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■春空(2)

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「いっそ今度女の子の服着てデートしない?なんて言ってるんですよ。女の子同士って結構便利そうだし。トイレの列にも一緒に並べるし」と彼女。
 
「ああ、それはとても便利なのだよ」と桃香まで言う。
「それに女装にハマって、もしちんちん取ってしまってもレスビアンという手があるぞ」
 
「確かに。でもそれだと子供作れないし」
「精液を手術前に取って冷凍保存しておけばよいのだよ」
「ああ、そういう手があるか。だったら、おちんちん取ってもいいよ」
「いや、だから女の子になる気は無いって」
 
「・・・・なんなら、女の子になる手術してくれる病院、紹介しようか?」
「勘弁してくださいよぉ」
 
などと言いながら田代君と彼女は行ってしまった。

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「明るいね」と千里。
「でも凄く可愛い。ちゃんと女の子に見えてた」と朋子。
「あれはもう女装にハマり掛けてる気がする」と青葉。
 
「いや既にハマってると見た。スカート穿いたことないなんて絶対嘘だ。女装経験の無い子が、いきなりあんな自然な雰囲気出せる訳ない」
と桃香が言うと、青葉も千里も「確かに」と同意する。
 
「ある程度女の子の格好で居ることに慣れないと自然さは出ないよね」と千里。「しかしさっきの子とは傾向が違うな」と桃香。
「呉羽は女性志向、田代君は女装趣味かも」
 
「彼女公認で女装というのは、多分かなーりハマるな」
「うん。あれどちらかというと彼女が随分女装を唆してるみたいだし」
「あるいは元々レズっ気のある子なのかな」
「かもね」
 
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元日の朝はお雑煮を食べ、お昼は鰤のお刺身、そして夕方は鰤の照り焼きや筑前煮などを食べる。鰤は前年同様、氷見漁港に行って1匹まるごと買ってきたものだ。冷凍して少し千里に持って帰るように言った。
 
「お魚も美味しいが、明日はすき焼きにしよう」と桃香。
「ああ、お肉もいいよね」と朋子。
「とやま牛買って来ようか」と桃香は言うが、「オージービーフでいいよ」と青葉が言う。
「じゃ、間を取って交雑牛で」と千里が言って
「うーん。まあその辺が落とし所かね」と朋子が言い、お肉のランキングは決まった。
 

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その夜、久しぶりに「お仕事」が無かったので、青葉は早めに寝ようと22時には布団に入っていたのだが、夜中の2時頃、携帯の鳴る音で目を覚ます。こんな時間に何だ? と思ったら冬子だった。
 
「明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとうございます」
と新年の挨拶を交わした上で、
「どうしました?」
と訊くと
 
「実はね、とってもくだらない用件で申し訳無いんだけど、政子とふたりで遊んでて魚肉ソーセージを私のヴァギナの中に入れちゃったら、うまく取り出せなくなっちゃって」
「へ?」
と言って、青葉は相手の状況を「想像」してみた。
 
ああ・・・・冬子は政子をかばって「ふたりで遊んでて」と言ったが実際は寝ている冬子「で」政子が遊んでいたようだ。
 
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「ああ。問題無いですよ。横になって、楽にして、携帯を子宮の上に置いて」
「了解」
 
冬子が携帯を(仮想)子宮の上に置いた感触があったので、青葉はそこから冬子の膣近くの筋肉に刺激を与える。膣の奥の方から始めて順に手前の方へと刺激していく。携帯に振動が伝わってきて、中に入っているソーセージが動いている雰囲気があった。
 
そして1分もしない内に、ソーセージは外に飛び出した。
 
「サンキュー!青葉」
「あまり変な遊びしないようにね」
「うんうん。夜中に御免ね」
「うん。おやすみなさい」
 

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微笑んで電話を切った。でもヴァギナの中に変なもの入れて困るってのは結構あるらしいよなあ、と思う。そういえば美由紀が「ビール瓶を入れたら取れなくなって病院に駆け込んだ」なんて事件があったと言っていた。よくまあ、そんなものを入れるもんだと少し呆れた覚えがある。特にビール瓶や電球など「割れるもの」は危険だ。下手すると赤ちゃんを産めない身体になってしまう可能性もある。まあ基本的にはヴァギナには赤ちゃんの頭以下のサイズのものなら入るはずなんだけどね!
 
もっとも冬子のヴァギナにしても自分のヴァギナにしても、人工のものなので赤ちゃんの頭は通らない。どのくらいまで入るのかなと考えてみたが、すぐにダイレーターのサイズまでは大丈夫ということに思い至る。自分の場合、持っている最大サイズのダイレーター直径38mmのは入っているから、そこまでは入るはずだ(普段使っている留置き式のものは昼間使うのが28mm,夜間使うのが33mm)。
 
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「ビール瓶の直径ってどのくらいだ?」
 
唐突に青葉は確認したくなって、パソコンのふたを開けてネットで検索してみる。7cmから7.5cmか・・・・さすがにこれは入らないだろうな。
 
男性のペニスのサイズの方は、日本で売られているコンドームが直径35mmらしいので、だいたいそれ以下ということになる。今度、彪志のを測ってみようかな?などと考えてみた。
 
赤ちゃんの頭のサイズも検索してみると、10cmくらいが標準的で大きい子だと11cmくらい。12cmあると経膣分娩は諦めて帝王切開を選択するという感じのようである。青葉はけっこう赤ちゃんを産む気があったのだが、この問題を考えると、4cm程度までしか広がらない人工ヴァギナでは、経膣出産は無理っぽいなという気がした。帝王切開か・・・・
 
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もっとも、天然女性の場合も、基本的に赤ちゃんの頭が、骨盤の穴を通るかという問題が先にある。どんなに膣が伸びても骨盤の穴より大きな頭を持つ赤ちゃんは通らない。1950年代頃は2500gくらいで赤ちゃんを産むことが多かったのが最近は3500gくらいが普通になっている。母親の身長が高くなっている(身長が高ければそれだけ骨盤の穴も大きい)分はあっても、帝王切開が多くなる訳だ、と青葉はあらためて思った。
 
ちなみに骨盤の穴の大きさに関しては、GIDの診断書をもらいにいった病院で検査されて「あなたの骨盤は形も穴も女性型」と言われている。第二次性徴期に女性ホルモン優位だったことから、女性様に骨盤が発達したのだろう。穴の問題もあるが「形」は更に重要で、女性型の骨盤を持っていないと、妊娠中に赤ちゃんを安定して維持することができない。「医学が発達すればその内男も赤ちゃんが産めるようになる」と言う人もあるが、男性の骨盤の形で妊娠の維持は不可能だと青葉は思う。
 
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しかし彪志とは、自分が大人になったら、例の「夢」の中で避妊せずにセックスしてみようなんて言っていた。「夢」の中の自分のヴァギナって、人工ヴァギナなのだろうか、天然ヴァギナなのだろうかと考えてみたが、分からなかった。
 
小さい頃、手術されて女の子の身体になった夢も見ているが、「女の子の素?」
を埋め込まれて女の子に変わった夢も見ている。もし後者の方が効いているのなら天然ヴァギナの可能性もあるが、前者なら人工ヴァギナだ。
 
もし人工ヴァギナだとすると、出産するにはやはり帝王切開が必要になる。「夢」の中までお医者さんは来てくれないだろうから、その場合、自分で帝王切開しなきゃいけないかも!?
 

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3学期に入ってすぐ、私立高校の推薦入試の願書受付が始まり、中旬には一般入試の受付も始まった。美由紀が併願する私立高校R高校は少し遅くて月末近くの受付になったが、美由紀はそこの特進クラス志望ということで願書を出した。実際問題としてここの特進クラスはT高校やC高校を狙って落ちた子が来るためレベルが高いらしい。また、この高校の入試には、私立に行くつもりは無いが試験に場慣れしておきたいという子も結構受験する。星衣良と世梨奈もそういう趣旨で願書を出した。
 

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1月30日水曜日。この日、青葉が昨年性転換手術を受けた病院で、歌手の花村唯香が性転換手術を受けた。冬子との関わりがある歌手なので、青葉は冬子から頼まれて、病院を訪れ、手術後のヒーリングを施した。
 
もっとも実際にはヒーリングというより、今日やるのはマイクロサージャリーである。青葉は患者が手術室から戻って来て、まだ麻酔から覚めない内に、新しいヴァギナとその周囲の血管や神経を、「鏡」で見ながらつなぎ始めた。
 
ただ1本ずつつないでいくし、つなぐ時は必ず下流をつないでから上流をつながなければならないので、ひじょうに大変な作業である。1時間ほどその作業をしていたら、病室に松井医師が見回りに来た。
 
「あら、青葉ちゃ〜ん、こんにちは」
「こんにちは〜、松井先生」
「どうしたの? またおちんちん切りに来た?」
「そんなにおちんちんが何本もあったら困りますよ」
「それもそうね。知り合い?」
 
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「この患者にこの病院を紹介したのが私の友人なので」
「へー、そうだったんだ。たくさん営業してくれてるのね」
「はい。頑張って可愛い子を連れて来ますよ」
「うんうん、よろしく」
 

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2月に入ってすぐに公立高校の推薦入試願書受付が始まったので、青葉は予定通り、T高校に社文科志望ということで願書を出した。
 
2月7日は私立R高校の一般入試試験日だった。首尾を訊くと、美由紀は右手で○のサインを出して答えた。
 
「あそこの入試はさ、毎年公立高校の入試と傾向が似てるのよね」と日香理。
「へー」
「だから、あそこを受けておくと本当に公立の予行練習になるんだよ」
 
勉強会のグループでも、そこの入試問題を解いてみる。日香理と呉羽が協力して模範解答を作ってくれたので、それで全員採点してみる。
 
公立の試験と同じ200点満点で採点してみたところ、青葉が180点、日香理が188点、呉羽が186点、美津穂174点、明日香170点であった。また実際に受験した3人は、自分が書いた解答を採点してみると美由紀が194点、星衣良は170点、世梨奈166点であった。全員T高校の合格圏内に入っている。
 
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「美由紀の点数がすごー」
「うん。勘違いで誤答した所はあったけど、分からない問題は無かったよ」
「おお」
「美由紀、ほんとに頑張ったね」
とみんなから褒められる。
 
「この点数なら、この高校に入った場合、特待生になって授業料要らないよ」
「いや、それでもみんなと一緒にT高校に行きたい」
「まあ、この高校からは国立には4〜5人しか入らないからなあ」
と日香理。
 
C高校かT高校か悩んでいる世梨奈について、日香理は言う。
「世梨奈は弱点が少ないからね。内申点は割と高いでしょ?」
「うん。先生からそう言われた」
「内申点が高ければ、試験の点数はこのくらいでも合格圏内だと思うよ」
「うーん。結構T高校に行きたい気分になってきた」
「じゃ世梨奈も勉強頑張ろう。各教科あと1問ずつ正解できたら安全圏だよ」
「なるほど。頑張ってみよう」
 
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「ところで呉羽、最近もう完全に女の子の雰囲気だよね?」
「そうそう。平日でも勉強会では女の子の格好だし」
「呉羽も女の子としての合格圏内に入ったな」
「それだけ可愛かったらナンパされない?」
「・・・こないだされ掛かった」
「おお、やはり」
 
「高校には女子制服で通うの?」
「通いたい気分ではあるけど、無理だろうなあ」
「あ、でも女子制服は作っておくといいよ」
「えー、でもお金無いし」
「そこはやはりお母さんに相談してみよう」
「結局そうなるのか・・・・」
 

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翌日。2月8日。青葉が朝御飯を食べた後、茶碗を洗っていたら、電話が掛かってきた。居間でネットを見ていた母が取る。
 
「青葉、慶子さんだよ」
と言う朋子から受話器を受け取る。何だろう?何か重大事件でも起きたのだろうか?
 
「青葉さん、実はうちに野良犬が入って来て」
「はい」
「家の四隅に埋めてる結界の袋を掘り返しちゃって」
「ああ・・・・。どの方位のですか?」
「北東です」
 
それはまた最悪の所を掘ったもんだ。
「その犬、死んだでしょ?」
「死んでるみたいです。私怖くて近寄れない」
 
他の方位のなら死ななかったかも知れないけどね。北東の守りは強烈なんだ。
 
「近寄らない方がいいです。結界の袋にも絶対触らないで下さい。触ると死にますから」
「きゃー! あれ?でも青葉さん、触ってましたよね?」
「ある特殊な修行をしている人だけが触れるんです」
「わあ」
と慶子は絶句した。
 
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「でもこれどうしましょう?」
「そちらに行きます。私が行くまで家から出ないでください」
「分かりました。お願いします!」
 

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青葉は受話器を置くと、ふっと溜息を付いて母に言った。
 
「ごめーん。私、緊急に大船渡に行って来なくっちゃ」
「いつ帰るの?」
「日帰りはさすがに辛いから明日。今日・明日、休むということで学校に連絡してくれない?」
「分かった。連絡しておく。取り敢えず高岡駅まで送るよ」
「ありがとう」
 
母が駅まで送ってくれるので、青葉はその車内で予約センターに電話し、一ノ関までのチケットを確保。クレカで決済した。
 
高岡駅で母に御礼を言って降り、予約していたチケットを受け取る。
7:35のはくたかに乗った。
 
しかし・・・そろそろ真穂にあの修法、覚えさせた方がいいかな?
もう、あれを覚える前提条件は揃ってたはずだもんな。
 
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