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■夏の日の想い出・何てったってアイドル(3)

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「それで3日入院してから退院して。家に帰ったら自分の部屋の様子が違うんだよね。部屋のカーテンとかベッドカバーがピンクの水玉とか花柄になってるし、プラモデルとか野球のボールとバットとかも無くなっていて、お人形さんとか手芸やお菓子作りの本とか置いてあるし、『今夜はこれを着て寝なさい』と言われてネグリジェ渡されるし」
 
「かなり衝撃的ですね」
「タンスの中を見ても、男物の下着は無くなっていて、女の子パンティやシュミーズとか、服も赤やピンクの服が多くてスカートしか無いし」
 
「徹底しているというか」
 
「最初はうまくボタンをはめきれなかったよ。逆に付いているだけでも変なのに女の子の服のボタンって小さいからはめにくいんだよ」
「あれは結構苦労する人多いみたいです」
 
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「女の子として行動する練習と言われて、ちょうど夏休みだったのをいいことに、母と姉と一緒に毎日スカート穿いて外出して。女子トイレに入って、プールに行って女子更衣室で女の子水着に着替えて、それから女湯にも入って」
 
「おお」
と政子が何だか嬉しそうな声をあげている。
 
「最初無茶苦茶恥ずかしかったのを覚えているよ」
「でしょうね」
 
「名前も芳信だったのを芳子に改名しちゃったし」
「それよく改名が通りましたね」
「お医者さんが半陰陽だったのでちゃんと女の子にする手術をしたという診断書を書いたから、それで改名・性別変更したみたい」
 
「確かに昔は半陰陽だったことにして実は性転換しちゃった例って結構あったみたいですね」
 
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「うん。そうみたい。1969年にブルーボーイ事件の判決が出て、そのあたりって当時はけっこう厳しくなりつつあったんだけど、やはりまだ田舎は緩かったのよ。でも私、裁判所とかに通った記憶が無いんだよね。たぶん姉が私の身代わりに裁判所に行ったんだと思う」
 
「あぁ・・・」
 

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「学校も2学期から東京の私立校に転校。その時、転校先の学校ではもう女の子ということにして転入したんだよね」
「戸籍が女の子になっていれば女児として受け入れてくれるでしょうね」
「まあ、そういうことだと思う。若干お金も積んだんじゃないかという気がする。そのあたりの費用も全部事務所から出ているみたいなんだよね」
 
「じゃ、事務所はかなり初期投資してますね」
「うん。親に払った契約金、性転換手術代、改名・性別変更の費用、転校に伴う費用。それと私のレッスン代ね。たぶん500-600万円使ってる」
「わあ」
 
「まあそれでマーメイドクラブのメンバーとしてテレビに出るようになって。しかもかなりたくさん映してもらってる感じがあったのよね」
 
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「ああいう集団アイドルでのえこひいきって露骨だから」
「だよねー。それで私も半年もしない内にマーメイド5のメンバーとしてレコードデビュー」
 
「それってフィンガー5の女の子版って感じだったんでしょ?」
 
「そうそう。フィンガー5はジャクソン5の日本版で。ジャクソン5も一番下のマイケルが人気を集めたし、フィンガー5も男の子4人の中の最年少の晃に人気が集中したけど、マーメイド5も最年少の私に人気が集まったのよね。凄かったよ、当時って」
 
「忙しかったでしょ?」
「マジで寝る暇が無かったよ。いつも睡眠不足で眠いーと思いながら歌を歌ってた。過労で倒れて1週間入院したこともあるけど、退院したらまた朝から晩まで仕事だし。少しでも時間があったら歌やダンスのレッスン。学校なんて全く行ってない。だから転校した先のクラスメイトの顔も先生の顔も全く覚えてない。実際ほとんど出席していないはず」
 
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「ああ」
 
「でも初期投資はあっという間に回収してますよね」
と政子が言う。
 
「うん。1年で初期投資の100倍稼いだと思うよ」
「凄い」
 
「でも元男の子だってのが当時よくバレませんでしたね」
「今みたいにネットのある時代じゃないからね。その手の情報の伝達度は悪かったと思う」
「タレントの噂なんて色々なものがあるから、雑音的なものの中に埋没してしまったんでしょうね」
 

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「でもだったら里山美祢子さんや片原元祐さんは松居夜詩子さんの実の子供じゃないんですね?」
と政子は尋ねた。
 
「うん。あのふたりはどちらも私の夫、片原正太郎が別の女との間に作った息子。それを出生証明書を誤魔化して、私が産んだ子供として入籍してしまった」
 
「あ、そうか!美祢子さんも男の娘だったんだ!」
 
「あの子はもう物心ついた頃から、女性指向があったよ」
「へー!」
「だからあの子が自分は女の子になりたいと言い出した時、私も片原もそれを認めてあげて女性ホルモンの投与を受けさせた。まあ正太郎も娘が欲しかったというのもあったみたいだし」
 
「へー。あれ?松居さんは片原さんと正式に結婚しているんでしたっけ?」
「してる。私は半陰陽ということにして戸籍を修正しちゃったから男性と結婚できるんだ」
「あっそうか」
「でも私が子供産めないから、片原には子供作るために愛人作ってもいいよと最初から言っていた」
 
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「それって辛くなかったですか?」
「辛いけど仕方ないと割り切っていた」
「性転換して子供が産めたらいいのにね」
「50年後くらいには産めるようになるかもね」
「だけど、妾さんの子供を本妻の子供として入籍してしまうというのは実は昔からよくあったみたいですね」
 
「そうそう。でも峰子の時代にはその手の誤魔化しは効かなくなってたんだよ。性転換したい人を半陰陽だったことにして手術しちゃうなんてのも誤魔化せなくなってしまった。世の中、きちんとしすぎるのもよくないと思うんだけどね。多少はアバウトのほうがうまく行くんだよ」
 
「それは同感ですね」
 
「だから、あの子は戸籍も直せないし、子供たちも自分の実子としては入籍できなくて、辛い思いをさせてしまっている。名前だけは小学3年生の時に、浩樹を峰子に改名させたんだけどね」
 
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「なるほどー」
 

「有名人の子供の性別移行というので騒がれたりはしなかったんですか?」
と政子が訊く。
 
「小学2年生の内に女の子の服を着て外出するのに慣れさせておいて、小学3年生の4月にうちの田舎の学校に転校させた。姉夫婦に預かってもらって。それで学籍簿上は片原浩樹ではなくて、大西峰子で登録してもらったんだよ。向こうの校長先生がトランスセクシュアルというのを理解してくれたんで、学籍簿上女の子名前にしてくれた。苗字も姉の夫の苗字を借りて。九州北部は朝鮮系の人が多くて学校も通称使用に慣れていたのもあったみたい。法的な改名も数ヶ月で認められたけど、当時はタックなんての知られていなかったから、水着になる時や身体検査の時とかはアンダーショーツでしっかり押さえたりして色々と苦労してたみたいだけどね」
 
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「お姉さん所は子供は?」
「女の子が2人いた。その子たちに『女の子のこと』をたくさん教えてもらったみたい」
「おお」
「本当は母親の私が付いていくべきだったんだろうけど、それでは私の顔が売れていて性別が変わったことがバレちゃうから泣く泣く思い留まったんだよ」
 
「辛かったでしょうね」
「正太郎は自分に娘ができて、しかも《時々会える》というのでウキウキしていた雰囲気はある」
「まあ、男ってそんなものかも」
 
「歌手デビューする時にまた東京に戻ったんでしたっけ?」
 
「そうそう。だからあの子の男の子時代を覚えている人は居なかったんだよ。名前も男の子時代は片原浩樹、デビューした時は里山美祢子を名乗っているから関連性に気づきにくい。まあ私の性別問題よりは知っている人が多いみたいだけどね」
と松居さんは語る。
 
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私は頷いた。
 

「でも私は小学5年生の時、峰子は小学3年生の時に男から女に移行して、それなりに苦労しちゃったからさ。愛菜はもう幼稚園に入る時から女の子で通しているんだよ」
と松居さんは言った。
 
私と政子は一瞬顔を見合わせた。
 
「あのぉ、愛菜ちゃんって?」
「うん。実はまだ戸籍上は男の子なんだよ」
 
「え〜〜〜〜!?」
 
「じゃホワイト▽キャッツの中の男の娘って」
「そう。ひとりはうちの愛菜」
「へー。でも凄く可愛いですね」
 
「ありがとう。あの子も明らかに物心ついた頃から女性指向だった。それで峰子は自分が苦労しているから、実母の承認も取って、5歳の時に睾丸を除去してあげた」
「わあ」
 
「ずっとタックしているから、お友達とかも、あの子が男の娘だなんて知ってる子は居ないはず」
「すごー」
 
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「名前も幼稚園に入る前に、妹とお揃いに菜を付けた名前に改名して。元は猛雄という名前だったんだけどね」
「それはまた男らしい」
 
「でも松居夜詩子さん、里山美祢子さん、そして片原愛菜ちゃんと、親子孫3代にわたって性転換って、やはりこういうのって遺伝するんですかね〜」
と政子が言うので
 
「うん。結構遺伝傾向あると思うよ」
と松居さんも言うが
 
「ちょっと待って下さい。それ遺伝子は継承してないはずですが」
 
と私は突っ込んだ。松居さんは笑っていた。
 

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「でも松居さんはアイドルから本格歌手、そして作曲家への転身も成功しましたよね」
と政子は言うが
 
「今から思えばそうなるよね。当時はけっこう浮き沈みも激しかったし、世間から忘れられていた時代もあるんだけどね」
と彼女は言う。
 
「結婚なさった前後ですよね?」
「そうそう」
「結婚なさったのがいつでしたっけ?」
 
「1983年、21歳の時に結婚して翌年1984年に峰子、その翌年1985年に元祐が生まれた」
「それって片原さんは松居さんと同時進行で愛人さんとの仲も進めていたってことですかね」
「そのふたりの母親は実は既婚者なんだよ」
 
「なんと」
 
「****さんですよね?」
と私が言うと、松居さんは
「それ、どこから聞いたのか知らないけど絶対に言わないで欲しいんだけど」
と厳しい顔で言う。
 
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「誰にも言いませんよ。誰から聞いたかも言えませんけど」
と私は答えた。
 

「マーメイド5はデビューした時、姉妹になぞらえて17歳から11歳までの5人だった。それで6年ちょっと活動して。一番上のハルコちゃんが24歳になった年の夏に解散したんだけど、当時私はまだ17歳だからさ、すぐにソロデビューの話になったけど、この時は全く売れなかったんだよ」
 
「ヨシコの名前で出したレコードは多分『ヨシヨシ国』のみですよね?」
「そう。あれ1万枚も売れなかった。曲自体を見た時、私、ひっでーと思ったら案の定売れなかった」
と松居さんは苦笑している。
 
「吉里吉里国にひっかけてたんでしょ?」
「うん。当時ミニ独立国ブームだったからね」
 
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「まあそれで私は引退して短大に進学した。実際には小学6年の時以来全く勉強なんてものをやってないからさ。私、英語もできないし、数学の一次方程式も解けないし。短大の入試は実際問題としてさっぱり分からないから名前を書いただけ。でも通してくれた」
 
「まあそういう大学は昔も今もありますけどね」
「基礎ができてないから短大の授業もさっぱり分からないんだよ。それでも何とか卒業させてもらえたからね。当時はもう私もマスコミとかに追いかけられることもなくなっていたし。でも鍋島康平先生の主宰のパーティーに呼んでもらった時に片原正太郎と知り合って、それでお付き合いして、私が赤ちゃんは産めない身体であることを承知で結婚してくれた」
 
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「できちゃった婚だったんでしょ?」
「そうなのよ。既に正太郎は愛人のお腹の中に峰子がいたから、その母親が欲しかったんだな。だから子供が産めない私は結婚相手として好都合だったのよ」
 
「なんか複雑ですね」
「でも正太郎には私、可愛がってもらってるよ」
「ごちそうさまです」
 

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「続けてその愛人さんとの間にもうひとり男の子・元祐を作って。まあ私も自分の子供のように可愛がってふたりを育てていたよ。子供を育てていて、やはり私って女なんだろうなと改めて思った。結構母親の意識になれたからさ。それまでは実は自分は本当は男なのか女なのかって迷いがあったんだよ」
 
「そりゃいきなり女の子になりなさいと言われて性転換手術されちゃったら自分のアイデンティティを見失いますよね」
 
「うん。だからマーメイド5をやってた時期、そのあと女子大生をしていた時期って、可愛い女の子を装いながらも、自分の心はずっと迷走してた。でもふたりの子供を育て始めてから、やっと自分は女でいいんだという気持ちになれたんだ」
 
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「夜詩子さんって作品などを見ていても女性だと思いますよ」
と私は言った。
 
「ありがとう」
と言って彼女は微笑んだ。
 

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「それで元祐が1歳になった年に、唐突に私に歌わないかって話が来たんだよね」
 
「それが『月のささやき』ですか」
 
「うん。ドラマの主題歌だったけど、プロデューサーさんがマーメイド5の熱心なファンだったんだよね。それで最初レイコの所に話を持って行ったけど、忙しくて無理と断られたらしい。それで私のところに話が来た。まあ私は子育て以外は暇だったからね」
 
「でそれが大ヒットになるわけですね」
と私は言う。
 
「いや、あれは私自身あんなに売れるとは思わなかったからびっくりした」
と松居さん。
 
「『月のささやき』いい曲ですね。私、音楽の時間に習ったけど好きだった」
と政子が言っている。
 
「そうか。あんたたちは音楽の時間に習ったのか」
と松居さんは感慨深げである。
 
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■夏の日の想い出・何てったってアイドル(3)

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