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■女の子たちの冬山注意(11)

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その週の週末。昭一が旭川駅の近くを歩いていると、偶然川南と葉月に遭遇した。
 
「どこ行くの?」
「札幌にTOEGS受けに行くんです」
「何それ?」
「英語の試験ですよ」
「知らない」
「TOEICなら知ってるけど」
「最近始まったんですよ」
「旭川じゃ受けられないの?」
「北海道では札幌だけなんです」
「ああ、きっとすぐに潰れるな」
「そうですか〜?」
「何時から?」
「試験開始は13時半です」
「なんだ。午後からなんだ」
「ちょっとお茶しない?おごってあげるよ」
「わーい!嬉しいです」
 
それで昭ちゃんを連れて近くのロッテリアに入る。川南はリブサンド、葉月はてりやきバーガー、昭ちゃんはエビバーガーの各々セットを頼んでしばしおしゃべりである。昭ちゃんも最近は寿絵や暢子の「教育」のおかげですっかりガールズトークに違和感がなくなっている。
 
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「ねね、さっき古着屋さんで可愛くて安いスカートがあったんで、つい買ったんだけどね。ウェストが小さくて私も葉月も入らないのよ。もし良かったら、昭ちゃんもらってくれない?」
「葉月先輩けっこう細いのに。葉月先輩に入らないなら僕にも入らないですよ」
 
「いや、間違いなく昭ちゃんの方が細い」
「ねね、これちょっとトイレ行って穿いてきてみなよ」
「そうですか」
 
それで昭ちゃんは渡されたスカートを持って《女子トイレ》に入って行った。
 
「あの子、今何もためらわずに女子トイレに入ったね」
と川南。
「たぶん、ふだんかなり女子トイレ使ってる常習犯とみた」
と葉月。
 
それでスカートを穿いた昭ちゃんが出てくる。
 
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「ちょっときついけど何とか入りました」
「可愛い!」
「昭ちゃんそれ似合ってるよ」
「そうですか?」
と言って昭ちゃんは照れている。
 

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それで昭ちゃんはスカートを穿いたまま、更におしゃべりは続く。
やがてそれで11時の時報がなった所で
 
「なんかお腹空いてきたね」
「どこかでお昼でも食べる?」
 
などという話になる!?
 
バスケガールたちの食欲は旺盛である。
 
「じゃ、僕はそろそろ札幌に移動します。11時半のスーパーカムイに乗らないと」
と昭ちゃんは言う。
 
「じゃまた月曜日に」
「はい、ありがとうございました。あ、スカート今脱いできますね」
「ああ、それは昭ちゃんにあげるよ」
「そうですか?」
「だって私たちには入らないしね」
「じゃもらっておきます。でも取り敢えず着替えますね」
「着替える必要ない」
「スカートのまま札幌行ってきなよ」
「でも試験では身分証明書の照合とかもあるし・・・」
「男の子がスカート穿いてても別に問題無いよね」
「最近スカート穿く男の子増えてるんだよ」
「服装の自由は日本国憲法で保障されてるし」
「そうでしたっけ!?」
「信仰の自由、服装の自由、思想の自由は、憲法が保障する三大自由」
「えーー!? なんか違う気がします」
 
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「昭ちゃん可愛いんだから、可愛い格好しなくちゃ」
「それじゃもらっていきます」
 
と言って昭ちゃんはスカート姿のまま駅の方に行った。
 

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試験会場では僕スカート穿いてるし、何か言われないかな?と少し不安だったが、受付のお姉さんは昭ちゃんの生徒手帳(ふだんは名前の所に少し鉛筆で書き足して昭一を昭子に改竄しているものの、今日は消しゴムで消してちゃんと昭一に戻している)を提示すると、受験票と見比べて特に何もいわずに会場に通してくれた。
 
自分の席を確認した上でトイレに行っておかなきゃと思う。女子トイレに入っちゃおうかなと思ったものの混んでいる。列に並ぶと男とバレそうで怖いので、仕方なく男子トイレに入ろうとしたのだが
 
「君、こちらに来るのはやめてよ」
と大学生くらいの男子に言われた。
 
「女子トイレ混雑していて、こちら使いたくなるかも知れないけどさ」
と隣にいる大学生っぽい男子も言う。
 
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「それはおばちゃんのやることだよね」
「女子高生は恥じらいを持つべき」
 
「すみませーん」
と昭ちゃんは言うと、少しどきどきしながら女子トイレのドアを開けて中に入った。
 

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試験が終わった後で昭ちゃんは札幌に出てきたついでに、CDショップに行って眺めていたらKinki Kidsのアルバムが出ていたことに気づき買う(このくらいは旭川でも売っている)。そのあとブックオフで漫画を5冊ほど買い、重たくなってきたので帰ろうかなと思い、札幌駅の方に向かっていた時。
 
「こんにちは」
と声を掛ける人がいる。振り向くと60歳くらいの男性だが、顔に見覚えがない。
 
「すみません、どなたでしたでしょうか?」
「あ、ごめん、ごめん。僕は札幌P高校のバスケ部コーチで狩屋と言うんだけど」
「あ、どうもお世話になります」
「旭川N高校の子だったよね」
「はい、湧見と申します」
「君、スリーポイントが上手いね。先週、北見のサブアリーナでひとりで黙々と練習している所見てたけど、最初はあまり入らなかったけど調子が出てくると、最後の方は9割くらい放り込んでいたね」
 
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「わあ、あれ見ておられたんですか? まだまだなんですよね。すぐに調子が出ればいいんですけど。入らない時は全然入らないんです」
「ああ、シューターにはそう言う人が多いね。入り出すとどんどん入るでしょ?」
「ええ。外す気がしないことがあります」
「そうそう。シューターって精密機械だからね」
 
「その精度を上げられたらいいんですけど。全然修行不足だから試合にもまだあまり出してもらえないですし」
「そりゃ、N高校さんは凄いシューターが居るからね。なかなか出番が無いでしょ」
「ええ先輩にはまだ全然かないません」
 
ここで狩屋は千里のことを言っているのだが、昭ちゃんは男子2年の落合のことを言っている。
 
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それで結構話していたものの
 
「長時間立ち話もなんだし、お茶でも飲みながら」
 
ということになり、手近のドトールに入る。

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「へー。NBAのレイ・アレン好きなの?」
「はい。大好きです。NBAの試合のビデオ入手して、いつも見ています。あんなにきれいにポンポン入れられたらいいよなあと思って。今年1月に記録した1試合54得点とかすさまじいですよね」
 
「うん。そういう素晴らしいシューターのプレイを見てイメージトレーニングするのは良いことだよ」
「うちの高校の女子の村山さんとかも凄いから、いつも眺めてます」
「身近にそういう良いお手本がいるといいよね。生で見るのはまた違うでしょ?」
「はい。ビデオで見るのとはまた違うんです。今日は英語の試験があったので出席してませんけど、日曜日に練習に行くともの凄く熱心に何百本もシュート練習してるから、私も刺激されてそばで別のゴール使って練習するんですけど、あんなにポンポン入らないんです」
 
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「やはり村山君とか凄まじい練習してるんだろうね」
「よく敷地がお隣のM高校さんと練習試合やってるんですけど、私トップチームには入れないから、隣のコートで向こうのBチームさんと練習試合して、同じ1年の川中(結里)さんと交代でシューティングガードで出てるんですけどね」
 
「ああ。川中君は一度プレイを見たな。あの子も典型的なシューターだね。どちらかというと、それ以外の才能が無いというか」
「私もシューター以外の才能が無いと言われます!」
 
そんな会話をしながら、狩屋は川中は一度ベンチにも座っていたけど、この子の方が才能がありそうなのに、などと思っていた。
 

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「インターハイまでにはベンチに入れそう?」
「また新1年生も入って来ますしね。厳しいだろうなあ」
「君がうちに来てくれたりしたら、僕は絶対ベンチ枠に入れるけどなあ」
 
この発言は狩屋としても別に引き抜こうという意図ではなく(そのあたりは紳士協定でお互いに有力選手の引き抜き行為はしない暗黙の了解がある)、単に言葉の綾で言っただけである。
 
「でも移籍したら半年出られないんでしょ?」
「うん、そうそう。だから12月1日付けで転校したら5月いっぱいまで出られない。でもインターハイには間に合うね」
 
「インターハイかぁ。去年はひたすら撮影係・応援係・物資調達係でしたけど今年はコートに立ちたいなあ」
「やはりあこがれの舞台だよね」
 
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「あれ?でも札幌P高校さんって女子校じゃなかったんでしたっけ?」
「いや、男女共学だよ。昔は女子校だったんだけどね。もう20年くらい前に共学になったんだよ」
 
「あ、そうでしたか。でもそちら男子のバスケ部はあまり聞かないですね」
「男子バスケット部? ああ、あれは一昨年創設したばかりなんで、まだいつも地区大会の1−2回戦で負けているんだよ」
 
「じゃインターハイは無理かぁ」
「まあ10年後は分からないけどね。でも男子バスケ部がどうかしたの?」
「え?だって私、男子だし」
「えーーーー!?」
 

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「なんで君、男子なのにスカート穿いてるんの?」
「あれ?変ですかね。午前中にバスケ部の先輩女子に会って、穿いてごらんよ。男の子でスカート穿く子も最近は多いからって言われて」
 
「確かに最近は時々いる! でも君、村山君や川中君と一緒に練習しているみたいなこと言わなかった?」
「はい。村山さんのシュートを見習えと言われて、いつも女子の方に入って練習してるんです。でもあれ?私、女子に見えます?」
 
「女子に見える!」
 
狩屋さんは驚いていたものの、その後は「今のやりとりは勧誘という訳ではないからね〜」とことわった上で、ふつうにバスケの話題で3時間近く話したが、会話は盛り上がり、昭ちゃんにとっても、老齢の狩屋コーチにとっても楽しい時間となった。
 
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狩屋はシューターの気持ちの持ちようとか、試合の中でどういうことを考えておくべきかといった話、またシュートの練習の仕方などについても、かなり熱く語ったので、この日の話し合いは昭ちゃんにとっても、その後の成長に大きく影響を与えたのであった。
 
そして昭ちゃんは楽しい気分でそのままの格好、スカートを穿いたまま帰宅したので、それを見て父親が仰天することになったのであった。
 

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そして週明けの19日。
 
N高校の東体育館に、男女バスケ部、男子野球部、女子スキー部、男女ソフトテニス部、女子バレー部、男子柔道部、相撲部、吹奏楽部、の2年生のメンバーが集められた。留実子も松葉杖をついて一緒に集合しているし、暢子も水曜日に退院して木曜日以降は自宅療養していたものの、今日は元気そうな顔で参加した。
 
校長・教頭に理事長、そして教務主任・進路指導主任、2年生の学年主任と全クラスの担任が並ぶ。
 
「ここに集まってもらったのは、過去5年以内に道大会に進出した実績がある部活に所属している2年生のみなさんです」
と校長が述べる。
 
「実は今までわが旭川N高校は、特進コース、進学コース、情報コース、音楽コース、ビジネスコース、福祉コースといったコースを設けていたのですが、ここに新たに短大コースというのを新設することにしました」
 
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集まっているメンバーがざわめく。
 
北海道に短大は20個弱ある。多くが女子のみの募集だが、公立で唯一の短大である名寄市立大短大部など、いくつかの短大は男子学生も受け入れている。北海道自動車短期大学のように学生の4分の3が男子という短大もある。
 
「これまで短大を目指す生徒は、進学コースあるいは情報コースなどにいたのですが、進学コースのレベルは高すぎるし、情報コースでは進学と無関係な資格試験なども色々受けさせられて不便という声があったので、短大進学に特化したコースを新設することになりました」
 
これは確かに需要があるのではないかという気がした。学力、あるいは家庭の経済力の問題で、4年生大学を諦め、短大を目指す子はけっこういる。特に女子には多い。
 
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「この件は正式には1月に発表する予定だったのですが、部活動を熱心にしておられるみなさんには切実な問題なので、みなさんには先行して発表することになりました。なお、これは現時点での計画なので、今後多少の変動が発生する場合もあります」
と校長は断る。
 
「もしかして短大コースだと3年生でも部活ができるんですか?」
という質問が飛ぶ。
 
「はい、それを説明しようと思っておりました。これまでも部活をしている生徒について、成績条件が厳しすぎるという意見が多々あったので、これを緩和することになります」
と校長は説明を続ける。
 
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女の子たちの冬山注意(11)

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