■春迷(1)
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田舎の道路工事のやり方
(1)取り敢えず通行止めにする
(2)2-3日地面を掘る
(3)数ヶ月放置(その間みんな通行止めで困る:田舎にはまともな迂回路が無い)
(4)工期の終わり頃になって、数日で工事を完成させる
(5)工事終了。開通!
それで田舎には「工事中」というバリケードは置いてあるものの何も作業とかしていない場所がとても多い。慣れている人にはそのバリケードを横によけて通って行く人もいるが、本当に通れない場合もあるのでこれはとても危険である。
田代は仕事で車を使って輪島市まで来て、金沢に帰ろうとしていた。県道を走っていると、工事中通行止めの表示が出ている。
「参ったな。この道、迂回路無いのに」
と思う。ここが通れないと、いったん輪島の中心部まで戻り、大きく50km近く回り込むしかないはずだ。しかし工事中の表示の横には「←迂回路」という表示がある。あれ?そんな道あったっけ?と思いつつもそちらに進む。
住宅街の路地のような所を走り、やがて畑の中の畦道のような所に来る。
「ひぇー!こんな所を通るのか」
と思っているうちに道が分からなくなった。
困って車を停めて悩んでいたら、50歳くらいのおばちゃんがドアをノックする。
「どうしたの?」
「県道が工事中で迂回路と書いてある所に入ってきたんですが道が分からなくなって」
「案内してあげるよ。ちょっと乗せて」
「お願いします!」
と言って田代は助手席のドアを開けておばちゃんを乗せた。
そしてその人の指示で車を進める。車は農道から分岐して森の中の林道のような所を通過して行く。こりゃ地元の人以外分からないぞと思う。
田代は10分くらい、おばちゃんの指示で車を進めていたのだが、その内おばちゃんの声がしなくなった。
「このまままっすぐでいいですか?」
と訊いたが返事が無い。田代は助手席を見たが誰も居ない!?
田代は車を停め降りてみたが、近くには人影は無い。
「俺この後、どうすればいいんだよ?」
「で、結局どうしたんですか?」
と奈那は尋ねた。
真珠が妊娠中、和栄はバイトで忙しく、邦生も急に仕事が忙しくなり(後述)、最近取材には、遙佳や奈那も動員されている。
「結局その場で一晩明かしたんですよ。翌日になって軽トラに乗ったお爺さんが来て『こんな所に駐められちゃ困る』と言われたんで道に迷ったというと、その人が案内してくれて何とかカーナビが認識する道に出られたんで、そこから帰りました。携帯も圏外だったし、このまま遭難したらどうしよう?と思いましたよ」
“立山煌と一緒に白山に登ってくれる人募集”という広告は5月のゴールデンウィーク明けに石川富山を対象に山岳会の広報誌で告知された。
あまり人数が集まらなくても困るのだが殺到しすぎても困るので、テレビや一般新聞での広告は避け、山岳会の広報誌を使った。
・期日は7月22-23日(土日)一泊二日。
・別当出合から砂防新道ルート。市ノ瀬集合。
・高校生〜59歳で過去10年以内に白山または2500m級以上の山に登った経験のある人(白山は2702m)
・山岳保険加入済
・1月以降に健康診断を受けていること。
・見聞きしたことを口外しないこと、立山煌の入った写真を9月まではネットなどに公開しないことを誓約してくれること。
霊界探訪の編集部では§§ミュージックに取材を申し入れ、立山煌の楽曲『白山にたくさんで登った』(仮題)の発売後に放送するという条件で4名程度ならOKという内諾を得た。また立山煌がホテルから市ノ瀬に移動するのに協力することになった。
(§§ミュージックが“4人”という数字を出したのは全然人が集まらなかった時の保険である。山岳会に頼んで山岳ガイドレベルの人を10人くらい出してもらい、信濃町ガールズの健脚っぽい子を5〜6人に〒〒テレビの4人を加えると、何とか形になる)
この時点では、立山煌側はこういうメンツの予定だった。
・立山煌
・山本マネージャー
・小木美奈カメラマン
編集部側は、青葉(金沢ドイル)がまだ出産から日が経ってないことから、こういうメンツを考えた。
・金沢コイル(ドイルの代理)
・金沢セイル(明恵:登山経験者)
・金沢パール(真珠:予備撮影者)
しかしすぐに真珠の妊娠が判明したので、代わりに、希望・和栄・双葉・邦生の中の1〜2人を入れようということになる。
「幸花さんは行かないんですか?」
「私が2700mの山に登れるわけが無い。270mが限度だ」
「270mは山というより丘という気がする」
「希望ちゃんたちの大学でもあそこ海抜200mくらいある」
「毎日小登山してます」
「あそこ数百段の階段があるよね」
しかしそれで誰に行ってもらうか決めるのにこの4人は3000m走をやらされたのである。
「3000mも走るんですか」
「若いもんが文句言わずに頑張れ」
これにはコイルさんも付き合ってくれた。
結果はスポーツ選手のコイルが断トツの1位で2位が希望。そのあと、邦生・和栄だった。双葉は途中棄権した。それで希望が登ることになった。
「疲れた。甘い物が欲しい」
ということで、神谷内さんのおごりでケーキバイキングに行った。
「幸花さんがおごるんではないのか」
「私に金があるわけない」
「いばってる」
「まあみんなお疲れさん」
希望は明恵に付いていってもらって、登山靴・リュックなどを買った。そして練習で医王山(939m)に明恵と一緒に登ってきた。コイルさんも付き合ってくれた。
「登るのはきついけど、景色は素晴らしいですね」
「それが登山のご褒美だよ」
「希望ちゃん、煌ちゃんの近接ガードをしてよ」
と千里は言った。
「はい」
「中学生だからさ。私とかより、できるだけ年齢の近い人のほうが気楽だと思うし」
「分かりました」
コロナの終息宣言が出て面会の体制も変わったことから、§§ミュージックの女子寮では5〜6月に多数の親たちが寮生に面会に来た。
花ちゃんは、親と話して
「私デビューできそうにないから、辞めて田舎に帰ります」
と言い出す子が何人か出るかも知れんなあ、と思っていたのだが、ひとりも出なかった。辞める子が多数出た場合は7月のビデオガールコンテストで少し多めに入賞者を出さなければ。場合によっては緊急臨時昇格試験も実施しなければとコスモスとも話していたのだが、退団者は出なかった。
これについては、危ないかなあと思っていた子のひとり、左倉まみが
こんなことを言っていた。
「結局“信濃町ガールズ”の位置付けが変わっちゃったんですよね」
「昔はデビューに向けて日々レッスンを受けている子たちの仮称に過ぎなかった。出番もアクアとかひろかさんのバックで踊る程度の“その他大勢”に過ぎなかった。でも今の信濃町ガールズは、他の事務所の集団アイドルなんかと同等の扱い。信濃町ガールズの肩書きのままドラマとかバラエティに出たりCMに出たりしてファンメールとかプレゼントとかも送られてくる。それでわかなちゃんみたいに信濃町ガールズになることが目標だったなんて子も出て来てる。今や信濃町ガールズになった時点でデビューしたも同然なんですよ。私も親から『毎週どこかの局に出てるね。売れてるね』と言われましたよ」
「ああ、あけぼのテレビまで入れるとどこかには出てるかもね」
「父が私の新聞作ろうかと言ってたから、そういう恥ずかしいことはやめてくれと言いましたよ」
鏡家トマトのお祖父さんは“トマト新聞”とか作って御近所に配っているらしい。誰々のバックコーラスしたとか、何々のドラマに通行人役で出たとか、毎月レポートしているらしい。お陰で市会議員さんに覚えてもらい、地元のイベントに呼ばれることもある。
左倉まみ・今川ようことか春野わかなとかは演技力があるし受け答えができて、ギャラも安く使えるから脇役、雛壇要員、CMなどへの起用が多く、既に昔の“デビューしていた”冬風オペラとか満月さやかとかよりよほど忙しい。セレン・クロムとか入瀬姉妹・麻生ルミナなどは§§プロ“第2黄金期”を作った立川ピアノを越えているかも。入瀬コルネなんて富山に住んでるのに毎月2回くらい東京に出て来ている。
だいたいひろか・ありさがデビューした頃は、彼女たちは“月に”数回の仕事が入っていた程度だったのに、今や信濃町ガールズの子でも“週に”3〜4個のスケジュールが入っている子はザラである。
北陸霊界探訪・取材班は7月22日朝、金沢市内のホテルで煌たちと会った。
千里は煌に付いてきた山村と話していた。
「なんであんたが付いてくんのよ。山本さんは?」
「ぼくには無理〜ってリタイアした」
「なるほどね。煌ちゃんが女の子になってるのはあんたのせい?」
「俺は何もしてねーぞ。俺も昨日落ち合って気付いてびっくりした。誰かの悪戯だろ」
「全くもう」
煌が女の子なのは希望も気付いた。(明恵も気付いたはず)
「煌ちゃんってFTMですか?」
「いや普通の男の娘だったはず。何かの事情で一時的に性別が変わっているだけだと思う。まあ性別なんて些細な問題だよ」
「そうですね!」
ちなみに希望はつい昨日、完全な女の子に変えてもらったばかりである。
車は千里が運転し、助手席に山村、2列目に明恵と小木さん、3列目に煌と希望が乗った。市ノ瀬で一緒に登ってくれる人たちと会うが山村がチェックして、装備の貧弱な人、どう見ても体力の無さそうな人を数人帰していた。
「2500m級の山に登ったことあるなんて、きっと嘘ですよ」
と山村は言っていた。
白山はシーズン外は別当出合まで自家用車で入れるのだが、シーズン中は市ノ瀬と別当出合の間が一般車通行禁止になり、市ノ瀬からシャトルバスで行くことになる。それでシャトルバスに大勢で乗り、別当出合の登山口から登り始める。煌に付いてきたカメラマンの小木さんが様子を撮影している。こちらの取材班も明恵・希望の交替で撮影していた。全員が入った絵も小杉ちゃんに撮影してもらった。
1時間ほど登ったあたりで、既にかなり消耗してるっぽかった小木さんに山村が「あんたもう降りなさい」と勧告した。山村は他にも2人に中止を勧告。結局3人で下山した。残りの人たちは最後まで登り切った。
希望は煌のそばで登り、色々おしゃべりをしていたが、普通の“男の娘”みたいな感覚だった。この子きっと男の子より女の子の友だちが多いんじゃないかなと思った。彼は男声を使っていたが何かの拍子に女声が出ることもあったので、基本は女声ではないかという気がした。きっと声変わりは偽装だ。そもそも中学1年で声変わりしたというのが不自然。恐らく小学4年生くらいから女性ホルモンを飲んでいたのでは?彼には適宜、水やおにぎりを渡していた。
途中の休憩所で、煌が男子トイレに入れてもらえず困っていたが、千里は今回特に連れてきたおキツネ・信乃(6歳・人間なら40歳くらい)に「君はこちらにおいで」と誘導させて女子トイレに入れた。
煌は山頂でアンダーシャツ(一応速乾性)とブラジャー・ショーツを交換したが、替えた下着は千里が持ってあげた。(山村に持たせるのは変なことしそうで危ない、と千里は言っていた←「俺はそんな変態じゃねー」と山村は言っていたが、千里が正解という気がする)
弥陀ヶ原での煌の写真は山村が撮影していたが
「あんたセンス悪い」
と言って。山村が持っていたカメラ(本来小木さんのカメラ)で希望に多数撮させた。これが今度のシングルのジャケットや次の写真集とかに使われるだろう。同行者の皆さんとの記念写真も撮った。
大勢で登山道を登っている所を明恵に小型ドローンで空撮させたが、結局、“黒ぼこ岩”付近で空撮した写真がシングルのジャケ写に使用された。
(100g未満のドローンは免許不要。但し明恵はドローン二種の免許は持っている。彪志が持っているのは視界外飛行が許可される、よりハイレベルの一種)
山村は「ドローンなんて使わなくても俺が空撮くらいしてやるのに」と言っていたが、千里は
「カメラ持った龍が空を飛んでたら大騒ぎになるからダメ」
と言っておいた。
夜は千里と希望の間で煌は寝せた。
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春迷(1)