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■女子バスケット選手の日々・2017オールジャパン編(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-09-16
 
1月3日はカウントダウンライブで配ったチラシを見て、メイドさん希望ということでクレールに来店した高校生・専門学校生・大学生の女子(?)が5人居たので、和実がレコード会社などとの打合せに出ていたこともあり、若葉が!面接をして、その内の3人の採用を決めた。落とした2人はどちらかというと、やや怪しげなメイドカフェ向きの人であった。しかしここで3人採用したお陰で、安心してライム・クロミ・コリンを明日からエヴォンに研修に派遣することができるようになった。
 
若葉は結局来週の頭くらいまで仙台に滞在することにした。紺野君は今日の夜東京に戻るものの、また週末に手伝いに来てくれるという。
 
「だけど、若葉、ここのお仕事を手伝いながら、自分のお店の運用の練習もしてるでしょ?」
と紺野君が言う。
 
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「そうそう。これからムーランの方もスタッフの募集掛けてじゃんじゃん面接しないといけない。パート入れると50-60人採用しないといけないし」
 
「あまり負担になるようなら、面接は僕も手伝おうか?」
「そうだなあ。頼むかも。ヨッシーは私の好みがだいたい分かるだろうし。あ、そうだ」
「うん?」
「ヨッシー、ムーランの専務か何かになる?」
 
「それうちの会社の就業規則に違反しないかどうか、確認してみる。もし役員になれない場合でも、出資しようか?」
 
「いや、資金は足りてるから」
「確かにね!」
「でも1%くらい出してくれてもいいよ」
 
「ムーランの資本金って幾らにするんだっけ?」
「3億くらいかなあ・・・」
「・・・・・」
 
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「どうかした?」
「悪いけど、0.1%(30万円)にさせて」
「いいよ」
 

「ねぇ」
「何だい?」
「今夜セックスしてあげてもいいよ。たくさん手伝ってもらっているから、そのせめてもの御礼も兼ねて」
と若葉は言った。
 
紺野君は少し考えた。
 
「今はやめとく。だってお腹の中の子がびっくりするよ。その代わり出産して少し落ち着いてから1度させてよ」
「いいよ」
 
「でも、次の恋人作らないの?」
と紺野君は訊く。
「自分が男の子と恋愛ができることが分かったから、もう満足。この後はもう恋人は作らない」
と若葉。
 
「でも今お腹の中にいる子の後、もうひとり産みたいと言ってなかった?」
「精子は確保しているから問題無い」
「いつの間に!」
 
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「だから吉博は私の最後の恋人」
「ふーん。。。」
「私が吉博の最後の恋人ではないのが残念だけどね」
「僕はたぶんもう恋はしないと思うけど」
「でも吉博の最後の恋人は竹美ちゃん(*1)だもん」
 
紺野君はギクッとした顔をした。
 
その後、ふたりはお互いの心を探るように見つめ合った。
 

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(*1)震災の津波で亡くなった、吉博の元婚約者。若葉と竹美は同い年の同じ誕生日であった。但し出生時刻が若葉は7:18 竹美は22:53なので、ふたりのホロスコープは昼夜が逆転しておりハウス対応が全く異なり、運命も大きく異なる。
 

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「でも2番目に採用した女子?大生は本人が言わなきゃ、女の子ではないとは気付かなかったね」
と紺野君は話題を変えるように言った。
 
「うん。実際、ばっくれて女子として居酒屋で1年働いていたというし」
と若葉。
 
そういえばマキコも女子としてファミレスで1年間働いていたと言っていたなと若葉は思った。
 
「あの子の着換えとかどうする?」
「2階にさ、用途を考えていなかった2畳の部屋があるじゃん。女子更衣室の向かい側に」
と紺野君が言う。
 
「ああ!あそこを使うか」
 
(和実の留守中に2人は勝手に決めている)
 
「うん。あそこを個室更衣室ということにしよう」
「個室という表現はいいかもね。よし、そういうプレート作っちゃおう」
 
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と言って若葉は余っているプラスチック板に『個室更衣室』という文字を書いた。
 
「じゃ貼ってくるよ」
と言って紺野君がそのプレートと接着剤を持ってお店の方に行く。
 
マキコは普通に女子更衣室で問題無さそうだけど、あの子の場合は分けてあげた方がいいだろう、と若葉は思う。でないと《あの子が》他の子にセクハラされそうだ!
 

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「だけど最近、ほんっとに完璧すぎる男の娘が増えているよ」
と作業を終えて戻って来た紺野君が言う。
 
「私も男の娘に生まれたらよかったかなあ。そしたら寄ってくる男の子が少なくて済んだかも」
などと若葉は言う。
 
「いや可愛い女の子はいくらでも居るけど、可愛い男の娘は貴重だから求愛者が増えたりして」
 
「その状況も怖いな」
と言いつつ、吉博は絶対男からも言い寄られているよなと思う。彼って、『どっち』かな?などと妄想してみる。
 
「それに男の娘じゃ子供が生めないよ」
と紺野君は言う。
 
すると若葉は紺野君に小さく手招きして小声で言った。
「希望美ちゃんは遺伝子的に、和実と淳の間の子供なんだよ」
 
「・・・まさか!?」
 
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「表向きには卵子を親族から借りたことにしているけどさ。本当は和実から採取した卵子に淳さんの冷凍しておいた精子を解凍して受精させて胚を育て、代理母さんの子宮に投入したんだよ。ちゃんとDNA鑑定書も作った。あの子は今年の夏くらいまでには特別養子縁組でふたりの実子になる予定だけど、その特別養子縁組の記録は戸籍上に残るからね。本人が戸籍を見た時に悩んだりしないように、ちゃんと2人の本当の子供であることを納得してもらうために、鑑定書を作ったんだよ」
 
「卵子を採取って・・・じゃ、和実ちゃんってもしかして半陰陽か何か?」
「ハイティング代数陰陽らしい」
「何それ〜〜〜!?」
 

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1月6日の早朝、千里が作曲中の曲の調整をしていたらコスモスから電話があった。
 
「醍醐先生、お忙しい所申し訳ないのですが、1月8日の深夜にお時間が取れませんでしょうか?」
「ごめーん。8日はオールジャパンで決勝戦まで勝ち残った場合、決勝戦があるし、そのあと勝っても負けても打ち上げがあると思うから」
 
「はい。それはバスケット協会のサイトで確認したのですが、8日の深夜、というより9日の午前2時くらいに長野県の安曇野(あずみの *1)にご足労は頂けないかと思いまして」
 
(*1)金印で有名な福岡の志賀島を本拠地にしていた安曇一族が開拓した土地なので安曇野という。但し現在安曇野に、安曇一族の主神・綿津見神を祀る神社は見当たらない。
 
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「午前2時って深夜の!?」
 
「はい。非常識な時間とは重々承知なのですが、関係者の日程がどうしても9日深夜2時から5時くらいまでの間しかあかなくて」
 
千里は《こうちゃん》に視線を送った。《こうちゃん》は『東京から安曇野までは車で2時間あれば行くよ』と言った。千里はだったら3時間だなと考える!打ち上げが多分22時くらいまでには終わるだろうから、矢鳴さんに送ってもらって1時には到着すると計算した。
 
「誰々が出席するの?」
 
「できたら醍醐先生、ケイ先生、アクアプロジェクトのプロデューサーである大宮万葉先生、ディレクターである絹川和泉先生、アクア本人、今井葉月、今井の叔母にあたる上野陸奥子さん、それに私と川崎ゆりこです」
 
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千里は考えた。
「マリちゃんは?」
「ケイ先生には、マリ先生に言わずに来て欲しいとお願いしました」
 
「そういうメンツを集めて、マリは除外ということは、もしかしてアクア、こっそり性転換手術でも受けることにしたの?」
 
「いえ。その性転換手術を受けたり、去勢したり、おっぱいを大きくしたりすることはないことを関係者一同の前で再確認したいと思いまして」
 
「あの子の気持ちは、実際どうなのかな?」
 
「実は昨夜私とアクアのふたりだけで夜通しで話し合いました。それで本人は自分は女の子になりたい訳では無いし、おっぱいを大きくするつもりもないと言いました」
 
昨夜に夜通しということは、コスモスはつい今し方その話し合いが終わったところなのではなかろうかと千里は考えた。コスモスもアクアもどちらも多忙なので、そんな時間に話し合わなければならなかったのだろう。コスモスは本当に熱心な経営者だし、各タレントさんに優しい。アクアのことも商売の問題抜きにして、よくよく親身になって考えてあげているようだ。
 
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「分かった。その時間帯ならこちらの打ち上げが終わってから行けると思う」
「お手数お掛けします!」
 

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コスモスとの電話を終えた後、千里は少し考えてから、和実にメールしてみた。
 
《起きてる?》
すると和実からは即返信があった。
《起きてる》
《電話してもいい?》
《15分程度以内に終わるなら》
《終わらせる》
 
それで千里は和実に電話を掛けた。
 
「何か忙しいの?」
「明日お店を開けないといけないから、今日は食材とかの調達と仕込み」
「嘘!?クレールってもうオープンするの?」
「グランドオープンは3月30日。でもそれ以前に毎週土日だけ専用イベントに貸すんだよ。特に明日は300-400人入るイベントだからクルー全員出勤」
 
「300-400人って凄いイベントじゃん。何やるの?」
「ボニアート・アサドのライブ」
「あの子たち、そんなに集客力あるんだっけ?」
「1月2日に第1回のライブをしたんだよ。365人入った」
「凄い!いつそんなの決めたの?」
「12月31日のカウントダウンライブの時。彼女たちがうちの出店に来てくれた時に、出演する?うん出る!と決めた」
 
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「和実らしい!」
 

「それだったら、7日深夜、正確には8日の午前0時頃から6時頃ならそちらは空いてるかな?」
「8日も規模は小さいけど、セミプロのジョイントライブをするんだよ。だから仕込みをやっていると思う」
 
「忙しいね! でもそちらの作業は厨房だよね?客席の方、借りられない?コーヒーとかはセルフサービスで入れてその分料金を払うよ」
 
「何に使うの?」
「ちょっと美少年と2人だけで密談。もしかしたら3人になるかも」
「千里って、最近美少年に走っているんだっけ?」
「ショタコンの趣味はないなあ。私は大阪に住んでいる例の人しか眼中にないよ」
「千里、桃香との関係はどうなってんのさ?」
「私と桃香の関係はずっと昔から変わらないよ」
 
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「まあいいや。でも客席使うのはOK。こちらは厨房で作業しているし、声を掛けてくれたら、カフェラテくらいは入れてあげるよ」
「じゃ1晩の借り賃、深夜料金4万円くらいで」
 
「ありがたくもらっておこう。それならコーヒー飲み放題、フードも常識的な範囲で食べ放題で」
 
「了解〜」
 

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仙台のクレールでは、とりあえず次のライブの予定が決まっていた。
 
1月7日(土)13:00-14:30(開店10:00) ボニアート・アサド
1月8日(日)13:00-18:00(開店11:00) "Rising Up vol.1" TKRの5人の在東北アーティスト
 
TKRのアーティストのライブは1人1時間である。1時間持たせられるアーティストに声を掛けて出演者を決めた。普通のライブハウスの対バンでは1組30分のことが多いので、声を掛けられたアーティストはみんな燃えているようである。
 
ボニアート・アサドはスタンディング(max500)であるが、Rising Upのほうは椅子のみを並べるレイアウト(max240席)でやってみることにした。山崎さんは「たぶん実際にはテーブル付き椅子でも収まるくらいだとは思うのですが」と言ったが、万一そのキャパ以上に客が来た場合、テーブルのある椅子に座っている客の前からテーブルを撤去する訳にはいかない。
 
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どちらもドリンク代のみの無料イベントである。ドリンク代は500円だが、ボニアート・アサドに関しては「20歳以下の学生さん400円」ということにした。
 
そしてこういうコメントをした。
 
「20歳以下の学生さんかどうかは身分証明書などのチェックはしませんが、学生っぽい雰囲気でご来場ください。スーツ姿の方、スタッフが見てどうしても20歳以下又は学生には見えない方からは500円頂きます」
 
「ボニアート・アサドのイベントは混み合うことが予想されます。当日はトラブルをできるだけ減らすため、男性と一緒にご来場なさった方以外の女性のお客様は左側前方のブロック、男性のお客様、男女ペア、男女混合グループのお客様はそれ以外のブロックにご案内します」
 
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「女性かどうかはスタッフが見た目で判断させて頂きますので、自分は心は女という方はしっかり女装してきて下さい。ただし女装していても、見た目の雰囲気あるいは言動が、どうしても女に見えない方は大変申し訳無いのですが、男性&混合ブロックにご案内させて頂きます」
 
これは実は2日のイベントの時、女性と男性を分離してもらえないかという要望が多数あったからである。密度が高いのでどうしても隣の人と身体の接触が生じてしまう。
 
これに対してツイッターから
「私女ですけど、いつも男に間違われるんですが、男ブロックですか?」
という質問があったので和実はこう返信した。
 
「学生証とかマイナンバーカードとかパスポートなど、性別が確認できる写真付きの公的身分証明書を見せてくださると確認できます。運転免許証や社員証は不可とさせて頂きます」
 
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「あるいはその場でボニアート・アサドのファンクラブに入会して頂いたら、暫定ファンクラブ会員証を発行してもらえますので、それで入場していただくこともできます」
 
「なお、性別を誤認されやすい人だけでなく、他にも心が女だけど戸籍は男という方でも申請すればファンクラブは女性会員として女性名で入会できますのでご検討ください」
 

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女子バスケット選手の日々・2017オールジャパン編(5)

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