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■女子バスケット選手の日々・2017オールジャパン編(11)

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仙台のお店の前から、大宮の彪志のアパート前に転送してもらう。朋子が鍵を開けて中に入れてくれた。
 
「おはよう」
「おはよう」
「お母さん、朝御飯にしましょう」
「何かいい匂いがするね」
 
彪志と桃香を起こす。
 
「おお、ハートマークのオムライス」
「和実のお店で買ってきた」
「仙台に行って来たの?」
「うん。でもすぐ出かけるから、お昼は適当に食べててね」
 
「このカフェラテ、ラテアートが凄い!」
と彪志が言っている。
 
「よくこういうの造形するよね〜。職人芸だよね」
 
この中で仙台で作ってもらったオムライスが熱々で、カフェラテのラテアートも崩れていないことに疑問を感じたのは朋子だけである!桃香は何も考えていないし、彪志は青葉との付き合いで、たいていの不思議なことには慣れてしまい、鈍感になっている。
 
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4人でオムライスを食べ、朋子と彪志と千里はカフェラテ、桃香はミルクを飲む。それで食事が終わると千里は
 
「じゃ、そろそろ行くね」
と言う。
 
「千里、今夜は?」
と桃香が訊く。
 
「都内で夜10時くらいまで用事があるんだけど、そのあと深夜長野県まで行ってこなくちゃいけない。夜中2時から会議で」
 
「長野〜!?2時〜!? 千里、ほんっとに忙しいね」
 
「帰りは明日の朝。向こうで何か買ってくるね」
「あ、長野だと、お焼きがあるといいな」
「OK。あったら買ってくるね」
 
と言って、千里は出かけた。
 
そのまま用賀の自分のアパートに転送してもらい、シャワーを浴びてから取り敢えずぐっすりと寝た。
 

 
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お昼過ぎに目を覚ます。
 
「さすがに疲れたなあ」
と独りごとを言い、お肉を焼いて御飯の上に乗せ豚丼にして食べると、結構元気が出る気がした。オールジャパン決勝戦が行われる国立代々木第1体育館に行く。
 
一般にバスケットでは女子の試合が前座で男子が真打ちという感じの扱いなのだが、今年のオールジャパンでは、今日は12:00, 14:00 に男子の準決勝2試合が行われ、その後で女子の決勝となる。男子の試合が前座のようで少し気分がよい。
 
チームのメンバーと合流する。純子はいつものように元気だ。
 
純子も絵津子も常にポジティブで、見ていて気持ちが良い。しかしその純子も今日は最大のライバルであるその絵津子との決戦だ。おそらくお互いにマーカーになるのだろう。
 
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千里のマーカーになるのは誰だろうか? 大沼マリアか、翡翠史帆か。大沼は静岡L学園→東京W大の出身で、2015年度に千里がW大学に練習に行っていた時期、たくさん手合わせしている。ユニバーシアード代表候補にもなっていたのでユニバーシアード代表の練習でも一緒になっている。
 
翡翠史帆と千里はオールスターの投票で最後まで得票を争った。そのオールスターは来週である。
 
千里は目を瞑って瞑想に近い状態で、昨年までサンドベージュを牽引していたシューター、三木エレンのことを考えていた。たぶん彼女は藍川真璃子以降で最大のシューターだった。藍川真璃子は1970年から1983年まで日本代表を務め、三木エレンは1995年から2015年まで日本代表を務めた。藍川と三木の間には、丸山・佐原・大川などのシューターもいるが、藍川と三木に比べると実績は小さい。自分はフル代表に入ったのが遅いからさすがにあの2人のような実績はあげられないなあ、などとも考える。
 
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男子の準決勝が終わった後、コートの清掃が行われる。
 
照明が落とされた代々木第1のセンターコートのサイドライン外側に両軍のスターティング5が並ぶ。そしてディフェンディング・チャンピオンのサンドベージュから選手がひとりずつ紹介される。続いてレッドインパルスのスターター5人が紹介される。そして両軍5人ずつの選手がコートに並んだ。
 
SB 田宮寛香/翡翠史帆/沼田久恵/平田徳香/夢原円
RI 入野朋美/村山千里/広川妙子/勘屋江里菜/三輪容子
 
結果的に絵津子も純子もベンチスタートとなった。
 
円と容子でティップオフが行われる。
 
17:09 ゲームは開始された。
 
千里にとっては初めてのオールジャパン決勝戦である。
 
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試合は均衡した感じで始まる。
 
両軍ともベテラン選手が多いので、お互い知り尽くしている感があり、攻めが予測されて停められてしまう。攻防が入れ替わるだけで点がなかなか入らない。このあたりは未知の相手と戦うことの多い国際大会との違いだなと千里は思いながらプレイしていた。
 
Wリーグの新エースになった感の円に、容子もかなりいい線で戦っており、見応えのある戦いが続く。
 
しかし千里は史帆を圧倒する。千里は史帆のマークをまるで黙殺するようにどんどんスリーを放り込む。あまりに差が出るので史帆が心細そうにベンチを見るが、ベンチは動かない。それで気合いを入れ直して対抗してくるものの全くかなわない。
 
恐らくは彼女の成長のためにはここで千里とマッチアップさせておくことが大事と考えたのと、まだ序盤なので充分挽回できるとみたからであろう。
 
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一方でPF対決、センター対決はややサンドベージュ側に分(ぶ)がある感じで進行した。それで第1ピリオドは24-22で終了した。22点の内、12点が千里の得点である。
 

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第2ピリオドでは第1ピリオドに出ていなかった選手を中心に運用した。ここで絵津子(SB)と純子(RI)の対決ができるので、お互いに物凄く張り切っていた。ふたりは高校1年の時以来好敵手として鎬(しのぎ)を削ってきた。この日もお互いマーカーになって、闘魂あふれるプレイを見せていた。
 
このピリオドを20-16で終える。
 
前半合計で44-38である。
 
ここまでは6点差はあっても、ほぼ互角で戦っている感じであった。
 

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ハーフタイムショーではお正月っぽく振袖を着た女性たちの集団パフォーマンスが行われていた。
 
「きれーい」
という声があがっているが、千里は目を瞑って瞑想するかのようにしていた。
 
「でもあの最前列右から2番目の子、ちょっと男の娘っぽくない?」
んどと長原有香が言っている。
 
「そう言われるとそんな感じもしないでもないけど、どうだろうね」
と小松日奈。
 
「だけど周囲には男みたいな女がたくさんいるからなあ」
と桔梗乃愛。
 
「女湯で悲鳴あげられたことのある人はこの中でも多いでしょ?」
「まあそれはお互い様で」
 

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第3ピリオド、双方とも示し合わせていたかのように、今年が最後かもという選手が全員出た。レッドインパルスの今年いっぱいでの引退を表明している三笠さん、春名さん、勘屋さんが出ている。
 
ところがこのピリオド前半にバランスが崩れた。おそらく彼女も今年いっぱいで引退と思われるサンドベージュのポイントガードで主将の田宮さんが、パス筋を塞がれていたことから自ら侵入してレイアップシュートを決めたのに端を発し、突然「ポイントゲッター」に目覚めてしまったのである。
 
どんどん自ら得点を決めるし、スティールも決める。それでほんの数分の間にひとりで12点取り、そこまでの得点が60-42と18点もの大差になってしまう。
 
レッドインパルスの松山監督もひじょうに短時間にゲームが動いたので対応が遅れた。
 
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タイムを取って、主力を投入するも、田宮さんの勢いが止まらない。こちらは最初広川キャプテンがマッチアップしていたのだが、今日の田宮さんは普段の田宮さんではない。広川さんは「え〜〜!?」という顔をしている。
 

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広川キャプテンは彼女の対応を純子にするよう言った。すると向こうは絵津子を出して来て、絵津子が純子を誘うようにする。こちらは千里が出て行き、絵津子の相手は千里がすることにした。
 
純子も今日の異様な雰囲気の田宮さんに最初かなり戸惑っていたが、持ち前の勘で何とか対応していく。それでやっと田宮さんの勢いを止めることができた。
 
しかしこの回、サンドベージュは大きく点差を付けて66-52と14点差である。
 

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第3ピリオドが終わった後のインターバルでレッドインパルスのベンチはムードが悪かった。いつもいい所まで行って、サンドベージュには苦渋を飲まされている。それほどまでにサンドベージュは強い。今回も予想外の田宮さんの頑張りがあり、思わぬ大差を付けられてしまった。
 
これを挽回できるか?
 
キャプテンを初めベテラン選手達の雰囲気が暗い。
 
しかし純子は元気である。
 
「さあ、みなさん、次のピリオドは見せ場ですよ。ここから逆転して、20点差で勝利しましょう」
と威勢の良い言葉を挙げている。
 
「ジュンは元気だね」
とキャプテンが苦笑しながら言う。キャプテンもここは踏ん張り時だと分かっているだろうが、今までたくさん負けているだけに、やはり勝てないのかなあという方向に考えてしまうのだろう。
 
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