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■春弦(10)

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「でも、ちー姉、ヴァイオリン弾いてたんでしょ? 以前弾いてた楽器は?」
 
「壊されちゃったんだよ。近所のガキに」
「あらあら」
 
「元々お母ちゃんが教本とレッスン用カセットテープ・ケース・松脂・弓付きで3万円で買ったヴァイオリンだったんだけどね」
「それはまた安い」
 
「お母ちゃんがまだ会社に就職してすぐの頃に友だちにヴァイオリンやらないかと唆されて通販で買ったらしい。でも挫折してずっと放置してたのを、私が小学3年生の頃に見つけて『これ弾いていい?』と訊いたら『いいよ』というから勝手に弾いてたのよね。ヴァイオリン習ってる友だちが持ち方とか弓の動かし方とかは教えてくれたけど、実質ほとんど自己流だった」
 
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「でも自己流でそこまで弾けるようになったのは凄い」
「まあ自己流は自己流だけどね」
 
「壊されて私が泣いてたら、お母ちゃんがまた買ってあげるよと言ったけど、結局それは実行されなかった。うち貧乏だし、一番安いのでもヴァイオリンとか買う余裕は無かったんだろうね」
 
「子供2人抱えていたら、まず食費確保優先だよなぁ」
と桃香も言う。
 
「でも千里が特待生になったのでも随分家計は助かっただろうな」
「うん、それ狙いで敢えて私立を受けたからね。公立には特待生は無いから」
 
千里は札幌の私立高校の出身である。バスケットで活躍していたのと成績が優秀だったので、そこに推薦で入ったと聞いていたが、千里はその頃のことをあまり語りたがらない。
 
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8月30日(金)。青葉は美由紀・日香理・ヒロミと一緒に、早朝から《はくたか》に乗っていた。
 
実は春に大船渡で早紀や椿妃に会った時、今度温泉にでも行こうよという約束をしていたので「じゃ夏休みにでも」などという曖昧なことを言っていたのだが、全員の日程がこの8月末の週末は何とか都合が付くということで、集まることにしたのである。
 
最初青葉1人で行くつもりだったのだが、青葉が早紀に会いに行くと言うと、美由紀が自分も連れて行けと言い、美由紀が行くなら日香理もという話に(本人も聞いていない内に)なっていて、それならついでにヒロミも連れて行こうということになってしまったのである。
 
「でも温泉に行くんでしょ? ヒロミ大丈夫なの?」
と日香理は心配したが、
「だって去年の修学旅行でも、今年春の新入生合宿でも、ヒロミは女湯に入ったじゃん」
と美由紀は言い、
「そういえばそうだったね」
と日香理も言って、ヒロミは半ば強引に同行(連行?)されることになった。
 
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越後湯沢で上越新幹線に乗り換え、大宮で東北新幹線に乗り換えて、お昼過ぎに盛岡駅に到着した。
 
大船渡からは早紀と椿妃に柚女、八戸から咲良が集まって来て総勢8名である。取り敢えず記念写真を撮った上で、お互いの自己紹介を兼ねたハグ大会をして(女の子同士のハグに慣れていないヒロミは恥ずかしがって『純情!』と言われていた)、駅構内で岩手名物?のそば(立ち食いそばだが美味しかった)を食べてから、温泉街の送迎バスに乗り、温泉旅館に入った。
 
「よし、まずお風呂行こう!」
ということで、荷物を部屋に置いたらすぐみんなでぞろぞろとお風呂に行く。
 
脱衣場に入り、おしゃべりしながら服を脱ぐが、早紀や椿妃・咲良たちは何となく青葉に目をやっているし、美由紀と日香理は何となくヒロミに目をやっている。
 
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「青葉、どの辺を手術したんだっけ?」
と早紀が訊く。
 
「えっと・・・アレとアレを取って、アレを作ってから、あのあたりをきれいに整えたんだけど」
と青葉が言う。
 
「中1の時にお風呂で一緒になった時もこんな感じだったよね?」
と早紀は椿妃に確認するかのように訊く。
 
「うん。何も変わってない気がする」
と椿妃。
 
「私たちも中2の時に何度も青葉と一緒にお風呂入ったけど、最初から青葉は女の子にしか見えなかったよ」
と美由紀が言う。
 
ちょっと女湯でするには危険な会話をしながら、浴室に移動する。東北組が青葉の方に注意している間、富山組はヒロミの裸を見て「うーん」と腕を組んだりしていた。
 
各自身体を洗ってから、湯船の中で集合する。
 
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「青葉、実は何も手術してないとか」
「ああ、あり得る、あり得る」
「青葉って、手術の1週間後に名古屋まで行って合唱大会のソプラノソロを歌ったんだよね」
「それはあり得なさすぎる」
 
「普通1週間後なんて、そもそも歩けないのでは?」
「歩けないことはないよ。椅子に座るのは辛いけどね」
 
「やはり去年手術したというのが嘘で、実は元から女の子だったとか」
「そうだったらいいけどね」
 
「だいたい、アレがついてる所、誰かに見せたことある?」
「うーん・・・・」
と言って青葉は少し考えてみた。
 
「お母さんと、菊枝さんには見られてる」
 
青葉が《お母さん》と呼ぶのは産みの母の礼子のこと、今一緒に暮らしている朋子のことは《お母ちゃん》である。
 
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「それって、いつ頃?」
「お母さんに最後に見られたのは小学2年の時かなあ。菊枝さんに見られたのは小4の時だと思う」
 
「早紀は見たことあるの?」
と咲良が訊く。
 
「実物は見たことない。でもパンティが膨らんでいるのを小学2年の春に見ているってか、その場に咲良もいたじゃん」
「記憶無いなあ」
「ほら、咲良がお人形を池に落として」
「ああ、あの時、青葉うちで着替えたよね。でもお股は普通だった気がするなあ」
「うーん・・・」
 
「でもその年の夏に水着姿を見た時は膨らみの無い平らなお股だったよ。それ以降に青葉のパンツ姿・水着姿は何度も見てるけど膨らみがあったことはない」
と早紀。
 
早紀は実は青葉のおちんちんを幼稚園の時に見ているのだが、忘れているようなので青葉もその件はバッくれている。
 
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「ということは、小学2年生の春から夏に掛けての時期に切ったのか」
 
「いや、膨らんでいるのを見たと言っても、実は何か詰め物してたのかも」
「うんうん。実はもっと早い時期に取ってたのかも」
 
「青葉、実は幼稚園の頃におちんちん、取っちゃって、去年の手術というのは単にヴァギナを作るだけの手術だったとか」
「まさかあ」
 
「でも女の子が欲しかったのに男の子が生まれちゃった場合、お医者さんに頼んで、おちんちん切って女の子にしちゃう場合もあるらしいよ」
 
「そんなの無い無い。だいたい、うち貧乏だから、そんな手術代出る訳無い」
などと青葉が言うと
 
「確かにそうだ!」
と納得されてしまった。青葉の家の貧乏度は早紀も咲良も良く知っている。
 
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うん、貧乏というのは色々なことを証明してくれるなと青葉は思った。
 

「ところでヒロミはそれ、どうなってるんだっけ?」
と美由紀が訊く。
 
「えっと・・・・」
とヒロミが言いよどんでいると、早紀が
 
「え?ヒロミちゃん、何か問題あるの?」
 
「うん。少なくとも1年前の修学旅行の時はまだ男の子だったからね」
「は?」
 
「うん。男の子に女の子水着を着せて女湯に入れてみても通報されないかという実験をしたんだけどね。ヒロミはその犠牲者だったのだ」
 
「うっそー」
「あんたたち、なんちゅー無茶な実験を」
「それで逮捕されて、罰として強制的に性転換されちゃったとか」
「ほんとにそうだったりして」
「それライトノベルの読み過ぎ」
 
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「でも、ヒロミちゃん女の子にしか見えない」
「春の新入生合宿の時も一緒に女湯に入ったけど、あの時はお股を隠していたのに今日は堂々と見せてるね」
 
ヒロミは自分でもそういえばそうだと思った。やはり数ヶ月の女子高生生活で女としての自分に自信が付いてきたのかも知れないという気もした。
 
「胸は本物だよ」
とヒロミは言う。
「去年の秋から女性ホルモン飲み始めたから」
「へー、1年弱でここまで成長するって凄いね」
「これBカップ?」
「うん、Bのブラ着けてる」
 
「で、下の方は?」
「ごめーん。誤魔化しー」
 
「青葉も去年・一昨年、私たちと一緒に温泉に行った時、誤魔化してると言ってたね」
「よく誤魔化せるね。まるで付いてないように見えるけど」
「隠してるだけだよ」
 
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「それって実は付いていることを隠してるの?それとも実は付いてないことを隠してるの?」
 
「それが私たちも分からないのよねー」
と日香理が言うが
 
「その辺の追求は勘弁してー」
とヒロミは言う。
 
「でももうタマは無いと言ってたね」
「うん、それは認めてもいい」
「で、棒も無いんだっけ」
「えっと・・・・」
 
「その反応、既に棒も無いとみた」
「そんなことはないと思うけど」
 
「なんか明確に否定しないのが怪しい」
「ヒロミ、恥ずかしがることないよ。棒なんて付いてたら邪魔なだけじゃん」
「うーん。。。確かに邪魔だったけど」
 
「今《邪魔だった》と過去形で言った」
「じゃ既に無いんだ?」
「凄い。取っちゃったんだ。だいたーん」
「手術はしてないよー」
「じゃ自然消滅とか?」
「そんなことあるんだっけ?」
 
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「なんか縮陽とか言うらしいよ。おちんちんが少しずつ小さくなっていって、最後は消滅してしまうことあるんだって」
「へー。世の中いろんなことあるもんだね」
「手術してないけど、今はもう無いんだったら、それ?」
「そんなの聞いたことない」
「あ、分かった。自分で切り落としたんだ」
「痛そう」
「ヒロミ、医学部志望だから自分で傷痕は処置できそうだし」
「うーん・・・・」
 
「タマも棒も無いなら、もう女の子に準じて考えていいよね」
と美由紀が言う。
 
「勝手に決めないように」
と本人。
 
「タマも棒も無いとしたら、次の問題として穴はあるのかという問題だな」
 
「ヒロミはナプキン使ってるよね」
「え、うん」
「ということは、生理があるということではないかと」
「うーん。。。実はある」
とヒロミはその問題を認めた。
「だいたい28日周期で出血するんだよね」
 
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「ほほお」
「ふつうにそれ生理じゃん」
「生理があるということは、当然卵巣も子宮もあるということだよね」
「いや、そもそも出血って、ヴァギナがあることは前提だよね」
「当然、当然」
 
「実は出血するの、なんでだろと思って、病院に行ってみたんだけど」
「あ、それ診察券持ってた、レディスクリニック?」
「うん」
「異常無いですよと言われた」
 
「・・・ねぇ、それ女の子として異常無いという意味だよね?」
「そうなのかなあ」
「内診台に乗った?」
「うん。恥ずかしかった」
 
「つまり、ヒロミは今完璧な女の子だってこと?」
「よく分からない」
 
「ヒロミ、実は元々女の子だったとか」
 
「私が去年まで男の子だったのは美由紀も青葉も見てるでしょ?」とヒロミ。「うん。女の子水着を着せるのに、あそこに触ったからね」と青葉。
「私もそばで見てた」と美由紀。
 
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「でも取り敢えず、ヒロミは性転換済みということが確かなようだ」
 
「そうなのかなあ」
と本人はまだ言っている。
 
「だって内診台に乗せて、男の子のが付いてたら、あんたふざけないでと言われると思う」
「うんうん」
「やはり、付いてないということで確定?」
「ってか性転換済みで確定だと思う」
 
「うーん・・・」
と本人は悩んでいる雰囲気である。
 

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お風呂から上がってから、コーラやバヤリースのファミリーサイズを開けて一休みする。部屋は10畳あるので、ここに8つ布団を敷いて寝る予定である。
 
「まあ、それでこれが電話で言ってた楽器なんだけどね」
と言って、柚女が荷物の中から小さな洋琴を取りだした。
 
「わぁ、可愛い!」
「かなりの年季物だね」
「描いてある絵も可愛い」
「その絵の具の色合いがかなり古いものっぽい」
「うん。18世紀のものではないかという話」
「凄い」
 
「これ、何? リラとかいうやつ?]
「これを私の所に持ち込んだ人はライアと言っていた」
 
「色々な言い方があるよね。リラとかリュラとか。ライアも含めて地域的なぶれだと思う。メンチカツのことを一部の地域ではミンチカツと言うようなもの」
と日香理が言う。
 
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「おちんちんのこと、カモと言う地域とガモと言う地域があるようなもの?」
「なぜ突然、そういう話に」
「おまんこのことも、おめこと言う地域があるよね」
 
「もう、あんたらは・・・」
と言って日香理はその琴に触っていたが、ハッとしたように手を引っ込めた。
 
「何これ?」
と日香理が言う。多少の霊感がある日香理だから、何か感じたのだろう。青葉は腕を組んでマジ顔で見詰めている。
 
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