広告:放浪息子(2)-BEAM-COMIX-志村貴子
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■春空(7)

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公立高校の合格発表は19日・火曜日である。青葉たちの勉強会グループ(青葉・美由紀・日香理・呉羽・美津穂・明日香・星衣良・世梨奈)は全員で一緒に見に行った。高校の近くで紡希とも遭遇したので一緒に学校の正面玄関まで行く。
 
その紡希は最初呉羽を認識できなかった。
「え〜!?呉羽君なの? どうしちゃったの?」
 
呉羽は今日も女の子の服を着て来ている。
「最近、呉羽はいつもこんな感じだよ」と明日香が言う。
「へー! まあ最近はそんな子も多いしね」
と言いながらも紡希は呉羽をまじまじと見ていた。
 
みんなで少しおしゃべりなどしながら待つ。
 
やがて発表の時刻、12時30分となる。
 
青葉は自分の受験番号があるのを確認した。合格内定通知はもらっていても、ちゃんと正式発表で合格を確認できるとホッとする。周囲の友人たちの顔を見る。紡希はポーカーフェイスだが、まあ合格したのだろう。椿妃は笑顔。ちゃんと社文科に通っていたようだ。今日も女の子の服を着て出てきている呉羽も笑みを浮かべている。理数科に通っていたのだろう。美津穂・明日香・星衣良も笑顔。大丈夫だったようだ。個人的にいちばん心配していた世梨奈。少し探している雰囲気だったが、やがて笑顔に変わる。手許の受験票と見比べている。頷いている。通っていたようだ。
 
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そして美由紀!
 
何だか難しい顔をしている。
「美由紀、どう?」
「番号無いみたい」
「えー? 受験番号は何番?」
「2216」
 
青葉が見てみると、2214の次が2217だ。落ちた!?
 
えー、どうしよう?と思った時、世梨奈が言う。
「美由紀の受験番号が2216ってのは有り得ない。だって私の受験番号が2202だよ。美由紀、私より5〜6個前の方に座ってたから、私より受験番号若いはず」
「ああ、私が2199だけど、私よりも少し前だったね」と日香理。
 
青葉は尋ねた。
「美由紀、受験票見せてよ」
「持って来てない」
「家に電話してみない? お母さんに受験番号確認してもらおう」
「うん」
 
美由紀が電話をするとお母さんは「どうだった?」と訊いた。
それに対して美由紀が「お母ちゃん、私の受験番号何番だっけ?」と尋ねるとお母さんは呆れていたようだ。美由紀の部屋に行って受験票を見つけ出し、電話口の所まで持って来た。
 
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「2196だよ」とお母さん。
「2196だって」と美由紀が言うので、みんなで合格発表の受験番号を見る。
 
「やはり無い・・・・」
 
普通科の合格者受験番号を見ると、2195の次が2197になっている。結局ダメだった? 青葉は合格しますよなんて占いをしたことに責任を感じた。取り敢えずどう美由紀を慰めようかと思った時。
 
「あ」と日香理が声をあげる。
「どうしたの?」
「2196は社文科の合格者一覧にあるよ」
「へ?」
 
社文科の合格者一覧を見る。日香理の受験番号2199の前に 2196という数字が書かれている。
 
「うっそー!?」
「なんで!?」
 
「美由紀、社文科受けたんだっけ?」
「えっと・・・・私、普通科にしたけど・・・・第二志望まで書く欄があったから、第二志望欄に社文科って書いといた」
 
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「つまり、美由紀は第一志望の普通科に落ちて、第二志望の社文科に通った?」
「えーーー!? だって社文科の方がレベル高いんじゃないの?」
 
「うーん。。。。。」と日香理が一瞬悩んだが
「あ、分かった」と言う。
 
「どういうこと?」
「つまりさ。この学校、毎年入試成績の上位は理数科・社文科の生徒で占められてるんだけどね」
「うん」
「入試成績ビリの方も理数科か社文科に回されちゃうのよ」
「へ?」
「だって、理数科も社文科も授業が多いし、ゼミとかしないといけないし研修とかまであって大変でしょ。だから志望する子の絶対数が少ないから第一志望が理数科や社文科の子で、合格の最低ラインを越えている子だけでは定員に満たない年もあるんだな」
「はあ?」
「その場合、普通科の合格ラインに微妙に届いてない子をこちらに回して定員ちょうどにする」
「う・・・・」
「要するに併願している生徒は、成績順に第一志望に振り当てて、残った子は第二志望に回すシステムなのよね。あと合格者の男女比を若干調整するからギリギリの成績の場合は女子が有利」
 
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「つまり美由紀はホントにぎりぎり、女子特典・滑り込み合格で、普通科からあふれて社文科に回されたんだね」
「ひゃーーー!」
 
「取り敢えずお母さんに合格したって伝えなよ」
「あ、そうだった」
 
慌てて美由紀は電話の向こうの母に合格を伝え、おめでとう!と言われていた。私立の納入金を払わずにこちらに賭けていたから、お母さんも本当にホッとしたであろう。
 
「てことは結局、私と日香理と美由紀、同じクラスになるのか」と青葉。
「だね。しかも社文科も理数科も3年間クラス替えが無いから、ずっと同じクラスだよ」
と日香理。
 
「あはは。じゃ、仲良くやろう」と美由紀。
「うん」
 
3人は握手を交わした。
 

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明日香がC高校を受けた奈々美に、世梨奈がM高校を受けた燿子に電話していた。
「C高校組、全員通ってた」
「M高校組も全員通ってた」
「おお。めでたい、めでたい」
 
T高校の先生が
「合格していた人には入学手続きの書類をお渡しします。受け取りに来て下さい」
と言っていたので、みんなで列に並んで受け取る。
 
青葉は美由紀の次に並んだ。美由紀は受験番号と名前に本人確認のための生年月日を言って受け取ると本当に嬉しそうにしていた。
 
「受験番号37、川上青葉、平成9年5月22日生れです」
と言って青葉も書類を受け取る。何が入っているのかと思い、取り敢えず出してみる。その時、青葉の次に並んでいた呉羽が
「受験番号2087・呉羽大政、平成9年4月3日生まれです」
という声が聞こえる。すると
 
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「ん?ご家族の方ですか?」とT高校の先生。あぁぁ。。。。
「あ、いえ。本人です」
「あれ? 君、女子? 男子みたいな名前だね。受験票か生徒手帳持ってる?」
「あ。済みません。忘れてきました」
 
青葉は横から口を出した。
「新谷先生。この子、間違いなく呉羽本人です」
「ああ。君は川上君だったね?」
「はい。その節は学校を訪問した時に図書館で案内して頂きまして、ありがとうございました」
 
近くに居た紡希も寄ってきた。
「私も証言します。この子は確かに呉羽さんです。あ、私はこの子が所属するクラスの学級委員です」
 
「了解です。ふたりも証言がありますし。じゃこれ書類ね」
と言って新谷先生は書類の袋を呉羽に渡してくれた。
「ありがとうございます。お手数お掛けしました」
と言って呉羽は書類を受け取る。
 
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しかし青葉は思った。
このやりとりで、呉羽、性別を女子に訂正されてしまったりして・・・・
 

紡希も含めて(当然呉羽も含めて)T高校に合格した女子で取り敢えず駅に戻り自販機のジュースで祝杯をあげる。紡希が代表して先生に電話し、このグループ全員の合格を伝えた。
 
「女子でT高校に合格したのはここにいる9人だけみたいね」
「わあ」
「男子では7人」
「へー」
「今年は女子の合格者の方が多いのか」
「あ、さりげなく呉羽は女子に分類されてるね」
「え?呉羽は間違いなく女の子だよ」
 
「この後の予定はどうなるんだっけ?」
と明日香が言いながらもらった書類を見ている。
 
「合格者説明会が土曜日だね」
「それまでに同封の振込用紙で入学金を振り込んで、当日振込票を見せる、と」
「説明会の時に教科書とか、体操服とかを購入するみたいね」
「制服はどうするんだっけ?」
「指定店で採寸して購入してくださいだって」
「ああ。学校で採寸するんじゃないのね?」
「指定店はいくつかあるみたいね」
「そのどれかで頼めばいいんだ?」
「そうそう」
 
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制服の話をしている時に呉羽がそれを興味深そうに聞いているのを見て、青葉は呉羽、女子制服作りたい気になってるのかな? と思った。ちなみにこの高校は男子はふつうの学生服なので、中学時代に着ていた服そのままで良い。襟に校章を付けるだけだ。
 

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呉羽はその日家に帰り、女の子の服装のまま数学の問題集をしていた。ずっと毎日勉強していたので、入試が終わっても何だかつい勉強してしまうのである。
 
やがて16時になった所でお米を研ぎ、タイマーをセットする。夕飯の買物に行くのに男の子の服に着替えようかな・・・と思ったものの「まあいいや、このままで」
と呟いて、女の子の格好のまま買物に行った。
 
30分ほどで戻ってくるが両親はまだ戻っていない。呉羽はそのままの格好で晩御飯のシチューを作り始めた。材料を切ってIHヒーターに掛けた鍋に入れ煮る。タイマーを20分セットして自分の部屋に戻った。
 
時計を見ると17時20分だ。母は18時頃戻るはず。それまでには男の子の服に着替えなきゃと思いながら自分の部屋のコタツで本を読んでいて・・・眠ってしまった!
 
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「ヒロちゃん、ヒロちゃん」
と揺り起こされて目を覚ます。
「あ、お母ちゃんお帰り」
その時、呉羽は寝起きで頭が回っていなかった。
 
「コタツで寝てたら風邪引くわよ」
「あ、うん」
「あら、でもヒロちゃん、可愛いセーター着てるね。ミチのでも借りた?」
「あ・・・これは僕の」
「へー。そんな可愛いの着るんだ」
「うん。まあ」
 
「台所のお鍋、何入れるんだっけ?シチューの素?カレー粉?」
「あ、シチューの素。僕入れるよ」
 
と言って呉羽はコタツから出て台所の方へ行きかけた。すると母がえ?という顔をしている。ん?と思って呉羽は自分の格好を見て・・・・
 
スカートを穿いていたことをやっと思い出した!!
 
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呉羽は取り敢えず台所の鍋にシチューの素を入れ、タイマーで10分セットした。御飯も炊きあがっているのでかき混ぜる。
 
そして居間のコタツの所に座った。
 
「私ね・・・もしかしたら、ヒロちゃん、女の子の服を時々着てるんじゃ、と思ったことある」
と母は言った。
 
「私、女の子になりたいの」
と呉羽は普段の「息子を装っている」時の口調ではなく、女子の友人たちと話す時の「女の子っぽい」口調で話した。
 
「そっかー」
と言ったまま母は黙ってしまった。
 
が思い出したように
「あ、ごめん。今日、高校の合格発表だったんだよね?どうだった?」
と訊く。
「あ、うん。合格してたよ」
「おめでとう! 御免ね。付いてってあげなくて」
「うん。大丈夫。私も4月から高校生だもん。ひとりでできるよ」
呉羽は相変わらず女の子口調で話す。
 
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「それで土曜日に合格者説明会があるんだけど」
「わあ、ごめん。今決算前だから特に土日は仕事外せなくて」
「大丈夫だよ。教科書や体操服を買うお金ちょうだい。それと、前日までに入学金を振り込んでおいて欲しいんだけど」
と呉羽は振込票を渡す。
「了解。明日昼休みに振込に行くよ。教科書代は金曜日に渡すね」
「ありがとう。それと制服を頼まないといけないらしくて」
 
呉羽は女子たちが制服のことを話していたので、てっきり「男女とも」制服を作るものと思い込んでしまったのであった。
 
「幾らくらいだっけ?」
「うーん。分からないけど2〜3万じゃないかなあ」
「OK。採寸は?」
「これ指定店のリスト」
「じゃ、取り敢えず採寸に行っておいで」
「うん。分かった」
 
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結局その日母とは性別問題についてはそれ以上会話は無かった。
 

そういう訳で翌日、呉羽は「制服」の採寸に出かけた。最近外出する時はもう女の子の格好がデフォルトになっていたので、つい女の子の服を着てしまったが、「男子制服」の採寸に女の子の格好じゃまずいよなと思い直し、スカートを諦めてズボンを穿いた。但しこのズボンも女物で、前開きなどは無い。ウェストがゴムで伸びるのでそのまま穿けるタイプである。伸縮性のある分、お股の形が出やすいのだが、こういうものを穿いても、特に突起物が見られないことに呉羽は満足していた。
 
そして呉羽は他の子とかちあうと何となく恥ずかしい気がしたので、指定店の中でもいちばん遠くにある店までわざわざ出かけた。
 
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「こんにちは。T高校に合格した者ですが、制服の採寸に来たのですが」
「あ、はいはい。合格おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「お名前よろしいですか? 最近無関係の人がコスプレ用に制服を調達しようとするというので、合格者のリストと照合するように言われていて」
「あ、はい。呉羽大政です。住所は******」
 
「くれは・・・くれは・・・あれ?」
「ありません?」
「あ、あったあった。最後に書き加えられてた。ごめんごめん。じゃ測りますね」
 
お店の人は呉羽の身体のあちこちにメジャーを当ててサイズを測る。バストの所にメジャーを当てられた時はドキッとした。最近急速に成長している乳房の特に乳首は物凄く敏感だ。
 
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「上着の着丈は標準でいいですか?」
「あ、はい」
「ウェストが今測ると67ですけど、余裕持って作っておく?このままにする?」
「あ、ウェストはあまり大きくなる予定無いから、そのままで」
「了解。バストは成長期みたいだから、少しゆとりを作っておいた方が良さそうね。スカート丈は膝より少し上くらいでいい?だいたいみんなそのくらいなんだけど」
「はい、それでいいです」
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