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■夏の日の想い出・コーンフレーク(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-10-18  
翌26日。最終日。この日はローズ+リリーのステージがあるし、他に桜野みちる、AYAなどの公演がある。メインのGステージ最後を飾るヘッドライナーはイギリスのロックバンド、マニアル・ガーデンである。
 
この日の朝、政子を7時に起こして琴絵・仁恵と一緒に4人でホテルの朝食を食べ、部屋に戻ってしばらくおしゃべりしていたら政子の携帯(政子は度重なるスマホのトラブルにめげてフィーチャホンに戻してしまった)にメールの着信がある。それで政子が携帯を開き見ていたら
 
「嘘!」
 
と叫ぶ。
 
「どうしたの?」
と私が訊くと
 
「お父さんが死んだって」
と言う。
 
「え〜〜〜!?」
とみんなが驚きの声をあげる。
 
政子の父は仙台でデパートの店長をしている。確かもうすぐ60歳の誕生日を迎えるはずだ(店長クラスは65歳定年なので、まだ定年までは5年ある)。特に病気などは聞いていなかったが、過労死か何かであろうか。店長なんて無茶苦茶忙しいはずだ。
 
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それと同時に私は妙に政子にばかり災難が起きるなと思った。もしかして、これって呪いでも掛けられているのでは?とも考える。
 
「マーサ、私はいつもここに居るからね」
と言って私は政子をハグした。
 

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ちょうどその時、部屋のドアがノックされる。琴絵がドアのそばまで行き 
「どなたですか?」
と声を掛けると
 
「済みません。中田政子の父です。ちょっと接待でこちらに来たので」
という政子のお父さんの声。
 
私たちは顔を見合わせる。
 
それで琴絵がドアを開けると、まさにその政子の父がお土産らしきお菓子を持って入ってくる。
 
「これ、カモメの玉子。3箱くらいで足りるかどうかちょっと不安だったんだけど」
と言ってから、その場の異様な雰囲気に気づいたようで
 
「どうしたの?」
と訊く。
 
「いや、今政子さんのお父さんが亡くなったという報せを聞いて驚いていたところで」
 
「え?僕が死んだって?」
 
「お父さん、お父さん生きてる?」
と政子が言う。
 
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「僕は生きているつもりでいたけど、死んでるんだっけ?」
とお父さんは戸惑うよう。
 
琴絵がお父さんの背中や肩に触り
「幽霊には見えないよ」
と言う。
 
「ねえ、お父さんが亡くなったって、それ誰からのメール?」
と私は訊く。
 
「これだけど」
と言って政子が携帯を渡すので私は読み上げる。
 
『御尊父様の永眠のお報せに接し、心より哀悼の意を表します。雨宮先生にはさぞご心痛のことと存じますが、どうかお力を落とされませんようお祈り申しあげます。どうかご自愛なさいますよう。合掌』
 
「ん?」
「ちょっと待て」
 
「雨宮先生?」
 
「これ発信者は∞∞プロの谷津さんじゃん」
「メールの送り先を間違ったのでは?」
 
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それで政子は谷津さんに「宛先間違ってますよ」と返信し、私は雨宮先生の助手(?)の新島さんに電話して情報を確認した上で、お悔やみを述べた。昨夜遅く亡くなったのだそうである。
 
通夜・葬儀の日程を尋ねると、今日お通夜で明日27日に地元の京都府で告別式ということであった。ワンティスのメンバーは全員集まるらしい。もしご都合が付きましたらケイさんにも顔を出して頂けませんでしょうか?交通費は出しますのでと新島さんが言うので私は葬儀に顔を出すことにした。取り敢えず弔電を「ローズ+リリー・マリ&ケイ」の名前で打っておいた。
 
なお、喪主は雨宮先生のお兄さんが務めるらしい。
 
「でも雨宮先生、お父さんの息子として出るのかな?娘としてかな?」
などと政子が訊く。自分の父が死んだなどというのが間違いと分かり、俄然余裕が出ている。
 
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「さすがに男装はしないと思うよ」
と私は答えた。
 
「だけど、谷津さんの携帯、ローズ+リリー・マリとかワンティス・雨宮みたいにユニット名+名前の形で登録されているんじゃないかな。だからマリちゃんと雨宮さんが隣り合ってて、うっかり間違ったんだと思う」
と琴絵が推察する。
 
確かにそれならあり得る間違いかも知れない。ローズクォーツは恐らくローズ+リリーのひとつ前になるのではと私は思った。
 
「まあ谷津さんらしいかもね」
 
その谷津さんからは
「ごめんなさい!縁起でもないメールを送って本当に失礼しました」
という返信がすぐに返ってきていた。
 

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ところで政子のお父さんだが、ポーランド人のミュージシャンがプライベートに日本を訪問中で、仙台で買物をしていた時、言葉の通じる人が居なくて困っていた所をお父さんが応対したらしい。それで買物に付き添ってあげながら色々おしゃべりしていたら、彼女が日本のローズ+リリーが好きだと言う。それでお父さんが「その片割れはうちの娘です」と言ったらしい。
 
それで最終的に、彼女を伴ってこの苗場までやってきたという。
 
「何て名前の方ですか?」
「Mixtory Angles というユニットをしていたバーバラ・スクウォドフスカさんという人なんですか」
 
とお父さんはメモを見ながら言う。
 
「わあ!Mixtory Anglesの!」
 
Mixtory Angelsは2年前のサマーロック・フェスティバルに出演していた。
 
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「近くにおられます?」
「今ロビーで待って頂いてます」
「呼んで下さい!」
 

それで電話すると彼女が登ってきた。
 
「コンニチワ」
と彼女は日本語で挨拶してくれるのでこちらも
「ジェン・ドブリ」
とポーランド語で挨拶を返す。
 
ロシア語の「こんにちは」が「ドーブリ・ジェン」で、ポーランド語はそれを前後ひっくり返したような挨拶である。
 
もっとも実際にはこちらは政子以外はポーランド語は話せないし、向こうも日本語は分からず英語もあまり得意ではないということで、結局フランス語で会話することになった。実際仙台のデパートでもバーバラさんと政子のお父さんはフランス語で会話していたらしい。こちらは4人ともフランス語はできる。
 
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「Mixtory Angles 3人で来日なさったんですか?」
 
「いえ。私ひとりなんですよ。2年前に来た時は公演だけでバタバタと帰ってしまったので、一度ゆっくり見ておきたかったんです。北海道の旭岳に行って、青森の十和田湖を見て、仙台の松島を見たところで、中田さんにお会いしまして」
と彼女は言う。
 
「やはりご縁があったんでしょう」
と私が言うと
「その日本語の《ご縁》って面白い考え方ですね。私好きになりました」
と彼女は言っている。
 
「ローズ+リリーの『Flower Garden』『雪月花』 聴いていました。素晴らしいです。私たちもこんな素敵な音楽が作れたらって、3人で話していたんですよ」
 
「評価して頂いてありがたいです。それだけ実は次回作を作るプレッシャーになるんですけどね」
と私は答える。
 
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この日は私たちは午前中は貸しスタジオで練習してから会場入りすることにしていた。バーバラさんもその練習を見たいというので結局政子のお父さんも入れてそちらまで行った(甲斐窓香が付いていくので仁恵・琴絵はお休み)。
 
2時間ほど練習してから会場に到着したのはもう13時である。他の伴奏者、風花、氷川さん、仁恵&琴絵たちと合流する。
 
ローズ+リリーの出番は昨年は午後一番だったのだが、今年は15時からである。今日のGステージのスケジュールはこうなっている。
 
1100-1200 レレイホトー(日本)
1300-1400 ザルツィッヒ・ザッハトルテ(ドイツ) 
1500-1600 ローズ+リリー(日本) 
1700-1800 スカイヤーズ(日本) 
1857-2007 ジャムジャム・クーン(アメリカ) 
2130-2300 マニアル・ガーデン(イギリス)Head Liner 
 
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今日の日没は18:57である(日暮19:34,天文薄明終了20:41)。ラスト前のジャムジャム・クーンは日没と同時に演奏開始することになる。
 
ただし実際には苗場スキー場は筍山の東側の山麓に展開している(苗場山は苗場スキー場からかなり距離がある)ので実際の太陽は私たちの演奏中に山陰に隠れてしまうだろうという話であった。
 
しかしローズ+リリーのステージは15時という微妙な時間の開始であるため、政子はお昼を大量には食べないことと言われて、ぶつぶつ言っていた。取り敢えず松花堂を3人前しか!食べていない。私たちが会場入りした時はドイツのポップロック・バンド、ザルツィッヒ・ザッハトルテ(「しょっぱいケーキ」という意味)が演奏していた。昨年後半から世界的なヒットになっている曲を持ってこの苗場にやってきた。
 
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「何人くらい入ってますかね?」
「満員に近いと思う」
「満員を越えて6万人くらい入ってない?」
「どうだろう。人間の目の感覚ってアバウトだから、1万人と2万人の差は分かるけど、5万人しか居ないのを7万人と言われても、そう言われるとそのように見えるって以前イベンターの人が言ってましたよ」
 
一応このステージの定員は4万人ということになっている。
 
「この時間帯はRステージでナラシノ・エキスプレス・サービスがやってるからけっこうそちらに人数取られている可能性はあると思う」
「まあここのチケット高いから、どうしても年齢層高いし、30代にはファンが多いですよね」
「うん。逆にこういう最近出てきたバンドの情報を取れてない人が多い」
 
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やがてザルツィッヒ・ザッハトルテの演奏が終わり、撤収が始まる。観客も移動し始める。こちらが終了してすぐにHステージではAYAが登場したはずである。GステージとHステージはできるだけ時間帯をずらして公演が行われるようになっている。
 
やがて撤収が終わり、こちらに引き継がれるので、○○プロと★★レコードの合同チームのスタッフにより機材が運び込まれる。音が出ることを確認する。
 
ステージで準備が進む中、私はじっと目を瞑って心のテンションを上げる作業をしていた。政子は夢美が差し入れてくれた笹団子を食べている。七星さんと風花、氷川さんと青葉が何か話しているようだが、私の耳を素通りしている。
 
政子は笹団子を2束食べた所でレフェリー・ストップが掛かったようである。バーバラさんも笹団子は美味しい美味しいと言って食べていた。すっかり気に入ったようである。
 
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「私日本に来てから北海道で大福を食べて以来、あんこが大好きになりました」
とバーバラさん。
「美味しいですよね。脂肪分が少ないからヘルシーですよ」
「思いました。やはり日本人がスタイルいいのは、こういうおやつを食べているからでしょうかね」
「確かに生クリームとかは脂肪そのものですしね」
 
などと政子とバーバラさんはおやつ論議でも盛り上がっていたようである。
 

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「ケイさん、そろそろですよ」
という氷川さんの声で意識を戻し化粧水のスプレーを顔に噴射して肌に水分補給するとともに気持ちを引き締める。
 
「何か凄い人数ですね」
と私は言った。
 
「うん。明らかにさっきの時間帯より多い」
と鷹野さんが言う。
 
「今まだAYAの演奏中なんだよ。そちらが終わったらこちらに移動してくる人たちがいると思うから、まだ増える可能性がある」
と近藤さん。
 
「主催者側ではそれを見越して、一部の区画をまだ開けていないんです。向こうから流れて来た人たちをそこに入れることになるそうです」
と氷川さんは説明した。
 
間もなくローズ+リリーの公演が始まりますというアナウンスが流れる。3分前になるとスターキッズがステージに上がり、各々自分の楽器の音が出ることを再確認する。風花が2つのスタンドマイクの声がスピーカーに流れることを確認する。1分前。私とマリがステージに上がる。
 
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物凄い歓声が上がる。私たちは観客に手を振って歓声に応えた。
 

進行係の人から合図があり、酒向さんのドラムスがマーチのリズムを刻む。するとステージ脇から黄色いユニフォームを着た女性の集団が行進して登ってくる。そして私とマリは歌い始める。。観客から大きな拍手が贈られる。
 
昨年東堂千一夜先生が私たちの苗場ロックフェスティバル出場のお祝いに書いてくださった『苗場行進曲』である。この曲のCDには多数のアーティストのメッセージが入っているのだが、この日の演奏ではこの「メッセージ」部分を2人の人物が掛け合いをするかのように入れてくれた。ふたりは顔を出していなかったのだが、観客の中に結構隣同士ささやきあっている姿が見えた。
 
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この曲の演奏中にAYAが歌っていたHステージ側から流れて来たと思われる大量の観客が到着。主催者は確保していた後ろの方の区画を開放した。そこにその人たちが入ってすぐに手拍子をしてくれる。私たちはそちらに向けて手を振る。
 

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やがて演奏が終わる。私たちはまず挨拶する。
 
「こんにちは!ローズ+リリーです!」
と私とマリで一緒に言った。
 
「今日も天気がいいですね。もう3日目でずっと苗場におられる方は疲れもピークに達していると思いますが、しばらく私たちの音楽に耳を傾けてくださると嬉しいです。今演奏した曲は、昨年東堂千一夜先生がこのフェスのために書いてくださった曲『苗場行進曲』でした。ここでステージ上で演奏中ずっと行進してくださったのは、今年の全日本クラブバスケット選手権の覇者、東京40minutesのみなさんでした。ありがとうございます」
 
観客から拍手が贈られる。
 
昨年は千葉ローキューツに出てもらったのだが、私がそこのオーナーを務めることになってしまったので、身内を出してもというのと毎年同じチームではということで40minutesに出演を依頼したのだが、奇しくも昨年も今年も全日本クラブ選手権の覇者に出てもらうことになった。
 
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「そしてこの曲に含まれる多数のメッセージを読んでくださった人、ワンティスの上島雷太先生と奥様の春風アルトさんです!」
 
と私が紹介し、2人が陰から出てくると、大きな歓声と拍手が起きていた。
 

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■夏の日の想い出・コーンフレーク(5)

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