■春シン(11)
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翌日20日、女子1500m自由形の予選が行われ、田村・井上以外の4人が決勝に進出した。田村・井上もあと少しだった。
「やっぱ1500はきつい」
と井上。
「お肉いっぱい食べて体力付けよう」
「あの焼肉素敵ですね」
毎日夕食は若葉の提供で焼肉になっている。井上は「遠慮せずにたくさん食べれて嬉しい」と言っている。御飯も5〜6杯食べている。
21日には、女子1500mの決勝が行われた。結果はこうなった。
1.川上 2.リル(1.2) 3.金堂(0.6) 4.木村瑞江(1.7) 5.ハネ(0.3)
川上は五輪代表確定である。ハネもジュニア・パンパシフィックほぼ確定である。あとは審議次第。
22日はこの6人は競技が無かった。23日、午前中に女子200m個人メドレーの予選があり、出場した金堂は準決勝に進んだ。そして女子200m個人メドレー予選の直後に女子800mの予選が行われた。金堂は前の組の人たちが泳いでいる時間だけ、ほんの10分程度しか休めなかったが800mも元気に泳いでしっかり決勝進出した。
「金堂凄い体力です」
とアナウンサーが言っていた。
金堂はその日の夕方行われた200m個人メドレー準決勝でも元気に泳いで決勝に進出した。
最終日24日、まず200m個人メドレーの決勝があり、金堂は僅差ではあったが優勝した。そしてその直後に800mの決勝が行われた。今度は全く休む時間無しである。しかし金堂は疲れを感じさせない元気な泳ぎを見せた。
「驚異的な体力ですね」
とインタビューアーが訊いていた
「普段はリルちゃんたちと毎日3000m自由形やってますから」
「3000ですか!?」
それで結果。
1.川上 2.リル(0.6) 3.金堂(0.4) 4.木村瑞江(0.8) 5.ハネ(0.1) 6.田村(0.8) 7.井上(0.3)
木村さんは仙台の選手で、金堂が置いて来た“流れる水槽”で練習していた。健闘したが、4位では五輪に行ける可能性は無い。年齢的にロスは厳しい。
大会終了後、日本水連で会議が行われたが会議は紛糾し、予定より2時間もすぎてから代表選考について発表があった。
・優勝した選手は当然代表にする。
・本来代表は2名までだが、メダルを取る可能性のある選手が3人いる場合は3人派遣してもよいという特例を使用する。
この結果、次のように代表が決定された。
パリ五輪
800m,1500m 川上・竹下リル・金堂
400iM 川上・金堂・竹下リル
200iM 金堂・山部
ジュニア・パンパシフィック
800m,1500m 竹下ハネ・田村真美・井上道代
水連強化部長は特にコメントして、津幡組の幡山ジャネ主将に手紙を書き、夏までに田村・井上に1500mを泳げる体力を付けさせてくれと要請したことも明らかにした。
「地獄の特訓だな」
とマネージャーの月見里(やまなし)姉。
「こわ〜っ」
とふたり。
「当然ハネちゃんも付き合ってもらう」
「え〜!?」
「シーラちゃんもね」
「ぼくもですか!?」
「君はそもそも女子になる訓練も受けてもらう」
「訓練で女子になれるんですか?」
「生理する練習、女の子の場所からおしっこする練習」
「物理的に無理な気がする」
俊美はお買い物に出掛けていて、ばったりと中学の卓球部で一緒だったカスミちゃんに遭遇した。
「最近はだいたいそういう格好?」
「うん。男物の服無くなっちゃった」
「当然だね。中学の時には既に性転換が終わってたからね」
「あはは」
俊美は彼女に結婚式祝賀会の案内状も渡した。
「もし時間の都合が付いたら御飯食べに来て」
「すごーい!お嫁さんに行くんだ?」
「実は妊娠中」
「えらーい。当時からとしちゃんには生理があるのではという疑惑があったし」
「悪いことできないなあ」
中学1年の夏休み。
俊夫は卓球部の合宿に参加した。場所は青少年自然の家で、何組かのスポーツ団体が合宿していた。広いところで体育館が幾つもあり、宿舎は男子用と女子用が棟から別れていた。
俊夫は男子のほうに泊まっていたのだが、同じ1年の男子Aから
「女子宿舎に忍び込もう」
と唆された。
「叱られるよお」
「見付からなければ平気」
それで夜8時頃、ふたりは女子宿舎に忍び込んだのである。女子宿舎の敷地内に侵入する。玄関は閉まっていたが、Aは2階のベランダに梯子を掛けた。先に俊夫が登って、ベランダにはいり、その後Aが登ってきたが、Aは登った後、うっかり梯子を倒してしまった。
凄い音がする。灯りが点いて人が来た。俊夫は目を覆った。
Aの身分は女子部長のカスミちゃんが「うちの男子部員です」と証言してくれたので、警察を呼ぶのは勘弁してもらった。でも無茶苦茶叱られる。
しかし俊夫は叱られている内に叱られている内容が自分の思っているものとは違うことを認識した。主に叱られているのはAである。そして俊夫は“彼を手引きした”として叱られているようだった。つまり俊夫は女子で女子棟に泊まっていると思われていた。Aは明日反省文を提出することで勘弁してもらい、男子棟に帰っていった。そして俊夫についてはカスミが「さ、としちゃんも部屋に戻ろう」と言って引き取った。
カスミは言った。
「私たちの部屋、ベッドが空いてるからそこで寝ればいいよ」
「うん」
「お風呂はいった?」
「まだ」
「じゃ私が付いてってあげるからお風呂入りなよ。こちらは全部員もう入ったから」
女子宿舎のお風呂に入るのは抵抗があったが、みんな入った後ならいいかなと思った。それで彼女と一緒にお風呂に行く。シャンプーセットは彼女が貸してくれた、
カスミは脱衣場の外側で待っていて俊夫だけ脱衣場に入る。ロッカーを開けて服を脱ぎ、浴室に移動する、女の人が5−6人はいっていた!
カスミは「全部員入った」と言った。だからうちの卓球部は全員入っていたのかも知れないが、一緒に合宿している別の団体の人はまだだったんだ。見た感じ、入っているのは女子大生っぽい。
“魔女っ子ちーちゃん”の声が聞こえる。
「一時的に女の子に変えるね」
「うん」
それで俊夫は女の子の身体になって、洗い場に行き、髪を洗い、身体を洗った。あそこを洗う時はどきどきした。いったん身体全体にシャワーを掛けてから浴槽に浸かった。女子大生さんも浴槽にはいってくる。
「君中学生?」
「はい。まだおっぱい小さくて」
「心配することないよ。その内大きくなるから」
5分くらい浸かってからあがり、身体を拭いて服を着た。
脱衣場を出る。カスミちゃんが言った。
「他の団体さんがはいってたのね」
「女子大生さんたちだった」
「お風呂平気だった?」
「なんとか」
「ふーん。女子大生と一緒にお風呂にはいれるのか」
千里はパリ郊外に60m四方ほどの土地を購入し、取り敢えずプールが設置できる程度の穴を掘らせた。そして津幡のプライベートプールを代表選考会があっている間お休みにし、プールの水を抜いて、筐体(地震で傷んだが修理した。しかし、長さがわずかに規定より長くなった)を持って行って、ポンと填め込んだ。そして、津幡の方には、新品の12レーンの筐体を新たに設置してもらった。
千里はまたマルセイユとグラナダで使っているのと同じ、硬水の軟水化システムを導入した。また体育館と宿舎も建設した。
3月19日(火)、都内の公立中学で卒業式が行われた。§§ミュージック関係でこの日中学を卒業したのは下記である。
立山煌→J高校(世田谷区)三国舜が在学中
鈴原さくら→M高校(世田谷区)木下宏紀などの母校
宮地ライカ・知多めぐみ→T女子高(足立区)女子寮から近い
麻生ルミナ・紺青セイラ・入瀬ホルン→C学園(北区)アクアやリズムの母校
古屋あらた・月城たみよ・長浜夢夜→L高校(葛飾区)鈴鹿あまめ・セレンクロム等が在学中
花畑バニラ・米田ショコラ・西浜ももこ・南里くりこ・→E学園(葛飾区)舞音の母校
清水スピリ・夏江フローラ・筒木サリナ・水巻イビザ・山口ヨルカ→N高校(墨田区)
入瀬ホルンの姉・入瀬コルネは現在富山県に住んでいるのだが、毎月1〜2回は東京に出て来てお仕事しているので、4月からこちらに引っ越してくることになり、妹が合格したC学園の転入試験を受けて合格した。富山の学校で2年生の課程を修了見込みという証明書を書いてもらったので4月からC学園の6年生(高校3年生)に編入される予定である。彼女は女子寮の妹の部屋に同居する。
礼音はこの日、普段通り、セーラー服(ボトムはスカート)で登校した。卒業式の式典に出て、名前を呼ばれたら前に出て校長先生から卒業証書を受け取る。そのあと教室に入り、担任からあらためて卒業証書をもらい、お話を聞いた。公立高校の入試結果がまだ出てないので、もし落ちた人はすぐ連絡するようにと言っていた。
同級生の中では3割ほどが公立狙いのようである。ボーダーラインの子はたいてい滑り止めにどこか私立も受けている。最初から公立は諦めて私立狙いの子もいる。しかし区内には女子高も多く、女子は選択肢が多いよなと礼音は思った。もっとも
「女子高は恋愛のチャンスが無い」
なんて言っている子も居る!結構重要な問題かもね。いづれにせよ、みんな普段の成績から合格できそうな高校を受けているはずだが、試験当日体調が悪かったとかで失敗する子もたまに居る。その時は二次募集のある学校を紹介してもらえるはずだ。高校に行く気があるなら、最悪他の市区に行けば、どこかには入れてもらえるだろう。なお、礼音と仲良しのサユリは公立狙いである。
「レノちゃんは私立か」
とマリエちゃんが言った。
「さすがに芸能活動しながら公立は無理」
「ちゃんと女子制服頼んだ?」
「同じ高校の出身者からもらっちゃった」
「ああ、レノちゃんって女子としても細いから、たいていの人の服が着れるよね」
などという話をしていたのだが・・・
卒業式の翌日のことだった。
「礼音ちゃん、J高校の制服作ってもらったよ」
と佐々木マネージャーが言った。
「ぼく自分で頼んだんですが」
「なんだ。まあいいや。これは洗い替えとかの予備に」
と言って紙袋を渡された。
しかし嫌な予感がしたので、取り出してみる。
やはり女子標準服だった!
3月20日(祝・なる)、金沢市内のホテルで立石徹と岡安俊美の結婚式・祝賀会が行われた。
徹はタキシードを着て、俊美はウェディングドレスを着て、挙式は10時から神式で行われた。出席したのは双方の両親と、徹の友人の藤島・三船・高倉、伯父夫婦、俊美の側は姉のみどり、母の姉夫婦、クラスメイトの水野希望・平原マミ、卓球部の友人の高橋ユミ、といったところである。
母の姉夫婦には俊美の性別問題に触れないようお願いしておいたが、伯母は
「としちゃん小さい頃からスカート穿いてたもんね」
と笑っていた。
「最近性別変える人多いから気にすること無いよ」
とも言っていた。
なお俊美が妊娠中なので三三九度にはノンアルコール日本酒が使用された。
挙式の後、ふたりで市役所に行き、婚姻届けを提出してきた。
祝賀会は12時からおこなわれた。受付は、みどり・希望・藤島の3人でやってくれた。友人代表のスピーチは、藤島とマミがしてくれた。乾杯の音頭は徹の伯父が取ってくれた。祝賀会には、専務と次長、女子の入社予定者たちも来てくれていた。
マミは言っていた。
「去年の9月に女子の友人数人で遊びに行ったとき『この中で一番結婚できそうなのは、としちゃんだね』なんて言ってたんですが、こんなに早く結婚するとは思いませんでした」
みどりは「花嫁の思い出」と称するスライドショー(プレミアで作ったものっぽい)を上映した。七五三で女物の和服を着ているところ、小学4年生で女の子水着を着ているところ、5年生の鼓笛隊でスカートのユニフォームを着てファイフを吹いているところ、セーラー服を着て玄関前に立っている所、テニスラケットを持ちスコートを穿いている所、高校女子制服を着てやはり玄関前に立っている所、その服でどこかの寺社にお参りしている所(上賀茂神社っぽい)、そして成人式の振袖写真である。
よくこれだけ女の子モードの写真を発掘したものだと呆れた。でも徹は
「としちゃんのことが良く分かった」
などと言っていた!色々追及されそう。
4年生の時の水着写真は俊美は記憶がなかったのだが、姉は後で
「あんたが4年生の夏前には、ちんちんを切っていた証拠」
などと言っていた。
祝賀会のお土産としてはムーランのバウムクーヘンを配った。
なお俊美が妊娠中なので新婚旅行は省略することを発表した。
「新婚旅行代わりに市内のホテルに3泊して初夜とします」
「ああ、昔の日本の結婚って三夜続けて夜を共にしたことで成立したんだよね」
「3夜目の朝にお餅を食べる」
「お餅は用意した」
「既に妊娠しているのに今更初夜とか詐欺だ」
「さすがに“初めての共同作業”とかは言わなかったね」
[*前p 0目次 #次p]
春シン(11)