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■春波(3)

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春貴は8月末でH南高校の教師を辞めたものの、9月一杯は富山県の教職員だったので、どこかに出勤する必要は無いものの、自宅アパートに居た。しかしそれも9月末で終わったので、千里さんの飛行機で能登空港から旭川空港に運んでもらい、そこからヘリコプターで北鹿島(おっぱい島)に運んでもらった。
 
1ヶ月も不在にすると郵便物のチェックが必要である。常識的には親に頼むのだが、なんで県立高校辞めるの?とか訊かれて面倒なので、千里さんに鍵を預け、手間賃に2万円渡してお願いした。
 
能登空港から旭川に飛ぶ時は同乗者がいた。姫路の神社の女性?神職さんで、兼任している留萌の神社に向かうと言っておられた。姫路と留萌の神職兼任って大変そう!留萌まではヘリコプターにも同乗した。元々、旭川−留萌−おっぱい島、という路線が朱雀航空の出発点らしい。
 
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おっぱい島の食事は、ニシン、スケソウダラ、シャケ、牡蛎、くじらなど海の幸がたっぷりで美味しかった。時々
「防護壁に掛かったから」
と言って熊や鹿も持ち込まれた。
 

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「へー。防護壁ですか」
「高圧電流流してるからね」
「人間は大丈夫なんですか」
「人間は食えないし」
「そりゃ食べる訳にはいきませんけど!」
「壁はプラスチックのソフト壁と鉄のハード壁の二重構造になってる。人間やキツネはソフト壁ではねかえされる。ソフト壁壊して電流流してる鉄壁にぶつかるのはヒグマやエゾシカだけ」
「なるほどー」
 
他に泊まり客も居ないので、毎日島の周囲回廊をジョギングしたり、プールで泳いだりして過ごした。島はもう冬である。しかし屋内に居る限り、快適に過ごせた。ここの煖房は製紙工場の余った樹皮など燃やして入れているらしい。元々旭川にあった製紙工場を騒音問題から無人島に移したものだとか。
 
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この島にあるのは、温泉のほかは、製紙工場、棚田、養殖場だけ。養殖場は暖かい地域の水温をシミュレートして牡蛎などを育てており、棚田は全体を温室化して、ゆめぴりかを育てているらしい。北限の米だとか言っていた。外の気温は北海道の本島よりずっと寒く“常冬の島”(常夏の逆)だとか言っていた。人口はゼロで、キツネが400匹くらいとオロロン鳥が100匹くらい居るだけという。
 
キツネは天敵がほとんど居ないが人口が増えすぎないよう男女の居住区が分けられ、年間結婚を許される数も定められている。「性欲我慢できない者は睾丸を除去してやるぞ」と言ったら「我慢します」と言って毎日オナニーに励んでいるらしい。また男の娘が凄い人気だとか。
 
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しかし島でのんびり過ごすうちに春貴は心と身体が癒やされ、また頑張るぞという気分になってきた。島に居る間に来た生理は一度だけで、正確には分からないものの、卵巣がしっかりお仕事している気がした。生理不順も治ったかも。バストも大きくなったし!
 
何も無い島なのに、スマホも使えるし、wi-maxまで使えるのは凄いと思った。
 
 

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10月1日は全国的に衣替えである。
 
前日9月30日(月)の夕方、手毬はひとみに言った。
「お父ちゃんが新しいセーラー服作ってくれたから、ここに掛けとくね」
「何か違うんだっけ?」
「あんた最近胸が急成長してるから、胸のサイズを大きくして作り直してくれたんだよ」
「ぼく学ラン着るよぉ」
「そんなもの胸が入るわけ無い」
 
ひとみはギクッとした。それで恐る恐る学ランを着てみると、母の言った通りボタンが留められない!
 
えーん!明日からぼくどうすればいいの?
 
(セーラー服着てけばいいじゃん!)
 

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翌朝、ひとみはぎりぎりまで悩んでいたが、結局セーラー服を着る以外の選択肢が無い。二択とかではなく、一択である!
 
それで
「何やってるの?遅刻するよ」
と言われて、仕方無くセーラー服を着て出てきた。母は
「もう遅刻するじゃん」
と言って車で学校の前まで送ってくれた。
 
それでひとみは女子たちに
「よしよし。ちゃんと制服着て来たね」
と撫で撫でされた。
 
でも重大な一線を越えてしまった気がした。
 
担任は
「松山さん、生徒手帳作り直そう」
と言い、セーラー服を着ているひとみの写真を撮った。そして新しい生徒手帳は3日後に渡された。セーラー服を着た写真が転写されており。2年1組・松山ひとみ・女と印刷されている。それで、ひとみはとうとう女子中学生になってしまったのである。
 
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10月初旬、青葉は春貴に電話した。
「春貴ちゃん名前を貸してくれないかなぁ」
「何かあやしげな話?」
「イリジウムの密輸なんだけどね」
「え〜!?」
「まそれは冗談だけど」
 
それで青葉の依頼で、春貴は岩本新校長を通して、市役所にこういう提案をしたのである。
 
「このたび、H南高校の教師を退任することにした。その置き土産で、国道に生徒たちの安全のため街灯を設置したい。費用は全部自分が出す」
 
退任する教師の置き土産で、生徒の安全のためというのは、とても合理的で妥当な理由である。費用も春貴が出すと言っているのだからこの話はスムースに通った。
 
街灯はH南高校前の国道上下線に10本ずつ10月中に設置された。他にガードレールも取り付けた。そしてそれ以降、この場所では死亡事故は起きなくなったのである。結局H南高校の前校長が最後の犠牲者になった。番組では単に
「死亡事故多発場所があったが街灯が設置され車から歩行者が見えやすくなったので、事故は起きにくくなった」
とだけ紹介した。視聴者の多くが“モスラ対策”と同じ手法だなと感じた。
 
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H南高校の生徒達にもこの街灯は好評で「明るくなって良かった。今まで結構怖かった」と言われ、生徒会から春貴に感謝状が贈られた。市長からも感謝状をもらった。
 

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この他に校門前に信号機(感応式・押しボタン併用)も設置されることになった。
 
校門近くには、歩道橋もあるのだが、生徒たちも住民もみんな面倒くさがって路上横断していた。前から危険だという声があったが、市は「歩道橋を使って」と言っていた。しかしベビーカーや車椅子の人は困っていた。
 
車道をアンダーパスにする手も検討されたが、それでは学校に出入りする車が不便。
 
それで信号がまだマシということになった。信号があると学校から出る車も出やすい。また道路に凸凹の加工をして車に注意喚起することにした。
 

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青葉が春貴に連絡した時、春貴は青葉に尋ねた。
「メダルって金銀銅だけどさ、4位にもメダルあけるとすれば何メダルだと思う?」
「うーん。鉛(なまり)か鉄か木や陶磁器あたりだと思う」
「いやインターハイで4位になった選手達に何か記念品あげたいなと思ってさ」
「ああ、そういうのもいいかもね」
「鉄のメダルとか作れるところ知らない?」
「鉄というかステンレスがいいよね。知り合いに訊いてみるよ」
「よろしくー」
 
この件は青葉から千里に依頼され、千里は九重に相談した。
「すぐ作りますよ。大きさは何kmくらいにします」
 
こいつはジョークなのかマジなのかよく分からんな。5kmとか言ったら本当に直径5kmのメダルを造りかねん。
 
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「直径3-4cm程度で」
「小さいですね。材料は金かなにかにします?」
「いや。だからステンレスで。オーステナイト系ね」
 
ステンレスには磁石に付かず加工がしやすいオーステナイト系と、磁石に付き切削がしやすいフェライト系がある。
 
「2024 インターハイ・バスケットボールとか刻印しましょうか」
「そんなの入れたら“ニセモノ”になっちゃうから単に“4”とだけ入れて」
「分かりました」
 
春貴が頼んだのは15個だったが、青葉は千里に16個頼んだ。
 

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H南高校前の国道に街灯が設置された直後、千里は能登組の龍族を20人連れて現地を訪れた。千里のサインに彼らが一斉に街灯のポール一番上に飛び付くと何かを転写シートで転写した。そしてすぐ撤収した。
 

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春貴がおっぱい島滞在中に、美奈子から電話があり、良かったらフラミンゴの年間パスを新しい顧問の先生に譲ってもらえないかと言われた。しかしパスはアパートに置いたままなので、これは鍵を預けている千里さんに頼んだ。千里さんは実際にはパスを再発行して美奈子に託してくれた。
 
なお谷町先生が新しい顧問になってほとんどの部員が復帰したのだが、晃のみは復帰しなかった。長身でシュートもブロックもリバウンドもうまい晃は、普通の先生には選手に選ばれることが確実で、大会に出ない理由を説明できないからである。
 

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10月12日(土)、礼音は今度は妙義山・榛名山と同じ群馬県内の赤城山(あかぎやま)に行って来た。妙義山・榛名山・赤城山で、“上州三山”である。
 
礼音と山村マネージャーは前日夕方、前橋市に行き一泊した。いつものように〒〒テレビ取材班が来たが千里さんは、この地出身の赤石さんという40代男性を連れてきていた。山村とも旧知のようである。赤石さんは国定忠治のセリフを言っていた。
 
「赤城の山も今夜を限り、生れ故郷の大沼や、縄張りを捨て国を捨て、可愛い子分のてめえ達とも、別れ別れになる門出だ」
 
赤石さんは国定忠治が好きで、飲むと必ずこのセリフが出るらしい。
 
なお“赤城山”という名前の峰は存在せず、この付近一帯の連山の総称が赤城山である。(恐山とか立山などと同様)
 
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黒檜山 (1828m) - 赤城山の最高峰 - くろびさん
駒ヶ岳 (1685m) - 赤城山の第二高峰
地蔵岳 (1674m)
長七郎山 (1579m)
小地蔵岳 (1574m)
荒山 (1572m)
鈴ヶ岳 (1565m)
 
などなどの峰がある。
 

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今日は黒檜山登山口から出発し、黒檜山に登って駒ヶ岳まで縦走し、下山する5時間弱のコースである。最初は黒檜山頂上までの単純往復で計画したものの礼音の体力が充分高まっているので駒ヶ岳まで縦走することにした。それでこの山に詳しい赤石を連れてきた、ということのようである。
 
登り始めて30分で猫岩(ねくいわ)に到達する。小休憩して先に進む。1時間半で駒ヶ岳との分岐点に至る。ここでゆっくり休んでからほんの10分程度で黒檜山山頂に到達した。
 
記念写真などを撮ったら駒ヶ岳に向かう。縦走と聞いてある程度覚悟していたのだが、この縦走コースは道が整備されていて、とても歩きやすかった。1時間もせずに駒ヶ岳に到着する。ここでも記念写真を撮り、下山した。黒檜山登山口から駒ヶ岳登山口までほんの4時間ほどの登山だった。(礼音が体力付けてきたから楽に感じるのだと思う)
 
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近くの温泉で身体を休め翌日東京に戻った。でも赤石さんの趣味で国定忠治と彼女のコスプレをした。国定忠治が千里が召喚!した三国舜(突然周囲が変わってキョロキョロしていた)で、彼女がきららである!
 

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10月14日(月)、ひとみに5回目の生理が来た。もうこのくらいになると生理はすっかり“日常”になった。
 
オーリンは言った。
「生理の時ちんちんや玉袋があると血が付いて大変でしょ?生理期間中は取り外しておこうか」
「それは思ってた。じゃ生理期間中は」
「OKOK」
 

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留萌三泊P神社・秋祭りの日程
2001.10.27-28
2002.10.26-27
2003.10.25-26
2004.10.30-31
2005.10.22-23
2006.10.28-29
2007.10.20-21
2008.10.25-26
2009.10.24-25
2010.10.23-24
2011.10.22-23
2012.10.20-21
2013.10.26-27
2014.10.25-26
2015.10.24-25
2016.10.22-23
2017.10.21-22
2018.10.20-21
2019.10.26-27
2020-2021 コロナのため中止
2022.10.22-23
2023.10.21-22
2024.10.26-27
 

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10月25日(金)夕方、姫路に住む千里(ロビン)は、まゆり・星弥・月弥、工藤公世・るり夫妻と一緒に姫路からいつもの桜ジェットで旭川空港に飛んだ。ヘリコプターで留萌の崎山に移動し、迎えに来た和弥および貞美の車で麓のP神社に移動する。
 

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一行が到着したのは夕方19時頃だったのだが、星月は氏子さんたちに人気で
「若神主さん、ご祈祷してくださいよ」
と言われて、30人くらいの祈祷をした。貞美が太鼓を叩き、千里が笛を吹いた。
 
和弥は今月初めから留萌に来ていたので、ここしばらくは和弥が主として祈祷を担当していた。特に今月は七五三が多い。12-13日の土日は特に多かった。普段は千里(ロゼ)が主としてやっているが、日に数回、常弥がする場合もある。常弥は今年96歳でさすがに連続して祈祷をするのは辛いようである。一度やるとしばらく休憩が必要である。
 

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10月25日(金).
 
23:50. 千里(ロビン)はP神社の宮司部屋に入り、常弥・和弥たちに会釈してその奥の囲炉裏(いろり)部屋に入る。和弥も千里に続いて囲炉裏部屋に入る。まゆりと星月が見学している。
 
もう寒いので、宮司部屋と囲炉裏部屋(冬も夏も暖かい)の間の障子は開けられている。
 
千里は囲炉裏の火を藺草(いぐさ)の細い束に移し、そこから更にカンデラ(燭台)のろうそくに移して、その燭台を和弥に渡した。和弥は燭台を持って昇殿し、0時ジャストに神殿に置かれた3つの燈台に点火した。今年もP神社の秋祭りが始まる。
 
(再掲)

 

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今年この燈台の火の番を務めるのは下記である。
 
昼番
工藤公世
長内玲羅★
横内ゆうな(高校生巫女)
 
夜番
翻田星弥
翻田月弥
鞠古留実子★
 
★が昼夜各々のリーダーになる。星弥と月弥は(わざと)同じ服を着ており、留実子には、どちらがどちらやら分からないようだった。
 

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朝5時頃、十二単(じゅうにひとえ)みたいな祭主衣裳を着た和弥が来て夜番の人たちに「お疲れ様です」と声を掛ける。その後、和弥は社務所床暖房(灯油式)のスイッチを入れた。
 
番の人は6時に昼番の人たちと交替し、控室で朝食を頂いた。昼番の人たちは交代前に食べている。
 
また6時に床暖房の送風スイッチを入れ、暖気が境内に広がるようにした。なお境内の周りには塀がある。参拝者は6時半頃から来始める。
 
この床暖房と送風機構は2007年に社務所を建て直した時、花絵の提案で作ったものである。七五三・秋祭り・年末年始・節分など参拝者の多い時に作動させる。
 

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