時に手術して女の子になったのだよ」
と桃香はあっさり青葉の性別をバラしてしまう。
 
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「うっそー!?」
「ついでに、そちらの少女も元男の子だ」
と桃香はヒロミの性別もバラしてしまう。
 
「えーーーー!?」
「そちらも性転換手術済みだっけ?」
「えっと・・・」
とヒロミが返事をためらっていたら
 
「いや、女の子の身体だったよ。こないだ青葉ちゃんともヒロミちゃんとも一緒にお風呂に入ったもん」
と杏那が言う。
 
「ああ。だったら手術済みか」
と桃香。
 
「最近は中高生でも性転換手術するんだね」
「こういうのは若い内にやっちゃった方がいいと思うよ。40歳、50歳になってから手術しても変なおっさんにしか見えん。10代でやればちゃんと女の子になれる」
「まあ、確かにそうだよねー」
 
とふたりは勝手に納得してしまった。
 
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「取りあえず美少年はみんな小学生の内に去勢しておけばよいよな」
などと桃香は言い出すが
「それじゃ次世代に美形の遺伝子を残せないよ!」
と杏那は言った。
 

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結局、青葉・ヒロミ・桃香・杏那と4人で、杏那の伯父、山田康作の家に行った。父親が音楽教師で、作曲家の山田耕筰にちなんで命名したらしいが、本人は普通の大学の経済学部を出て、会社勤めを数年した後は、その間に貯めた資金を元に株を始め、何度も大きな相場を当てて数十億の資産を作ったらしい。
 
大手企業の安定株と国債・地方債などで大部分の資産を運用している一方で、地元の企業にも投資し、多数の会社の経営にも影響力を持っているという。「うるさい株主」として知られている(と本人は言っていた)が、ヒロミの父の会社には関わりは無かったようである。
 
「初めまして。川上青葉と申します」
と青葉は自己紹介する。
 
「去年竹田宗聖さんの心霊番組で、**町の幽霊騒動を取り上げたの覚えておられますか?」
とヒロミが言う。
 
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「ああ。あったね」
「あれを解決したの、実は川上さんなんです」
「それは凄い!」
 
「うーん。それは明かさないことにしてたんだけど」
と青葉。
「竹田さんとはお互いに助け合ってるよね?」
「そうだね。お互いに不得意な分野は協力して。それは竹田さんだけじゃないけど」
 
「霊能者のネットワークがあるんだな」
などと桃香は言っているが、実は桃香は心霊的なものを一切信じていない。
 

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それで山田さんが100万円の額面の銀行振出小切手を渡す。マネージャー然としている桃香が受け取り、用意しておいた領収書を渡す。
 
「それでこれが問題のヴァイオリンなんです」
と言って山田さんが楽器を持ってきた。
 
「きれい!」
と杏那が声を上げた。
 
「これはかなり古いヴァイオリンですね」
とヒロミが言う。
 
「16世紀くらいのものですか?」
「ええ。アマティなどと同時代の****という作家の作品と言われています。この彫刻を施したのはレオナルド・ダ・ビンチという説もあるのですが」
 
このヴァイオリンは棹の端が船の船首像のような女性の形の彫刻になっているのである。しかもその女性がヴァイオリンを弾く姿になっている。つまりヴァイオリンの棹の先に小さなヴァイオリンがあるのである。昔はこの手の装飾性の高いヴァイオリンが結構あったようだ。
 
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「うーん。それはどうなんでしょうね。でもかなり腕のある彫刻家でしょうね。すごく綺麗だもん」
などと桃香も言う。
 
一方の青葉はそのヴァイオリンを見た時から、ずっと顔をしかめていた。
 
「その弦はずっと張られていたものですか?」
と青葉は訊いた。
 
「ええ。ずっとこのままです」
「交換していいですか?」
「はい、構いませんけど」
 
「杏那さん、私より上手そうなので、弦の交換をお願いできますか?」
「うん、いいよ」
 

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