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■春歌(2)

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「忙しい人だなあ」と青葉は苦笑する。
「あの人・・・・テレビに出てるよね」とお姉さん。
「はい。古い知り合いです。あの人、マスコミ好きなんですよね」
と青葉は言った。
「うちにも良く来てたので、小さい頃よく飴とかもらいました」
「へー」
どうも竹田さんのおかげで青葉が「本物」らしいと都古さん夫婦は思ったような感じであった。
 
「でもここは何なの?」と都古さんの夫。
「たぶん古戦場です。1000人以上死んでますよ。それがベースになって、他にもいろいろあったみたいですが、竹田さんにも言ったように関わり合いになりたくないです」
「はあ」
 
都古さんたちはその後、青葉たちを3箇所の引越候補先に連れて行った。その中の2番目のところがまた問題ありだった。1ヶ所目と3ヶ所目は霊的には問題無いようであったので、その2ヶ所で考えてみると、都古さんたちは言っていた。
 
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「でも鑑定料、おいくらくらい払わないといけないかしら」と都古さん。「それはご厚志で」と青葉。
「3万くらいでもいい?」
「はい、いいですよ」
 
ということで、都古さんは鑑定料を3万円くれた。そしてこれが青葉の北陸での初仕事となったのであった。
 

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8月20日、青葉たち◎◎中学のコーラス部は全国大会に出場するため東京に出た。朝一番のはくたかに乗り新幹線に乗り継いで東京に9:55に着く。大会は11時からである。
 
出場校の生徒や一般の見学者が見守る中開会式が行われ、さっそく各学校の演奏が始まった。
 
全国8ブロックから各3校ずつの代表が集まってきている。演奏は休憩をはさんで全部で5時間近く掛かる長丁場である。東北代表で青葉が昨年所属していた中学も出てきているが、人がたくさんいるので会場で会ったり声掛けしたりするのは困難という感じである。大会が終わった後、交流のための時間があるので、その時に会おうと椿妃たちとは連絡を取っていた。
 
先に演奏したのは椿妃たちの中学の方であった。課題曲を歌った後『夜明け』を歌う。この曲のソロパートを歌里と柚女のどちらが歌うのか青葉は注目していた。地区大会では歌里、県大会では柚女が歌った。そして東北大会では前半を歌里、後半を柚女が歌ったのであるが・・・・
 
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前半ソロの所で声を出しているのは柚女だ! 先月一緒に練習した時よりもうまくなっている。かなり練習したなと思った。そして歌の後半にもう一度ソロがあるのだが・・・・今度は歌里が歌っている! こちらも凄く上手い。これは顧問の先生も悩んだろうなと思った。柚女たちの中学と歌里たちの中学が合同で出てくるのは今年限りである。来年は元々の○○中学と△△中学に別れるから、来年はこのふたりは別の学校のライバルとして戦うことになる。
 
約1時間後に青葉たちの中学の演奏があった。こちらの自由曲は『島の歌/フィナーレ・幸い』である。ここまで出て来ただけのことはあって、ほんとにみんな上手くなった。春先には凄まじく音程が不安定だった男子たちもかなり安心して聴ける音を出している。やがてソロパートが来る。前半をふつうの音程で歌い、後半はオクターブ上げて歌う。最高音は F6 である。『夜の女王のアリア』の最高音と同じだ。その部分を歌った時、会場内に「わぁ」という感じの反応があり、青葉はちょっと快感であった。
 
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全国大会だけあって、ほんとにレベルが高いと思った。正確に歌うのは当然。合唱としての調和がちゃんととれているのも当然。その上で表現力やその歌に対する解釈の深みなどが問われるハイレベルな戦いである。青葉たちは順位などは気にせず、のびのびと歌った。
 

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大会は4時半に終わったが、表彰式があり、最後に課題曲を会場に居る全参加者で一緒に歌った後、隣接する体育館に移動して交歓会が開かれた。歌好きの子たちばかり集まっているだけあって、あちこちで、にわかグループによる歌声が上がっている。このコンクールは、この交歓会での参加者同士の交流が売り物のひとつであり、ここから地域を越えた様々な繋がりや、また音楽ユニットが生まれたりもしている。
 
遠くから来ている学校は途中で切り上げ、あるいは最初から不参加であるが、椿妃たちの学校は東京20:16発のやまびこ、青葉たちの学校は東京20:12発のとき、で帰るので、結果的に同じくらいの時間まで会場にいて、同じくらいの時間に会場を出ることになる。
 
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青葉と日香理は携帯で連絡を取りながら、無事、椿妃・柚女・歌里と会うことができた。日香理と椿妃は先月の葬儀の時にも顔を合わせているので握手をしていた。
 
「お疲れ様でした」
「椿妃たち良いできだったのになあ。表彰台は遠いね」
「青葉たちもきれいにまとまっていたのになあ。みんな僅差だよね」
 
今年の優勝校は東北大会を1位で通過した福島県の中学校だった。椿妃たちの学校は6位、青葉たちの学校は9位であった。青葉たちは混声で出た学校の中では2番目の成績である。しかし10位くらいまでの学校の差はほんとに僅かであったと審査員長さんは言っていた。
 
「3位になった学校は女声合唱だったけど男子がひとり混じってたね」
「うん。大会規定でも参加者の性別と、演奏形態は無関係ってなってるしね」
「聞いていても男声は混じってなかったから、あの子女声で歌ってたのかな」
「出る子はいるからね。最近は女声の出し方かなり知られてきたし」
 
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「性別と演奏形態が別ということは、男子部員ばかりで女声合唱やったっていいし、女子部員ばかりで男声合唱や混声合唱やってもいいってことだよね」
「それできる学校があったらね!」
 
「せっかくだから何か歌おう」と椿妃が言い出して、5人でmiwaの「春になったら」
を歌い始める。するとそれを聞いて近くで一緒に歌い始める子たちがいて、みるみるうちに人数が増えていく。しかもいつの間にか二部合唱になってる!さすが合唱好きの子たちである。
 
歌い終わってお互いに拍手し、また近くの子たちと握手もする。
 
「よし『441』行こう」という声が掛かって、続けて同じmiwaの『441』を歌う。更に『オトシモノ』『chAngE』とmiwa特集という感じになった。
 
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青葉は何人かの子たちと連絡先を交換してから解散した。日香理も椿妃と携帯のアドレスを交換していたようであった。
 

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青葉たちは20日東京に日帰りで往復したのだが、22日には東京の冬子(ケイ)が富山まで1泊で青葉のヒーリングを受けるためにやってきた。
 
「20日に東京に来たんなら、そのまま東京に残ってくれていたら良かったのに」
と冬子。
「でも一応団体行動だから」と青葉は笑って答える。
 
「でも胸の手術跡はもうほとんど痛み無くなったよ。凄く調子が良い」
「良かった。私は組織つなぐ所までは出来ないから。私にできるのは身体が持っている治癒能力が正常に働くように後押しするだけ」
 
「でも身体って、物理的な物質で出来ている面と、機能とか反射とかいった『動き』の集合体という面とがあるんだね」と冬子は言う。
 
「ええ、そうです。数学で言うとオブジェクトとファンクションですよね。西洋医学はオブジェクトの部分に注目しすぎて、ファンクションの方を忘れがちなんです。漢方をはじめとする東洋医学は割とファンクションを見ていますね。私が操作できるのも、そのファンクション部分ですよ」
と青葉は答えた。冬子が頷く。
 
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「でも『キュピパラ・ペポリカ』すごく面白い曲ですね。曲自体も何だか無国籍だけど、歌詞がまた凄いです」と青葉は言う。
「うん。すっごく無国籍。『キュピパラ・ペポリカ』ってどういう意味ですか?って随分訊かれたけど、私にも分からないんだよね。夢の中に出て来た言葉だから」
と冬子。
 
「え?スペイン語でしょ?」と青葉は言った。
「スペイン語なの?」と冬子が聞き直す。
「政子(マリ)さん、スペイン語できるし。だから書いたんだと思ったのに」
「どういう意味?」
 
「cupi para peporica, cupi para celusica って定型句ですよ」
「へー」
「peporica(ペポリカ) も celusica(チェルシカ)も香辛料の名前。peporicaはすごく辛い唐辛子。celusicaの方はあまり辛くないです」
「ほほお」
 
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「paraは英語の for に当たる前置詞」
「あ、それは分かる」
「cupiは cupido の省略形で天使のことです」
「なるほど」
「だから、ペポリカの天使、チェルシカの天使、というので、これは恋に効く呪文として知られてるんです」
 
「ほんと!?」
「嘘です」と青葉。
 
冬子はしばらく絶句してから「あのね・・・おとなをからかうのもいい加減にしなさい」と笑って言った。
 
「でも女の子ってしばしば平気で嘘言えると思わない?」と冬子。
「ああ、嘘ついてるように聞こえないように嘘つけるのが女の子の特技ですよね」
「男の子はその点だめだよね」
「男の子の嘘はすぐ分かりますね」と青葉。
 
「でも、冬子さん、ここ1〜2日の間に男の子との出会いがあったでしょ」
「え? そんなのあったかな??」
冬子はマジで考えている様子であった。
 
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「冬子さんの大きな運命の糸が動いてる感じですよ」
「へー。でも私は男の子との恋愛とか結婚って半ば諦めてるしな。性別変えた女の子って、どう考えても結婚対象外だよ」
 
「諦めることないんじゃない? 少なくとも冬子さんに恋しちゃう男の子はいますよ。私なんかも諦めるつもりないし。男の子と結婚する気満々です」
「あ、そうか、青葉ちゃん、彼氏いるからね」
「ええ。向こうの両親に気に入ってもらってます」
「そっかー」
 
「既成事実作っちゃえばいいんです。私、赤ちゃんも産んじゃう気満々」
「赤ちゃん!?」
「冬子さんだって子供できると思う」
「そういえば6月に集まった時に、そんなこと言ってたよね」
「あの後考えてたんだけど、冬子さんには子供ができるって確信した」
 
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「ほんとに? でも結婚は分からないけど恋くらいはすることあるかな・・・・」
と言った冬子は、そういえば羽田に向かう途中で高校の同級生の木原君と久しぶりに再会したな、というのを思い出していた。
 
「そうそう。和実がまた10月くらいにみんなで集まれるよう計画立てるって言ってました」
「和実ちゃんか・・・・あの子もちょっと面白い子だね」
「ええ。かなり面白い子です」
 

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翌週の土日27-28日は、青葉がまた岩手に行って、現地で何件かの霊障相談やヒーリングをこなしてきた。28日に彪志の模試があるので、今回は彪志と会うのは遠慮して、電話で少し話しただけであった。
 
そのあとの月火29-30日はまた冬子が富山に来てヒーリングを受けていった。そして9月3日の夜、青葉は美由紀と日香理を誘って富山市の八尾(やつお)に行き、風の盆を見た。夜9時頃から始めて朝4時くらいまでの徹夜コースである。風の盆というのは公式行事は3日の夜9時で終了するが実はその後が本番で、公式・非公式の多数の街流しが、美しい石畳の街を練り歩く。
 
富山市内の民謡酒場の人に冬子がおわら節を習ったので(青葉の所にヒーリングを受けに来たついでに富山市に寄ってお稽古を受けていた)、その人の縁で風の盆の(非公式)街流しに冬子が参加することになり、青葉たちはそれを見に行ったのである。
 
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美由紀も日香理も「『キュピパラ・ペポリカ』大好きです」と言って、冬子と握手をしてサインをもらっていた。
 
民謡酒場のオーナーさんのお母さんが八尾在住なので、その縁でのことだった。お母さんの友人夫婦(このふたりも八尾在住)の踊り、お母さんの三味線、オーナーさんの胡弓、オーナーの妹さんの太鼓、それから酒場の常連さん2人と冬子の3人で、交替で歌とお囃子をしていた。青葉たち3人はお揃いの青い浴衣を着て、隊列の後を付いて行っただけなのだが、ここまで街流しの一部と思われている感もあり、沿道の観光客たちから随分カシャカシャと写真を撮られた。
 
「でも、公式の保存会の人たちの踊り手さんが着ているピンクの浴衣、凄く可愛いね」
「うん。あれは地元出身の若い未婚の女性しか着られないのよね。超限定品」
 
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私たちは1時間流すと1時間休憩して他の街流しを見ていた。
 
「浴衣とは言うけど絹だよね」
「そうそう。雨に濡らせないから、雨が降ったら中断だよ。元々八尾は絹の名産地だったからね。♪歌の町だよ八尾の町は〜歌で糸とる、オワラ桑も摘む」
と冬子は途中からおわら節の一節を歌ってみせる。
 
「元々おわらって桑や蚕の世話をする時の労働歌だったんでしょうか?」
「だろうね。今みたいに芸術性の高いものになったのは昭和初期みたいだけど」
「あれ・・・一本刀土俵入りに出て来ました?」と日香理。
「そうそう。曳山会館の所にその歌碑があるよ」
 
「何だかいろんな歌詞がありますよね」
「たぶん1万種類以上あるんじゃないかという話。新作も毎年作られてる」
「わあ、凄い」
 
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美由紀・日香理は生まれた時から富山県に住んでいるが、風の盆を見に来たのは初めてだと言っていた。
 
「だけど、女踊りも優雅だけど、男踊りも格好いいですよね」
「富山県は男踊りの格好良いものが多いね。おわら節と並んで富山三大民謡といわれる、麦や節・こきりこ節もそう」
「こきりこ、『True Tears』でもちょっと出て来たね」
 
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