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■女の子たちの冬山注意(4)

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そして翌日11月9日(金)。北見市でウィンターカップ道予選が始まった。
 
今回の道予選では、男子・女子双方が道予選に出ていることもあり、ベンチに座るコーチ・アシスタントコーチは、女子の方は宇田先生と南野コーチ、男子の方は北田コーチと川守先生となっていた。登録上のコーチが北田コーチで、アシスタントコーチが川守先生というメンバー表である。
 
川守先生はこれまでも男子と女子の試合日程がぶつかる場合、時々臨時でベンチに座ってくれていたのだが、2学期以降、正規に男子バスケ部顧問に就任した。宇田先生は女子バスケ部顧問・兼バスケ部総合顧問ということになった。(高体連の規定で、コーチまたはアシスタントコーチのどちらかはその学校の教員または校長でなければならない)
 
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今回の女子のベンチメンバーはこうなっていた。
 
PG.雪子(7) メグミ(12) SG.千里(5) 夏恋(10) SF.寿絵(9) 敦子(13) 永子(18) PF.暢子(4) 睦子(11) 来未(15) 川南(16) 葉月(17) C.揚羽(8) リリカ(14)
 
なお、本来は転校半年以内で試合に出られない男子チームの薫を今回女子のバスに乗せて連れてきている。道内のレベルの高いチームの試合を見せておくことが目的である。薫は前回C学園戦で着たユニフォームをそのまま着て来ていたので、背番号も16番の番号を縫い付けたままになっていた。(昭ちゃんは来る時は男子のバスに乗っていた)
 
ところが16番の背番号は今回は本来川南が付けている番号である。川南もわりと背丈のある方だし、背番号だけ見て、一瞬川南と間違える人が何人か出たので
 
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「薫、紛らわしい。番号変えてよ」
などと言われる。
 
「ごめーん。じゃ誰か裁縫道具か何か持ってない? 背番号外すから」
と薫が言うと、
 
「あ、私が持っている」
と言って寿絵がバッグから携帯用の裁縫セットを取り出し、リッパーを使って背番号の「1」の数字を外してあげた。
 
「はい、できたよ」
「6の方は?」
「6番のサーヤは今回欠席だから、これでいいよ」
と寿絵。
 
「ああ。サーヤの影武者だな」
と暢子が言った。
 

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「ところで何で留実子ちゃんのニックネームがサーヤなの?」
と事情を聞いていなかった薫が訊く。
 
「あの子の男性名が実弥(さねや)なんだよ」
「あぁ、そういうことか!」
 
「結構、花和実弥・男、という会員証とか持ってるみたい」
 
「薫は女性名も薫?」
「私の名前は男女どちらでも通用するから」
 
「ああ、千里と同様だね」
「○男とか○子とかいう名前だと性別変更と一緒に名前の変更もしないといけないから大変だよね」
 
「昭ちゃんは、性転換したら昭一から昭子に改名する必要がある」
 
「実は一という文字は鉛筆やボールペンで書き加えて子に改竄できる」
と薫。
 
「昭ちゃんの生徒手帳、鉛筆で書き加えて子になってたよ」
「ほほぉ」
「それを提示すると私文書偽造・同行使になるけどね」
「あの子、定期券も昭子に改竄してる」
「既に文書偽造行使罪だ」
「だけど定期券って自動改札機に通すだけだから名前は誰にも見せてないよ」
「あ、そうか」
「それでも使っていたら行使罪になっている気がするなあ」
 
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「でも性別の変更が大変だから、先行して名前だけ女性名に変える人も多いよ」
と千里が言う。
 
「すると女性名で性別は男という状態になるのか」
 
「結構居るよね、そういう人」
と薫も言う。
 
「やはり子供に名前付ける時は男女どちらでも行ける名前にしてあげるのが親切かも」
 
「だけど薫は苗字の方に子が付いてる」
 
薫の苗字は歌子(かし)である。
 
「ああ、それは小学校の頃によく言われていた」
 

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北見市は網走市の隣である。千里たちは早朝から学校のバスで現地に入った。国道39号をひたすら走って約160km,3-4時間の行程である。
 
道予選は26チームが参加しているので、6チームが1回戦を免除されているが、千里たちは地区予選2位だったので1回戦から戦わなければならない(地区予選で優勝したL女子高は2回戦から)。
 
試合が始まる前の練習時間には折角来てるからコートに入りなよと言って薫も入れて練習をしていた。男子チームは今回地区予選で優勝しているので午後の2回戦からであり、薫は女子の午前中の試合を見たあと男子チームの試合がある会場に移動する予定であった。
 
基礎的な練習をしてから最後に
 
Aチーム:雪子/千里/寿絵/暢子/揚羽
Bチーム:メグミ/夏恋/薫/睦子/リリカ
 
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というメンツで5分ほど対戦した(Bチームは鉢巻きをして区別した)のだが、練習時間が終わり引き上げて来た所で、札幌P高校の宮野さんが声を掛けてきた。
 
「何だか花和さん、物凄く進化してない?」
「あ、花和は今回欠席なんですよ」
と千里は答える。
 
「え、だって?」
と言って宮野さんは6番の背番号(本当は16の1を外したもの)を付けた薫を見ている。
 
「いや、これは番外の歌子です」
「へ?」
と言ってから、宮野さんはメガネを取り出して薫を見る。
 
「あ、花和さんじゃない! でも6番」
 
各チームの登録選手一覧を手にしているので、一覧では6番が留実子になっていることから、そもそも誤認したのであろう。
 
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「花和は地区予選の決勝で骨折して今療養中なんですよ。この子は10月に東京の高校から転校してきたんで、3月までは公式戦に出せないんですよね」
 
「それでBチームに入っていたのか!」
と納得したように言う。
 
「いや、なんで花和さんが控え組にいるんだろうと思ってさっきの練習見てたんですよ」
と宮野さん。
 
「じゃ4月からチームに合流するの?」
「ええ。男子チームに」
「は?」
 
「すみませーん。私男子なので」
と本人。
「へ?」
と宮野さんは目をパクチリさせている。
 
「あ、これ私の登録証」
と言って、薫はバスケット協会の登録証を見せる。
 
「N高校バスケットポール部(男子)って書いてある!」
 
「まあ花和は男の子になりたい女の子、歌子は女の子になりたい男の子ということで」
と暢子。
 
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「N高校さんって性別の曖昧な人が多いのね!」
「いやあ、たまたまだと思いますけど」
「なんか最近男子チームに加わった18番付けてるシューターも半陰陽だったのを男の子になることにして、おちんちんを作る手術をした子だと聞いたし。でもまだおっぱいは取ってないからブラ着けてるんでしょ?」
 
「うーん」と暢子がどう答えていいか悩んでいた。
 

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午前中の1回戦は敦子/夏恋/来未/葉月/睦子 というメンツを先発させて快勝した。睦子はセンターのポジションに入ったが、パワーフォワードのポジションに入った葉月と競い合うようにリバウンドを取って、本人も凄く楽しそうであった。
 
このメンツでは夏恋がキャプテン代行を務めたが「えー!?私が?」と最初かなり戸惑っていたものの、張り切って声を出してみんなを励まし、本当によく頑張っていたし、敦子がポイントガードの経験が浅くゲームメイクに慣れていないのをしっかりサポートしていた。今年の初めから1番成長したのがやはり夏恋である。彼女はもうラッキーガールではない。本当の戦力になった。
 
午後から2回戦であるが、ここもそれほど強い所ではないので、最初だけ千里や暢子・雪子たちが出た後は、メグミ/川南/永子/リリカ/揚羽 といった付近を軸にして、それでも30点差で圧勝した。
 
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その日は北見市内の旅館に泊まった。なおN高は男子の方も2回戦に勝って翌日に駒を進めた。
 

「昭ちゃんと薫の部屋割りについて相談されたんだけどさ」
と暢子が言う。
 
「女子と同じ部屋でもいいですよ、と言ったんだけど、結局南野コーチと同室ということになったみたいね」
 
「インターハイでは昭ちゃんは男性コーチの部屋に泊まったから女性コーチの部屋に泊まる所まで進化したんだな」
「それ進化なの?」
 
「千里さんは中学の時から女子と同じ部屋に泊まっていて年季が入ってますけど、あのふたりはそういう経験無いみたいですね」
と雪子が言う。
 
「でも男子と同じ部屋に居ると凄く緊張して休めないって薫言ってた。中学の修学旅行の時は、ひとりだけ旅館のロビーのソファで寝たんだって」
「男子と同部屋になるよりロビーの方がいいのか」
「いや、それはそうでしょ。自分たちに置き換えて考えてみればいい」
「日本は治安がいいからね。外国のホテルなら超危険」
 
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「千里は小学校の修学旅行も女子部屋だったんでしょ?」
「男子の部屋だよ」
「いや、それはありえない」
「だって千里さんと同室になったら、男子は落ち着いて寝られないですよね」
「千里が男子の前で着替えたりしたら、男子は理性を失ってレイプするかも知れん」
「やはり危険因子は取り外しておかなければ」
 

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試合が終わってから体育館で簡単にミーティングをしてから宿に帰ることにする。
 
1日目は男子と女子で会場も違うので、今日は早朝学校で会った以降、男子と宿に戻るまで会っていない。
 
旅館はN高の男女部員で実質貸し切りになっていた。旅館に着いた後、夕食まで少し時間があったのでロビーに行って自販機でお茶でも買ってこようと思ったら迷子になってしまい、何だか調理場のような所に出てしまった。
 
うーん。。。
 
千里はあまり道に迷わない。何か目的地が明確な場合は全然道を知らなくても、たいていちゃんと辿り着ける。迷った時は何か迷う意味があった時である。
 
しかし調理場はさすがに違うだろうと思い、来た道を戻ろうとした時、裏口から入ってくる18-19歳くらいと15-16歳くらいの姉妹?の女の子がある。
 
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「こんにちは〜。MF牧場です。牛乳持って来ました」
と妹さんの方が言う声に、野菜を洗っていたふうの20歳くらいの女性が
「はいはーい。ご苦労様です」
と言ってそちらに行った。
 
牛乳の瓶がたくさん入ったケースを持ち込んでくる。その姿を何気なく見ていた時、千里はその牧場の子の妹(?)の方に何か暗い影があるのに気付いた。
 
『あれ、何だろう?』
『まあ、悪霊の類』
『1体はあの子にくっついていて、もう1体は少し離れている気がする』
 
『1つはあの子自身に憑いてる。もう1体はあの子の友だちに憑いてるのの影だよ』
『まとめて処理できる?』
『うん。あれだけ影がハッキリしてたら、本体もやれる。まあ実際にはその本体の居る所まで行ってこないといけないけど』
『本体ってどこにいるの?』
『東京』
『遠いね!』
『まあ、でもひとっ飛びしてくれば今夜中には戻れるよ』
『じゃ頼んでいい?』
『少し運動したかったから行ってくる』
『じゃよろしくー』
 
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それで《こうちゃん》は、最初にその牧場の子が憑けているものに飛びかかり、一瞬で倒してから、どこかに飛び去った。
 
『東京まで往復するのってやはり大変なんだね』
と千里が言うと、《りくちゃん》が笑いながら言う。
 
『行くのは一瞬で行けるよ。ほら、あの影消えただろ?』
『うん。消えた』
『もう勾陳が処分しちゃったんだよ』
『じゃ今夜中に帰るというのは?』
『どこかでメスの龍でもナンパするつもりでは』
 
うーん・・・と千里は悩む。
『あんたたちって有性生殖?』
『有性生殖もするよ。龍同士もあるし、龍と人間というのもある。単性生殖や分裂して増える時もあるけどね。敵と戦って切り落とされた腕が別の龍として再生したのも見たことある』
『プラナリアみたいだね』
 
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まあ、あの子にもたまには羽を伸ばさせてあげるか、と思って千里は廊下を戻った。
 
ん?羽を伸ばすって、龍には羽は無い??
 
『東洋の龍には羽が無いね。西洋のドラゴンには羽があるけど、私たちとは種類が違うんだよ』
と《せいちゃん》が言った。
『ああ。龍とドラゴンは別物という気はした』
 
『人が創り出す龍もあるよ』
とめったに発言しない《くうちゃん》が付け加えた。
 
『それって龍並みの人間、というか既に人間辞めてる人では?』
『世の中にはいろんな人がいるからね』
 

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その日の夕食はジンギスカンで、男子も女子もよく食べていた。羊が苦手という子のために、牛肉や豚肉も少し用意されていた。飲み物はお茶・紅茶・烏龍茶に、コーラ・オレンジジュース・リンゴジュース、牛乳と並んでいたがこの牛乳が「美味しい!」と好評で、薫に言われて千里も飲んでみたが濃くてほんとに美味しかった。
 
「これ毎日絞りたてを近くの牧場から直接仕入れているんですよ」
と女将さんが説明する。
 
ああ、さっきの姉妹が持って来た牛乳かと千里は思った。
 
でもあの時、妹さんに憑いてた霊が気になってお姉さんの方はあまり見てなかったけど、あのお姉さんも何か気になったなと思ったら、《いんちゃん》が説明してくれた。
 
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『あのお姉さんの方は、障碍(しょうがい)を持っていたよ』
『へー。それで牧場の仕事って大変だろうね』
『いや、動物の世話はああいう子の性に合ってる』
『ああ、そうかもね』
 
と言ってから少し悩む。
 
『牛乳運んで来たのは自動車だよね?馬車じゃないよね?』
『さすがに現代の北海道は自動車だよ』
『障碍があっても運転できるの? 妹さんは高校生くらいだったし』
『運転に支障の無い障碍なんだよ』
『なるほどー』
 

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陽子はふと目が覚めた。トイレに行った後、台所で紅茶を入れて飲んでいたら凄く体調が良いような気がした。最近ずっと肩が痛かったのも治っちゃったみたいな感じである。
 
父が起きてきた。
 
「お父さん、少しは眠れた?」
「うん。何とかな。おまえにも苦労掛けて済まん」
「私さ、しばらく北海道に行ってていい?」
「深川?」
「ううん。美幌」
「ああ、桜木さんの所か。でもおまえ最近体調が良くないみたいだったけど」
「治っちゃったみたい。でもお父さん指切りしよう」
「何だ?」
「私、向こうに行っている間もちゃんと勉強してるから、お父さんは死んだりしないで」
 
桜川は苦笑すると娘に言った。
「約束するよ」
「うん」
 
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父娘は指切りをして微笑んだ。
 
 
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女の子たちの冬山注意(4)

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