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■女の子たちの冬山注意(2)

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「鉄骨はいいとしても、コンクリートは固まるんですか?」
「夏よりかなり時間がかかるらしい。でもかえって時間を掛けて固まったコンクリートは短期間で固まったものより丈夫になるんだよ」
 
「凍結しなければですよね?」
「そうそう。だから、コンクリートを練るのは仮設作業場を建ててその室内で暖かい所でやるし、コンクリートを体育館に打ち付けた後はカバーを掛けて、凍結を防ぐ。体育館の室内に暖房を入れて、その熱も利用する」
 
「地球に優しくないですね」
 
「でもなんか物凄い予算を掛けているような・・・」
「冬場の工事が大変だから、費用は8億円くらいかな」
「うちの学校ってお金あるんですね」
「設備更新のための積立金から支出するけど、何人か今回寄付してくれる人もあった」
「バスケ部のOGも大変だ」
 
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「それで今の朱雀も12月中に解体するから」
「・・・・」
「でしたら、私たちは冬の間、どこで練習すれば?」
 
「明日からテニスコートの敷地に隣接して、校庭にはみ出す形で仮設体育館の建設をするから。これはユニット工法だから1ヶ月でできる。それで君たちが仮設体育館に移ってもらった後、今の朱雀の解体を始める。年内終了予定。そうしないと新しい朱雀ができてから今の朱雀を解体するとテニス部の子たちが困るから」
 
「なるほど。でも1ヶ月で建つんですか?」
「日本の技術って凄いんですね」
「外側だけなら半月らしい。その後、電気関係やバスケットの設備を入れる」
「エアコンとかは?」
「取り敢えずストーブで」
「まあいいか」
「新しい朱雀は床暖房にするから」
「あ、いいですね!」
 
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「でも来年の冬はもう私たちは引退した後」
「引退記念試合でもやらせてもらおう」
 
「でも仮設体育館って、そんなの作るのでまた費用が増えてたりして」
「ああ。仮設体育館は5000万円でできる」
「安普請ということは?」
「それはないと思う。しっかりした所だから。本当は1億円欲しいらしいけどそれ込みで工事費合計8億だからサービスに近いらしい」
 
「雪の重みで潰れたりしませんよね?」
「大丈夫じゃないかなあ。ひと冬くらいは」
 
と校長は千里たちに若干不安を残すような言い方をした。
 

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「ところで、校長先生、手術を受けられたと聞きましたが、もうよろしいんですか?」
と暢子が訊いた。
 
「うん。1日入院しただけ。前立腺の手術といっても昔みたいに切るんじゃないから術後のケアも簡単なんだよ。一応2−3日は導尿が必要なんで、これ付けてるんだけどね」
と言って校長は腰の所に付けている採尿バッグを見せる。
 
「前立腺肥大の手術って睾丸も取るんですか?」
「取らない、取らない」
 
唐突な暢子の発言に千里は頭を抱える。
 
「まあ昔は取った例もあるみたいだけどね」
「症状を抑えるために女性ホルモンを投与して結果的にEDになってしまう例はあったみたい」
 
「何か新しい手術法だとおっしゃってましたね」
と宇田先生が言う。
 
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「女子生徒の前でこんなこと言っていいのかな」
と校長先生はためらうが
 
「大丈夫でしょ。睾丸なんて平気で口にできる子だから」
と南野コーチが笑って言っている。
 
「ええ、私たちは全然平気ですよ。別にバージンでもないし」
と暢子が言う。
 
「この子たちのお父さんには情報になるかも」
などと教頭。
 
「今普通に行われているTURPという方法だと、だいたい9割の確率で逆行射精といって、射精が外に出ずに膀胱に出ちゃうようになるから、子供を作れなくなるんだよね。しかも半分くらいの確率で勃起障害になる。だけどレーザーを使った新しいPVPという方法だと、勃起障害になることはめったにない上に、逆行射精になる確率も低いらしい。まだ保険が利かないからお金は掛かるけどね。念のため手術前に精子の冷凍も作った」
と校長。
 
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(注.PVPは2011年に保険が使えるようになった)
 
「校長先生の奥さんって若いですよね?」
と南野コーチ。
 
校長先生の奥さんはネットゲームで!知り合って昨年結婚した人で、まだ30歳くらいの現役翻訳家である。結婚後も仕事を続けている。
 
「うん。ずっと独身だったのが50過ぎてから結婚したからね。娘みたいな子と結婚したってんで、随分からかわれたけど、僕、娘いないから」
「それは娘を作らなければ」
「男の子ばかり生まれたりして」
「その時は性転換だな」
「いいんですか〜?」
 

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「彼女」はロープウェイの駅を降りると、左側の道を選んで歩いて行った。さすがに寒いが、もとより覚悟していたので防寒具はしっかり持っている。しばらく歩いた所で左右に池が並んでいる所に出る。
 
「わぁ」
と思わず歓声をあげる。池の水面は既に雪に覆われているが、池の向こうに旭岳の美しい姿が見える。「彼女」は心の中に沸き上がってくるものを感じ、バッグの中から五線紙を取り出すと、一心に音符を書き綴っていった。これが私の遺作かな。でもこのままここに永久に埋もれていたりして。そんなことを考えている中、数人の観光客が「彼女」を追い抜いて、姿見の池方面に行った。
 

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同じ日、東京。
 
∴∴ミュージックの事務所。
 
畠山社長が所属歌手の鈴木聖子(すずききよこ)と大部屋の窓際にある社長デスクの所で打ち合せしていたら、三島雪子が「社長、花畑恵三さんからメテオーナの仮の音源届きました」と言ってCD-ROMを机の所に置いていった。
 
鈴木との打合せはもうだいたいの所が固まり、半ば雑談に突入していたので、彼女と話しながら畠山はCDを近くにあるパソコンに掛ける。MIDIで作った伴奏に仮歌を入れてある。花畑とペアを組んでいる広田純子が地域のコーラスサークルに所属しているので、そのメンバーに依頼して仮歌を入れているらしい。コーラスをやっている人たちらしく、声が均質で音程が安定している。
 
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「きれいな歌ですね。低音がダブルで鳴っていて凄く安定感がある。和音がとても美しい」
と鈴木が論評する。
 
「売れると思う?」
と畠山が訊くと
「いいえ」
と言う。
 
「何が悪い?」
「花が無いです。普通の曲にすぎません。それと一本調子過ぎて疲れちゃう」
 
「コンペで何度も優勝経験があるみたいなんだけどね。今回はコンペをしたんじゃなくて、以前使って良かったと言っていた人から推薦されたので発注してみたんだけどね」
 
「まあコンペに応募してくる作曲家にはこういう全力投球的な曲を書く人が多いです。でないと通らないから」
 
「激しい競争から勝ち上がるにはそうなんだろうな。まあでもどっちみちアレンジを変えてもらわないといけない。メンバーの構成が変わっちゃってね」
 
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「まあよくある話ですね。どうかするとユニット結成の記者会見した時とデビュー曲を出した時とで既にメンバーが違ったりする」
「あるねぇ、そういうの。この曲は、ソプラノ2・メゾ1・アルト2で作ってもらったんだけど、ソプラノの2人とアルトの1人が辞めちゃったんだよ」
 
「随分辞めましたね! じゃ残っているのは、メゾ1・アルト1ですか?」
「それじゃユニットの体(てい)をなさないから、2人追加しようと思って。千代紙って知ってる?」
 
「いえ」
「歌う摩天楼でリハーサル歌手してた子たちなんだけどね」
「あの子たちですか! なんでこの子たちリハーサル歌手なんかやってるのよ?と思いましたよ。凄すぎる」
 
「あの2人をこちらに組み込もうと思ってね」
「それは凄いユニットになりますよ!」
 
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「この花畑さんの歌でデビューさせようと思っていたんだけど、新たにゆきみすずさんに詩を書いてもらって、木ノ下大吉先生と東郷誠一先生に曲を書いてもらおうと思って、取り敢えず∞∞プロを通じて発注したんだよ」
 
「その名前で頼めば高いでしょ?」
「ゆき先生にはプロデュース料込みで600万円、木ノ下先生に150万円、東郷誠一先生に120万円払った」
 
「でも、ゆき先生の歌詞なら、すずくりこ先生の曲じゃいけなかったの?」
「作業量的に無理だと言われたんだよ。すず先生はやはり耳が聞こえない中で作曲しているから年間12-13曲が限度らしい」
 
「でも私、木ノ下先生や東郷先生のゴーストライターしてる子、数人知ってるよ。そこに直接頼めば同じ品質で30万で行ける。そもそも木ノ下先生はもうほとんど作曲してないし、東郷先生も自分で書いているのは全体の3割程度にすぎない。あの先生、気分屋だから書く時は1日2本くらい書くけど、気分が乗らないと2−3ヶ月、ひたすら山本先生と囲碁ばかり打ってるみたい」
 
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「木ノ下とか東郷という名前を使う効果は大きいでしょ」
 
「ブランド料か〜!」
と言って鈴木は大きく深呼吸するかのように両手を広げた。
 

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そこに「失礼します」と声を掛けて高校生の少女が入ってくる。こちらを見て近づいてくると
 
「お早うございます。鈴木聖子さん」
と挨拶した。
 
「お早う。源優子ちゃんだったよね?」
「覚えて頂いていてありがとうございます」
 
「歌う摩天楼、終わっちゃって残念だったね」
「はい。リハーサル歌手けっこう楽しかったので、がっかりしています」
 

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「あ、それでだね、和泉ちゃん」
と畠山社長は和泉に言う。
 
「はい」
「君の実力はもう歌う摩天楼の仕事で充分分かったから、今度はユニットを組んでメジャーデビューしない?」
 
「メジャーデビューですか!?」
とさすがに驚いたように和泉は言う。
 
「4人くらいのユニットを考えているんだよ。既に2人はメンバーが確定しているけど、メゾソプラノとアルトなんだよね。君クリアなソプラノだし、歌が物凄くうまいし。既にメンバー確定している2人も凄く上手いんだけど、メゾとアルトでは売り出せない。だから彼女たちより遥かに上手いソプラノが欲しいんだよね」
 
「4人とおっしゃいました?」
「うん。相棒の冬子ちゃんもいっしょに思っているんだけど」
 
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すると和泉は戸惑うように言う。
 
「私はぜひやりたいです。でも冬子、何か色々やってるみたいで忙しそうだからどうだろう」
 
「じゃ、取り敢えず君から少し話してみてくれない? それで微妙なら僕が直接勧誘してみるから」
 
「はい。分かりました。そのユニットの名前とかは決まっているんですか?」
 

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「名前か? 名前はね・・・」
と言いかけた時、鈴木さんが
 
「さっき言ってた名前は変えた方がいい。あの名前じゃ絶対売れない」
と言う。
 
「そうだな。それじゃ」
と言いかけた時、畠山は目の前に花畑から送られて来た封筒があるのに目を留めた。そこには《仮音源在中》というマジック書きがされていた。
 
「えっとね。仮音・・・」
 
畠山はこの仮音源をちょっと聴いてみて・・・と言おうとしたのだが、そこで今この5人編成のアレンジの仮歌を聴かせても仕方無いかなという気もして言いよどんでしまった。
 
すると和泉が
「カリオンですか?」
 
と訊く。
 
「ああ、いい名前ね」
と鈴木が言った。
 
「カリオンって、教会とか結婚式場にあるメロディーの出る鐘ですよね?」
と和泉。
 
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「ローマ字がいいよ」
と鈴木が言うので
 
「じゃ K-A-R-I-O-N でカリオン」
と畠山は言った。
 
「カリオンって4つの鐘という意味だよね。フランス語のスペルは現代ではCarillonだけど、古い時代には Quadrinione と書いていて数字の4 quatre と同語源。元々はドミソドだけだったのよね」
と鈴木は言う。
 
「じゃ4人のユニットには最適の名前だね」
と畠山も言った。
 

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そして三島を呼ぶと
「これ、花畑さんに連絡して、ソプラノ2・メゾ1・アルト1に編曲し直してもらえないかな?」
「つまり2本あったアルトを1本に変更するんですね?」
 
「そうそう。それと全体的に力が入りすぎているから、力の入っている所と抑える所を作ってメリハリを付けてもらえないかと言ってみて。音源制作の時間が迫っているから、MIDIが間に合わなければ手書きで構わないから。それと、木ノ下先生と東郷先生の事務所にも連絡してこちらのユニットは4人編成でお願いしますと言って。そちらも譜面は手書きでいいから」
 
それで三島が連絡するのに自分の机の方に行くので和泉が訊く。
 
「アルトが2人いたんですか?」
「うん。候補選定している段階ではね。1人が、ちょっと家庭の事情があって活動できなくなってしまって」
 
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「それですぐ音源制作に入るんですね?」
「うん。楽曲が週明けくらいに揃うと思うから、来週の週末から音源制作」
「慌ただしいですね!」
「そして年明けにデビューという線で」
 
「分かりました!」
「和泉ちゃんの御両親とも話したいから、時間の取れる日を連絡してもらえない?」
「はい。それと冬子とも話してみます」
「うん、お願い。編曲の方は、見切り発車で進めておくから。残りの2人が事務手続きで月曜日、5日かな。その日この事務所に出てくることになっているんだよ。顔合わせさせたいから、とりあえず5日の放課後出てこられる?」
 
「はい、出て来ます」
 

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女の子たちの冬山注意(2)

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