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■春空(9)

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(c)Eriko Kawaguchi 2013-03-03
 
説明会では、校長から「合格おめでとう」といったお祝いのメッセージがあった後、教務主任から、この高校での学習の仕方についての説明、生徒指導の先生から校則の簡単な説明(バイトの禁止、バイク使用の禁止、髪染め・パーマ・ピアスの禁止、女子のスカート丈についてなど)と男女交際に関して節度ある交際をするようにという話が合った。明言はしてないが、要するにセックスはまだ控えようということのようだった。
 
「青葉、節度ある交際だってよ」と明日香。
「えっと・・・」
「青葉は遠距離だから、なかなかHできないんじゃない?」と世梨奈。
「あ、日香理は彼氏としたの? なんか卒業したらするとか言ってなかった?」
と美由紀。
「『高校を』卒業したらね」と日香理は苦笑しながら言う。もう。。。青葉と美由紀だけにその話はしてたのにバラしちゃうなんて・・・と思う。
 
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「あと3年我慢させるんだ!」と明日香。
「ちょっと彼氏可哀想な気がしてきた」と世梨奈。
 
実際には日香理は高校合格のお祝いにフェラチオをしてあげたらしい。彼が物凄く感激していて、何だか可愛く思えたと青葉には言っていた。
 
更には進路指導の先生から、大学受験に関する基本的な説明が行われた。美由紀はセンター試験とかも知らなかったようで「へー」などと感心して聞いていた。
 
そして「おお、MARCH,関関同立出てきた!」などと喜んでもいた。
 
なお校則では「バイト禁止」になっているが、青葉の「霊的なお仕事」に関しては、事前に特別承認済みである。他にも家が神社で巫女さんをしている子だとか家が商店で接客や配達を手伝う子などは、学校に届け出ればだいたい承認されるらしい(配達にバイクを使うのもOK)。承認される条件はその生徒の作業がそのビジネスの遂行に必要不可欠あるいは後継者である場合、また経済的な事情でどうしても必要な場合だと先生は言っていた。過去に民謡歌手を小さい頃からしていた子がその活動を承認されたケースもあったらしい。青葉はこれに近い。
 
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様々な説明が終わった後は、部活動の紹介があり、各部の代表が壇上に立って、各々の部の説明・勧誘をした。運動部では、野球・サッカー・柔道・剣道・陸上・テニス・バドミントン・バスケ・バレー・卓球・ラグビー・弓道・体操などといったところが紹介され、文化部では美術・書道・写真・囲碁・将棋・演劇・放送・英語・茶道・パソコン・科学・家庭・JRCなどがあり、特に音楽関係では以前学校訪問した時にも聞いた通り、コーラス部、吹奏楽部、軽音学部、弦楽部が紹介された。
 
しかしふと青葉は思った。紹介された部は30以上だ。パンフレットで数えてみると38個あった。この学校の全校生徒は840人。進学校だから、勉強に集中するため部活はしていない生徒が恐らく半数くらい。特に3年生の部活率は低いのではなかろうか。そうなると、300〜400人を38の部で取り合うと平均10人以下。実際には事実上2〜3人で運営されている部もあったりして・・・
 
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部の紹介が終わってから、教科書・辞書類・体操服・通学鞄などの購入になる。教科書は当然必須だが、辞書は任意である。青葉は並べられている辞書を見て不要だと判断した(英和・和英・国語・漢和・古語とも、今使っているものの方が大きい)。体操服は男女共通でSS,S,M,L,LL,XLなどと書かれている。青葉は念のためメジャーで測ってもらって「Sでいいですね」と言われ、それを購入した。通学鞄は一応標準のがあるものの、常識的な範囲のものであれば自由ということだったので、中学で使っていた鞄を使うことにして、購入しなかった。
 
「ダメなものの例が笑えるね」と世梨奈が言う。
「うんうん。小学校のランドセル、高級ブランドのバッグ、登山用リュック、海外旅行用大型スーツケース。まあちょっと非常識だね」
「でも人の常識ってそれぞれだから」
「まあ、それは言える。エルメスのバッグを上履き入れにしてるような人もあるかも知れない」
「そんなお金持ちはこの高校に来ないかも」と世梨奈
「まあ、それは言える」
 
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「ね、ね、制服いつできるか聞いてる?」
「私聞いてなーい。明日香分からないかな?」
と言って近くにいた明日香に聞いてみると
「あ。問い合わせてみた。20日に頼んだ人は27日にできるらしいよ」
と言う。
 
「ああ。速いね」
「それでさ、28日に合格お祝いパーティーしない?みんな制服持参で」
「なるほど。記念撮影ね」
 
その近くにいた、美由紀・日香理・紡希・呉羽を呼び寄せる。
 
「28日に合格のお祝いパーティーしよって」
「場所は?」
「勉強会のメンツ+α集まるだけだし、私んちでいいよ」
と明日香が言うので、紡希も含めて明日香の家に集まることになった。
 
「その時点で制服出来てる人は持って来てね。みんなで記念撮影しよう」
「OKOK」
 
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その辺に見当たらない美津穂と星衣良には明日香がメールしておくと言った。
 

青葉は27日の昼間に洋服屋さんに電話し、制服が出来ていることを確認して、町に出て取りに行った。代金は自分で払うつもりだったのだが、母が朝「これ制服代ね」と言って渡してくれたので「ありがとう」と言ってもらった。
 
早速母が夕方帰宅してから着てみせる。
「おお!可愛い。やはり女の子はいいわねえ」
などと言って喜んでいた。桃香はC高校を出ているので、T高校の制服を青葉が着たことで、母は2種類の女子高生制服を見ることができた。
 
母に自分の携帯で写真を撮ってもらい、友人たちとメールで交換したりした。
 

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翌28日の朝。青葉は明け方変な夢を見た。五輪塔の前に師匠である瞬嶽が立っていて、いちばん上の「空輪」の所(宝珠形の石)を指さしていた。
 
青葉は胸騒ぎを感じた。
 

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28日の朝、両親が出かけてしまった後、呉羽が自分の部屋でZ会のテキストをしていたら10時頃電話がある。洋服屋さんからで、T高校の制服が出来たということであった。母にメールしたら昼休みに取って来てあげるということだった。
 
母は夕方帰る時にそれを持ち帰るだろうから、今日の合格お祝いパーティーには間に合わないなと思い、呉羽は私服で出かけることにして、少し春っぽい感じでパステルカラーのセーターとスカートをお出かけ用にチョイスした。それに・・・みんな女子制服着ているのに、自分だけ男子制服着て写真に写るのは辛い気もした。私服ででもいいから、女の子の格好で写真には収まりたい。
 
12時半になったので、そろそろ出かけようとしていた時、母が帰宅した。
「あれ?今日はどうしたの?」
母は呉羽が凄く可愛い女の子の格好をしているので、一瞬ことばを見つけきれないような顔をした。
 
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「うん・・・お前の制服受け取ったから、持って来てあげようと思って」
「わあ、ありがとう! これから友だちと合格お祝いパーティーするのに、制服出来てる人は持って来てみんなで記念写真撮ろうと言ってたんだよね。じゃもらって行くね」
「お前。。。この制服着て通うの?」
「え? だって制服だし」
「そうか。。。もし先生から何か言われたら、私出て行って話してあげるから」
「う。うん」
呉羽は何かよく分からないまま返事した。
 
「あ。。。会場まで送っていくよ」
「そう? ありがとう」
 
母は呉羽を後部座席に乗せて、明日香の家に向かった。
 
「そういえば最近、お前、女の子の友だちとばかり付き合ってる感じだね」
「うん。何となくそうなっちゃった感じで」
「そう・・・」
母は言葉少なかった。
 
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すぐに明日香の家の前に着く。呉羽が母に礼を言って降りようとした時。
「あ、待って」
と母が言う。
「なあに?」
 
「お前、前髪が長いから・・・これで留めるといいよ」
と言って、可愛いサクラの花の髪留めを渡してくれた。
 
「ありがとう・・・」と言って受け取り、呉羽は突然涙が出てきた。
すると母は微笑んで
「あらあら。泣いちゃダメよ。女の子は笑顔でなくちゃ」
「うん」
 
母がハンカチで涙を拭いてくれて、そのハンカチをそのまま呉羽に渡した。花柄のハンカチで、何か良い匂いがした。
 
「じゃ行ってきます」
「うん。楽しんでおいで」
「ありがとう」
 

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呉羽が明日香の家の玄関でベルを鳴らすと、美由紀が出てきて
「あ、呉羽、入って入って」
と言って招き入れる。呉羽が
「お邪魔します」
と言って美由紀と一緒に入って行くと既に日香理・青葉・紡希も来ていた。みんなもうT高校の制服を着ている。
 
「わあ、みんな可愛い。いいなあ」
「ほんとこの制服可愛いね。呉羽もこれ着れたら良かったのにね」
「うん。何だかとてもそれ着たい気分」
「後でちょっと着せてあげようか?」と青葉が言う。
「ほんと? じゃ後でちょっと貸して」
 
「あれ? 呉羽は何持って来たの?」
「ああ。これは男子の制服。今朝できたと連絡あって、さっきお母ちゃんが取って来てくれた」
「男子の制服??」
「つまり学生服?」
「え? 男子の制服って学生服なの?」
「ん?知らなかったの?」
「じゃこれって学生服なのかな?」
「出してみたら?」
 
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呉羽が袋から服を取り出す。それはT高校の女子制服であった。
 

みんな何を言っていいのか分からない雰囲気だった。しかしいちばん戸惑うような顔をしていたのは呉羽であった。
 
「うーん・・・」と推理力のある日香理が最初に声を出した。
 
「ちょっと整理してみようか。呉羽はなぜ制服を作ろうと思ったのかな?」
「えっと、みんなが制服はお店で頼むと言ってたから・・・合格者に配布された紙に制服を頼める店のリストが出てたから、その中のひとつに頼んだ」
と呉羽が言う。
 
「そこで既に誤解が生じてる」と紡希。
「制服作るのは女子だけであって、男子は学生服って・・・書類にも書いてあったと思うんだけどね」と明日香。
「えー!?」
 
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「採寸してもらった?」と日香理が訊く。
「うん」
「なんか変だと思わなかった?」
「あ、そういえばスカート丈は膝より少し上でいいですか?と聞かれた気がする」
と呉羽。
 
「普通そこで変だと考える」と青葉。
「いや、お店を出てから『あれ?』と思ったんだけど、きっと自分がスカート穿きたいから、スカート丈って聞こえた気がして、ズボン丈を聞かれたんだろうと思い込んだ」と呉羽は言う。
 
「ズボン丈が膝より上だったら、ショートパンツじゃん。小学生じゃあるまいし」
などと美由紀に言われる。
「そういえばそうだよね」と呉羽は悩んでいる。
 
「でもお母さんが受け取ってくれたんでしょ? お母さんは絶対変だと思ったはず」
と紡希。
「それが実は・・・合格した日にお母ちゃんにスカート穿いてる所見られちゃって」
「ああ」
「それで自分は女の子になりたいってお母ちゃんに言った」
「おお!とうとうカムアウトしたのか」
 
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「お母さん、何て言った?」
「何も。その件については全然会話が進んでない。でも、さっき『女の子は笑顔でなくちゃ』とか言われて、この髪留め付けてくれた」
 
「おお!」
「いや、可愛い髪留めしてるなとは思った」
「へー。お母さんが付けてくれたんだ」
「それはつまり呉羽のことを認めてくれたってことじゃない?」
 
「あ・・・」と呉羽が突然声を出す。
「どうしたの?」
「いやね。お母ちゃんが、お前この制服着て通うの?って訊いたんだよね」
「ああ、そりゃ訊くよね」
「それで?」
「もちろんって私が言ったら、だったら先生から何か言われたら、出て行って話してあげると言われた」
と呉羽が言う。
 
「つ・ま・り、それはお母さんは呉羽が女子制服を着て高校に通うことを認めてくれたってことじゃない」と紡希。
 
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「そういうことになるかな?」と呉羽。
「なる」とその場にいる女子全員。
 
「要するに呉羽が誤解したのと、お母さんが呉羽のことを配慮してあげすぎたのとが重なった偶然の産物か」と明日香。
 
「でもまだ分からないことがある」と日香理。
「T高校の制服は関係無い人が勝手に作ったりしないように、在校生のリスト、新規合格者のリストが指定店に渡されていて、指定店ではそのリストにある名前の子からの注文しか受け付けないんだけどね。なぜ呉羽が女子制服を作ることができたんだろう?」
 
「あ、それ分かる気がする」と青葉と紡希がほぼ同時に言った。ふたりは顔を見合わせるが、青葉が代表して言う。
 
「呉羽さ、合格発表に女の子の服着て来てたでしょ。それで書類を受け取る時に『ご家族ですか?』とか言われちゃったのよ。それで近くにいた私と紡希が『確かに本人です』と証言したんだよね。それで高校の先生、呉羽は女子だと思い込んでしまったのではないかと思う」
 
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「要するに、それで呉羽は女子の名簿に入れられちゃったんだ、多分」
と紡希が補足する。
 
「ちょっと待て。私の頭ではよく理解できんが」と美由紀。
「要するに、今呉羽は、高校には女子として登録されていて、女子制服を所有していて、お母さんは呉羽が女子制服を来て高校に通うつもりだと思っている、ということかな」
 
「ついでに呉羽本人は女子制服を着て通いたいと思っている」
と明日香が付け加える。
 
「これってどこにも問題が無いような気がするんだけど」と青葉。
「うん。何にも問題が無い」と紡希。
「だね。もし問題があるとしたら、呉羽におっぱいが無くて、お股にちょっと変な物が付いていることくらいかな」と日香理。
 
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