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■女の子たちの魔術戦争(4)

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千里は少し不安な気持ちを心に秘めながら、ミラを桃香のアパートに着けた。今日は静かだ。「こんばんは。早月ちゃん寝てるかな?」「あ、お帰り、千里」
桃香は千里がここを訪れると「お帰り」という。千里も出かける時は
「行ってきます」と言う常になっていた。しかしこの日桃香は千里の顔を見るなり「どうしたの?」と聞く。やはりふだんと違う顔をしていたのだろう。
 
千里は今日起きたことをそのまま語り、ほんとに突然だけど結婚することになってしまったこと、そしてもしよかったら以前言っていた卵子の提供をお願いできないかということを頼んだ。また今している経済的な支援は結婚したあとも続けるから心配しないで欲しいとも言った。
 
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桃香はじっと千里の話を聞いていた。縁談を壊すための見合いを頼まれて行ってみたら、それが本人だったという件に関しては大笑いしていたが、結婚が決まったということについては「おめでとう!」といってキスをされた。どさくさ紛れにディープキスに持ち込み更に押し倒そうとしたので、千里はふりほどいて「ストップ、ストップ」という。
 
「こないだから、男できたみたいだな、とは思ってたんだよね」
「ごめん、言ってなくて。でも親に認めてもらえるわけないからすぐ破談になるだろうと思ってたのよ」
「ああ、悔しいなあ。千里の処女は私がいただこうと思ってたのに。ほかの男に取られるんだったら、千里レイプしとけばよかったなあ」
「もう、桃香ったら」
「卵子の件はOKだよ。何個でも何回でも採取していいから」
「ありがとう」
「だって私も千里の精子もらったからね。交換で私の卵子あげるんだもん」
早月は千里が去勢前に採取し冷凍保存しておいた精子で桃香が妊娠して産んだ子である。
 
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「それでさ、経済支援だけど、千里が結婚するまでは続けて。お願い。でも結婚したあとは、さすがに旦那に悪いよ。こちらで何とかするから、中止して」
「でも、まだ早月小さいから、仕事見つけられないよ」
「結婚式3月にするのなら、それまでには早月もだいぶ手が離れるようになってると思うから。託児所に預けて働くから」
「うん」
「体外受精と代理母の費用、私が払うつもりだったのだけど、お義母さんが自分が出すからと言っているの。だから、その分、卵子提供代ということで桃香にあげる」
「んー。それはダメ。卵子の提供は無償」
「そう?じゃどこかでつじつま合わせするかなあ・・・・」
 
その時、トントンと可愛いノックがした。桃香が行ってドアを開けると「ただいま」といって、まだ可愛いといっていいくらいの女性が入ってきた。
 
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「あ、青葉、こっちに来てたんだ!
「ごめん、言ってなかった」と桃香。
「あ、ちー姉も久しぶり」といって青葉は千里とハグする。
 
「青葉、千里が結婚するのよ」と桃香が言うと
「うっそー!おめでとう」と言って凄い喜びようである。
相手は仕事で知り合った男性で、千里の性別のことも知った上でお義母さんともども千里のことを気に入ってくれるというと、
「やはり世の中にはちゃんと受け入れてくれる人もいるんだね」
としみじみの様子。桃香はこの子もずいぶん色々な表情を見せるようになったなと思った。知り合った頃はほんとに無表情な子だった。
 
「ね、ね、それなら私に披露宴の司会させて」
青葉はちょっと事情があって桃香と千里が保護している子で、ふたりは「妹」
とみなしており、青葉もふたりを「もも姉」「ちー姉」と言って慕っている。北陸にある桃香の母の家に身を寄せているのだが、現在当地の国立大学2年生で、将来アナウンサーを目指しており、地元のアナウンススクールにも通っている。
「うん。じゃ、向こうに話してみる」
と千里は笑顔で言った。
 
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信次が☆☆システムの女性SEと婚約したということを職場で聞いた多紀音はショックを覚えた。多紀音はまたあの黒魔術の本を開き、これを使ってやると決断した。
 
多紀音は本の記載通りに作った液を染みこませた紙に、72時間睡眠を取らない状態で、**の血で特殊な図形を描いた。それをポケットに忍ばせて、その日信次と打ち合わせをしている女性のそばにお茶を持って近寄る。にこやかな笑顔でお茶を置き、その時さりげなくその紙を落とした。「あら?」彼女はそれに気付いて「落ちましたよ」といって、その紙を拾って多紀音に渡した。
「すみません、ありがとうございます」
 
多紀音はオフィスの外に出て「魔術」の仕上げをする。図形は女性の体を表していた。『不妊にしてやる。思い知るがいい』そう思いながらその体の子宮の付近にレシピ通りに作った特殊なマッチで火を付けた。掌の上で紙が燃えていく。熱いのを構わず紙が最後まで燃え尽きるのを待った。残った灰を風に飛ばし、儀式を終了した。
 
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翌月。多紀音は自分の生理が遅れているのに懸念を持った。調子悪いのかなと思いしばらく様子を見たが、いつまでも来ない。不安を感じた多紀音は婦人科を受診した。いろいろ調べられる。少し間隔をあけて来て下さいと言われ、何度か受診した。その結果について、医師は難しい顔をして言った。
 
「ショックだと思うので気を確かにして聞いてください。これは閉経しています」
 
多紀音はショックを受けて、医師から説明を受けたあとしばらく立てず、診察室の隅でしばらく休ませてもらった。あまりにもその症状が酷いようだったので、そのまま病室に運ばれ1時間ほど点滴を受け、やっと立てるようになって帰宅した。
 
『呪いが帰ってきたんだ』と多紀音は思った。あの女に呪いを掛けたつもりだったのに、何らかの事情で呪いが跳ね返されてしまった。実は子宮に呪いを掛けたのに千里にそういう器官が無かったために術者に帰ってきたのだが、その事は多紀音は知るよしもなかった。『悔しい。このままで済ませるものか』
 
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システムの開発は思った以上に順調に進んでいた。その年新卒で入った女性が天才プログラマーという感じで、難しいプログラムをどんどん組んでくれるので、千里はそれまでの開発では自分で書いていたようなプログラムも彼女に書いてもらい、自身はプロジェクトの管理のほうに専念した。
 
信次との交際も順調に進んでいた。千里は性転換した直後に実家から絶縁されていたのだが、連絡をすると母が喜んでくれて、こちらに出てきてくれ、信次の母に挨拶した。結婚式は市内のホテルで神式ですることにしていた。父は何を言っても『ふん』としか答えないということだったが、母と妹が結婚式に出席することを約束してくれた。
 
なお、信次達の披露宴の司会を青葉がしたいという件は信次と康子から快諾を得た。
 
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康子は毎朝、神社へのお参りを続けていた。ただ祈願する内容が少し変わっていた。「どうか太一によいお嫁さんが来ますように。どうか信次と千里さんが幸せな結婚をしますように。そして良き孫が授かりますように」
 
信次は職場の健康診断で「要精密検査」と言われ、あらためて病院を訪れて、様々な検査を受けた。医師は無表情でそのことを告げた。「腫瘍が出来ています。見た感じは良性のものにみえますが、念のため組織検査をさせてください」
 
改めて病院を訪れ1日入院して、部分麻酔で組織採取をされた。後日また病院に行き検査結果を聞く。「やはり良性でした。手術して取り除くか、あるいは薬などで対処するかは、経過を見て判断しましょう」という。信次はふと以前見た「余命診断」サイトで、余命1年と出たのを思い出したが、まさかね・・・と思った。信次は千里や母に心配を掛けないように、この病気の件はふたりには当面言わずにおくことにした。
 
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信次の兄、太一が突然女性を家に連れてきて、結婚すると言った。康子は驚いたが、既に彼女が妊娠していると聞き、「それじゃ私が承認するとかしないとかの問題じゃないじゃないの」と文句を言った。その翌週、康子と太一カップル、信次カップルの5人で、簡単なお食事会をして、お互いの前途を祝した。
 
太一は最初結婚式は面倒だからしない、入籍だけでいいとも言っていたが説得して、3月、信次たちの結婚式の予定が入っている翌日に挙げることにした。土曜日に信次の結婚式、日曜日に太一の結婚式である。連続してやれば、遠くから来てくれる親戚が助かる!信次たちは結婚式の翌日から新婚旅行に出かける予定だったが、これを受けて旅行日程を1日ずらすことにして、宿泊関係の予約変更手続きをした。
 
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なお、太一の婚約者、亜矢芽の出産予定日は7月ということであった。信次たちのほうは結婚式をあげた翌月に体外受精をする予定でその出産予定日は再来年の1月になる(その子を代理母に産んでもらうことは太一たちにも明かしたが、千里が子宮の病気のためということにしておいた)。息子が2人とも結婚する上に、半年間隔で孫が2人できるとあって康子はもう手放しでうれしがっていた。
 
康子は神社への参拝で感謝の祈りを捧げていた。その時、突然朝日が雲に遮られ、しかもそこを黒い鳥が横切っていった。康子は小さな不安を感じた。康子はこれは信次のほうに何かトラブルが起きつつあると感じ、問い糾した。信次は良性腫瘍ができていて経過観察中であることを明かした。康子は悪い予感がするから、念のため別の医者にも診てもらったほうがいいと言った。
 
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翌週、信次は癌関係の治療で定評のある病院を訪れ、あらためて検査を受けた。そこの医師の判断は「良性ではあるが、このままにしておくのは危険」ということで、手術を勧められた。信次は仕事の日程が詰まっていたことと目前に結婚式を控えていることから治療を渋った。医師との話し合いで、すぐ進行するものでもないからということで、結婚式のあと、4月頃に手術を受けることにして、病院にスケジュールを入れてもらった。
 
信次は康子と千里に腫瘍の手術の件を報告した。ふたりとも心配したが良性だから大丈夫と言った。細かい日程として、4月4日に体外受精をおこなうことになっていたが、その翌週11日に腫瘍の手術を受けることにしていた。手術の前々日に入院し、手術後5日ほど病院で過ごして退院するというスケジュールだ。
 
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様々なことが進んでいく中、その年は暮れた。システムの開発は納期直前になってやむを得ない仕様の変更が生じ、結局年内納品は断念された。本当はゆっくりと年末年始を過ごしたいところであったが、千里はそれどころではなかった。システムは結局、1月中旬に納品することができた。本番が始まり、しばらく千里は数人のプログラマーと一緒に信次の会社に貼り付いていたが、大したトラブルもなく、システムは稼働してくれた。
 
1月下旬、千里は3日間の休暇をもらって束の間の休息を取った。1日目はひたすら寝た。システムの立ち上げの前後というのは、ほんとに寝る時間がなく慢性的な睡眠不足になっている。夕方くらいに桃香に電話してお腹すいたなどと言ったら、桃香が早月とまたまたこちらに出てきていた青葉を連れて食料持参でやってきてくれた。
 
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「たまに買い物すると、ついついおやつばかり買っちゃう」と桃香。
「ダイエット中なんだけどな・・・こんなにおやつあると自信無い」と青葉。「おやつ大歓迎」と千里。
 
早月が生まれて以来、ほぼ毎日のように千里が必要な買い物をして桃香の家に持参していたので、桃香はあまり自分では買い物に行ってなかった。11月頃以降はシステムの仕上げのため会社に貼り付いていて、あまり桃香の家に行けなかったのだが、行ける時に一週間分くらいのまとめ買いをしていたので、桃香は多少不足するものを近くのコンビニで調達するくらいで済んでいた。
 
3人の話は弾んだが、おしゃべりに夢中になっていると青葉は3人の中でいちばん食べている感じであった。若さが食欲を求めている感じだ。かなり食べてから「あれ〜、私かなり食べちゃったみたい」などと言っている。そんな青葉に早月もじゃれついていて、青葉は片手で遊んであげていた。
 
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千里が毎日のように桃香の家に行っていたのは、むろん友人として支援する意味もあったが、それ以上に千里にとっても自分の遺伝子上の子供である早月と触れ合いたいためであった。ただし早月の戸籍上の父親欄は空白で千里は認知もしていないので、法的な親子関係は無い(千里の結婚の障害とならないよう、桃香の主張でこういう処置をとっている)。来年代理母さんに産んでもらう予定の子供は千里の法的な子供になるが(特別養子縁組をすることになる)、遺伝子上は千里と親子関係は無い。桃香はその件を考えるたびにややこしいなと思ったが、桃香と千里がお互い納得して選択した道である。
 

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