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■夏の日の想い出・コーンフレーク(2)

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「マリちゃんの恋愛問題についてはどう思いますか?」
「ああ、それはみそらに訊いたほうがいいです」
と私は美空に振る。
 
「まぁりんは同志です。恋愛とか実際興味無いと思いますよ。お互い食べることに人生を賭けてますから。何度も食べ比べをしたんですけどね。だいたい痛み分けなんですよ」
と美空が言うと、あちこちで笑い声がある。
 
「私とまぁりんが主宰する料理番組とか誰か企画してくれないかなあ」
などと美空が言うと
 
「それって要するに大食い番組ですかね?」
と声が掛かる。
 
「私たち、そんなに大食いじゃないですよ。私もまぁりんもラーメン10杯くらいがだいたい限界ですし」
 
と美空が言うと「すげー」という声があちこちであがっていた。
 
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「ちみなにみそらさん、体重おいくらでしたっけ?」
「私は48kg, まぁりんは46kgくらいですよ」
 
あちこちで「信じられん」という声が上がっていた。美空は実は昨年春のツアーの頃は体重が55kgまで行っていたのだが少し反省して食生活を改善し、野菜をよく食べるようにしてその分炭水化物を減らし、年明け頃までに50kg程度まで落としたのである。まあ48kgも50kgも変動の範囲ということだろう。
 
実際ラーメン10杯は5-6kgあるはずである!
 

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この日の会見は美空の大食い発言あたりから記者側もローズ+リリー関係の話を訊く雰囲気ではなくなってしまい、そのあと楽しい美空の「食べ歩き」論議に笑いが多数起こっていた。そのまま楽しい雰囲気で会見は終了した。
 
その週の週末24日(金)から26日(土)までは新潟県で苗場ロックフェスティバルが行われる。これにはKARIONもローズ+リリーも参加する。私たちは実際には23日には苗場に入った。
 
さて、今回の苗場入りに当たって、政子には「監視役」が付くことになった。2度にわたる「熱愛報道」が続いて、これ以上やられてはかなわんということで、私がKARIONとの兼任で政子を1人にする時間が発生することから、最初は誰か若い人を雇って付き人をさせようという話もあったものの、政子は過去に事実上の付き人をしてくれた、UTPの桜川悠子や詩津紅の妹の妃美貴をかなり翻弄!している。それで政子のワガママにめげない人物として、私たちと高校時代からの親友であり、★★チャンネルの社員でもある琴絵と仁恵の2人をセットで、このイベントの期間中政子に付けたのである。
 
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それで私と政子は琴絵・仁恵と一緒に佐良さんの運転するエルグランドで23日のお昼過ぎに東京を出発し、夕方苗場に入った。このエルグランドにはスターキッズ用の楽器・機材も一部積んでいる(一部は近藤さんが自分のヴェルファイアで運ぶ事になっている)。KARIONおよびトラベリングベルズの機材は畠山社長が会社のハイエースで運ぶことになっている。
 
この日16時に一度某所でローズ+リリー&スターキッズ+若干の追加伴奏者で集まり、曲目・スコアの確認や連絡事項の確認などをした。また18時にKARIONとトラベリング・ベルズおよび追加伴奏者でも某所で集まり、同様のことをした。
 

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ローズ+リリーの追加伴奏者としては、宮本・香月・山森といういつものメンツに加えて、クラリネットで詩津紅、ダンサーで近藤・魚といった所。ヴァイオリンの6重奏をするのに、鈴木真知子・伊藤ソナタ・桂城由佳菜といった面々に何度も参加していて顔なじみの松村市花さん、そして松村さんのツテで長尾泰華さん・西崎糸音さんという人にお願いした。ヴァイオリンは屋外の使用でデリケートな楽器を痛めてはいけないので、サマーガールズ出版所有のサイレントヴァイオリンでお願いする。
 
それから追加のサックスは青葉に吹いてもらい、彼女の人脈でフルート担当に田中世梨奈・久本照香という人をお願いした。2人の演奏を聴かせてもらったが、田中さんは柔らかい表情豊かなフルート吹き、久本さんは高校1年らしいが高校生とは思えないセミプロクラスのひじょうに上手いフルート吹きであった。
 
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青葉とこの2人のフルート吹きさんは新高岡から北陸新幹線・上越新幹線を高崎で乗り継いで来てくれた。
 
「個人で旅費払うなら《ほくほく線》を使うんですけどねー」
と青葉は言っていた。実は高崎経由で新幹線を乗り継ぐのと、糸魚川または上越妙高で第3セクターに乗り継いで直江津から《ほくほく線》に乗るのとでは所要時間はほとんど変わらない。しかし高崎経由が1回の乗換で済むのに対して、《ほくほく線》を使う場合は3回も乗り換える必要があるので
 
「交通費はどうせ事務所から出すんだから、新幹線乗り継ぎにしなよ」
と私は青葉に言ったのである。所要時間は同じでも料金は倍になる。
 
「いや新幹線の座席は快適でした」
と久本さんなどは純粋に喜んでいた。
 
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田中さんは
「あのぉ、ギャラは即現金でもらえます?」
などと訊くので
「後で振り込みのつもりだったけど、何なら演奏が終わってからすぐ渡してもいいけど」
と言うと
 
「いや、お小遣いを越後湯沢まで来る間に使い切ってしまって、せっかく苗場に来たのにグッズを買うお金が無くて」
などと言っているので
「じゃ、前金で渡してあげるよ」
と言って3人にはギャラを前払いしてあげた。
 

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KARIONの方の伴奏者としてはヴァイオリン・オルガンで夢美、ピアノで美野里、今回はグロッケン担当で穂津美さん(スリーピーマイス)、フルート担当で風花と七美花、そして『アメノウズメ』と『黄金の琵琶』に必要な和楽器奏者は風帆伯母の人脈で、箏奏者2人・鼓奏者と琵琶奏者を1人ずつお願いした。風帆伯母自身は観客として3日間このイベントに参戦すると言っていた。
 
「穂津美さん、スリーピーマイスの方はもうしないんですか?」
と私は彼女に訊いてみた。
 
「うーん。何か最近テンションが上がらないんだよねー。3人ともバラバラに行動しているし」
「でもバラバラなのは最初からでしたよね?」
「そうなんだよねー。音源制作でも3人集まって作ったのってごく初期の頃だけで、2010年頃からは曲を作るのも収録するのも、個々で勝手に時間の取れる時にという感じになっちゃったし」
 
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「でもそういうユニットは結構ありますよね」
「うん。特に最近多い、打ち込み系のクリエイターの場合は作曲者は作曲者、作詞者は作詞者、歌唱者は歌唱者で、各々独立に動いていて、全く顔を合わせないままアルバムが制作されていくパターンがよくある」
 
「歌唱者が数人いる場合も1人ずつ別録りってユニットもあるでしょ?」
「そそ。3人組の歌手だけどお互い全く顔を合わせないまま・・・って私たちがまさにそれじゃん!」
と穂津美さんは途中で気付いて吹き出してしまった。
 
「私なんかはセッションするのが楽しくて音楽やっているようなものだけど、まあ音楽のとらえ方も様々でしょうからね〜」
 
「最近は私も事実上スタジオ・ミュージシャン化してるよ。麗子は今年の春から音楽大学の研究生になっていて、音楽の勉強を何だか本格的にやってるみたいだし、霧(みすと)はXANFUSにかなり入れ込んでいて、事実上のプロデューサー化している感じだけどね」
 
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「事務所移籍したので、介入しやすくなったみたいですね」
「そそ。あそこの事務所は事実上何もしないから」
 
XANFUSが今年から所属している@@エンタテーメントは事務的な処理を代行するだけで、スケジュールや音楽制作には基本的に介入しない基本方針となっている。あそこは「おとなのアーティスト」のための事務所である。
 
なおXANFUSは事務所移籍を機に、従来はレコード会社が原盤権のほとんどを所有(制作費もレコード会社がほとんど出す)方式から、ローズ+リリーやKARION同様に、原盤権をレコード会社と共有して代表原盤権は自分たちで所有する方式に移行している(当然制作費も大半を自分たちで出す)。
 

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なお、ホテルは連絡の都合もあり、ローズ+リリー、スターキッズ、KARION, トラベリング・ベルズ、およびその追加伴奏者が全員同じホテルに泊まっている。私と政子は仁恵・琴絵と一緒に4人でスイートの部屋に泊まった。ベッドが3つと和室から成る部屋だが、ベッドの内2つを琴絵・仁恵に使ってもらって、私と政子は障子で区切られた和室に布団を敷いて寝ることにする。
 
「聞こえるから、あまり野生に帰らないように」
と琴絵は言っていた。
 
23日は夕方の打ち合わせの後、会場に入って盆踊りや花火などを見る。最初はまとまって行動していたのだが、なにしろ人が多いのでバラバラになってしまう。琴絵にメールしてみた所、仁恵ははぐれてしまったものの、琴絵はしっかりと政子の浴衣の帯を捉まえていて、ピタリくっついているらしい。政子は美空と一緒に大食い大会に出たものの、ふたりとも入賞を逃したらしい。
 
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世の中、上には上がいるものだと感心し、私は首を振った。
 
まあ琴絵なら大丈夫だろうと思い、私は座って花火を見つつ、屋台のおでんを摘まみつつ半分ボーっとしていた。
 
その時、近くを歩いていた人の足が私の右肘にぶつかって、私はお箸を落としてしまった。
 

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「あ、すみません」
「いえ、大丈夫ですよ」
 
と会話したものの
 
「あ!松山君」
「唐本さん!」
 
ということで、それは政子の恋人(?)松山貴昭君であった。
 
「ね、良かったら少し話さない?」
と私が言うと
「実は政子とどうしても連絡が取れないから、唐本さんでも良かったら話せないかと思っていた」
と彼は言って、私のそばに座った。
 
幸いにも花火の音が凄まじいので、会話は他には聞こえない。
 
「結局、ふたりの仲はどうなっている訳?」
「こちらの状況は全部政子にメールしている。政子からは全く返事が無い」
「喧嘩したの?」
「こないだ。例の渋紙さんの事件があった晩、実は政子は僕のアパートに来たんだよ」
「だろうとは思ってた」
 
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「それがちょうど僕が終電を逃した東薗さんを部屋に上げてお茶を飲んでいたところで。その晩は泊めるつもりはなくて、本当にすぐタクシーに乗せて帰すつもりだったんだけどさ」
 
「まあ間が悪い時ってあるもんだよ。そのあと返事をくれないんだ?」
「うん。それと実は・・・」
 
と松山君は何か言いにくいようである。
 
「彼女と仲が進展してるの?」
「実は東薗さんのお父さんが先週の日曜日にうちに来てさ。娘と中途半端な関係を続けられるのは困る。結婚するかどうかハッキリしてくれと言われて」
 
「結婚するって言っちゃったの?」
 
松山君はコクリと頷いた。
 
おそらく彼女が父親を連れて来たのは政子と遭遇して危機感を抱いたからだろうなと私は思った。それで彼女は松山君の獲得に成功した。こちらにとって最悪の展開である。
 
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「言い訳するわけじゃないけど、テレビで政子の熱愛報道があって、ネットの噂とかでも、たぶんあれ年末くらいには結婚するよね、とか書かれていて動揺してしまっていて。政子にメールしても全然返事もらえなかったし」
 
タイミングも最悪だったなと私は思った。松山君も政子に連絡取れないなら私にメールしてくれたら良かったのに・・・・と第三者的には思ってしまうのだが、彼もやはりショックだったのだろう。こないだも別口の熱愛報道があったばかりだ。
 
一昨日の記者会見で政子が「当面男性とは付き合いません」と明言した時の言い方が私はあの時、物凄く気になっていたのだが、松山君の婚約でショックを受けたゆえであったか。逆にそういう心理状態での大林君の「求婚発言」は結構政子の心を癒やしたのではないかという気がした。政子は口では「嫌いです」と言ってはいたものの、大林君の「僕と結婚してよ」という発言をテレビで見た時、一瞬嬉しそうな顔をしたのである。
 
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「政子は大丈夫だよ。私がいるし。彼女と結婚しなよ」
 
と私は言った。
 
松山君はため息をつく。
 
「まだ正式の婚約をした訳ではないんだけど」
「いや口約束でもそういうことを言った以上、もう婚約は成立している」
「だよねー。実はまだ自分の親には言ってないんだけど」
 
「それは早く言わないとダメだよ。松山君のご両親と一緒に向こうに挨拶に行く必要があるでしょ? 彼女の実家はどこ?」
 
「鹿児島県の何か凄い離島らしい。保守的な地域みたいでちょっと腰が引けちゃう部分もあるんだけどね」
 
「そういう所だからお父さんもハッキリしないのが嫌いなんだろうね」
「だと思う。そもそも婚前交渉なんて今時の若いもんは・・・って感じだったよ」
「うゎぁ、たいへんそー」
 
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松山君は今ふたりは注目されているから自分と私とが親しそうに話していたなんて報道が出たりすると迷惑掛けるしと言って短時間で離れたが、自分の方の状況は政子だけでなく、私の方にも適宜報告するからと言っていた。
 
私は新譜の楽曲差し替えはひとつは政子の心情の問題もあったのかもという気がした。今政子はあまり失恋の歌を歌いたくないのだ。逆に『内なる敵』のあの悲惨で救いようのないような歌詞は、今まさに自分が失恋しそうな瀬戸際だったからこそ書いてしまったのかも知れない。
 
政子が松山君に会いに行って松山君と東薗さんが会っているのを見たのが6月22日の夜、そして私が千里の不倫(?)の話から『内なる敵』を発想したのが6月27日早朝で、その曲を聴いて政子は6月29日にそのショッキングな歌詞を書いた。そして7月10日に渋紙さんとの熱愛報道があり、12日に東薗さんのお父さんが来て松山君に結婚を迫り、彼は同意した。恐らく政子はその日の内にそのことを知った筈だ。翌日13日に桃香の友人(?)の妊娠中絶騒動があって政子は『狼からの逃亡』を書いたが、たぶんあの詩で狼に食べられてしまったのは政子自身だったのだろう。
 
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