広告:オトコの娘コミックアンソロジー恥ぢらひ編 (おと★娘シリーズ4)
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■夏の日の想い出・何てったってアイドル(12)

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実際には車は6:40頃、恵比寿のマンションに辿り着いた。私はドライバーの2人によくよく御礼を言って別れた。そして政子はテレビを点けてアクアの「可愛い格好」に色々奇声をあげながら楽しそうに見ていた。
 
「女装は嫌ですと言ったらしいのよ。それでこの格好」
「うーん。確かに女装ではない。でも女の子にしか見えない」
 
「やっぱり、かぁいいなぁ」
「ここまで騒がれる男の子アイドルは久しぶりかもね」
「そうそう。男性アイドルはこれまでもたくさん居たんだけどね」
 
近年は女性アイドルのデビュー年齢は低年齢化、男性アイドルのデビュー年齢は高年齢化する傾向があるようである。
 
「ねえ、やっぱりアクアは強制的に去勢しちゃおうよ。男に育ってしまうのもったいないよ」
「本人は男として生きていきたいと思っているからそれはダメ。でも過去には小学生くらいの男の子アイドルが変声期が来てしまうと商品価値が下がるってんで、半ば強引に女性ホルモン打って変声期を遅らせたりした例はあるらしいね」
 
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「あ、それいいな。アクアも女性ホルモン投与を」
「それやっちゃうと、男にはならないかも知れないけど、女の子になっちゃうから」
 
「アクアなら女の子になってもいいと思うなあ。実際男の子のままで居られないなら、いっそ女の子になればいいと思うよ」
 
「本人、別に女の子にもなりたくないから」
 
「やはり何とか口説き落として性転換手術の手術台に乗せて。あるいはやはり眠っているうちに麻酔打って病院に運び込んで」
 
「無茶言わない。私なんかは心が女なのに男であることを強要されて凄く苦しかったからさ。心が男であるのに女の子の格好させられるのも不快だと思うよ」
 
「あ、そーか。それはあるよねえ」
と政子は言ってから
 
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「じゃ女の子になったら、こんなに楽しいよというのをアクアには教えてあげよう」
などと言っている。
 
全然分かってない!
 
でもまあ本人も結構自分の性別に関しては揺れている感じではあるけどね。彼も今はまだ「男」にはなりたくない。「男の子」というモラトリアムを貪っている。おそらく中学生の内くらいはそれを貪り続けるのだろう。
 
ただ私は彼を見ていて、一般的なMTFの人とは雰囲気が違うので恐らく彼は基本的には心は男の子なのだろうと判断していた。
 
自分は男の子。でも女装も好きという線かな?
 
ん?それってまさか雨宮先生の路線だったりして!?
 
彼には「セックスさせてあげる」なんて女の子はいくらでも寄ってくるだろうからなあ。その気になれば女の子はよりどりみどり。彼が女たらしに育ったりしないことを私は祈った。
 
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阿倍子さんは半月も入院して7月中旬に退院した。赤ちゃんの方が先に退院許可が出たのだが、阿倍子さんのお母さんも入院中で貴司さんは日本代表で忙しいし、赤ちゃんの面倒を見られる人がいないので、結局阿倍子さんが退院するまで赤ちゃんも病院に留め置かれることになった。名前は京平と名付けられた。私はその名前に何だかデジュヴを感じたのだが、きっと気のせいだろう。
 
阿倍子さんが入院している間に、千里は合宿を終えて韓国へ旅だった。ユニバーシアードのバスケット競技が7月4-13日に光州で行われたのである。この大会で日本は鞠原江美子・前田彰恵や夢原円、そして千里たちの活躍で4位という立派な成績を納めた。メダルこそ取れなかったものの、バスケットの日本代表がアンダーチームとはいえ世界大会でこれほどの成績を上げたのは快挙であった。
 
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恐らくこの中から2020年東京五輪で活躍する選手も出るのであろう。
 

ローズ+リリーは7月1日からアルバム制作作業を本格化させ、この日から年末まで麻布先生のスタジオの一室を6ヶ月間借りきって、ここでスターキッズや曲毎に特に頼んだ伴奏者とともに曲の制作を進めた。
 
この期間は基本的にライブには出ないし、テレビ出演などのお仕事も極力外してもらっている。しかし、活動が表に出ない期間があまり長く続くのも困ると言われて、シングルを1枚発表することにし、その音源制作を先行させた。
 
タイトル曲は先日のロックフェスタで公開した『∞の後』と、そのロックフェスタに行く途中の様々な!できごとの中で発想した『内なる敵』である。
 
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彼との楽しい日々。何も不安は無いはずなのに、なぜか心に暗い影を感じる。気のせいだと思おうとしていたのだが、実は敵は意外な所に居て、気がついた時は自分は全てを失っていた。
 
私が書いたメロディーにマリが強烈にショッキングな歌詞を付けてくれてバッドエンドの歌になっている。カップリングする『∞の後』の方が純粋にハッピーな曲なので、どちらを先に聞くかによって随分印象が変わる。氷川さんはかなり悩んだ末『内なる敵』を先頭に置きましょうと言った。『内なる敵』で落ち込んだ人が『∞の後』で救われるはずという意見であった。
 
しかし『内なる敵』に関しては後から千里が「ひっどーい。これ私のことじゃん。だったら私も冬の秘密バラしてやる」などと言っていたのでなかなか怖い。ほとんど知る人のないような話をなぜか千里は知っているのである。千里の人脈も何だかよく分からない感じだ。
 
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更にこの2曲の後に『黒と白の事情』というややコミカルな曲を置いた。これは政子がサンクトペテルブルクでバレエの『白鳥の湖』を見て、白鳥のオデットを踊る人が、そのライバルの黒鳥のオディールも踊ること、そして黒鳥の32回転のグランフェッテに引っかけて着想した詩に、私がパリの夜景を見ながら曲を付けたものである。
 
二股している男と、各々自分が唯一の恋人と思っている女2人のやりとりを、男の役を特別出演してくれた、ある若手女性歌手に歌ってもらい、女ふたりを私とマリが歌っている。むろんマリがオデット側で私がオディール側なのだが、歌っていて、貴司さんをめぐる阿倍子さんと千里のことを考えたりもした。この歌では、この三角関係が破綻せずに、何だか3人ともハッピーな状態で続いていくのである。
 
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鮎川ゆまからは《3匹目のドジョウ》を狙う『虹を越えて』をもらった。『ファイト!白雪姫』『ガラスの靴』(シンデレラ)に続いて、今回は、オズの魔法使いということのようである。
 
「眠りの森の美女やらないんだっけ?」
「ローズ+リリーは既に『眠れる愛』を歌ってるから」
「そういえばそうだった!」
 
「虹を越えたら性別が変わるんじゃなかったっけ?」
「誰かがそれで男の娘小説書くかもね」
 

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今回5曲目には今年度、ローズクォーツの「代理ボーカル」をしてくれているミルクチョコレート(ミルチョ)の2人から『ペパーミントキャンディ』という可愛い曲を頂いた。甘く切ない恋を歌ったものである。
 
「なんか女子高生が歌ってもいいような曲だね」
と私はミルチョの千夜子に言った。
 
「うん。だからこれのPVでは、マリちゃん・ケイちゃんが女子高生っぽい服とメイクで歌うってのは?」
 
「うーん・・・」
と私は一瞬悩んだのだが
 
「はいはいはい!やります」
と政子が楽しそうに答えた。
 

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政子はここしばらく作った曲の「仕分けけ」を行った。
 
■ブレーキが利かなくなる現象を体験して書いた『停まらない』はAYAが「これちょうだい」と言って持って行ったのだが、■ハイドロプレーニング現象に遭った時に書いた『恋は運まかせ』を南さんから頼まれたムーン・サークルに、■ニューヨークで書いた『お風呂のブルース』をホワイト▽キャッツに、そして■シーサーの**紛失事件を聞いて書いた『おちんちんが無くなっちゃった』をアクアに渡すと言った。
 
しかしアクアは「この歌は嫌です」と言ってきたので政子は「贅沢言うなあ」と言いながらも代わりに『ボクのコーヒーカップ』を渡してしまった! この曲は醍醐春海(千里)が「まるでケイが書いたかのように」書いた作品である。私がよく使うフレーズが幾つも組み込まれている。彼女はケイの名前で出していいよ、と言っていた。醍醐春海はかなりマリっぽい感じの歌詞も入れていたのだが、歌詞に関してはマリが(千里の許可を取って)全面的に書き直していた。
 
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しかしこの曲はとても可愛い作品なのでアクアにはピッタリな感じがした。
 
なお、過去に他の人が書いた曲をマリ&ケイの名前で出したものとしては、和泉が書いた『恋座流星群』、チェリーツインの桃川さんが書いた『ふわふわ気分』の例がある。
 

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「ところでムーン・サークルのセレナちゃんとリリスちゃんって、どちらが男の娘だったっけ?」
と唐突に政子は言った。
 
「へ?どちらも女の子じゃないの?」
「あれ?片方は男の娘ですとか言ってなかった?」
「私は知らない。マーサ、誰か他のペアと間違えてるのでは?」
「あれ〜?そうだっけ」
 
と言って政子は考えている。
 
「鈴鹿美里は美里が男の娘だったっけ?」
「逆。男の娘なのは鈴鹿ちゃん。でもどちらが男の娘なのかは非公開だから気をつけて」
「はーい。ミルクチョコレートはどちらが男の娘?」
「ふたりとも女の子だと思うけど」
「あれ〜?」
 
「あ、チェリーツインの双子が片方は男の娘だっけ?」
「あのユニットには1人男の娘が入っているけど、誰かは非公開」
「うむむ」
「でもボーカルの2人は一卵性双生児だから、性別は同じだよ」
「うーん・・・あれ?鈴鹿美里って一卵性双生児じゃないんだっけ?」
「二卵性だよ」
「それにしてはよく似てるよね」
「うん。二卵性でも割と似ている子っているんだよ」
 
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「結局、誰が男の娘だっけ?」
「さあ、男の娘の知り合いが多いからマーサがどこと勘違いしているのやら」
 

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7月中旬、春に発足したばかりのホワイト▽キャッツから、5人の女子によるピックアップ・ユニット《キャッツ▽ファイブ》が発足することが発表された。浩佳(中3)・鞠枝(中2)・忍布(中1)・栗美(小5)・愛菜(小4)の5人で、つまり本坂伸輔さんの遺児・愛菜ちゃんがここに入れられたのである。私は最初からこのユニットを作るつもりで、この5人は選ばれていたのだろうなと思った。
 
そのキャッツ▽ファイブのデビュー曲を萌枝茜音さんが書いたということで、ちょっと制作現場を覗いてみられませんか?と萌枝さんから誘われたので、政子が「可愛い男の娘の愛菜ちゃんが歌っている所を見たい」というし、一緒に出かけて行った。
 
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私たちが行った時、彼女たちはフィンガー5の往年のヒット曲『個人授業』を歌っていた。
 
「この曲とカップリングするんですか?」
「そうです。私が書いた『あなたのピアノ』とカップリングで出します」
 
「やはりファイブというのが、フィンガー5・ジャクソン5・マーメイド5を連想させるネーミングですよね?」
「まあ、そういうこともあるかも知れませんね」
 
「あれ?愛菜ちゃんがメインボーカルなんですか?」
「この5人の中でいちばん上手いんです。小学4年生でこの歌唱力というのは末恐ろしいですよ」
 
「でもいちばん若い子がメインボーカルというのは、過去の○○ファイブのパターンを踏襲していますね」
 
「それができる小学4年生か5年生くらいの女の子を探していたんですよ。本坂さんが亡くなった時のニュース映像の中に、愛菜ちゃんが歌を歌っているシーンがあって、何?この子の凄まじい歌唱力は?と思いましてね」
 
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「それでスカウトしたんですか」
「です。だからこの子は本坂さんが世に出したようなものですよ」
 
私と萌枝さんがそんな話をしているそばで、政子は
「やはり男の娘は可愛いなあ」
などと言っている。それに萌枝さんがピクっとした。
 
「マリさん、彼女の性別問題は非公開なので、こういう内輪の制作現場であっても絶対に言及しないで欲しいんですが。誰が聞いているか分かりませんので」
と小声で言った。
 
「ごめんなさーい」
と政子素直に謝る。
 
「しかし松居夜詩子さんが、これ見たら、まるで40年前の自分を見ているかのように思うでしょうね」
「彼女も実はホワイト▽キャッツのスタッフなので、練習風景などは映像を届けていますが、まさにそうおっしゃってました。私はマーメイド5はVTRとかでしか見てないですけどね」
 
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「私たちもですけど、映像で見るとほんとに可愛いですよね」
「まあこの子たちはこの年齢が魅力のひとつだから」
 
「でも考えてみたら、女の子アイドルは声変わりがほとんど無いのも営業しやすいのかも知れないですね」
「逆に男の子アイドルは大変なんですよ。マイケル・ジャクソンにしても、フィンガー5の晃にしても、声変わりが大きな転換点になっている」
 
「萌枝さんは女声の出し方はどうですか?」
「なかなか進展しないです。ケイさんが羨ましいです。私がもし男の子アイドルとしてデビューしてて、声変わり遅らせるのに女性ホルモンを飲まない?なんて言われてたら喜んで飲んでいたけどなあ」
 
「それは全ての男の娘の悩みですからね」
 
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「まあ声変わりを遅らせたとしても、一定の年齢になったらアイドルは卒業せざるを得なくなる」
 
「それは男女ともそうですけどね」
「アイドルというのは短い旬を楽しむものなんですよ」
と萌枝さんは言った。
 
「特に男の子アイドルの旬は短いんですね」
「ですね」
などと私と萌枝さんが言っていたら、
 
「その短い旬を伸ばす技術が女性ホルモンや去勢なんですね」
などと政子は言った。
 
 
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夏の日の想い出・何てったってアイドル(12)

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