広告:まりあ†ほりっく 第6巻 [DVD]
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■春音(4)

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お昼休みが終わってから応援合戦になる。青葉たちは、1年,2年のチームと合同で、『夏の大三角形』の曲に合わせて踊る。合同練習は1度しかしてないのだが、その割にはけっこう揃った感じで踊ることができて、課題だった2人組んでのダイアグナル、T字モーションも間違わずにこなすことができた。
 
この応援合戦で青葉たちの組はいちばん良い成績を修めた。
 

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応援合戦が終わった後は、3年女子全員によるダンスである。青葉たちは急いでチアの衣装の上に体操服を着て、集合場所に行こうとしたが、その時、青葉はちょっとボーっとした感じでそういう女子たちの動きを見ている呉羽に気付く。
 
「呉羽も参加しなよ」
と言ってみた。
 
「えー!?」
「女子が練習してたの、隣で見てなかった」
「・・・見てた」
「じゃ、踊れるよ。呉羽、運動神経いいもん」
「でも・・・」
 
「分からなくなったら隣の子の真似すればいいから」
 
「あ。呉羽、ダンスに参加する?」
「おお。女子としての自覚が出てきたな。おいで、おいで」
 
などという感じで、みんなに引っ張って行かれるようにして呉羽は入場門の所に行き、そして音楽と一緒に校庭中央に出てしまった。隣は青葉と明日香である。
 
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その向こうの方からも「お、呉羽ちゃん、ダンスに参加するのね」と楽しそうな声が掛かる。
 
やがて、AKB48の『エブリデイ・カチューシャ』の曲が流れはじめ、それに合わせてみんな踊り出す。呉羽はぶっつけ本番なので、さすがに最初はみんなから少し遅れる感じではあったものの、なんとか踊りに付いてくる。そして途中からはだいたい感覚が分かったのか高確率でぴったりの動きをするようになった。
 
「おお、ちゃんと踊れてる」と隣の明日香から言われる。
 
途中横にいるふたりで組んでの動きも、青葉と組んでうまく踊った。
 
「ねね、もしかしてこれ練習してた?」
「ううん。ただ見てただけ」
「それにしては、動きが良すぎる!」
 
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結局、約3分間のダンスを呉羽はほとんどノーミスで踊りきった。
 
「呉羽すごー」と明日香から言われている。
 
「もうこれで呉羽は、3年女子の一員だね」
と青葉の隣にいた学級委員の紡希も言ったので
「おお。学級委員から認められたから、月曜から呉羽は正式に女子生徒だよ」
などとまた明日香から言われて、呉羽は『えー?どうしよう?』という感じの顔をしていた。
 

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そして体育祭の最後の種目は、各学年別のスウェーデンリレーである。1年生の男子から始まり、2年生の女子が終わって、次は先に3年生の女子をやる。青葉たちの組の第一走者は明日香だった。号砲とともに走り出し、100m走った所で第二走者の世梨奈にバトンタッチする。この段階では2位・3位争いをしていたが、200m走る世梨奈が離され3位に落ちる。その状態で第三走者の燿子にバトンタッチ。しかし300m走る燿子が頑張って再び2位と身体ひとつくらいの距離まで詰め寄る。
 
そして400m走る最終走者にバトンタッチ。この燿子から青葉へのバトン渡しが物凄くうまく行って、この渡す部分だけで青葉は競っていた組に1〜2秒のアドバンテージを得た。
 
そうなると1位の子に追いつけるかどうかだ。しかし最終走者はどこの組もだいたい速い子を置いている。青葉は必死に走った(午前中の100m走は個人競技なので、元男子の自分があまり活躍してはというので手抜きしたもの)。1位の走者との距離は最初は10mくらいあった。そして彼女も結構速い。それでも青葉は少しずつ距離を詰め寄った。8m, 7m, 6m,... もう既に200mのトラックを一周している。しかしさすがに400mは長いので、先を走る子に疲れが見えてくる。そこで持久力のある青葉がそれに追いついていく。5m, 4m, 3m, 2m, .... もう手を伸ばせば前の子の背中に触れそう、という所まで来て、前の子も後ろの走者を意識してラストスパートを掛けた。
 
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もうゴールまでの距離は20mくらい。こちらも必死に走るが前の走者も必死である。それでも青葉は全力で走った。
 
そして、ほとんど同時にふたりはゴールのテープに到達した。
 
ふたりがペースを落としながらオーバーランして、やがて足を停め、大きく息をする。ゴールのテープを持っていた2人と審判員の先生が何か話し合っている。青葉はハアハアと息をしながら結論が出るのを待った。
 
やがて1位と2位の旗を持った子が近づいてくる。
 
1位の旗の子は青葉と競った子の方に行き、2位の旗の子が青葉の方に来た。
 
残念!
 
審判の先生が近づいて来て言った。
 
「ほとんど同時に見えたけど、胸ひとつの差で○組の勝ち。川上さんのバストがFカップだったら分からなかったわね」
 
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青葉は笑って、1位になった子と握手をした。
 

「青葉、惜しかったね」
 
青葉が自分の席に戻った時にはもう3年男子のスウェーデンリレーがゴールする所であった。
 
「私のバストがFカップだったら分からなかったって」
「おお、バストサイズの差で負けたのか」
「青葉、頑張ってバストマッサージして、Fカップになろう」
「ああ、青葉が夢の中で出てくる時のバストサイズね」
「頑張ってね」
「そうだね」
と言って青葉も笑った。
 

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体育祭が終わり帰宅してメールチェックをしていたら、盛岡の大学に行っている、佐竹真穂からメールが入っていた。
 
へー、珍しいと思って読んでみる。
 
《ハロー! ちょっと相談。私が住んでる所、似たような感じの学生アパートが10個くらい並んでるんだけど、その中で私のアパートの隣の隣のアパートで8月に女子学生が自殺したのよ。凄い美人で成績も良かったのに何だったんだろうね。でその後、そのアパートの階段の所に髪の長い女の人が立ってたとか、夜中にその子が住んでいた部屋に灯りが点いてたとか、隣の部屋の子が話し声を聞いたとか噂が広まってて。私も居酒屋のバイトして帰宅するのが深夜で、そのアパートのそばを通らないといけないから怖くて怖くて。自殺した子が迷ってるのかな? 私霊感弱いから良く分からなくて。大家さんはお祓いはしたらしい。でも両隣の子は気味悪がって引っ越ししちゃったみたい》
 
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真穂ほどの霊的なパワーを持っていて、霊感弱いも無いよなと青葉は苦笑した。
 
確かに隣に住んでいた同世代の子が自殺したとなると引っ越したくなるだろうな・・・とは思ったものの、青葉は真穂の住むアパートの付近をGoogleで見てみる。確かに似たような感じのアパートがずらっと並んでいる。数えてみたら13個ある。おお。なかなか良い数字だ。そして真穂の住んでいるアパートは、南側から2番目なので、隣の隣ということは南から4番目か。13個の中の四番目とか、安いジュニアドラマにも出てきそうな舞台設定だ。
 
青葉はGoogleの写真を見ながら、そこに意識を飛ばしてみた。
 
あぁ。。。。。
 
青葉はすぐに真穂に返事を書いた。
 
《ハロハロ。自殺の原因は恋愛問題。本人確かに迷ってるけど、そのアパート付近には居ない。片想いしてた男の子が住んでる所に居る。その付近で起きている怪異は、周囲の人が持った恐怖心に寄ってきた雑多な霊の仕業。都会だし、半年もすれば消えてしまう。真穂さん自分で防御できる筈。そのアパートの横を通る時は霊鎧をまとって。怖かったら光明真言か般若心経を唱える。心経は記憶が不確かだったら『羯諦羯諦・波羅羯諦』だけでもいいよん。九字は切っちゃダメだよん。光明真言を書いた紙を折りたたんでお財布とかに入れておくのも効果あり》
 
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その後、お母さん(慶子)の方から来ていた正式の霊障相談のメールを見て霊査し、返事を書いて送ったら、真穂の方から返事が来ていた。
 
《ね、ね、光明真言の入ったメールが携帯に入っていても効果あるよね?そちらから、私の携帯に光明真言メールしてよ》
 
青葉は微笑み返信した。
 
《オン・アボキャ・ベイロシャノウ・マカボダラ・マニハンドマ・ジンバラ・ハラバリタヤ・ウン》
 

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返信した所で今日は疲れたし寝ようと思ってお風呂に入り、それからパジャマに着替えて布団に入ったら、冬子から電話が掛かってきた。
 
「ごめーん。青葉、ここの所の連日のレコーディングで疲れちゃって。少しヒーリングしてくれない?」
「はい。いいですよ。ベッドに寝ててください。途中で寝ちゃってもいいですから」
 
と答えて起き上がり、ガウンを羽織った。いったん電話を切り、スカイプでつなぎ直してから(千里や和実に遠隔ヒーリングする時もこういうやり方をしている。でないと電話料金が恐ろしい)、まずは冬子の身体を全身スキャンし疲労の溜まっている所をチェックする。やはりレコーディングということでたくさん歌っているのだろう。喉が疲れているし耳も疲労が溜まっている。また胸の付近にもやもやしているものがある。ストレスだなと思った。演奏がうまく行ってないのか、あるいは制作方針などに不満があるのか。
 
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それを開放してやる。
 
冬子とはヒーリングしながら、あれこれおしゃべりしているのだが、今日の体育祭の話題にもなる。
 
「へー。胸の差で負けたのか。でも青葉、もうDカップでしょ?」
「ええ。でもFカップなら勝負分からなかったとか言われた」
「あはは。青葉はふつうに小学5年生の頃から、おっぱい膨らみ始めてるからFまで行くかもよ。夢で出てきた時みたいに」
「ええ。夢のことは、みんなからも言われました」
 
青葉はしばしば友人の夢に無断侵入してくるのだが、その時の青葉はFカップの胸を持っている。
 
「でも冬子さんも小学5年生頃から女性ホルモン飲んでたんですよね?」
「・・・・黙秘権」
「はいはい」
と言って青葉は笑う。
 
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「そういえば、うちのクラスに隠れ女装っ娘を発見しちゃったんですよ」
と言って、青葉は呉羽のことを話す。
 
「へー。可愛くなるんならいいじゃん。女装と可愛さは無関係だから」
「まあ天然女性でも、可愛い人と必ずしもそうではない人といますし」
「そうそう」
などと言い、お互いの知り合いの女装っ娘さんの噂話などもする。
 
「へー、その子にミニスカ穿かせてチアをしたんだ?」
「ええ。彼女は元々身長が160cmくらいなので、女の子の服を着ても他の子の中に埋没しやすいんですよね」
 
呉羽を受ける代名詞は「彼」ではなく「彼女」である。
 
「ああ。身長で悩むニューハーフさんも多いもんね〜。しかも身長って奴は手術とかでも修正のしようが無い」
「ええ」
「彼女、運動神経も良かったですよ。チアの動きもしっかりしてたし、応援合戦の後、女子のダンスだったんでそのまま引っ張っていったら、ぶっつけ本番でちゃんとダンスできてたし」
「それはセンスいいね」
 
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「チアやらせて、最初なかなかうまく行かないのが、きちんと腕をピシッと伸ばすとか、動きをピタっと止めるとかなんですけど、彼女は最初からそれが出来てましたから」
と言った時、突然冬子が無言になった。
 
ん? と思って向こうの様子を探ってみる。おお。今の話に刺激されたのかな。冬子は何か曲を書き始めていた。そっとしておき、ヒーリングだけ続ける。
 
冬子は15分ほどで曲を完成させた。冬子にしても相棒の政子にしても、こういう感じで「降りてきた」曲を書く時は物凄く速い。普通は1曲作るのに1時間とか2時間とか掛けるものだが、ほとんど完成形に近い形で「降りてくる」のだという。だから冬子たちは曲をイマジネーションの中から「掘り出している」
のである。夏目漱石の「運慶」にそのような話が出てくるし、ライダー版タロットの作画者パメラ・スミスという人が、そういう画家だったらしい。あの神秘的な絵柄はそのようにして、イマジネーションの大地から「掘り出す」ように描いたのだ。
 
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「できた〜」
と冬子が言うので
「歌ってみせてください」
と言うと、歌ってくれた。この曲の聴衆第一号だ。もっとも冬子が曲を書いている最中に、隣に政子が来ていたので、政子と青葉がこの曲の最初の聴衆になった。
 
「Hey, Girls! Stand up! Let's Go! 1,2,3,4....」
と威勢の良いコールで始まるマーチ風の曲は、聴いているだけで元気付けられる感じである。冬子が作る曲はだいたい明るい曲、元気な曲が多いし、本来はかなり暗い詩を書く政子も、冬子と組んで書く詩には、そういうポジティブなものが多い。「私は楽天家だから」と冬子はよく言っていたし、政子も「冬と一緒に居ると明るい気持ちになれる」と言っていた。
 
その後ヒーリングは更に30分くらい続けたが、今度は政子もおしゃべりに加わってきて、3人での会話になった。
 
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そして・・・青葉は政子が彼女にとってはとても珍しい「二股」をしているようだというのに気付いた。
 
 
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