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■女の子たちの魔術戦争(6)

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千里が名古屋に行ってしまってから1ヶ月以上たったある日、桃香はどうも気分が優れなかったので、朱音に電話した。朱音は2年前に結婚して今6ヶ月になる男の子がいる。
「ねえ、私ちょっと町に遊びに行こうかと思って」
「ああ、いいね。一緒に遊ぼう」
「じゃなくてさ、早月のお世話頼めない?」
「そういうことか。あ、千里は名古屋行っちゃったしね」
「うん」
「しょうがないなあ。でも私、千里みたいにそう頻繁にはお世話できないからね」
 
朱音の所に寄り早月を預けて町に出た。今日は少し羽目を外したい気分だった。ゲームセンターに行き、5000円ほど使ったら少しすっきりした。
 
ファミレスに入りランチを食べる。食後のお茶を飲んでいたら、いつの間にかうとうとしてしまった。夢を見る。千里が男の人と歩いている。ちょっと嫉妬。その時、千里の体に赤い点が浮かび上がり、みるみるうちに体全体に広がっていった。桃香はハッとして目を覚ました。「何だ今の?」
 
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何か胸騒ぎがする。千里に電話してみようか。でも何といえばいいんだ?そんなことを考えながらスーパーの連絡通路を歩いていて、占いの看板が目に入った。あ、そういえばここで占ってもらって、千里が他の男の人と結婚することを言い当てられたんだった。千里はあの占い師の前に座った。
 
「あら?前にもいらっしゃったわね」
「よく覚えてますね」
「今日はまた恋愛のことかしら?」
「それが・・・・夢占いってできます?」
「どんな夢を見たんですか?」
桃香は先程見た夢を思い出せるだけ思い出しながら語った。
占い師さんは難しい表情をして聞いていた。
無言でタロットカードを1枚引く。
『悪魔』のカードが出た。
 
「あなたの思い人が危険です」
「何か私ができることないでしょうか」
「あなたさえよければ、夕方事務所のほうにいらっしゃいませんか?」
「詳しく占ってみるのですか?」
「いえ。これは誰かがあなたの思い人に呪いを掛けています。それを
逸らす必要があります」
桃香はその手の話を基本的には信じないのだが、この時は信じる気になった。
 
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「お願いします。呪い返しとかいうんですか?」
「向こうの術がもの凄く強いので・・・・全部返すのは無理です。身代わりを作ってそこにぶつけます。彼女の愛用の品、できたら下着とかありませんか?」
千里の下着はしばしば桃香の家に放置されていたのだが、引越の際に全部片付けられてしまっていた。何枚か記念に取っておけば良かったか?
その時桃香はふと『あれ』のことを思い出した。
 
「彼女の体の一部、臓器があるんですが。以前手術を受けた時に体内から摘出したものです」
「それはかなり完全に近い身代わりになります。身代わりというより分身ですね」
「それ持ってお伺いします。住所教えて下さい」
桃香は占い師さんから名刺を頂いた。霊鵬と名前が書いてあった。儀式は夜やるということで8時に約束した。
 
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桃香は自宅に戻ると『それ』を確認する。でもどっちがいいかな?
桃香の家の冷蔵庫には、千里の睾丸と陰茎が冷凍されているのである。『面倒だ。両方持って行こう』桃香は、千里の性器を両方持って行くことにした。
 
朱音に急用ができてしまったので、今夜ひとばん早月を預かって欲しいと言う。桃香のただならぬ雰囲気を感じて朱音は了承した。
 
霊鵬のオフィスを訪問すると既に準備をしていたようであった。
「身代わり」を祭壇に置くと、なにやら祝詞のようなものを唱え始めた。
 

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多紀音はあれ以来何度か千里に呪いを掛けようとしていたのであったが、千里の守り?がどうも強力なようで、なかなか届かず、しばしば自分に返ってきて、痛い目にあっていた。信次が名古屋支店に転勤になるというのを聞くともう自分が抑えられなくなった。自分自身の命を掛けた、超強力な呪いを掛けてやろうと考えた。
 
今回の魔術は効果の大きなものだけに、準備が大変だった。条件に合う場所を探し出すのに時間が掛かった。日本地図を買ってきて、いろいろチェックしていく。半月ほど掛けてやっと使える場所を発見。道具をそろえるのにも時間がかかった。準備ができると使える日を選んで会社の休みをとり、作り上げた術具をバッグに隠し持って、電車とバスを乗り継ぎその場所まで辿り着いた。やがて日が落ちる。誰も周囲にいないことを確かめて儀式を始める。自分の**から**を取って術具に塗り、多紀音は事前に何度も練習して暗記した呪文を唱えた。
 
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多紀音は用意してきた防寒具にくるまり、静かに朝を迎えた。朝日がまぶしい。太陽の光が自分の体に染みこんでくるようだ。
 
その時、急に多紀音は昨夜自分がしたことの重大さに気付いた。
 
「いけない。なんで私こんなことしてしまったんだろう」
 
多紀音は居ても立ってもいられなくなり、術具に火を付けて燃やした。そして燃え尽きるのを待ち、飲用に持っていたお茶を掛けて火の始末をしてから道に出て歩き出す。たまたまタクシーが通りかかったので止めて乗る。駅まで行き、名古屋までの切符を買った。
 

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その夜、青葉は夢を見ていた。歩いていった先に千里がいた。あれ?ひとりなのかな?声を掛けようとした時、何かが千里に近づいてくるのを感じた。目をこらしてみる。何かの小動物の「群」であった。何だこいつら?青葉が鋭い視線を送ると、その一部がこちらに向かってきた。む?青葉はすぐに臨戦態勢に入り、自らに霊鎧をまとう。小動物達がこちらに走ってきた。印を結んで早口に真言を唱えた。
 
オンアボキャベイロシャノウマカボダラマニハンドマジンバラハラバリタヤウン!
 
強烈な光の壁に小動物たちが跳ね返される。小動物たちが逃げていくのを見送っていたが、青葉はハッとして目が覚めた。
 
「やばい。ちー姉が危ない」
飛び起きるとまだ早朝であるのも構わず1階まで駆け下りると、千里の所に電話を掛けた。・・・・つながらない?携帯に掛ける。やはりダメ。妨害されてる?青葉は思い直すと桃香の所に電話を掛けた。
 
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それは信次と千里が名古屋に来てから1ヶ月半が経過した7月4日の朝だった。千里はなんとも気分の悪い目覚め方をしていた。昨夜変な夢を見たような気がするのだが、内容は思い出せない。千里の様子が変なので信次は心配して「今日は寝てるといいよ。朝御飯くらい僕が作るから」という。「大丈夫、後で少し昼寝したら治ると思う」といって、千里は朝御飯とお弁当を作り始めた。
 
その後ろ姿を見ていて、信次は「あれ?」と思う。何か千里の肩の付近に変なものがあるような気がしたのである。「何か付いてるよ」といって信次はそれを「取った」。しかし手には何も掴んでいなかった。あれ?「あ、ありがとう」と千里がいった。「うん。私も肩の付近に何かあるような気がしていたんだけど、なぜか自分では取れなかったのよね」「取れた感じ?」「うん。取れた」
「それは良かった」
 
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信次は千里のキスで送られて、会社への道を歩いていたが、今度は自分の肩の付近に何かがついているような気がしてきた。何だこれ?
 

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その日、霊鵬は早朝事務所に出勤してきて、祭壇の「身代わり」のケースが壊れているのに気付いた。嘘・・・ここまで強力だったなんて!
 
急いで桃香に連絡をした。
「昨夜誰かが凄まじく強力な呪いを掛けました。ごめんなさい。完全には守りきれなかったみたい」
「千里、どうなるんでしょう?」
「この呪い、たぶんかなりは身代わりに移すことできたと思います。粉々に壊れてます。でも残りが、本人と本人を守ってあげようと思っている人にも掛かります。たぶん桃香さんにも少し行きますし、彼女の旦那さんにも行きます」
「私、すぐ名古屋に行きます」
 
桃香はこの日朝から、凄まじく体調が悪かった。そうか、これは千里に掛かった呪いを一部引き受けたせいか。しかし負けるもんか。
 
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霊鵬からの電話を切った桃香は千里の所に電話をする。
つながらない?
何度か掛け直していた時、着信があった。取ると青葉だった。
「もしもし、どうしたの?」
「桃姉、ちー姉が危ないよ」
「そちらも何か感じたの?」
「夢に見たの。何か変な動物みたいなのが、たくさんでちー姉を襲ってた。一部は追い返したけど、数が多すぎて」
「あんた、そんなこと出来たんだっけ?」
 
「うん。まあ。これまでも何度か似たようなことあってその時は数が1匹か2匹だったから追い返していたんだけど、今朝のは数が多すぎた。ちー姉の所に電話掛けるんだけど、つながらない。妨害されてる」
「そちらからもか。私も千里の所、家電にも携帯にもつながらないのよ。私、今からすぐ名古屋に行くから」
「お願い。こちらからは時間がかかりすぎる」
「まかせて」
 
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桃香は電話を切ると早月をだっこし、電車で朱音の家に行く。「おはよう、朱音」
「おはよう。どうしたの?こんな朝早く」「ごめん、早月を頼む」「えー!?」
 
早月を朱音にだっこ紐ごと手渡すと、駅にとんぼ返りし、名古屋までの切符を買った。
 

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