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■女たちの戦後処理(3)

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町添専務たちとの打ち合わせが終わった後、千里は政子から楽器を探すの手伝ってと言われ、料亭から一緒にハイヤーに乗った。冬子は今、政子の実家で静養(=あやめの子守)しているらしいのだが、気分転換にヴァイオリンを弾きたいから、外に出たついでに『Marilynを持って来て』と言われたらしい。ところがケイのヴァイオリンは何丁もあるので、政子にはどれがMarilynなのか分からない! ということでそれを探すのを手伝って欲しいと言われたのである。
 
「名前書いておけばいいのにね」
と千里は言った。
 
「だよねー。ヴァイオリンの胴にマジックで書いておこうか」
と政子。
 
「それはさすがにやめよう。Marilynって500万円くらいの楽器だったはず」
「げっ。それはさすがに名前書けない」
「Annetが800万円くらい、Lyrilが2000万円くらい」
「高いな」
「Angelaなんて1億円だし」
「うっ。1億円にマジックで名前書いたらさすがに叱られるよね」
「世界中の人から叱られるよ。ああいう銘品は世界中のそして将来にわたる音楽家の共有財産。たまたまケイが管理しているだけ」
 
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「うーん。なんでそんなに高い楽器があるんだろ。私のヴァイオリンなんて100万円なのに」
「いや、100万円だって充分高い」
「そっか」
「ヴァイオリンケースにシールとか貼っておくといいんだよ」
「あ、それがいいよね−」
 

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それで千里は少しぼーっとしていたので、ハイヤーがどのあたりを走っているかあまり認識していなかった。それでふと気付くと、政子と運転手さんが何やら言っていたが、それも半分夢うつつのように聞いていた。
 
「お客さん、目的地はどこです?」
 
へ?
 
「えっとね。東京駅から行く時はコンビニの角を右に入って・・・」
「コンビニはたくさんあるんですけど」
 
ああ。政子の道案内は怪しいよな。だいたい東京駅から行く時と今日みたいに世田谷から行く時では進行方向が逆だから左右も逆じゃん!
 
千里は微笑んで介入しようかと思ったが、ふと外の景色に気付いて
「あ、すみません。ここでいったん降ります」
と言ってしまった。
 
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かなりの時間、迷走していたふうの運転手さんがホッとした様子で2人を降ろす。
 
「ここ、うちの近くなんだっけ?」
と政子が訊いたが、千里は
 
「少しお散歩しようよ」
と言った。
 

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色とりどりの道着を着た若い男女が盛んに行き来している。今日は柔道か空手の大会でもあるのだろうか。
 
「なんだろう? シュアイジャオの大会でもあるのかな?」
と政子。
 
唐突にシュアイジャオが出てくるなんて、この人の発想って面白いよな、と千里は思う。(千里は自分の発想もかなりユニークであることをあまり自覚していない)
 
何となく人の流れに沿って歩いていると体育館に出る。
 
「あ、東京体育館だったのか」
 
千里はここでウィンターカップに出た時のことを思い出していた。胸が熱くなってくる。
 
唐突に足下にボールが転がってきた。
 
「すみませーん。取ってもらえますか?」
とユニフォームを着た高校生くらいの女の子が言う。
 
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千里は微笑んでボールを拾うと、彼女の少し向こうに見えるゴールめがけてシュートする。
 
ボールはダイレクトにゴールに飛び込む。ゴールを認める笛が鳴る。思わず心が躍る。
 

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「千里、千里、どうしたの?」
 
自分を呼ぶ声で振り返る。政子が怪訝な顔をしている。千里は今ボールを撃った方角を再度見る。そちらには何もない。道着を着た子たちが行き来しているだけである。
 
「あれ?何か落ちている」
と言って政子が地面から小さな赤いものを拾い上げた。
 
「お人形さんの鏡かな?」
 
それは親指の先くらいのサイズの小さな手鏡だった。小さいにもかかわらず鏡の部分はちゃんと映るように作られている。
 
千里は何気なく政子からその手鏡を受け取ると、唐突に「何か」思い出さなければならないものがあることを自覚した。
 

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流しのタクシーを停めて恵比寿の冬子のマンションに移動する。Marilynはすぐ見つかったので、それを持って部屋を出る。
 
「車借りていい?」
「うん、いいよ」
 
ということで、マンションに駐めてある冬子の車を借りて、それを千里が運転して政子の自宅まで移動した。
 
「この車、このまま4〜5時間借りられる?」
「うん、OKOK。じゃマンションの鍵預けておくね。鍵は次会った時に返してもらえばいい」
「ありがとう。車は今日中に返せると思うから」
 
それで政子を降ろした後、千里は冬子の車で関越に乗ると、本庄児玉ICまで行く。下道に降りて辿り着いた所は、本庄市総合公園体育館である。
 
この日は特に何も行われていないようで、卓球などの練習をしている人たちがいる程度である。千里はぼんやりと観客席を歩きながらその様子を見ていた。
 
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キラリと光るものがある。
 
拾い上げると、待ち針であったが、千里はそれがまるで小さな剣のように見えた。
 

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千里は関越を南下して車をいったん恵比寿の冬子のマンションに戻す。それから電車で千葉の康子宅まで行った。
 
「ムラーノ借りますね」
と康子に言う。
 
「うん。自由に使って。あら?千里ちゃんだけ?由美は?」
「季里子ちゃんとこに置いてますけど、季里子ちゃんもお母さんにはいつでも来てと言ってましたから、見にいってあげてください。場所はご存じでしたよね?」
 
「うん」
「すみません。たぶん10日くらい出てくると思いますので、よろしく。あ、そうだ。もし季里子ちゃん所に行ったら桃香に渡してもらえませんか?」
と言って1万円札を5枚渡す。
 
「OKOK」
「ついでみたいで申し訳無いですが、お母さんにもお小遣い」
と言って別途1万円渡す。
 
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「ありがとう。でも大丈夫?」
「ええ。印税が入ったから」
 
それで千里はムラーノに乗ってエンジンを掛け、川島家を出た。
 

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千里は「鍵」を開けなければならないと認識した。
 
ムラーノを繰って取り敢えず首都高に乗り、自分の勘だけを頼りに高速道路を走った。分岐点をどちらに行くかは、その都度勘で決めていたのだが、いつしか東京ICに来ていた。そのまま東名に入る。
 
千里はだいたい2時間走って2時間休む(できるだけ仮眠する)というペースで走って行った。吹田ではうっかり府道2号に行きかけたが(千里はここから府道2号に入り、千里(せんり)ICで降りるという走り方をこれまで100回以上している)、時計の数字から行き先を占うと、中国道方面に行けと出た。
 
結局丸1日以上の行程で、辿り着いたのは佐賀県の唐津市である。
 
千葉の川島家を出たのが4月19日の夕方だったが、途中長めの仮眠もしたので、唐津に着いたのは21日の朝であった。惹かれるように鏡山に登る。そして車を駐車場に駐めると、鏡山神社にお参りした。
 
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お賽銭を何となく千円入れて、拝殿で拍手し、参道を戻りかけた時、突然千里の体内から白い勾玉が飛び出して来た。
 
「何?何?これ。どこにあったの?」
と千里は思わず口に出してしまった。
 
しかしこれは東京体育館で拾った鏡、本庄で拾った剣と一体のものかも知れないという気がした。
 
拝殿の向こう側から何か言いたげな感じの気配がある。千里は微笑むと拝殿に戻り、賽銭箱にあらためて1万円札を3枚入れてから深く礼をし、駐車場に戻った。
 

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唐津市内のスーパーで何か適当な小物入れが無いかなと思っていたらロケットがあったので買い、鏡・剣(実は待ち針)・勾玉を入れる。
 
これって三種神器じゃん!
 
首に掛けたら、何だかちょっとパワーが出るような気がした。
 
食料の補給をした上で西九州自動車道に乗り、今度は東へとひた走る。九州まで来る時は2時間走って2時間休むのを基本にしたのだが、体力が持ちそうな感じだったので、2時間走って1時間休憩のパターンに変えた。
 
それで翌日22日の朝4時頃、伊勢の二見浦に着いた。この日の日出は5:14である。そういえば高校生時代、ここで日出を見ながら『See Again』という曲を書いたなというのを思い出していた。
 
津島瑤子が歌い、80万枚の大ヒットとなってRC大賞の歌唱賞を取った曲である。それを機会に津島は「一発屋」の看板を返上して、10年以上第一線で活躍し続けている。
 
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でも自分が最初に書いた曲は『六合の飛行』だよな、ということを考えていた時、千里はそのタイトルの意味が分からなかった。六合って何? それを考えながら、二見興玉神社にお参りした。他の数人の参拝者と一緒に、じっと日出を待つ。
 
「来た!」
という声を出す人が居る。
 
夫婦岩の方から力強い太陽が登ってくる。
 
それを見ていて、千里は心の奥底で熱い熔岩の塊が吹き出してきたかのような感覚を覚えた。
 
そして千里は忘れていた感覚をひとつだけ思い出した。See him again.
 
『りくちゃん、久しぶり』
 
その時、千里は六合の意味をやっと思い出していた。
 
『千里、久しぶり。ってか、俺は本当はいつも千里のそばに居たけどな』
 
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そうだ。『六合の飛行』は彼が自由に大空を舞い飛ぶ姿をイメージして龍笛を演奏し得られた曲だったんだ。なぜ自分はこんな大事なことを忘れてしまっていたのだろう・・・。
 
『ごめんね。コンタクトが取れなかった』
『恋をしたから力を失ったんだよ』
『やはり巫女って恋をしたらダメなの?』
『恋の性質にもよるんじゃない? 貴司君との恋では平気だったろ?』
『むしろ私って貴司と会ってから巫女になった気がするよ』
『それも思い出したか。もっともあれはタイミングが重なっただけだけどな』
『ふーん』
 
千里は水面からどんどん離れていく太陽を眺めていた。
 
『他の子も近くに居るの?』
『それは自分で探すんだな』
『うん、そうする』
 
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