■春迷(10)

[*前p 0目次 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 
前頁次頁目次

↓↑BottomTop

午後からは、青い傘のメンバーを迎えた。
 
「青い傘の皆さんでーす」
「こんにちわー」
「みんな“個々人”のキャリアは長めだよね」
「セカンドライフの子が多いですから」
 
青い傘はあちこちの集団アイドルやグループアイドルをリストラされた子を集めて編成されたユニットである。個々が元からのファンを持っていたため、売上に比べてファンクラブ会員数が結構多い。
 
唯一他のグループを経験していないのが道花瞳美だが、この子はオーディション落選40回という猛者?である。それで芸歴としては短いのに芸能界に知り合いが多い。
 

↓↑BottomTop

結成されてから2年くらい全く売れない時期があったが、昨年辺りからぼちぼち売れるようになり、テレビへの出演も増えた。それを朱美も言う。
 
「最近テレビへの露出も増えたね」
「私たちが出ると視聴率がいいらしいんです」
「すばらしい」
「みんな期待してるんですよ。私たちが何か失敗するんじゃないかって」
「私たちの失敗した所を集めた動画が再生回数高いらしいです」
「特に道香と瞳美の失敗率は高い」
「道香って行列に並んで商品を買おうとすると、必ず1人前で売り切れになるそうです」
「可哀想!」
「強烈な雨女だから、どこか行こうとかいう時は絶対誘われなかったらしいです」
「彼女が在籍していた時代の“バナナみかん”は一度も屋外でライブしてないんです。いつも雨だったから」
 
↓↑BottomTop

「今日も雨だね」
「雨乞いの専門家になろう」
「天職だったりして」
 
「CDショップでは、私たちのCD、コミックバンドのコーナーに置かれていたりします」
 
先日テレビで『赤いろうそく』を演じた時もこんなことを言っていた。
 
「だいたい私たちみたいなお笑いユニットがやるのに悲しいお話になるわけありません」
「え〜!?私たちお笑いユニットだったの?」
「歌手かと思ってた」
「だって歌ってるのは3人だけで後の4人が持ってるのはダミーマイクだし」
「そんなのバラしたらいかん」
「どうせみんな知ってるって」
 
この「赤いろうそく」でも伊代が背景の書き割りに激突し“月”を落下させてしまった。普通のタレントならカットする場面だが、しっかり放送された。
 
↓↑BottomTop


「でもこないだの『3214』はゴールドティスクになったじゃん」
と朱美が言う。
 
「あれ嘘みたいと思った」
「続けてきて良かったと思った」
「良かったね」
「社長からお祝いに真珠のペンダントもらったんです」
「ああ、それを着けてるのね」
「はい」
「次はミリオンを目指そう」
「さすがに無理です」
「世の中分からないよ」
「でも最近は毎回ランキング10位以内に入ってるし」
「ファンの方々に感謝です」
 
ピアノ室の歌唱では、その初ゴールドの『3214』を歌った。メンバーは7人で全員マイクを持っているが、実際に歌っているのは3人だけである。しかしこれは多くの人が知っていることなので問題無い。この3人が上手いからCDも売れるのかも知れない。
 
↓↑BottomTop

もっともピアノ室にはいる時、治美が壁に派手に激突して、
「ここカットするね」
とこちらのスタッフが言ったものの
「ファンはこういうのを期待してますからそのまま流してください」
ということだったので、そのまま流させてもらった。
 

↓↑BottomTop

 
立山煌の女装姿がとても可愛いことから10月〜11月には各番組で女装させられる率が高まり、“立山きらら”という公式女装名?まで決まり、今度は色々な番組から“立山きらら”への出演オファーまで来るようになった。ゆりこはドラマなどへのレギュラー出演依頼のような“修復困難”なものを除いて、バラエティの類いや単発出演にCMなどの話は積極的に受けた。それでドラマで単発のウェイトレスとか町娘とかの役もした。ウェイトレス姿の写真は随分あちこちのサイトに無断転載されたし、黄八丈を着た所とかも「凄い可愛い」と言われた。
 
それで“立山煌”より“立山きらら”のほうが出演頻度が高い状況が一時的に発生した。“立山きらら”として出演する場合は、最初から女性衣裳で番組に登場し、普通に女性タレントとして演じたので
「あんた本当はホントの女なんじゃないの?」
などとも言われた。
「済みません。意味がよく分かりません」
「俺もよく分からん」
「医学的な検査受けたらきっと“間違い無く女性”と出るね」
とカップソープ。
「イモ食う検査なら“間違い無く臭せー”と出たりして」
とカップしるか。
 
↓↑BottomTop

テレビ局の人からは「トイレは女子トイレ使ってくださいね。楽屋も女性用楽屋で」
などと言われた。煌は大物女性タレントさんから「きららちゃんこっちおいで」と呼ばれて可愛がられ、そばで着替えたりしていた。
 
ゆりこは“きらら”が女性用楽屋を使う場合用に、主に“きらら”の付き人として、宮下菜美という女性を雇った。彼女は中学高校時代サッカー選手だったので体力がある。
 
彼女は過去に他の事務所で女性アイドルの付き人を経験している。実は本人も1度CDデビューしているが1000枚も売れなかったらしい。ピアノとギターが上手い。
 

↓↑BottomTop

そういう状況で礼音(煌)は、学校で女子たちに言われた。
「あれだけテレビで女の子の服着てるのに今更じゃん。学校にも女子制服でおいでよ」
「うーん・・・」
 
それで礼音もついに妥協して女子制服で登校したのである。ただし、ボトムは女子用スラックスにしたので
「中途半端な」
と非難されることになる。
 
なおスラックスを穿いても股間に膨らみができたりはしないように処理している。
 
しかし彼が女子制服を着たことから、以後トイレはこちらを使いなさいと言われて女子トイレにはいることになった。いつも女子トイレを使うので、結果的に“生理偽装”は不要になった。でも彼は11月21日の次は12月19日の所に印を付けておいた。
 
↓↑BottomTop

「体育の時の着替えも女子更衣室に来なよ」
「勘弁して〜」
 
「女子更衣室に入ってみたいと思う男の子は多いのに」
「多分女子更衣室に入りたがる子は入れてはいけない」
「君は入りたがらないから、入って良い」
「あれ?何かよく分からなくなった」
 
なお学校で女子制服を着ていても仕事に行く時は山本マネージャーや宮下さんなどの車の中で男子制服に着替えた。但しボトムは女子用スラックスのままにした。
 
なお“きらら”として出演する場合でもテレビ局に入る時は男子制服を着なさいというのはコスモスからの指示である。
 

↓↑BottomTop

コスモスは出産(?)から1月経った12月6日から、社長室に出てくるようになり、ケイと千里が交替で社長室に詰めておく体制は終了した。しかし鱒渕はこのまま、当面社長室秘書として社長室に常駐することにし、瞳も当面社長室で勤務を続けることにした。
 
ゆりこ・コスモスの双方が復帰したことから、ゆりこは朝8時から夕方16時、コスモスは昼14時から夜22時という体制も再開した。
 

↓↑BottomTop

ところで先日、煌は『あっそー、阿蘇なの?』という来年の6月?くらいに発売予定の曲のMV制作のため熊本に行ったのだが、その時、山本マネージャーの悪戯心で煌に山鹿(やまが)の灯籠娘のコスプレをさせ、地元の人に指導をお願いして、よへほ節の踊り方を覚えてもらい、踊っているところを動画撮影しておいた。
 
その時指導してくれた人から、§§ミュージックに問合せがあったのである。
 
「年末年始の観光キャンペーンでCMとかを作りたいんですよ。先日よへほ節を指導した女子中学生タレントさんが、物凄く上手かったので、そのCMに出たりしてもらえないでしょうか?出演料は充分な額をお支払いしますので」
 
山本は独断では返事できないと思い、叱られそうとは思ったものの、コスモスに相談した。すると、やはり叱られた!でも自分が交渉するよと言い、まず、煌に明日“男子制服を着て”出てくるように言い、また広瀬みづほと西浜ももこにも“女子制服を着て”出てくるように言った。
 
↓↑BottomTop

「女子制服ですか」
「男子制服着たい?」
「いえ女子制服がいいです。私はたみよではありません」
「あの子は男子制服着たいかもね」
 
コスモスが、月城たみよではなく広瀬みづほを選んだのは、たみよでは男の子と誤認されて話がややこしくなるからである!
 
立山煌と月城たみよを並べて片方は男の子で片方は女の子ですと言ったら多分ほとんどの人がたみよを男の子だと思う。
 

↓↑BottomTop

コスモスは、翌日の12月9日(土)、男子制服の立山煌、女子制服の広瀬みづほ・西浜ももこを連れ、honda-jetgoldに乗って、郷愁飛行場から熊本空港に飛んだ。
 
飛行機の中で、コスモスはオーリンを呼び出した。煌は社長がオーリンとコネがあるなんて思ってもいなかったので驚いたが、コスモスは言った。
「おやつあげるからさ、この女の子2人によへほ節の踊り方教えてやってよ」
「いいよー。ついでに礼音ちゃんを女の子に変えていい?」
「話がややこしくなるから今日はダメ。その件は後で本人と交渉して」
と言って、オーリンにモンブランケーキをあげた。
「これ資生堂のモンブランじゃん!」
と言って喜んで食べていた。みづほ・ももこ・煌もストロベリーショートケーキをもらった。
 
↓↑BottomTop

しかしそれで機内でオーリンはみづほとももこに、よへほ節の踊り方を教えたのである。歌と伴奏はmp3プレイヤーで流した。
 

↓↑BottomTop

やがて、ジェット機は熊本空港に着く。一行は熊本市内で、観光協会の人と会った。向こうは社長が直々に来たのでびっくりしていた。しかもコスモスは15年くらい前にはアイドルとして大きな人気を持っていたので田舎の人にも知名度バツグンである。
 
「秋風コスモスさんが社長をなさってるんですか!」
「私が音痴なのにアイドルとして売っていたので、自分自身を反面教師として歌やダンスの上手い子を集めて事務所を経営してるんですよ」
「なるほどー」
「それで誤解を与えて申し訳無かったのですが、先日よへほ節を指導してもらった子は男の子だったんですよ」
「え〜!?ほんとにあなただ。凄い可愛いし踊りも上手いと思っていたのに男の子だったなんて」
「まだ中学生なので結構女装も似合うから時々ジョークで女の子の服を着せてるんですよ」
「なるほどですね。あなたが女の子だったら良かったのに」
「なんでしたら、すぐ性転換させましょうか?」
「社長、それは勘弁してくださいよー」
 
↓↑BottomTop

「まそれは冗談として」(←半分本気だったのでは?)
 

「この子も高校進学直前なので今性別が変わると進学先の高校も変えないといけないので、できれば、この子が男の子なのを承知でやらせるか、あるいは代わりに別の女の子にやらせるか、どちらかにしていただけないかと思いまして」
 
「そうですね。性転換は時間も掛かりそうだから(時間だけの問題なのか?)、取り敢えず年末のキャンペーンはこの男の子さんにやっていただいて、来年のゴールデンウィークか夏に向けてのキャンペーンは女性の方にお願いできますか」
 
「分かりました。こちらは宮崎県出身の広瀬みづほ、こちらは佐賀県出身の西浜ももこ、どちらも九州出身の子を連れて来ました。よへほ節は一応熊本ゆかりの人に教えてもらいました。ちょっと見ていただけますか?」
 
↓↑BottomTop

と言ってふたりに踊らせる。
 
「うまいうまい」
と向こうの人は喜んでいる。
 

「ちなみにギャラは一般的水準としては、この男の子はこのくらい、広瀬はこのくらい。西浜はこのくらいです」
と数字を示す。
「西浜さんはお安いんですね」
「まだデビュー前の研修生ですので」
「ああ、そういうことですか」
 
それで結局、年末のキャンペーンには煌を使い、ゴールデンウィークに向けてのキャンペーンには、西浜ももこを使おうということになった。煌の踊りの収録は明日にもすることになり、今日はリハーサルだけすることにした。
 
今日は、ももこも煌のバックで踊らせることにした。取り敢えず、ふたりには灯籠娘の浴衣を着てもらったが
「この浴衣を着ると女の子にしか見えない」
と感心していた。
 
↓↑BottomTop


主(ぬし)は山鹿の骨無し灯籠、よへほよへほ
骨も無ければ肉も無し、よへほよへほ
 
(山鹿の灯籠は木の枠とかを使わず和紙のみで作られていることから“骨なし灯籠”と呼ばれる)
 
リハーサルをコスモスと広瀬みづほは見学していたが、コスモスはみづほに言った。
 
「ごめんね。せっかく熊本まで来てもらったのに無駄足になっちゃって」
「いえ、大差無ければギャラの安いほうを使いたいですよ」
「そのあたりって2〜3年目の芸能人がみんな苦しむ所だね」
 
ビーナはこの苦しみを抜け出せるだろうか。彼は一時期は“休みが無い”状態だったのに最近は“仕事が無い”状態に近づきつつある。ギャラが安い頃はたくさん使ってもらっていたが、その後自分よりギャラの安い子たちにどんどん仕事を奪われていった。
 
↓↑BottomTop

「こうやって煌ちゃんの動き見てたら、この子だったら少々ギャラが高くても使いたいと思うだろうなと思いますよ」
と広瀬みづほは言う。
 
「煌はこの半年くらいで凄く伸びたね。デビュー当初はあまり支持が広がらずに苦しんでたけど」
とコスモス。
 
薬物事件で大量に出られない人が出たので代わりに紅白に出たのも知名度を高めた。しかしそれ以上に芸の品質が向上している。
 
「あの子の内面で何かがブレイクスルーしたんでしょうね」
「そうだろうね。真理奈ちゃんも頑張りなよ」
「はい。ありがとうございます」
 

↓↑BottomTop

コスモスは思っていた。飛行機の中で、オーリンがももことみづほに踊りを教えていた時、煌は自分も同じ動作をして再練習していた。そういう細かい努力の積み重ねが、今の煌を作っているのだろう、と。
 
この春以降、“駄洒落名山シリーズ”で現地ロケを敢行しているのも好評である。それ以前は合成だった。現地ロケは煌が体力を付けてきたから可能になったものであり、毎日10km歩いている努力が実ったものである。体力が付いたことで声量も豊かになっている。
 
先日の運動会で5000mで優勝したのでもかなりファンを増やしただろう。最近の“きらら”キャラでは随分男性ファンが付いてるみたいだし!
 

↓↑BottomTop

その日は4人で熊本市内のホテルに泊まった。宿泊カードはコスモスが書いた。エレベータで一緒に8階まであがる。
 
エレベータを降りると廊下はペールピンクの塗装だった。
「ピンクの塗装って珍しいですね。クリーム色とかが多いのに」
「レディスフロアだからね」
「え?ここレディスフロアなんですか?」
と煌。
「何か問題あったっけ?」
とコスモス。
「何も問題無いですよ」
と、ももこは言った。
「私たちみんな女の子ですしね」
「そうだよね」
 

↓↑BottomTop

↓↑BottomTop

前頁次頁目次

[*前p 0目次 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 
春迷(10)