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■夏の日の想い出・何てったってアイドル(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-09-27
 
「アイドルフェスタですか?」
 
私は民法FM局の盛田編成部長からの電話に戸惑いながら返事をした。4月の中旬のことであった。
 
「ええ。今年も6月27日・土曜日にやるんで、その出場者の選考委員になって頂けないかと思いまして」
と盛田さん。
 
「びっくりしましたー。アイドルフェスタに出てくれというんじゃないよな?と」
「済みませんね。一応ローズ+リリーはもうアイドルは卒業ということで」
「そうですね。じゃ、お伺いしますね」
 

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それで主催のFM局の会議室に出て行くと、来ているメンバーは盛田さんの他、★★レコードの町添部長、◎◎レコードの岩瀬部長など各レコード会社の制作部門のトップのほか、上島雷太(ワンティス)、蔵田孝治(ドリームボーイズ)、Elise(スイート・ヴァニラズ)、後藤正俊(タブラ・ラーサ)、海野博晃(ナラシノ・エキスプレス・サービス)といったミュージシャン・ソングライター、田中晶星先生、山上御倉先生、香住零子先生、平原夢夏先生といった専業作曲家さんである。
 
きゃー、何か凄いメンツじゃんと思って、さすがの私もビビるが、Eliseが私を見ておいでおいでしてくれたので、私はその隣に行って座った。
 
「私は一昨年初めてこの会議に出てビビったよ」
などとEliseは言っている。
「私もビビります!去年は?」
「妊娠中だったから徳子(Londa)に代理で出てもらった。ビビったと言ってた」
「なるほどー」
 
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上島先生が手を振るし、蔵田さんも手を挙げるので、こちらは会釈しておいた。
 
「一昨年もこんな感じのメンバーだったんですか?」
と私はEliseに小声で訊く。
 
「一昨年はゆきみすず先生、本坂伸輔さん、溝川泰治さん、逢坂柘植子さんがいたかな。その代わり、ケイ、後藤正俊さん、田中晶星さん、平原夢夏さんが入っている感じ。去年は分からない」
 
「今旬なクリエイターを集めているんですね」
「だと思う。呼ばれなくなったら自分の旬が過ぎたということかな」
「怖いなあ」
「厳しいよね、この世界は」
 

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会議は最初に盛田部長からイベントの趣旨が説明された後で、各レコード会社の責任者は退場して、クリエイターだけが残った状態で、各レコード会社から提出された一定数の歌手の楽曲を実際に聴き「将来性」「大衆性」「歌唱力」を各々100点満点で採点するという作業方式で進められた。最高点と最低点を付けた2人を除いた8人の採点の平均値で順位を付けるフィギュアスケート方式である。これは演奏者と直接関わっている採点者の影響を排除するためだ。
 
レコード会社はランダムだし、アーティスト名もアナウンスされない。情実を排した選考をしようということのようである。2008年にKARIONや貝瀬日南が出た時も、こんな感じで採点されて出たのかと思うと、KARIONにしても貝瀬日南にしても、ほんとによく評価してもらったんだなと私はあらためて思った。恐らくKARIONは歌唱力の点数、貝瀬日南は大衆性の点数が良かったのだろう。
 
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選考は全部で32組のアーティストの演奏を5分単位で流していくので3時間ほどかかり、最後は私も頭が空白になる感じであった。
 
「Eliseさん。この選考が中堅のクリエイターでやってる訳が分かりました」
「うん?」
「これ御大には体力的に無理ですよ」
「うんうん。私も思った」
 
と私とEliseは小声で言い合った。
 

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それでかなりクタクタになって「お疲れ様でした」と声を掛けて、上島先生や蔵田さんに捕まらないうちにさっさと逃げようということでEliseと一緒に部屋を出る。そして出口の方に行きかけていたら、★★レコードの南さんとバッタリ会う。南さんは、女子高生っぽい子を2人連れていた。その2人の方が私とEliseに気付き
「おはようございます!」
と元気に挨拶する。
 
こちらも「おはようございます」と挨拶する。すると南さんは
 
「ちょうどいい。紹介しておきますね」
と言って
「こちらは6月下旬にデビュー予定のムーンサークルのセレナちゃんとリリスちゃん」
と南さんはふたりの子を紹介する。
 
「ムーンサークルのセレナです。よろしくお願いします」
「ムーンサークルのリリスです。よろしくお願いします」
 
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とふたりが深々と頭を下げる。
 
「こちらは知ってると思うけどスイート・ヴァニラズのエリゼさんと、ローズ+リリーのケイちゃんね」
「Eliseです。よろしくお願いします」
「ケイです。よろしくお願いします」
 
「今日は番組の出演ですか?」
「いや、出演できるように営業して回っている所」
「あれ?どこの事務所ですか?」
「∞∞プロなんだよ。事務所の子も来ていたんだけど、急用が入ったみたいで。いいよいいよ。ボクがFM局には連れて行くからと言って引率してきた」
「∞∞プロは菱沼さんとこ?」
「うん。その下に付いてる寺下君って子」
「ああ。会ったことはあるな」
 
そんなことを話していた時、南さんが唐突に言った。
 
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「ね、ね、この子たちのメジャーデビュー曲をおふたりに頼めない?」
「へ?」
私は驚いてしまったのだが、Eliseは少し考えるようにして
 
「取り敢えずこの子たちの歌を聞かせてよ。生で」
と言った。
 

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それで局の人を掴まえて空いているスタジオを借り、伴奏音源を流してふたりが歌う。私もEliseもそれを目を瞑って聴いていた。彼女たちが歌ったのはインディーズで出したという『いちごの想い』という曲である。
 
ふたりが歌い終わった後、私は腕を組んで考え込んだ。Eliseも考えている。
 
「この曲、昔、日野ソナタさんが歌った曲ですよね?」
「です。インディーズではこの曲と、谷崎潤子の『ラブ・ティーポット』をカップリングしたんです」
 
Eliseが言った。
「あんたたちにこの曲は合ってない」
 
私も頷いた。
 
「ふたりとも上手い。特にリリスちゃんの歌唱力が高いから、もっと曲で魅せるようにした方がいいと思いますよ」
と私も言った。
 
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「お、同意見」
と南さんが言う。
 
「菱沼さんはアイドルに難しい曲歌わせてもって言うんだけどね。こんな簡単な曲じゃもったいない気がするんだよ」
 
「可愛いのは充分可愛い。でも歌は歌で魅せればいい」
とEliseは言う。
 
「じゃ、お二人からこの子たちに合いそうな曲を提供してもらえません?」
 
私は言った。
「デビュー曲だけならいいです。その後までは責任持てません。今面倒を見る歌手を増やす余力が無いんですよ」
 
Eliseは
「まあ2枚目のシングルまでならいいいよ」
と言う。
 
「ではそういうことで」
と南さんは笑顔で言った。
 
その話の進行に驚いていたふうのセレナとリリスは
「よろしくお願いします」
と一緒に言って頭を下げた。
 
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私はこのふたり、息が合っているなと思った。
 

そのアイドルフェスタは6月27日に幕張で行われるのだが、それと同日大阪ではロックフェスタをするということで、私たちローズ+リリーはそちらに招待された。いつもの年は同じ会場でアイドルフェスタ・ロックフェスタと連続してやっていたのだが、今年は翌日幕張の会場を使って外タレのコンサートが計画されていて設営の都合があったのと、大阪で新しく《夢舞メッセ》という会場ができたので、そのこけら落としにこのイベントを入れることにしたというのがあった。
 
ロックフェスタの方に招待されたのは、スイート・ヴァニラズ、サウザンズ、スカイヤーズ、バインディング・スクリュー、ローズ+リリー、XANFUS, 貝瀬日南、小野寺イルザ、川崎ゆりこ、槇原愛、ハイライトセブンスターズ、ステラジオ、ゴールデンシックス、などの面々である。
 
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なお川崎ゆりこの後輩の品川ありさとアクアは幕張のアイドルフェスタの方に参加する。アイドルフェスタには他に南藤由梨奈、遠上笑美子、鈴鹿美里、丸口美紅、森風夕子、北野天子、それに私たちがFM局で遭遇したデビューしたてのムーンサークルも出ている。一応2013年以降にデビューした1995年度以降生まれの歌手・ユニットに限定されたので、谷川海里(1993生)や丸山アイ(1994生)は対象外になる。
 
なお、出演者の頭数には入れられていないもののヴァーチャル・アイドルの宮城イナイも1曲歌うことが予告されていた。
 
(宮城イナイは5分間の歌唱PVを作るのに半月近くかかるらしく、制作中の《ライブ》のために手一杯で、1曲提供が限界だったようである。
 
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「ああ、スリファーズは対象外になったのか」
 
私はその日うちのマンションを訪れた春奈に言った。
 
「そうなんですよ。年齢では私たちはまだ18歳なんですけどね〜。デビューが2010年だから」
と春奈。
 
「坂井真紅・富士宮ノエルもそのデビュー年の制限でアウトだったみたいね」
と、うちに「お酒の調達」に来ていた鮎川ゆまが言う。
 
ゆま本人は出場しないが、南藤由梨奈のバックバンドとしてアイドルフェスタに出ることになる。彼女はラッキーブロッサム時代はロックフェスタの常連であった。
 
「去年まではデビュー年の制限は無くて、年齢条件だけだったんですけど今年は出場希望者が多かったらしくてデビュー年で足切りしたみたいです」
 
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「集団アイドルが乱立しているからなあ」
「そろそろ名前を覚えきれなくなってきましたよ」
 
「小野寺イルザとかは、もうアイドル卒業してポップス歌手になっちゃったしね」
 
「私たちはどういう方向に行けばいいんだろうなあ」
と春奈は悩んでいるようである。
 
「それぞれ自分の方向性を見出していけばいいと思うよ。アイドルからポップス歌手に行こうとする子は多いけど、たいてい失敗している」
 
「まあ求められる歌唱力が違うからね」
「演歌歌手になっちゃう子も時々いるね」
「あれはファンの大半を置き去りにしちゃう」
「性別変えちゃう人もいるよね」
「いや、そういう話はあまり聞かない」
 
「歌はやめてタレントとして生き残っていこうとする子は多い」
「谷崎潤子ちゃんなんかはその成功例かな」
「あの子はむしろアイドル辞めてから売れるようになった感じ」
「もったいないよね。本当は歌もうまいのに」
「曲に恵まれなかったんだよなあ、あの子」
 
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「歌手が売れるには歌唱力よりも実はいい歌に当たるかどうかだからね」
とゆまは言う。お酒を「持って行く」ためにだけ来たはずが、既にカティサークを開けて飲み始めている。
 
「ラッキーブロッサムだって、最初に雨宮先生の『月の秘密』が注目されたのが大きかったし」
とゆま。
 
「ローズ+リリーもやはり上島先生の『その時』の反響が凄かったんだよ」
と私も言う。
 
「XANFUSは『DOWN STORM』, KARIONは『優視線』かなあ」
と政子。
 
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