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■女子バスケット選手の日々・2017オールジャパン編(7)

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オールジャパンは1月6日(金)に準々決勝が行われた。
 
12:00からのジョイフルゴールドとサンドベージュの試合は好ゲームとなり、玲央美たちもかなり頑張ったのだが、最後はサンドベージュが6点差で試合を制した。玲央美たちは相手に今にも手が届きそうな感触だっただけに、かなり悔しがっていた。一方の勝った側の湧見絵津子たちにも笑顔は無かった。むしろ彼女は後で「もう負けたかと思った。レオさんたち本当に強い」と言っていた。
 
14:00からの東京W大とビューティーマジックの試合では、ビューティーマジックの鈴木志麻子が最初からピタリと奈々美について、激しいマークをした。さすがの奈々美も日本代表の本気のマークを受けたら、まだ勝てない。この日は奈々美が封じられたことから、W大の得点は大幅に減少し、ビューティーマジックが20点差で勝利した。
 
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そして・・・奈々美はこの40分間、日本代表レベルの選手と鎬(しのぎ)を削りあって、物凄く進化した。それはここ数日間の奈々美の進化を更に上回るほどの進化であった。
 
悔しそうな顔で鈴木志麻子を見つめる奈々美の姿を、W大の監督が、同大の数人のトップ選手たちが、真剣な眼差しで見つめていることに、今日の奈々美は気付かなかった。
 

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そして1月6日16:00。40 minutesとレッドインパルスの試合が始まる。
 
昨年も準々決勝で両者は当たり、この時は千里が所属していた40 minutesがレッドインパルスを破っている。千里は40 minutesの選手は辞めたものの現在でも同チームのオーナーである。
 
試合前から広川キャプテンも勘屋さんも嫌そうな顔をしている。一方の40 minutesは星乃にしても暢子にしても、やる気満々である。
 
試合の冒頭ではその精神的な勢いの違いが出た。第1ピリオドは40 minutesが4点リードする展開である。
 
第2ピリオド。レッドインパルスは、不二子/千里/純子/希望/日奈というヤングメンバーで出て行く。日奈以外は全員北海道出身で40 minutesの主力とはお互い試合をやり尽くしている。日奈も日本代表の活動で40 minutesのセンターである森下誠美・松崎由実とはたくさん一緒にプレイしている。このメンツが落ち着いて対処していくので次第に向こうの点数は抑えられていく。このピリオドでは、千里が暢子に、渡辺純子が中島橘花に、不二子が元チームメイトの森田雪子に、久保田希望が溝口麻依子にマッチアップした。しかし暢子は途中で下がって40 minutesは中折渚紗を入れてくる。渚紗は凄い気迫で千里に対抗する。
 
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背番号33同士の対決である。
 
渚紗はむしろこちらをけしかけてくるのだが、千里は冷静に応じた。千里は渚紗に1発もスリーを撃たせなかったが、千里のスリーを渚紗は3回も停めた。第2ピリオド終了後、まだ試合途中ではあるが、お互いにハグした。
 
第3ピリオドは冷静さを取り戻したベテラン組中心に運用したが、それでも40 minutesとの点差は僅か4点である。渚紗はこのピリオドもずっと出てスリーを4本も入れた。勘屋さんが彼女にマッチアップしたのだが、渚紗はタイミングをうまく外して撃つので、勘屋さんが停めきれない。
 
第3ピリオドまで、まだ逆転可能な点差で進んでいるので、40 minutesベンチはかなり盛り上がっていた。
 
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第4ピリオドは、こちらは妙子/千里/純子/江美子/日奈というメンツで出て行く。広川妙子キャプテンはこのピリオドではポイントガード役である。40 minutesの雪子とマッチアップする機会が多くなるが、雪子の天才的な試合組み立てに、しばしば首を振って感心しているようであった。キャプテンは彼女との対戦を経験しておきたかったので、黒江アシスタントコーチに直訴してこの位置に入れてもらったのである。
 
しかしここの対決で、千里も純子も江美子も、渚紗・暢子・橘花・麻依子・桂華・初子・聖子といった面々に競り勝つ。
 
最終的には10点差でレッドインパルスが勝った。
 
試合終了後あちこちでハグしあう姿が見られる。千里は再度渚紗とハグしたし、暢子・橘花・麻依子・桂華・星乃・夕子、更にマネージャーとしてベンチに座っていた浩子ともハグした。
 
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渚紗はこの試合でスリーを5本入れ、3試合の合計が21本となった。千里が3回戦で10本、この試合で9本入れて19本なので、この時点ではスリーポイント女王争いは、渚紗が暫定1位、千里が暫定2位である。
 
(3位はジョイフルゴールドの湧見昭子で3試合10本、4位はビューティーマジックの萩尾月香で2試合8本。ステラストラダの神野晴鹿は初戦でジョイフルゴールドに負けたため2本、フラミンゴーズの伊香秋子も初戦で40 minutesに敗れて同じく4本に留まる)
 

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この日の最終試合、18:00からのハイプレッシャーズ対ブリッツレインディアでは、やはり乃々羽のトリックプレイが炸裂する。彼女はひとりひとりの選手の性格と今日の調子を見て、その相手が今日いちばん引っかかりやすいようなプレイを選択してくるので、自信を持っている選手ほど、うまくやられてしまうのである。
 
それで結局2点差でハイプレッシャーズが勝ってしまった。
 
乃々羽の弁。
「さすがにもう勝てないだろうと思っていたから、何も考えずにプレイしていた。スコアボードも見ていなかったので試合が終わってから勝っていたのを見て驚いた」
 
しかし堂々の準決勝進出である。
1月6日の結果。
 
ジョイフルゴールド×−○サンドベージュ
東京W大×−○ビューティーマジック
ハイプレッシャーズ○−×ブリッツレインディア
40 minutes×−○レッドインパルス
 
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この結果、準決勝は次の組合せで行われることになった。
 
サンドベージュ−ハイプレッシャーズ
ビューティーマジック−レッドインパルス
 

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ところで千里の最近の基本的な生活パターンはだいたいこんな感じである。
 
朝5時に起床。京平とふれあう。だいたい前日あったことを京平が報告し、千里もおやつなどを持って行ってあげるのが常である。だいたい1時間くらいふれあいをする。
 
「だけど京平、今日のスカート可愛いね」
「スカートって可愛くていいよね。でもボク、赤いスカートよりこういう青いスカートの方が好き。赤いスカートって女の子みたいだし」
 
千里は突っ込みたい気分になったもののやめといた。しかし龍虎もきっと小さい頃こういう男の子だったんだろうなと思う。
 
「じゃ、これ今日もパパの枕元に置いといてね」
と言って500円玉を渡す。すると京平がそれを貴司の枕元に置いてくる。これがその日の貴司のお昼代である。
 
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そういう訳で千里は毎日京平と会っているが貴司とは月に1度くらいしか会っていない。
 

少し仮眠した上で、アテンザを運転して世田谷区内の体育館に行き、基本的な練習をする。
 
12時頃、お昼を取り、アテンザで川崎に移動。午後いっぱいチーム練習。20時頃、矢鳴さんにアテンザを運転してもらって経堂の桃香のアパートに移動。小田急OXで買物をしてから、桃香に晩御飯を食べさせ、掃除・洗濯などをする。23時頃、用賀の自分のアパートに移動。夜2時か3時頃まで作曲活動。
 
貴司とは月に1度くらい会って一緒にバスケ練習はしているものの、昨年秋の《大浮気》のあと、まだ性的接触を拒否している。桃香は妊娠中なので、もちろんHなことは禁止である。つまり貴司も桃香もここ数ヶ月、性的な快感を得られずに悶々としている。千里自身はあまり性欲が無いので性的な行為をしなくても平気である。
 
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矢鳴さんには川崎→経堂/経堂→用賀の移動での運転をお願いしている。練習で疲れている身体では車を運転しないようにしているのである。千里が桃香のアパートにいる間は、彼女は夕食を取ったり、あるいは自分も小田急OXで個人的な買物をしたりしているらしい。
 
彼女は夕方自分の車で用賀に来て、そこの千里の駐車枠に車を駐め、東急とJRで武蔵中原駅まで移動して、川崎の舞通の工場に入る(毎日のことなので入館証を発行してもらっている)。それで千里を待つ。経堂までの運転はほんの20分ほどにすぎないが、その20分が最も危険なのである。彼女がいなければ2時間くらい仮眠してから戻りたいところだ。23時頃、千里は経堂の駐車場に行き、そこで休憩している矢鳴さんの車に乗り、だいたいそこから首都高を1周してから用賀の方の駐車場に行くのが常である。経堂の駐車場から用賀の駐車場までは距離的には3kmも無いのだが、わざわざ永福出入口から首都高4号新宿線に乗り、適当なルートで1時間くらい運転して、谷町JCTから首都高3号渋谷線に乗り、用賀出入口(東名の東京IC直前)で降りて用賀の駐車場に戻る。この1時間ほどのドライブで頭をアルファにして、主として作曲のヒントを得るのである。矢鳴さんは用賀に戻った後は自分の車で自宅に戻る。
 
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チーム練習が休みの日は午後の時間も作曲活動に当てるので、そういう日は午後いっぱい矢鳴さんに付き合ってもらい、あちこちドライブしながら後部座席で発想を練っていたりする。結果的に矢鳴さんの休みが取れないので、ふだんの日を他の人に代わってもらうこともある。
 
アテンザにはインバーターを装備し、キーボードやパソコンが使えるようにしている。大容量のモバイルバッテリーも3個ほど積んでいる。
 
もっとも矢鳴さんも中央高速を運転していたはずが、いつの間にか道央道を走っていたりするのには、初期の頃は驚いていたものの、最近は平気になってしまっている。千里も矢鳴さんに気を許して、そういう唐突な移動を掛けているのである。
 
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それで矢鳴さんのドライブ日誌には、経堂→八王子→甲府→長野→仙台→盛岡→宮崎→熊本→御殿場→用賀などといったルートが記載されることになる。
 
(このドライブ日誌は記録に残すだけであり、上司の鶴見社長といえども閲覧することはない)
 

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ところで毎日午前中にやっている基礎練習だが、これは2015年の4月からやっているもので、最初は千里(40min/Red)と玲央美(Joyful)の2人で始めたのが、後に麻依子(40min)と彰恵(Joyful)が加わり、やがて土日だけ(学校の先生をしている)橘花(40min)も加わり、更に2016年4月からは乃々羽(High)と江美子(Red)も加わって7人になった。この7人でまとめて借りている訳では無く、各々は自分の年間利用証で入館し“たまたま遭遇したから”手合わせしているだけである。
 
(但しこの午前中の体育館での練習は年末からオールジャパン終了までの時期は体育館があいていないことと、お互いに微妙な状態になるので、お休み)
 
乃々羽が加わった2016年4月頃、橘花がこんなことを言い出した。
 
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「最近のノノは全然ノノらしくない」
「だって、私っぽいプレイをさせてくれないんだもん」
 
と、このメンツなので、乃々羽も不満を漏らした。
 
松前乃々羽は千里や橘花たちと同じ学年である。釧路Z高校で1年生の頃から頭角を現し、インターハイにも行って来たが2年・3年の時は全国大会に出ていくことはできなかった。高校卒業後、茨城県のTS大学に進学、そこで橘花や彰恵、桂華などの好チームメイトを得て活き活きとプレイ。しかし2013年春に大学を卒業する時、プロチームの評価は低かった。
 
それは彼女がポイントガードなのに、パスが下手だという大問題があったからである。
 
彼女はおよそ狙った方角にパスが飛ばない。
 
普通のノールックパスであれば、選手も来るかもと思って心の準備が出来ているので反射神経で対応できる。ところが彼女のパスはノールックで出す時に、そもそも自分が思っている方向にボールが飛ばないので、受け取る側は最初からそのつもりでいて、飛びつくようにして取る必要がある。
 
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結果的に相手の意表も突くのだが、味方も取り切れない。高校時代は、それでも全員が常に自分の所にボールが来るものと思って心の準備をしていたので何とかなっていたし、大学時代は彰恵や桂華たち卓越した能力を持つチームメイトに恵まれたので、どこに飛んでもボールをキャッチしてもらえた。
 
それで結局Wリークでは採ってもらえず、実業団チームに入って2年間居たものの、そこが解散になり、その後、ちょうどポイントガードを探していたWリーグ下位のハイプレッシャーズに、同チームOGの小杉来夢の推薦で2015年春に入団した。しかしこのパスの方角の問題があるので、監督からはひたすらパスの練習をやらされ、なかなか試合出場の機会ももらえなかった。
 
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2016年春の契約更改も微妙だったのだが、入るかもと言われていた有望選手を結局フリューゲル・ローストに取られたことから、首がつながった。
 

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女子バスケット選手の日々・2017オールジャパン編(7)

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