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■夏の日の想い出・コーンフレーク(4)

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ゴールデンシックスの壊された楽器の代替品(取り敢えずレンタル)は15時すぎに到着した。すぐに調弦その他の調整をした上で、風花も入って合わせる。全部合わせると疲れるので各曲とも前奏→Aメロ→サビ→間奏で終了、という感じの超短縮バージョンで合わせて雰囲気を確認した。
 
「OKOK」
「合ってる合ってる」
「みんな優秀〜」
 
「風花さんもこれを機会にゴールデンシックスと愉快な仲間達に入りません?」
「あはは、面白そうだけど」
「じゃ会員証を渡しておこう」
 
「会員証があるの〜?」
 
それで金色の六芒星のバッヂのようなものを渡された。
 
「実はいつでも勧誘できそうな人がいたら渡せるように持っている」
などとカノンは言っている。
 
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「携帯ストラップに付けている人、財布に放り込んでいる人もいるけど」
「机の中に放り込んだままの人もいる」
「なるほどー」
「取り敢えず渡した人の名前と携帯番号、できそうな楽器はリストアップしている」
「怖いな」
 
「ケイさんも良かったらお渡ししますが」
「パス」
 

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「合わせ」が終わったのが15時半すぎだったので、私と風花はそのままKARIONの控室に行く。カノンとリノンが「見学していいですか?」と言うので「どうぞどうぞ」と言って連れて行く。キョウ(橋口京子)とフルル(大波布留子)が楽器の番をしていて、マノン(佐小田真乃)とノノ(橋川希美)は少しほかのステージを見てくるという話だった。
 
「おはようございまーす」
などと言って控室に入っていき、カノンとリノンをKARIONのメンバーに紹介して、少しおしゃべりしていた時、控室にSHINが入ってくる。ここは一応男子禁制にしているのだが、SHINは全く気にしないし、KARIONの4人も気にしない。これがTAKAOが入ってくると「きゃー」と悲鳴をあげられるので「差別だ」と言われたことがある。
 
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「こっちに相沢のギターと木月のベース来てないよな?」
「へ?」
 
それでKARIONの4人にマネージャーの花恋、同じ部屋に居た風帆伯母たちに、カノンとリノンまで一緒になって探すが、ギターやベースは見当たらない。
 
「ありませんよ」
「あれ〜? じゃどこ行ったんだろ?」
 
「苗場には持って来たんですよね?」
「うん。というか昼過ぎに5人(トラベリング・ベルズ)で合わせた時はあったんだけどね。その後脇に立てかけておいて、そこに無いとは思いも寄らなかったから。さっき相沢がチューニングを再確認しようとしたら見当たらなくて。間違ってこちらに来てないかなとも思ったんだけど」
 
「ギターとベースだけが見当たらないですか?」
「うん。僕のサックス、児玉のトランペットはある。ドラムスもある」
「車にあるということは?」
 
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「私、見て来ましょうか」
と言って花恋が行こうとするが和泉が停める。
 
「今から駐車場まで行ってもステージに間に合わない」
 
苗場の駐車場はステージからとっても遠い。
 
「どうする?」
 
「ここは相沢さんと木月さんにはボイスギター、ボイスベースで」
などと小風が言うが、私はカノンに言った。
 
「ゴールデンシックスのギターとベース貸してくれない?」
「いいですよ」
 
それでカノン・リノン・私・SHINの4人でゴールデンシックスの控室まで走っていき、キョウたちにも声を掛け、借り物の又貸しになるのだが、ギターとベースを持ち出し、私とSHINで持ってトラベリング・ベルズの控室まで走っていた。
 
「取り敢えず借りてきた」
「助かる」
 
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それで急いでこちらのチューニングで調弦し、もう時間が無いのでそのまま舞台袖に向かう。和泉たちと合流したのがもう15:48である。前の出演者の演奏がすぐ終わる。
 
「らんこ、これ着て」
と言って衣装を渡されるので私はその場で着替えた。男性が周囲にたくさんいるが気にしてられない。
 
拍手と歓声の中、前の演奏者が急いで撤収する。トラベリングベルズのメンバーと事務所のスタッフでKARIONの楽器を運び込みケーブルをつなぐ。音が出るのを確認する。TAKAOがOKのサインを出す。16:00。KARIONの4人がステージに上がる。
 

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「みなさん、こんにちは。KARIONです」
と4人一緒に笑顔で挨拶する。
 
裏で何が起きていようとも、満面の笑みでステージに立つ。それがアーティストの義務である。お客さんには最高のステージを楽しんでもらわないといけないのだ。
 
KARIONの音楽は基本的に純正律なので音源制作や本格的なツアーでは電子キーボードは一瞬で設定を変えるものの、ギターやベースは調ごとに違う楽器を使用している。しかしこのようなフェスの類いではそういう難しいことはできないので、平均律のふつうの楽器を持って来ていた。それで逆に代替も利きやすかったのである。
 
こういう場合、私と小風と美空はドラムスとベース以外の楽器の音は聞かないように気をつける。原則として和泉の声だけに注意して、それに完全にハモるように歌うのである。3人とも相対音感が発達しているゆえにできるワザだ。これがKARIONの美しいハーモニーを作り出す。
 
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最初最新シングルから『魔法の鏡』『お菓子の城』を歌い、次に2月に出したアルバムから『皿飛ぶ夕暮れ時』を歌う。この曲を発表した時は、焼きそばの入った皿を千里に投げてもらったなというのを思い出しながら歌っていたら、ステージに思わぬものが飛んでくる。
 
客席からテープや花束が飛んでくるのは(禁止しているのだが)ままあることなのでこちらも慣れているのだが、飛んできたのは何か赤くて丸いものである。回転して飛んできたので最初フリスビーか何かかと思ったのだが、飛んできた物体はちょうど美空の前に到達するので反射的に美空は(マイクを持ってない)左手で受け止めてしまった。
 
美空もびっくりしたようであるが、見ると焼きそばのUFOである。
 
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美空はそれを左手でかざしながら歌い続けたので、これに客席が結構沸いた。しかし、これで勢いづいてしまったのか、他にも物を投げる客が出る。UFOあり、一平ちゃんあり、ペヤングあり、大盛りいかやきそばあり。これって観客が非常食に持って来ていたものでは? と私は歌いながら思った。
 
しかし四角いカップ焼きそばはステージまで到達せず観客席の中に落下するものが結構ある。丸いUFOの到達率がやはり高いようだ。
 
とにかくもステージにカップ麺が大盛りになってしまったのだが、さすがに歌い終わってから和泉が注意する。
 
「えー。焼きそばが空を飛んでいく歌で、焼きそばを投げて頂くのはありがたいことではあるのですが、客席の前のほうにいる人や、ステージに立っている演奏者に当たったりすると大変危険ですので、焼きそばを含めて物を投げるのはおやめください」
 
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それで∴∴ミュージックの男性スタッフ数人が駆け込んできて取り敢えずステージに散らばっているカップ麺の類いを大急ぎで片付けた。前の方にいた観客でカップ麺が当たってしまった人たちはそのままゲットという雰囲気であった。幸いにも怪我した人などは居なさそうである。
 

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ステージ上でスタッフが物を拾っている間は4人で少しMCをしていたのだが、その間に合図して和楽器奏者の人たちにステージにあがってもらった。この後は実は『たんぽぽの思い』を歌うつもりだったのだが、時間が微妙になったので取り敢えず飛ばして、『黄金の琵琶』に行くことにする。
 
風帆伯母の高弟・若山鴎翔さんの物凄く格好いい琵琶の音で始まる。他に箏、笙、鼓の奏者も入っている。強烈な和楽器の音が独特の雰囲気を醸し出す。しかし青葉もいい曲を書くよなあ・・・などと考えていた時、私はコスモスから頼まれていた『次回のAQUAのCD』の作曲者に青葉を推薦することを思いついた。高校生が曲を書いて中学生が歌う。あ、いいんじゃない?これ。男の娘だった女の子が書いて、男の娘の疑いのある男の子が歌う。いいじゃん、いいじゃん。
 
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私は考えていたら楽しくなってきた。
 
でも元々はAQUAみたいな子を「男の娘」と言ってたんだよなあとも思う。初期の頃は女装しているかどうかは問わずに女の子に見えてしまう子が「男の娘」で、女の子に見えるかどうかは置いといて女装している子は「女装っ子」だったのが、いつしか両者は混同されるようになってしまった(「男の娘」は2次元限定用語だったという説もある)。
 
『黄金の琵琶』に続いてやはり和楽器をフィーチャーして『アメノウズメ』を演奏する。一転してセクシーな曲である。青葉は『黄金の琵琶』は彼女が千葉に建立した玉依姫神社に関わっていることを示唆していたが、あそこの神様は「琴弾き」の神様なのだと言っていた。「琴」というのは現代では箏の意味で使われることが多いが本来は弦楽器一般を指す言葉である。宇津保物語に出てくる波斯(はし:ペルシャ)由来の琴(琵琶)はおそらくリュートの原型のような楽器だったのであろう。天宇受売(あめのうずめ)神もまた芸能の神様である。歌や三味線などを習う人がよくお参りするし、芸能界には天宇受売神の信者というよりファンのような人たちが結構居る。
 
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過去のヒット曲から『海を渡りて君の元へ』と歌ってから時間調整を兼ねて4月に出したシングルから『シンデレラ・トレイン』を歌う。そして最後はノリの良いナンバー『フレッシュ・ダンス』を歌って終了した。
 

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「この大量に飛んできたカップ麺どうしましょう?」
と花恋が困ったように言っている。
 
「廃棄で」
と三島さんは言うが
 
「えー!?もったいないです。私食べちゃいますよ」
と美空は言う。
 
「うーん・・・」と私たちは少し悩んだのだが、和泉が提案する。
 
「消費期限が切れていなくて、未開封のものだけ食べましょう。フィルムが破れているものは安全のため廃棄ということで」
 
「フィルムは飛んできた時に破れたかも知れないけど、ふたが開いてなければ安全だと思う」
と美空は反論する。
 
「食べられるものを捨てたらアフリカとかで飢えている人たちに申し訳無いよ」
と美空は更に言う。
 
「分かった。じゃふたが確実に開いてないことが条件。それと一口食べて少しでも異常を感じたら廃棄。いい?」
と和泉が言い、
 
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「それでどうでしょう?」
と三島さんに尋ねる。
 
「そうねぇ。あの場は悪意のあるものを準備できる状況じゃ無かったしね。じゃ今回だけはそういうことで。でも美空ちゃん、ほんとに少しでも変な気がしたら食べるの中止すること」
と三島さんは言った。
 
「了解でーす」
 
またステージに物を投げないで下さいというのは、再度ホームページ、ファンクラブの会報やメルマガでも明示することにした。
 

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終了後、楽器をゴールデンシックスの楽屋に持っていき、よくよく御礼を言った。それであらためてKARION用の男性控室・女性控室を探し、花恋が駐車場まで行って車の中を確認してきたものの、ギターとベースは見付からなかった。
 
「盗まれたのかなあ」
「誰かが間違って持って行く状況じゃないですよね?」
「アーティストごとに楽屋は別れているからね」
「女性用控室はたぶん誰かがいつも居たと思うけど、男性用控室はどうでした?」
 
「昼過ぎに簡単に合わせた後、まだ少し時間あるからコーヒーでも飲んでくるかと言ってみんなで出たんだよなあ」
「その時、鍵は?」
「掛けてない。途中でバラバラになるかも知れないしと思ったから」
「そもそも控室のエリアには一般の人は立ち入れない筈ですしね」
 
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「うーん。考えても仕方ない。紛失したギター・ベースは個人のですよね?」
と畠山社長が確認する。
 
「そうです。今回は個人のを持って来ました」
と相沢さんが代表して答える。
 
「じゃ会社で相当品を買って返しますから」
「すみません。あ」
「はい?」
「どうせなら現金でもらえたら、それでまた好きなの買いたいのですが」
と相沢さん。
 
「ええ、それでもいいですよ」
と社長は答えた。
 

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それでその日は控室を引き払い、18時前には解散になる。今日帰る人は越後湯沢まで車で送るし、今日はもうホテルで休むという人もホテルまで送ることになるが、実際には今日帰る人はおらず、ホテルに戻るのももっと遅くなってからということだったので、一応ホテルまで行くマイクロバスを21時半と23時半に運行することにした。
 
私は和泉たちと一緒にゴールデンシックスを見に行く。政子たちは先にそこの会場に行って見ているはずだが、私たちは18:15くらいの到着になり、途中から見ることになった。
 
行った時は『窓ガラスを全部拭け』(リノン・カノン作)という曲を演奏していた。美空も調子良くメンバーに溶け込んで演奏している。しかし何か威勢の良い曲だ。「悲しい時は窓ガラスを拭け」「学校の窓を全部拭いちゃえ」と煽るようなことばが歌われている。凄くシンプルなメロディーに乗せてあり、ある意味、ストリート・ミュージシャンの即興演奏っぽい気楽な雰囲気だ。
 
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もしかしたらこういうのがロックの魂に近いのかも知れないが、彼女たちはそれを丁寧に正確な音程で歌っているので、音感の良いポップスファンにも聴きやすいパフォーマンスになっている。これを聴いていて、私は自分にはこういう曲は書けないなと思った。
 
 
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■夏の日の想い出・コーンフレーク(4)

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