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■春弦(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-02-10
 
公演が終わってから会場を出て、駐車場の方に移動していた時、通りかかったタクシーがヒロミたちのそばで停まり後部座席の窓が開いた。
 
「ヒロミ!」
と声を掛けたのは青葉である。ステージでは浴衣を着ていたのだが今は学校の制服姿である。
 
「青葉! サックスの演奏見たよ。凄いね」
とヒロミは笑顔で言う。
「わあ、あの演奏見たんだ? じゃ今のライブに来てたの?良くチケット取れたね」
「放送局の人からチケット頂いたんだよ。あ、こちらうちの父と母です」
 
「わ。お父様、お母様、車中から失礼します。ヒロミさんの友人の川上青葉です」
と青葉が挨拶する。
 
「こんにちは」
とお母さんが笑顔で挨拶してくれた。
 
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その時、突然ヒロミは思いついた。
 
「ね。青葉、水曜日空いてる?」
 
水曜日は部活の練習がお休みである。
 
「あ。何か用事?」
「いや、もし空いてたら、ちょっと付き合ってくれないかなと思って」
 
「それ幸い! 付き合うよ。何か用事を作りたかったんだ」
「へー!」
「青葉、ヴァイオリンも練習してたよね? そのヴァイオリン持って来てくれないかなと思って」
 
「あれ、全然練習してない!」
「え、そうなの?でも来てよ」
「うん、いいよ」
 
「じゃ月曜日、13時に高岡のシダックスに」
「8号線沿いの?」
「そうそう」
「了解。午後1時ね。じゃまた」
「うん。また」
 

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それで青葉はヒロミの両親に会釈して去って行った。
 
「普通に女の子の声だ」
とヒロミの父。
 
「あの子は声変わりが来る前に去勢しちゃったんだって。だから男の子の声は出ないらしいよ」
「それはまた凄いな」
 
「中3の時は、卓球の大会に女子選手として出たしね。ちゃんと出場許可が出たらしい」
「まあ、あの子見て少なくとも男には見えないよなあ」
などと父も言っていた。
 

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自宅に帰ってから父はヒロミに言った。
 
「お前が女の子として生きたいというのであれば、それもまた良いと思う。今日1日お前と一緒に行動していて、お前が男の子していた時より伸び伸びとしているのに俺は気付いた。でも、もし男の子に戻りたいと思ったら遠慮無く言え。女の子として生きるのも、きっと大変だぞ。ダメだと思った時は後戻りしてみるのも良いことだ」
 
「うん。その気になったらね。でも今更私が男の子に戻ると言ったら女子の友人たちから袋だたきに遭うだろうなあ。女の子同士という前提で一緒に着替えたり、一緒にお風呂入ったりしてるし」
とヒロミは言う。
 
「お前、女の子と一緒にお風呂入るの!?」
「え?だって私、女の子だもん」
とヒロミ。
 
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「ちょっと待て。女の子と一緒にお風呂に入れるって、やはりもう性転換手術しちゃってるの?」
「まっさかぁ」
 
「この子、中学の修学旅行では、水着を着て女湯に入ったらしいですよ」
と母が言うと
「水着か!びっくりした」
と父は安堵したように言った。
 

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水曜日。8月7日。
 
ヒロミがシダックスに行くと、既にロビーに青葉と、杏那さん・恵規(さとみ)さんが来ている。
 
「わぁ、遅くなりました。ごめんなさい」
と言うが、
 
「まだ15分前だよ」
と青葉が言う。今日も青葉は高校の女子制服を着ている。(ヒロミも女子制服で来ている)
 
「あ、紹介します。こちら、私の友人の青葉です。こちら、先日イベントで一緒になった杏那さん、こちらが恵規さん」
 
お互いに挨拶を交わす。最年長(23歳くらい)の杏那さんが受付で予約していた旨を伝える。伝票をもらって部屋に入る。杏那さんは胡弓とヴァイオリンのケースを持っている。青葉もヴァイオリンのケースを持っている。恵規さんは三味線のケースを持っている。ヒロミも胡弓のケースを持って来ている。
 
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「なんかみんな楽器を持っているみたいだから、取りあえず合わせてみよう」
と杏那さんが言うが
「私、完璧な初心者です!」
と青葉。
 
「構わん、構わん」
「それでCDとか出す訳でもないし」
などと言われ、青葉もヴァイオリンを取り出して調弦する。他の人もそれぞれ調弦している。
 
「何を弾くんですか?」
「『荒城の月』を弾いてみよう」
「了解〜」
 
杏那さんが「この音で」と言って最初の音を出し、これにみんなで合わせて演奏を始める。杏那さんのヴァイオリンがメロディーを弾き、ヒロミの胡弓と青葉のヴァイオリンはそれと同じ音を弾き、恵規さんは三味線でリズムを刻む。
 
でも青葉の「初心者です!」というのは確かだなとヒロミは思った。なかなか出そうとする音が出ないようで、出してみてから指の位置を調整してそのピッチに合わせようとするが、高すぎたり低すぎたりして、なかなかその音に合わない。そんなことをしている内に次の音に行く、というので今日の青葉のヴァイオリンは結果的に音を外しまくっていた。
 
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「青葉ちゃんは、練習しはじめてから1ヶ月くらい?」
と演奏が終わってから杏那さんに訊かれる。
 
「実は友人から春にこのヴァイオリンを頂いたのですが、同時にサックスとフルートも練習し始めて、今は9月の大会に向けてサックスの練習に集中しているので、ヴァイオリンは全く練習していません」
と青葉は正直に答える。
 
「いや、全く練習していないにしては、弓の使い方はちゃんとしていた」
「うんうん。ノコギリの音じゃなくて、ちゃんとヴァイオリンの音になってた」
 
「練習すればすぐ上手くなるよ」
「そうですね。大会が終わったら少し練習しようかな」
「サックス吹くんだったら、それ持って来てもらっても良かったかな」
「さすがにサックスの音出したら、お店から文句言われませんかね?」
「どうだろう? 大丈夫だと思うけどなあ」
 
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「あ、じゃ、青葉は歌を歌う? この子、4オクターブの声域持っているんですよ」
とヒロミが言うと
 
「おお、それは凄い!」
ということで、その後、青葉は専ら歌う係となった。
 

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杏那さんが自分のヴァイオリンを出して、ヒロミにヴァイオリンの支え方や弓の使い方を教えるが、青葉まで
 
「ああ、そうするんだったんですか!」
などと言っている。
 
「ほんとに初心者なんだ!」
「弦をGDAEで調弦することくらいしか知りません」
 
「いや、それだけ知っていたら偉い」
 
結局は杏那さんが、ヒロミと青葉の両方に教えてあげる感じになった。
 

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その日は、ある程度ヴァイオリンのお稽古をした後で、ヴァイオリン(杏那)・胡弓(ヒロミ)・三味線(恵規)の共演に青葉が歌うという形で、ポピュラーな民謡から、少し古いポップス、唱歌などの類いを演奏しまくった。青葉は歌詞の分かる曲は歌詞で、分からない曲はラララとかアーアーとかで歌っていた。
 
「あ。そうそう。みなさんにお土産」
などと言って、青葉は東京ばな奈を配る。
 
「あれ? 東京に行って来たんだ?」
「うん、週末にサックスのレッスンで」
「へー! 東京まで行ってレッスン受けてるんだ?」
 
「いや、知り合いに北陸付近でサックスを習える所を訊いたはずが、何故か東京で本格的に凄い先生について習うことになっちゃって、焦りました。向こうもこんな初心者に教えるのは戸惑ったんじゃないかと思ったけど」
 
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「有名な先生?」
「元Lucky Blossomの鮎川ゆま先生です」
「おぉ! それは凄い」
 
「金曜日の、ローズ+リリーのコンサートのオープニングでサックスを吹いたからね」
とヒロミが言う。
 
「いや、あれは私が『聖少女』という曲の共同作曲者としてクレジットされているので、一度ファンに顔見せしておいてよ、と言われたんだよ」
 
「作曲するんだ!」
「しません。ただ、ケイさんがあの曲を着想した時に、ちょうど私がヒーリングをしていたのを見た直後だったので、曲の中に私のヒーリングの波動が混入してしまったんですよ。それでそのことを言ったら、ケイさんが私を共同作曲者としてJASRACに登録しちゃったんです。でもあのCDはミリオン売れたから凄い印税頂きました」
 
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「へー!いくらもらったの?」
「あくまで6曲入りCDの中の1曲の、その作詞作曲家取り分の2割を頂くという契約だったのですが、あの曲何人かのアーティストにカバーとかもされて、その分とかも入って来たので最終的には600万円くらいです。今でも年に4回数万円振り込まれてきますね」
 
「凄っ!」
 

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「でも、ヒーリングって、どんなの?」
 
「えっと、例えば、杏那さん、左の膝を痛めてますよね?」
「え?どうして分かったの?」
 
「それが分かるのが、この子の凄いとこなんです」
とヒロミが言う。
 
「ちょっとヒーリングしていいですか?」
「あ、うん」
 
それで青葉は杏那さんの隣に席を移り、そこで左膝の所に左手を当てた。
 
「あれ? なんか気持ちいい」
 
「これ時間掛かりますから、他の方は何か適当に演奏とかしていてもいいですよ」
 
「よし」
と言うので、恵規さんが主導して三味線で『出船』(勝田香月作詞・杉山長谷夫作曲)を弾き語りする。それにヒロミが胡弓で合わせる。
 
その演奏が終わった所で青葉が訊く。
「これ、交通事故か何かですか? 1年くらい経ってる気がする」
 
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「そうそう。ちょうど1年前の8月に農道を走ってて、瞬眠を起こして道路の外に飛び出しちゃって。車は全損。私も骨折で1ヶ月入院した。医者は、変形した部分は治しようがないからリハビリで克服するしかないと言ってるんだけど」
と杏那さん。
 
「なるほどですね」
と言いながら、青葉はその《変形した部分》の治療を試みていた。同時にその付近で滞っている気の流れを正常化させる。
 
実は高校に入ってから、親からも周囲からも仕事を控えろと言われて、最近あまりやっていないので青葉自身がこういう作業の感覚を忘れないようにするための練習を兼ねている!
 
更に恵規さんとヒロミが『北の宿』『平城山(ならやま)』『月の沙漠』と演奏をしていった所で、青葉は
 
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「だいたい今できる範囲でヒーリングしました」
と言う。
 
「何だか膝の付近が火照ってる感じ」
「気の巡りを良くしたので、血液もリンパもよく通るはずです」
「痛みも軽減した感じ」
「お風呂に入ると、もっと良くなりますよ」
「ほんと? じゃ、みんなでお風呂に行こう」
 
「え?」
「今から?」
「みんなで?」
「折角だもん」
 

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ということで、近隣のスーパー銭湯に行くことになる。杏那さんと恵規さんが車で来ていたので杏那さんの車に青葉とヒロミが同乗させてもらい移動した。
 
楽器は車の中に置いて中に入る。
 
青葉がヒロミに小声で
「大丈夫なんだっけ?」
と訊いたので、ヒロミは
「たぶん」
と笑顔で答えた。
 
受付で赤いタグの付いたロッカーの鍵4つをもらい中に入る。
 
お客さんは結構居る。町中で駐車場も広いからだろうか。脱衣場で自分のロッカーの番号を見つけて服を脱ぐ。
 
「青葉ちゃん、胸大きいね」
と恵規さんから言われる。
 
「中学1年頃までは絶望的な貧乳だったんですけどねー。その後どんどん成長して、今Dカップのブラ着けてます」
 
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「ああ、バストって成長し始めると急激に大きくなるんだよ」
と杏那さん。
 
「でもこれでD?」
「ブラきつくない?」
「Eカップでもよくない?」
「そんなEなんて、いいですー」
「それダジャレ?」
「えっと・・・」
「大きいことはいいことだよ」
「恥ずかしがることないのに」
 
「でもヒロミちゃんは、胸小さいね」
と恵規さんから言われると、ヒロミはちょっと恥ずかしがっている。
 
「この子、中学の時は男みたいに胸無くて、絶壁とかからかわれていたんですよ。でもやっと成長し始めたみたいですね」
と青葉が代弁する。
 
「ああ。じゃ、2年後くらいには青葉ちゃん並みに成長してるかもね」
「そうそう。成長する時期は個人差が大きいんだよ」
 
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