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■春波(1)
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9月にはいってすぐ、手毬は桃香に電話した。
「ひとみの胸がだいぶ育ってるのよ。春に作ったセーラー服では少しきついかもしれないから、悪いけど作り直してくれない?」
「ああ。オーダー入れとくよ。今バストいくらある?」
桃香は電話を受けながら自分のパソコンの wives/temari/docs フォルダの hitomi-size.txt を開けて春に測ったサイズを確認する。
「88」
と手稀は答えた。聞き間違いが起きないように英語でeighty eight と付け加えた。
春測ったサイズはUB74 TB80 でAAAカップに相当するが、そんなサイズは無いのでAカップということにしてA75のブラジャー(TB85)を買ってやりそれに合わせて、セーラー服も86で作っている。88になったのなら、Bカップではないか。急成長だ。わずか半年で8cmも育った!?こないだハウステンボスでドレス着せた時もかなり胸あるじゃんとは思ったが。女性ホルモンの飲ませすぎでは。
「そりゃだいぶ育ったな」
「成長期だからね」
「じゃ92でオーダーしとくよ」
「ありがとう」
この新しい制服は9月中旬に届くことになる。
桃香は思っていた。この子は可愛いし優しい性格だしいつもスカート穿いてたから女の子になりたいのだろうと思っていた。しかし4年生頃野球やりたいというのでグローブとか買ってやった。
男の子の自覚が出てきたのかなと思っていたが中学に入るとき、野球はやめてしまったようだ。野球やってた時期も相変わらずスカート穿いてたしやはり女の子になるのかも。こないだドレス着せた時も嬉しそうだったし。
オリンピックが終わり、帰国して霊界探訪に復帰した青葉に、真珠は言った。
「ちょっと気になる交通事故多発地点があるんですよ。明恵も『ここはおかしい』と言ったけど、明恵の手には余るようなんです。青葉さん、見てもらえませんか」
それで真珠が夕方の“逢魔が時”に連れて行ったのが、氷見市のH南高校近くの国道だったのである。
「ここ昨年1年間に4件も歩行者が車にはねられる事故が起きてるんですよ」
“交通事故多発地点”という注意を促す看板も立っている。
青葉は、ここ私が今にも車道に飛び出しそうにしていた春貴を抱き留めた場所じゃん、と思った。椅子に座ってしばらく観察していたが
青葉も
「これは車道に飛び出したくなるよ」
と言った。
「東尋坊なんかと似てますよね」
と明恵。
「似てる。霊集団がおいでおいでしてる」
「これどうしたらいいでしょうね」
「少し考えてみる」
青葉は千里にも見てもらった。千里は言った。
「簡単だよ。この霊集団を浄化してしまえばいい」
「私が3000万くらい依頼料払うからやってくれない?」
「また青葉はそうやって自腹切るし」
「だって放置できないよ」
「やってもいいけど、たまたまその時近くに車が居たら巻き添えになる」
「どうなるの?」
「100m程度上空まで、竜巻で飛ばされる」
「飛ばされた後は?」
「重力の作用で自然落下するだろうね」
「乗ってた人は?」
「知らん。ちなみに100m落下した物体が地面に激突する時の速度は時速160kmだよ」
1/2 mv
2=mgh だからv = √(2gh) = 44m/s = 160km/h
ダメだこりゃ。
「だから車の通りが無い時にやる必要がある」
こんな幹線国道に車の通行が途絶える時間帯なんて存在しない!そこで青葉は別の方法を考えることにしたのである。
霊界探訪編集部でこの“吸い込まれスポット”の対策を協議したのが8月下旬だった。
真珠は提案した。
「北陸道のモスラ対策で街灯を立てたでしょ?ここにも街灯立てたらどうでしょう」
「うん。それ効果あると思う。明るければ歩行者も幻覚に襲われにくい。車からも歩行者がよく見える」
基本的に心が弱っている人がやられやすい。春貴は校長に叱責された直後だった。(後に犠牲者になる校長もクビを通告された直後で心に弱みがあった)
「どこに言えば街灯立ててもらえますかね」
「取り敢えず市役所に訊いてみよう」
しかしこの問題はこの先で物凄く苦労することになるのである。
「街灯の設置ですか?そちらは住民のかたですか?」
「いえ。金沢のテレビ局なのですが」
住民から陳情があれば、建設課で検討するが、外部の、しかも県外の企業からの要請には必ずしも対応しかねると言われる。また設置場所が国道なので、国土交通省の認可も取る必要があり、そのためには充分合理的な理由が必要だし、予算を取るため、議会の承認も必要だと言う。北陸道のモスラ事件では高速道の管理局の一存で決められたし、ミステリアスなできごとに理解のある人がいたからやってもらえたが、一般の道路ではなかなか難しいようである。
それで青葉達は地元の町内会に相談したり、議員さんに働きかけたり、いろいろしてみたものの、世間的に霊能者とか信用が無い。むしろ詐欺まがいのやからと思われているので不調であった。そんなことをしている内に、9月下旬また死亡事故が起きてしまった。
被害者がH南高校の校長と知って青葉は仰天したのだが、同時に“うまい手”を思い付いた。
9月7日(土)、礼音は群馬県の妙義山(1104m)に行って来た。
前日夕方、群馬県富岡市に山村マネージャーと行き、ホテルで一泊する。翌日早朝、〒〒テレビ取材班と合流、妙義神社に行き、お願いしていた山岳ガイドさんに会う。装備を確認して登り始める。今回は落石がよくあるということで全員ヘルメットをしている。
神社を抜けた後、登山道にはいる。妙義山は落石が多いため、定められた休憩場所以外で立ち止まって休むことが許されない。ひたすら歩く必要がある。また特に夏はヒルが発生するので肌の露出は厳禁である。
第1見晴・第2見晴・東屋を経て、大人場(おにんば:五合目)で最後の休憩をする。ガイドさんはこちらが全員しっかり付いてくるので驚いていた。信仰の山で登山者は多いが初心者未満の人も多いらしい。
頂上もあまり長時間留まれないので、すぐ下山した。麓まで降りてから、近くの温泉で身体を休める。高崎市に移動してから1泊。翌日はロープーウェーで榛名(はるな)山の榛名富士(1391m)に登ってから東京に戻った。
先日、ひとみが体育の時間にソフトボールで男子の打者を多数凡打に打ち取ったことからひとみは野球部の紅白戦でBチームのピッチャーをしてくれないかと頼まれた。
野球ではウィンドミルは使えないが(反則投球になる)、普通のアンダースローから投げる速球でAチームのレギュラー選手たちをどんどん凡打に打ち取った。
「ほんとに男なら選手にしたいくらいだ」
「女で済みませーん」
(本人も正式部員にはなりたくないのでこんなこと言ってる。小学生の時野球部に居て先輩に押し倒されてキスを奪われたことがあるので中学にはいる時やめてしまった:転校したおかげで今の中学には当時の康太を知る人は居ない)
しかしひとみの球で徹底的にミート打法を鍛え直されたお陰で、このチームは秋の大会でも再びベスト4まで行くことになる。またひとみは試合前の練習でもアンダースローからの速球を多数投げるパフォーマンスで、相手チームを心理的にゆさぶった。
「**中のピッチャー、女なの?」
「まさか。女は選手になれないだろ」
「しかしあのボールは脅威だな」
監督は審判の質問に「ただのバッティング・ピッチャーです」
と答え、次の試合からはしなかった。
しかし後から、やはり女ピッチャーの居る佐世保市の中学から練習試合を申し込まれ、女vs女で試合をした。この試合は新聞にも載った。点数は1対1の同点だった。(7回終了。延長無し)なんか観客が凄かった。ひとみは試合後向こうの女ピッチャーと握手した。
(ひとみ君、もう今更男には戻れないのでは?)
9月中、ひとみは女子更衣室、(生理の来た16日以降)女子トイレを使い、体育もだいたい女子と一緒に行動した。男子vs女子で何かする時は女子チームにはいった。柔道も女子と組んだ。だいたい腕力のあるユウカちゃんと組んでいた。ユウカちゃんは遠慮無くやれるから楽しいとか言っていた。おかげで、だいぶ投げられたが。女の子相手だとかなり手加減が必要らしい。
性教育とかも女子と一緒に受けた。お陰で女の子の身体に理解が深まった。
秋風コスモスはNHKの部長さんから電話をもらった。
「今年も紅白に出場する歌手をそちらの事務所から、必ずアクアちゃんまたは北里ナナちゃんと常滑真音ちゃんを含めて5組推薦して頂けませんか」
「北里ナナ、常滑真音、ラピスラズリ、立山煌、薬王みなみで」
元々§§ミュージックの枠は4だったが一昨年は薬物事件で出られない歌手が大量発生したため、それを埋めるのに6人も出た。昨年は暫定的に?5になった。今年もその5が維持されるようである。
「北里ナナさんは紅組でいいですよね」
「はい、それでいいです」
「立山きららちゃんは紅組でいいですか?それとも白組にしますか?できたら紅組にしていただくと助かるんですが。白組は競争が厳しいんですよ。逆に女性歌手は今年大きく売れた人が少なくて」
「分かりました。紅組でいいです」
それで、とうとう立山きららは紅白の紅組に出ることになったのである。
9月27日(金)の霊界探訪では、ジュニアパンパシフィック水泳選手権の結果、立山煌と行った妙義山・榛名山、定点観測、各地の夏祭りの様子などをレポートした。
9月下旬、青葉は御近所の人が亡くなり、高岡市内の葬儀場で葬儀があったので、顔だけでも出してこようと思い、行って来た。香典を渡した後、焼香してこようかと思ったら何だかお隣の部屋が騒がしい。一体何の騒ぎだと思って覗いてみると邪霊が飛び回っている。思わず中に入って行き、光明真言を唱えて邪霊を消滅させた。
オン・アボキャ・ベイロシャノウ・マカボダラ・マニ・ハンドマ・ジンバラ・ハラバリタヤ・ウン
青葉はすぐ退出したが、喪主さんが追いかけてきて、香典返しの袋を大量に押しつけられたのでもらっておいた。中味のビール券は真珠にあげた。
喪主になっている奧さんは言った。
「庵主様、とても法力(ほうりき)の強いお方とお見受けします。主人を轢き逃げした車を見付けることはできないでしょうか」
「弾き逃げされたんですか?」
「車の通りの多いところで、手がかりが無いらしいんです」
「御主人が亡くなった時に身に付けておられたものが何かありませんか?帽子とか手袋とか」
奧さんは
「これはどうでしょうか」
と言って故人の靴を持って来た。
「やってみましょう」
「お願いします」
それで青葉は気は進まなかったものの、この靴を使って“水見式”をおこない、犯人の車のナンバーと思われるものを得て、警察に密告した。
その結果K先生が逮捕されることになる。青葉が靴を返しに行くと奧さんは感謝して20万円くれたので、もらっておいた。
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