■春迷(5)

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礼音(立山煌)のクラスの女子数人の会話
 
「レノちゃんって結局女の子なんだっけ?」
 
サユリは言った。
「男の子だと思う」
 
「でも私たち、お風呂であの子のお股に何もぶら下がってないのを見たよ」
「あれは上手に隠してたんだと思う」
「隠せるもん〜?」
「色々方法はあるんだよ」
「じや私たち、男の子に裸を見せたことになるの?」
「あの子、身体は男でも心は女だから問題無い」
「確かにあの子と話していても、女の子と話してるのと同じ感覚」
 
「あの子男の友だちがほとんど居ないよね」
「男の子の話題が分からないみたいよ。横浜にあるプロ野球球団の名前を答えきれなかった」
「えっとデーナだっけ?」
「ディーエヌエーだよ」
「嘘!?あれディーエヌエーと読むの?」
「レノと同じレベルだな」
 
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「あの子可愛い物が好きだよね。マイメロのボールペン持ってるし」
「あの子『ちゃお』は読んでるけど『ジャンプ』は読んでないっぽい」
「うん。『ワンピース』が漫画のタイトルって知らなかった」
「私でも知ってるのに」
 
「いわゆる“女の子になりたい男の子”ってやつ?」
「少し違うけど、かなり近い」
 
「じゃ女の子の服を着せれば喜ぶね」
「言葉では嫌がるけど、内心は喜んでる」
「たくさん着せてあげよう」
 

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「あの子、おっぱいは本物?」
「不確かだけど本物っぽい気がする。あの子間違い無く女性ホルモン飲んでる。だから声変わりもしてないし、生理も起きる」
「なるほどー」
「エストロゲンとプロゲステロンを周期的に飲むと生理周期ができるらしいよ」
「へー」
「プロゲストンとかってなんだっけ?」
「エストロゲンは卵胞ホルモン、プロゲステロンは黄体ホルモン。女の子の身体は生理日から排卵日までの“卵胞期”には卵胞ホルモンに支配され、排卵日から生理日までの“黄体期”には黄体ホルモンに支配される。黄体期は妊娠中に近い状態だから、おっぱいは大きくなるけど体調が悪い」
 
「なるほど生理前に体調悪いのは妊娠に似ているからか」
「女子スポーツ選手は試合が卵胞期になるように調整するね」
「卵胞期にブラジャー買うと黄体期にきつい」
 
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「排卵日って何だっけ?」
「はあ!?」
「女の子の身体の中ではだいたい生理日から半月程度経った頃、卵巣から卵子が排出される。これを排卵という。排出された卵子は子宮に移動して着床するけど、精子と結合しなかった場合は14日後に子宮壁ごと剥がれ落ちて体外に出てくる。これが生理だよ。だから女の子の身体の中では、排卵と生理が14日ごとに交替で起きる」
「そうだったのか」
「君は性教育の時間、何を聴いているのだ?」
 
「生理は小さな出産」
「逆に出産はでっかい生理と言ってた人居たね」
「礼音ちゃん赤ちゃん産めるの?」
「レノが妊娠しても驚かない」
「確かにあの子なら妊娠できるかも」
 

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「体育の着替えは女子更衣室でさせるべきでは?」
「本人が嫌がってるからね。水泳の時は妥協したけど」
「取り敢えずトイレは女子トイレに引き込もうよ」
「トイレは何とかなりそうな気がする。男子の保健委員とも話し合ってみるよ」
 
君たち、そういうのに熱心になるより、お勉強したら?高校受験も近いんでしょ?
 

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9月の立山煌(広中礼音)のスケジュール
 
9月1日(金)始業式
9月6日(水)水泳大会
9月9-10日(土日)文化祭
9月11-12日(月火)代休
9月16-17日(金)月山
9月23-24日(金)北海道大雪山(ロープーウェイ)
 

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礼音は7月17日からずっと女の子の身体になっていて、それで修学旅行の2−3日目(女子制服着用)、白山登山、アクアライブの前座、富士登山、そして水泳大会(女子水着使用)とやったが、9月7日朝に男の子に戻してもらった。
 
そして9-10日には学校で文化祭があり、彼のクラスは合奏をやった。彼は(練習する時間が無いだろうから)指揮を頼むと言われていたのだが・・・
「え?照代ちゃんお休み?」
「レノちゃん、代わりにフルート吹いてくんない?」
「曲は何だったっけ?」
「『パプリカ』と『大正浪漫』。これ譜面。でも分からなくなったらメロディー吹いてて」
「そうするかも」
 
フルートは寮に電話して誰かに持って来てくれるよう頼んだが、オーリンが持ってきた!ついでに女子制服まで持って来たので、みんなに言われて着ることになった。ついでにオーリンから女の子の身体に変えられた。ついでにオーリンはみんなから「可愛い!」とか言われて愛嬌をふりまいていた。(オーリン自体は篠田さんが回収していった)
 
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それで礼音は急遽フルートに回ったのである。
 
指揮は担任の先生がしてくれた。礼音は事前に譜面を流し読みしただけで、全然練習できなかったが、何とか譜面通りに吹けた。
 
「ぶっつけ本番でノーミスってさすがプロの音楽家だね」
「まあ曲自体はよく知ってる曲だったからね」
 
そして女子制服着ている間はこちら使いなさいと言われて女子トイレに連れ込まれた。
 

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ついでに英語部からも助っ人を頼まれて英語劇でミンチン先生の役を演じた。英語が上手いことから頼まれたものだが衣裳を見せられて
「ミンチン先生って女なの〜?」
と言った。
 
「小公女読んだこと無いの?」
 
(礼音に女の服を着せるのが目的だったとしか思えない)
 
観客の声
「ミンチン先生演じてる子凄く可愛い」
「英語の発音もきれいね」
「この子がラビニアか、いっそセーラでも良かったのでは」
 
実際ラビニアをやってもらおうかという意見もあったらしい。
 

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また土曜日の午後に参加した『青空高校の午後』の撮影では
「君、今日は凄く女の子っぽい」
と言われて女子制服を着せられてしまった。
(視聴者からは「可愛い!」「ホントに女の子みたい」と言われた)
 

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9月16-17日は山形県の月山(がっさん)に行った。
 
(羽黒山・月山・湯殿山で“出羽(でわ)三山”である)
 
煌は前日・金曜日にオーリンを呼び出して頼んだ。
「土日、登山するんだよ。その間、女の子に変えておいてくれない?」
「OKOK」
「月曜日の朝には男の子に戻してほしい」
「うん。男の娘に戻すね」
 
それで金曜日は女の子の身体で眠った。
 
土曜日は東京から山村マネージャーと一緒に新幹線で山形まで行く。ここからレンタカーで月山ビジターセンターに行き、金沢から来た〒〒テレビ取材班(千里・明恵・希望)と合流した。3人で交替で運転してきたらしい。
 
煌は言った。
「立花先生、ぼくそちらの車に乗せてもらえませんか?」
「うん。おいで」
 
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それで煌は千里の車の助手席に移ったのである。
 
しかし山村まで
「煌がそちらに乗るのなら2台で行くのは不効率だ。俺もそちらに乗せろ」
と言うので結局、山村を助手席に乗せ、明恵・煌・希望の3人で後部座席に乗った。身体が接触するが全員女の子だから問題無い
 

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車で月山7合目まで行くが、この道が凄い道だった。礼音は立花先生の車に移って良かったぁと思った。山村さんの運転でこの道は通りたくなかった。希望さんも
「ここ凄い道ですね」
と言っていた。
 
七合目レストハウスの所に車を駐め、装備を点検してトイレにも行ってから5人で登り始める。休みの日なので登っている人は結構多かった。しかし登山道は整備されていて歩きやすかった。明恵さん・希望さんが交替で撮影していたし、明恵さんはドローンでの空撮もしていた。
 

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1時間ほどで頂上まで到達できた。
「今回はわりと楽でしたね」
と礼音が言うと、山村が言った。
「このまま戻るつもりだったけど、湯殿山にも行かない?」
 
千里は言った。
「こうちゃんが車を回送してくれるなら」
「うん。それでいい。途中撮影した写真は分けてくれ」
「OKOK」
 
それで山村は車を回送するためにこのまま月山の登山道を戻り、残りの4人(千里・煌・明恵・希望)は湯殿山への縦走路を進んだ。山村が千里に任せたのは、千里がこの縦走路を何百回も歩いているのを知っているからである。千里は出羽の女山伏の鑑札も持っている。この山の先達である。しかし希望はさすがに撮影する余裕まで無いようだったので、この縦走中の撮影はもっぱら明恵がした。
「これは・・・なかなか凄いルートです」
などと希望が言っている。
「まだ月山から湯殿山に行くほうが楽。逆は厳しい」
「そうでしょうね、これ」
「でも松尾芭蕉は湯殿山から月山に移動したんだよ」
「ひぇー。よくやりますね」
「松尾芭蕉は忍者だったという説を信じたくなるね」
「そんな説があるんですか」
 
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煌の体力を考えてゆっくりしたペースで歩いたので、湯殿山までは3時間以上かかった。そして湯殿山のご神体に“登拝”するが、希望も煌も面白がっていた。
 
明恵はこれを知っていたらしい。
「これが語るなかれ、聞くなかれ、の正体だよ」
「うん。これ人に言っちゃいけないと思います」
「月山からあの道を歩いた人へのご褒美かも」
 
山村が居ないので4人で温泉にもはいった。それから駐車場までバスで降りたら、山村が来ていたので合流する。それでその日は千里の運転で鶴岡市まで行き、ホテルに泊まった。
 

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翌日は遊覧船で由良海岸を見てから羽黒山に行き、いでは記念館から神社までは2446段の石段を登った。山村は「俺はパス」と言って車で昇った(美鳳さんに「たるんでる」と叱られたらしい)。
 
今日は昨日ほど危険ではなく、ただきついだけなので、希望が主として撮影を担当していた。煌は
 
「タレントって体力が必要なんですねー」
 
などと言いながらも頑張って登った。
 
明恵は登り切った所の蜂子神社で女性神職から
「女性だけの山駆けがあるんですが、参加しませんか」
と勧誘されていたが、神職さんは千里の顔を見ると
「なんだ、千里ちゃんの連れか」
と言っていた。
 

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煌は月曜日の朝、男の子に戻してもらう約束だったのだが、実際は月曜日の夜、仕事が終わって寮に戻ってから身体は変化した。
「オーリン忘れてたのかなあ」
 
それで月曜は学校も仕事も女の身体で頑張った。月曜日は体育で柔道だったのだが、最初組んだ男子が女子クラス委員のアヤちゃんを手招きし「こいつ任せた」と言うので、その日はアヤちゃんと組んだ。
 
仕事ではダンジェリンさんの番組で女装させられてしまった。今日はOL風のブラウスとタイトスカートを穿かされ、パンストまで履いた。それでパソコンを操作したり、コピーを取ったり、電話を受けたりする演技をさせられた。電話では外人タレントのルーシーさんが英語で話しかけてきて、煌は英語で応答したが
「あんた英語うまいね」
と言われた。
 
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このOL風のキャラには「立山キャサリン」という名前が付けられた。
「どっからキャサリンなんて名前が?」
「俺山村美紗さんのキャサリンのファンだから」
「小説ですか?」
「そそ。推理小説」
「なんか昔の女優さんにもいましたよね」
「うん。キャサリン・ヘップバーンって大女優さんがいた」
「映画会社にスカウトされて、『だったら一週間に100万円ください』って冗談で言ったら映画会社が『分かった。払う』と言ったから映画デビューした」
「へー。言ってみるもんですね」
「俺なら週100円なら雇うと言われそうだ」
「オードリー・ヘップバーンとかもいましたよね」
「うん。偶然同じ苗字だけど無関係」
「へー」
 

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しかし煌はタイトスカートでも普通に歩いていたので
「よく転ばずに歩けるね」
と感心された。
「100年前から練習してました」
「だったら今後100年はスカート穿くこと」
「分かりました。スケート靴履きます」
 
そこで相手が詰まってしまったので、煌は
「でもこないだ学校の廊下でスケート靴履いたら叱られました」
と言って笑いを取っておいた。
 
(プロデューサーさんから「コスモスちゃんとこのタレントさんはみんな鍛えられてるね」と褒められた)
 

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