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■春歌(5)
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(c)Eriko Kawaguchi 2012-05-17
10月15-16日は青葉の中学の文化祭であった。青葉はもちろんコーラス部でステージに出演した。昨年の文化祭ではコーラス部にいる時は女子制服だったけど、教室では男子制服だったなあなどと去年のことを思い出す。今年はいつも女子制服だ。男子制服を着ていた頃のことを忘れつつある。
この文化祭ではmiwaの「春になったら」と、AKB48の「ヘビーローテーション」
を歌った。1日目は部長の府中さんが指揮をしたが、2日目は直前になって突然、「青葉ちゃーん、指揮してみようか」などと言われて、青葉が指揮をした。もちろん指揮をしながら自分でも歌う。
2日目のステージが終わってから部室に引き上げてきて、3年生はこの文化祭で一応部活終了となることが告げられ、次の部長・副部長を決めようということになる。
「川上さんを推薦します」なんて声が数ヶ所から上がる。
「えー!?」と青葉。
「あのぉ、私ちょっと性別に難があるので辞退します」
「川上さんは純粋に女の子だよね」
「性別には何も難は無いと思うなあ」
「噂によれば、川上さんは女湯に入れるというし」
「あ、私川上さんと一緒にお風呂入りました。どう見ても女の子でした」
などという声がたくさん上がる。あはは『青葉鑑賞会』でたくさん、コーラス部の子とも一緒に温泉に入ったからなあ。
「さっき指揮してもらったけど、指揮もうまかったですね」
「うんうん。指示が分かりやすくて歌いやすかった」
「えー。でも私、人をまとめるの得意じゃないし。あ、上野さん(美津穂)なんかどうかな。リーダーシップあるし」
「あ、確かにリーダーシップあるよね。姐御肌ってか」
「上野さんもいいよね」
突然名前が出て、美津穂が少し焦ってるが、うまく反撃してきた。
「そうだねー。じゃ、私が副部長やるから、川上さん部長してください」
「あ、その組み合わせいい!」
という声があちこちから上がる。
「確かにいい組み合わせだね。カリスマ性のある川上さんと、リーダーシップのある上野さん」
「じゃ、それで決定?」
みんなが拍手する。
「じゃ、そういうことで、川上さん、上野さん、お願いします」
きゃー、どうしよう、と青葉は焦っていた。
10月22日から24日に掛けての連休。月の前半の岩手行きがキャンセルになったので仕事が溜まっており、結局24日の午後まで仕事はずれこんだ。終わって、祭壇の前でリセットをし、普段着に着替えたのはもう午後3時だった。わあ、もう今日はデートの時間が取れないと思いつつ彪志に「今終わった」とメールすると「綾里駅の物産観光センターにいる」という返事が返ってきた。
慶子の車で綾里駅まで送ってもらうと、お母さんと一緒の彪志がいた。
「青葉の仕事が長引いているなと思って、こちらにバスで出てこようかと思ったら、母ちゃんが送ってくれるというもんで。あまり市街地に長居できそうなところが見つからなくて」
と彪志は言っていた。
お母さんに挨拶し、物産観光センター「銀河」の中をしばし見て回る。
「7月に出来たのは知っていたのですが、来たのは初めてです」
と青葉は言う。
「でもここ狭いし、もう何周か見ちゃったのでは?」と青葉が訊くと
「うん。これ4週目かな」と彪志は答えた。
結局トマトとぶどうにお菓子を少々買って、お母さんの車に乗り込み、一ノ関方面に向かった。
「今日は18時の新幹線?」
「はい。17:53です。」
「彪志、大宮まで送っていきなさいよ」
「うん。そのつもり」
「大宮まで行って戻れたっけ?」と青葉が訊くと
「大宮には19:58に着くんだよね。大宮発20:42のやまびこに乗ると一ノ関22:57に帰還できる。青葉は大宮発20:36のときだよね?」
「うん。越後湯沢乗り換えで23:38高岡着」
「上越新幹線と東北新幹線のホームは同じだから、青葉が出るのを見送ってから、こちらに帰る列車に乗るよ」
「わあ。じゃ、往復の新幹線代、私が出しますよ」
「8月には青葉ちゃんが出したから今回は私が出すよ」とお母さん。
「すみません。それではお言葉に甘えまして」
結局そういう訳でその日のデートはお母さんの車の中と新幹線の中になったのであった。お母さんは「見ない振りするからキスしてもいいよ」などと言っていたが、さすがに遠慮した。
一ノ関に着いたのがもう17時半で、そのまま駅でおろしてもらう。お母さんが用意してくれていた夕食用のお弁当とお茶の包みを渡される。青葉はよくよくお礼を言って別れた。チケットは、青葉が車の中から確保していたので、駅の指定券券売機で受け取る。青葉のクレカで決済したので、その分を彪志が現金で渡してくれた。
「端数めんどくさいから23000円渡すね」と彪志。
「じゃ、そのバックマージン」と言って青葉は3000円彪志に返す。
「じゃ、もらっとこう」と言って彪志はその3000円を自分の財布に入れた。
一緒に、はやてに乗り込む。全席指定の列車だが、彪志の席の隣にいた人と交渉して青葉の席と交換してもらい、並んで座った。
「昨日の模試の手応えは?」
「かなりいいと思う。8月の模試では偏差値61, 先月の模試は63だった」
「合格圏内に入ったよね」
「うん。今回は先月より明らかに出来が良い」
「頑張ってるね。約束のプレゼントしてあげたいんだけどなあ」
青葉は彪志が偏差値61以上出したらフェラをしてあげる約束をしていた。
「リアルではする時間がないね。受験終わるまで待つよ」
「そうだねぇ」
今回は受検前の最後のデートである。次は国立大学前期日程の合格発表が終わるまでデートを自粛することを約束している。
「一緒にトイレに入ってしちゃう?」と青葉は小声で訊く。
「いや、そこまで飢えてないから大丈夫」と彪志。
「ふふふ」
「アメリカはどうだった?」
「手術受けることを認めるという、病院の倫理委員会のお墨付きをもらった」
「じゃ、そこで手術しちゃうの?」
「15歳にならないと手術の予約自体ができないから。5月になってからだね」
「手術の時は俺も付いていくよ」
「ありがとう。凄く心強いと思う。何かさ、時期的に千里姉ちゃんと同じ頃の手術になりそうな気がするのよね。桃香姉ちゃんは当然千里姉ちゃんのそばに付いているだろうから。お母ちゃんは付いてきてくれるだろうけど、彪志がそばにいたら、凄く精神的に助かる」
「でも切っちゃう前に、その切る前の奴を俺見てみたいな」
「嫌だよ。そんなの好きな人に見せられない」
「青葉のこと好きだから青葉の全てを知りたい」
「見せたくないもん」
「でも短いスカート穿いてきたら、ちょっと冷え込んできたな」
「もう10月だもん。寒いよ。山の方はもう雪降ってるよ」
「毛布出しちゃおう」
と言って、青葉は旅行鞄から毛布を出すと、自分と彪志のひざに一緒に掛かるように掛けた。
「あ、ありがとう」
「うん。ちょっとだけサービス」
というと青葉は毛布の下に手を入れ、彪志の股間に手をやる。
「あっ・・・」
「うまくこれ下ろせないな」
「自分でするよ」と言って彪志はズボンのファスナーを下げ、ホックも外す。
青葉は彪志のトランクスの上から、それを揉み揉みした。
「青葉のもしてあげる」
といって彪志が手を伸ばし、青葉の短いスカートの裾から手を入れ、あの付近に触る。「あれ?」
「ふふふ」
「これ・・・・」
「お医者さん以外に触らせるの初めて」
「青葉、ほんとに付いてたんだね」
「付いてるから取る予定なんだけどね」
「うー。猛烈にこれ見たい」
「残念ながらふたりきりになれないもんね。今夜は」
「悔しいー」
「受験生さん頑張ってね」
青葉は彪志のそれを刺激して硬くなってくると手を離し、少したつとまた刺激するという、生殺し状態にした。15分くらいそれを続けていたら彪志が
「だめだ。ちょっと俺トイレに行ってくる」
と言って席を立つ。
彪志は5分ほどで戻って来た。
「すっきりした?」
「した」
「うふふ」
青葉は「少し眠くなった」などいって、彪志の肩に自分の首を預けた。彪志が優しく青葉の腕を撫でる。
「私、このままずっとこうしていたい」
「俺は青葉と一緒にどこかに籠もりたい」
「そうだよね」
列車はほぼ満員である。でも通路をはさんだ向こうの人は寝てるっぽい。青葉は素早く彪志にキスをすると、また同じ姿勢に戻った。
「青葉、好きだよ」
「私も好き、彪志」
19時をすぎたあたりで晩ご飯にしようといって、もらったお弁当の包みを開け、一緒に食べた。お弁当はサイズだけ違って同じ中身なのだが、お互いに「あーん」
などして楽しみながら食べる。
「彪志のお母さんも料理上手だよね」
「ありがとう」
「千葉に行ったら自炊だよね」
「うん。少し料理覚えないと。青葉がいたらご飯作ってもらうんだけどな」
「じゃご飯のレシピだけメールしちゃおっと」
「作るのはセルフサービスか!」
大宮駅で30分ほどの待ち時間がある。ふたりはまだ開いてた構内の売店で熱いコーヒーを買って、一緒に飲んだ。まだパンが少し残っていたので夜食用に少し買い、ふたりで分けて持つ。
「じゃ次会うのは3月9日かな」
「合格祝い持って行くからね」
彪志は青葉の乗った新潟行き「とき」が18番線から出て行ったのを見送った後、向かい側の17番線で待っていた。ほどなく盛岡行き「やまびこ」が入ってきたので乗り込む。指定の座席に行き座る。そしてふっと溜息をついた。
次会えるのは3月か。。。。ほんとに我慢できるだろうか。彪志と青葉は青葉が小学6年生・彪志が高校1年生の8月に別れてから今年5月に再会するまで1年9ヶ月も会えなかった。それは我慢できたのに、これからわずか5ヶ月会えないのが、何だか物凄く長い時間のような気がしてならないのである。
自分も本当に青葉に本気になってるんだなあとあらためて彪志は思った。
さっき青葉と並んだ席で、毛布をひざに掛けて、こっそりHなことをした記憶が蘇る。しかし、そのお陰でよけい寂しさがつのる。青葉とあんなこともこれから5ヶ月できない。彪志はまるで修道院にでも入るかのような気分になっていた。
でも・・・・初めて青葉のアレを触っちゃった。ほんとに青葉って男の子だったんだなあ・・・と思うが、男の子の青葉を想像しようとするのに、頭の中に浮かんでくるのは完璧に女の子ボディの青葉ばかりだ。考えているうちに青葉のアレに触ったこと自体が、事実ではないような気さえしてくる。触った時、ひょっとして女の子の形だったってことはないだろうか?? 何だか自分の記憶に自信が無い。
そんなことを考えている内に彪志はいつしか眠ってしまった。
あれ?ここは・・・・もしかして夢の中かな? ひょっとして青葉がいないかなと思って探すと、いた! 少し先の方の席に座っているので歩いて行ったら座席で熟睡している感じだ。そうか。お仕事大変だったんだよなと思い、頬にそっとキスをしたら青葉が目を覚ました。
『キスは唇にしてよ』と青葉が言う。
『うん』と答えて、あらためて青葉の唇にキスをした。
青葉の隣の席が空いているのでそこに座って話をする。
『今日は列車の中で問題集しなくてもいいの?』
『今夜帰ってから頑張る』
『だったら新幹線の中では寝てた方がいいんじゃない?』
『だから今寝てるよ』
『この夢を見ている状態では、あまり休息にならない気がするけどなあ』
『でも青葉と話したいもん』
『話すって、ボディートークの方かな』
『それもしたい』
『今回、私の仕事がずれこんで出来なかったもんね。ちょっとベッドに行こうよ』
『新幹線の中にベッドなんてあるんだっけ?』
『夢の中だもん。あると思えばあるよ』
そういって青葉は席から立ち上がると、彪志の手を引いて隣の車両に移る。するとそこに2人用個室寝台デュエットがある。
『チケット見てごらんよ』と青葉が言うので彪志が自分のチケットを取り出して見ると、デュエットのチケットになってる! なんて都合がいいんだ。
チケットに書かれた番号の部屋を見つけ、ふたりで中に入り、ドアをロックする。
『さ、お話しよ』と青葉は笑顔で言い、服を脱ぎ出す。彪志も脱いだ。やがてふたりとも裸になってしまう。
青葉の裸体をあらためて見るが、やはり完璧な女体だ。お股に変なものはぶら下がっていない。胸はFカップだ(現実の青葉はCカップ弱)。
『こんなことなら、俺、さっき出してしまわなきゃ良かった』
『でも以前、リアルでした直後に夢の中でも出来たじゃん』
『そっか。できるかも知れないな』
『やってみれば分かるよ』
と言って青葉は彪志に抱きついてキスをした。そのまま彪志は青葉をベッドに押し倒す。身体の上に毛布を掛ける。彪志はたくさん青葉を愛撫した上で、自分のバッグに手を伸ばし、避妊具を取ろうとした。しかし青葉がそれを押しとどめる。
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