■春シン(2)
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徳部たちは市から仮設住宅の設置も頼まれて100軒ほどの仮設住宅を設置した。
それで結局奈那の自宅が再建されたのは5月になってからであった。ダンバー付きの免震構造で、素材は能登産の“あて”(ひば)であった。朱雀林業は10年くらい前から能登半島で展開始めており、ちょうど10年程度乾燥させた材木がたくさんあった。
(家の建築には10年程度以上乾燥させた木材が必要である。乾燥の足りない木材で建てると住んでいるうちに歪む)
費用は奈那が現金で払った。奈那は『おじいさんの時計』の印税をたくさんもらっている。
人形美術館のヘリポートの下にはお風呂を設置し、入浴サービスをした。またヘリポートの向かいには小屋を建てて中に洗濯機を8台並べ洗濯サービスも実施した。いづれも水が充分に確保できているので、できるサービスである。
海水の淡水化のための炉の熱源には壊れた住宅の廃材もどんどん利用した。また、お風呂や洗濯には淡水化しただけで浄水まではしてない水を利用している。
なお食材は毎日ヘリコプターで運んできてもらった。ついでに雑誌なども持って来てくれて被災者に喜ばれた。なんか個人的にHな本とか頼んでる人もいた!
「***ちゃん可愛いよな」
「俺**ちゃんのおっぱいが好み」
「あの娘、でけーよな」
などとヘリコプターのパイロットと楽しそうに話していた。
珠洲市から「小屋ダムが崩壊しそうなので、緊急工事に協力して欲しい」と言われたので、千里は東北組を呼び寄せて補強工事をさせた。崩壊した時の用心にと水も減らそうということになり、かなり取水してこちらの浄水施設に掛け、給水に使った。市の浄水施設は損傷が酷いので、新たなものを作ることになり、貯水池の作成にも協力した。しかしそれで少しずつ水道が回復し始めた。
(史実では小屋ダムはかなり危なかったものの何とか持ちこたえた。宝立の浄水場は被害が酷く修理不能だったので、本当にそばに新しいものを作った)
和栄は12月に10回乗務したが、1月はかなりの予約が入っていたので、これは大学に行く時間も無くなりそうと思っていた。しかもガイドは年内でまた1人やめて9人になっている。
しかし地震が起きると全ての旅行がキャンセルされ、一転して暇になった!
お正月はお客さんを連れて和倉温泉に行っており、和倉温泉の旅館で被災した。旅館はそのまま営業休止になってしまった。実際電気も水も無い状態では営業不能である。
それでも夜間の移動は危険なので一晩明かして朝になってから金沢に帰還することにした。(実際夜間の移動は道路の亀裂に気付かず突っ込んでしまう危険がある。初期はこれで立ち往生した車が多数あった)
幸いにも夕食はほぼ準備ができていたのでそれを提供してくれた。電気が来てない中、電池式ランタンを点けてくれた。電気は30分くらいで復旧してエアコンも動き始めた。停電中はストーブを並べていた。
朝食は「水が出ないので何もできませんが」と言いつつも、保存食を使った簡単なものを出してくれた。これでとても助かった。
しかし金沢まで10時間掛かった!(普通なら2時間程度)
お客さんが「お腹空いたぁ」と言っていて申し訳無かったが、食料の調達も不可能だった。1月2日の14時頃、千里さんから連絡があり、欲しいもの無い?と言うので「お客さんがお腹を空かせているのでパンか何かもらえませんか?」と言ったら、もらえることになった。一応部長にも連絡し、直接部長と千里さんで話してもらった。
「うちは食品関係の会社を経営しているのでパンとかが調達できるんですよ。自社製のパンでもいいけど、こういう時は大手メーカーのパンがいいでしょう」
「ああ、その方がお客さんも安心ですね」
ということで、千里さんの会社からヤマサキ製のパンを買うことが決まった。途中の道の駅で渡してもらった。
それでこの会社のツアー客(約100人)は14時すぎにパンを食べることができたのである。(この交渉をしたのは実はヴィクトリア。パンは関東で調達した)
千里さんは後で朱雀フードのパンフレットとかも送ったが意外に大きな会社で、部長はびっくりしたようである。
青葉は年明けてすぐから“嫌な予感”がしていたので、大きな災害が来るかもと思っていたら、夕方凄い地震が来た。グラナダのRも呼び寄せ、千里姉とも共同で手分けして知り合いの安否の確認を進める。珠洲市在住の遙佳と奈那に関しては千里姉が何とかすると言っていたので任せることにした。
幸花が「アパートが壊れる〜!」と言っていた。アパートの建っていた所の地面が崖崩れで斜めになっており、完全に落下するのは時間の問題らしい。取り敢えず邦生たちのマンションに避難してもらうことにした。
金沢市在住の福井貴京(たかみ)は輪島市に住む祖母と連絡が取れないと言っていたので、これも千里姉に対処を頼んだ。
(貴京は作曲家福井新一の娘で、後にケイたちのバックバンド Flower Gardensのメンバーになる)
彪志は地震の時、南砺市の事務所に居た。水川室長はただちに移動薬局を珠洲市と輪島市に派遣することを決めた。
「月ちゃん、珠洲市にはあんたが行って」
「分かりました」
「念のためドローンも持ってって」
「はい」
それで出発した。高岡市でガソリンを満タンにして珠洲市に向かうが、道路は通行止めになっていて進めない。さてどうするかなと思っていたら、千里さんが連絡をくれた。
「何か困ってる?」
「移動薬局で珠洲市に向かおうとしているのですが、道路が通れないんですよ」
「運んであげるよ」
それで車は珠洲市のドラッグストア前に来ていた。
(実際に運んだのは、十二天将の“くうちゃん”)
それでそこに医薬品・パン・飲み物などを供給することができた。
納入作業をしていたら、市の助役さんが来て声を掛けた。
「D製薬さん、ドローンは持って来ておられません?」
「持って来てますよ」
「孤立している集落があるんです。水やパンとかを届けてもらえませんか?」
「やりましょう」
彪志は千里さんに連絡してパンとか水を移動薬局の中に転送してもらった。
そして珠洲市役所からドローンを飛ばして孤立している集落に水と食料を届けた。1月2日だけで5つの集落に届けた。残ったパンは市役所に渡した。
彪志は移動店舗による薬品・衛生用品の納入とドローンによる配送を一週間続けた。
(史実ではドローンによる物資輸送が行われたのは地震から何日も経った後である。しかし今回の震災ではドローンの力が実証された。ドローンのいい所はヘリコプターを降ろすところが無いような場所にも物を届けられることである)
輪島市に向かったもうひとつの移動店舗は、初日はかほく市、翌日も中能登町で引き返していた。七尾市まで到達できるようになったのも4日目からである。
真珠は予定日一週間前の12月28日に、金沢市内の産婦人科に入院した。それで病院内で年越しをして、元日病院の個室で邦生とふたりでのんびりとネットなど見ていたら、大きな地震が来る。すると邦生は
「支店で指揮を執らないといけない。出社する。瑞穂(邦生の妹)を呼ぶから」
と言って銀行に行ってしまった。
真珠は明恵を呼んだ。
「くーにんにふられた。あきちゃん来てよ」
「どうしたの?」
「お仕事だって」
「支店長様はたいへんだね!」
それで明恵が来てくれた。瑞穂も来てくれて3人でおやつなどつまみながらおしゃべりをしていた。
「だけどあれだけ揺れたのにお腹の中の赤ちゃんは平気そうだね」
「羊水に浮かんでいれば地震波は伝わらないからだと思う」
「なるほどー」
「まこ自身も物事に動じない性格だしね」
(地震波は主として初期微動を起こすP波と主振動を起こすS波から成る。P波は縦波だが、S波は横波。横波は気体や液体などの流体の中を通過できない。人形美術館も水の中に浮かんでいるので地震に強い)
しかし入院している人の中には急に産気づいた人も数人いたようで、助産師さんたちが走り回っていた。
千里たちだが、まともに地震に遭ったのは、高岡司令室の“ゆい”(黄系統)だけである。最近北陸出張の多いロビンは姫路の自宅に居た。青葉と連絡を取り、手分けして知り合いの安否を確認する。
珠洲市の奈那は自宅が崩壊して今避難所に向かう所だということだった。遙佳は無事で人形美術館に居るが、被災者のために炊き出しをしたいので食材が欲しいと言っていた。それで徳部(九重)にヘリコプターで行かせることにした。また奈那にも避難するなら人形美術館がいいと伝えた。
アパートが壊れる!と言っていた幸花のところには追風ほか数名をヘルプに行かせた。ガイドしているお客さんがお腹を空かせているという和栄のところは、ヴィクトリアが対応することにした。
福井貴京が、輪島市の祖母と連絡が取れないと言っていたので、これはロビン自身が対処することにした。
満タンにしたランドクルーザーに乗り、金沢市に車ごとジャンプする。貴京のお母さんに挨拶し、貴京を乗せて数km走ったが、能登方面は凄い渋滞である。それに七尾から先はそもそも道が通れないらしい。自衛隊が“啓開”作業中という話である。きっと輪島まで行けるのは3〜4日後だ。
千里は貴京に言った。
「君秘密は守れる?」
「はい」
「じゃ移動するよ」
と言って、輪島市にジャンプした。
「凄い」
「詮索しないでね」
「しません!」
市内はかなり悲惨だった。祖母の家は半壊状態だったが、祖母は無事だった。
「携帯がどこかに行ってしまって」
「それで連絡が取れなかったのか」
貴京は取り敢えず母に電話して祖母の無事を伝えた。
千里は万奈を呼んだ。それで彼がお祖母ちゃんのスマホが入っているバッグを発掘してくれた。
「ありがとうございます」
それで取り敢えず持って来たお弁当を食べた。
「お祖母ちゃん、金沢に行こ」
と貴京は言った。
「私は輪島を離れたくない」
と祖母。2年前に貴京の母が金沢に家を建てた時も輪島から離れたくないと言ってひとりでここに残ったのである。
「だって家は半壊してるし、水も電気も無いところで生活不能だよ」
「家は屋根のある部分で寝れば何とかなるよ。水はペットボトルで買えばいい」
「お店再開するのにこれだと半年はかかりそうだよ」
千里は言った。
「取り敢えずこの瓦礫を片付けて掘っ立て小屋でも建てましょうか」
「お願いします」
それで万奈の子分を数人呼び寄せて、ダンプを持ってこさせ、瓦礫を全部ダンプに積んだ。そして整地して2DKのユニットハウスを置いた。プロパンガスのボンベは元の家のを移動し、トイレは元の家の便槽につないだ。
万奈の子分には人間も多いが、元不良とかが多く腕力があるので、こういう時は結構役に立つ。みんな物凄いパワーを持つ万奈に心酔している。
何せ1mの鉄骨を指先でくるくる回せる人はそうそう居ない。
「こんなこともできないなら、金玉取って女になったほうがいいな」
「それだとほとんどの男が男を辞めないといけません」
「女が増えて天国じゃねーか」
以前「マナさんのスケにしてもらえるなら、チンコ放棄してもいいです」と言った元番長は、千里の手で性転換手術?してもらって女に変わり、万奈の愛人にしてもらった。
毎日3回くらい万奈に抱かれて「女の幸せを感じる〜」と言ってお化粧の練習に余念が無い。
「入れられるのって凄く気持ちいいですね」
「そうか?よかったな」
「女の身体って凄く感度がいいですよ。みんなも女になろう」
「俺はいやだぁ」
「トランクスよりショーツのほうが快適だし」
「へー」
「俺パンティかぶったことならある」
あれは、かぶるものではない気がする。
「スカートもすっかり好きになりました」
「お前結構スカート似合ってるよ」
彼は男性時代はスカートを穿いたことは無かったらしい。
「座って小便するのもだいぶ慣れました」
「女は立ち小便はできんからな」
「みんなチンコ切ってやるからスカート穿こう」
「助けて〜」
「お前、そのうち俺の娘を産んでくれ」
と万奈に言われている。
「まだそこまでは心の準備が」
「産まれた子供が男の子だったらどうするんです?」
「そりゃもちろん、チンコ切って娘に変える」
「可愛い服着せて育てましょう」
彼は性格的にはいまだに男だし、言葉遣いも男だが、万奈は「穴さえあれば問題無い」と言っている。もっとも万奈は「ちんこが付いてなければ問題無い」と発言したこともあり、どちらの要素が重要なのかはよく分からない。
清川によると万奈は昔、羅切した(させた)お稚児さんを愛人にしたこともあったらしいので、ちんちんが付いてなければ行けるのかも。凄く可愛いお稚児さんだったので、「お前ちょん切れ」とほとんど強要して、医者の手で切らせたらしい。
彼は最初のうちは「ちんちん無くなっちゃった」と、しくしく泣いていたが、死ぬまで万奈に愛してもらって最期は「万奈さんと結婚して幸せだった」と言ったらしい。
万奈曰く
「みんな、ちんこ切って女になろう」
千里曰く
「じゃあんたも女に変えてやるよ」
「あと1000年くらいは男を楽しみたいので」
話を2024年に戻す。
設置された家を見て祖母が言う。
「こりゃ立派な家を」
「ユニットハウスですよ。材料も安いSPFだから80万円です」
「それ母に言ってすぐ振り込みます」
と貴京。
「落ち着いてからでいいよ。寝具とかも数時間以内に持ってこさせるから」
寝具の他に、テレビ・こたつ・冷蔵庫・炊飯器・電子レンジ・掃除機なども持ってこさせた。
貴京は少し買い出ししたいと言っていたので、万奈の彼女のシズカちゃんに少しお祖母さんの相手をしておいてもらい、貴京とふたりで姫路に移動して、鍋やポット、まな板と包丁、食器に雑貨などを買った。無洗米と“あさげ”とかも買った。それでこの家は最低限生活できる状態になった。こちらも貴京のために数日以内に通信環境を設定した。(後に貴京の母が来た時、おかげで仕事ができた)
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春シン(2)