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■夏の日の想い出・誕生と鳴動(11)

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翌日6月11日(木)は終日フリータイムとなった。私たちは午前中は松田さんと3人でサンクトペテルブルクの街を(政子の)気の向くままに歩き回って、お昼もレストランというより食堂という雰囲気のお店に入って定食っぽいものを注文した。自家製っぽいピロシキが美味しかった。
 
この食堂で政子は『Pillow Shaked』などという詩を書いてたが、それってピロシキじゃんと思いながら私は見ていた。また歩いていたら不思議なモニュメントがあり、そこで政子は『After ∞』という詩を書いていた。
 
午後からは政子が少し練習しておきたいというのでスタジオを手配してもらい2人で3時間ほど歌い込んだ。練習には七星さんと風花が付き合ってくれた。
 
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また、この日の夕方にはマリインスキー劇場でバレエを見た。風帆伯母・七美花、七星さん・風花・近藤姉妹と一緒に8人で見に行ったが七美花が食い入るように見ていた。日本舞踊もとってもうまい彼女にとっては大いに刺激されるものがあったのであろう。
 
上演されていたのは『白鳥の湖』であるが、その美しいパフォーマンスに私たちは酔いしれた。20時に始まって終わったのは23時半であるが、この日の日没は22:17なので、劇場を出ても、日本だとまだ18時半くらいの感覚であった。
 
この日政子はホテルに戻ってから『Rotation white and black』という詩を書いていたが、それって白鳥と黒鳥を同じ人が踊るってのと黒鳥の32回のグランフェッテじゃんと思った。
 
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6月12日(金)。この日は早朝からの移動になる。
 
プルコヴォ空港を朝6:15のアエロフロートSU033(A320) に乗り 7:30にモスクワのシェレメーチエヴォ国際空港に到着する。ここからトランジットで 8:45の同じくアエロフロートSU2104 ヴィリニュス行き(Sukhoi Superjet)に乗り継ぐ。ヴィリニュス到着は10:15である。どちらも1時間半ほどのフライトだ。
 
サンクトペテルブルクからヴィリニュスへは直行便(Rusline 7R281)もあるのだが、時間が16:35-17:55という遅い時間帯なので、何かあった時に公演に間に合わないとまずい、ということで午前中に移動できるモスクワ経由になったのである。またリトアニア入国は、シェンゲン圏外からシェンゲン国への入国になるので入国検査に時間がかかるおそれがあった。
 
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実際にはヴィリニュスでの入国審査はとってもスムーズに行き、11時前には私たちはヴィリニュスの街に出ることができた。恐らく小さい空港で客の数が少ないので早いのだろうと私たちは話していた。
 

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現地レコード会社のスタッフでパウガイテさんという27-28歳くらいの女性に案内してもらってヴィリニュス市街地を歩き、カフェに入って 
「リトアニアではこれを食べなきゃ」
 
と政子が言っていたお菓子・シャコティスと紅茶を注文する。
 
バウムクーヘンの原型といわれるお菓子だが、太い木からたくさんの枝がまるで栗のイガイガみたいな感じで飛び出している。
 
大きなお菓子なので、少し食べて後はお持ち帰りかなとパウガイトさんは思ったようでビニール袋なども用意してくれていたのだが、政子がぺろりと全部食べてしまうので、びっくりしていた。私も少し分けてもらったが、とても美味しいお菓子だった。
 
政子はこのお菓子を食べながら「バルト海の松」などという詩を書いていたが、シャコティスの形状(たくさんの枝が飛び出しているように見える)から松を連想したのではと私は思った。どうもここの所、政子はダジャレに走っているようである。
 
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ちなみにヴィリニュスは内陸の街なのでバルト海は見えない。
 

更に政子はリトアニアっぽい料理を食べておきたいと言う。
 
「今お昼食べたし、夕方会場に戻る直前くらいに食べに行きますか?」
とパウガイテさんは言ったのだが
「え? 今のはおやつだから、御飯は入りますよ」
などと言う。
 
これには彼女も絶句していたが、それでもリトアニアの典型的な料理が食べられる庶民的なレストランに連れて行ってくれた。
 
まずは有名なピンク色のスープ、シャルティバルシュチを頂く。バルシュチというのはロシア語でいえばボルシチで、冷製ボルシチという感じである。
 
リトアニア風餃子(コルドゥネ)、リトアニア風ピロシキ(チェブレキ)、そしてじゃがいもソーセージ(ブルブベーダライ)といったものを頼む。これは見た目はソーセージで、その中身がじゃがいもという料理である。
 
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政子はどれも「美味しい美味しい」と言ってたくさん食べていた。
 

ところで私たちとパウガイテさんは、ロシア語・フランス語混じりで会話していた。リトアニアでは歴史的な経緯からほとんどの国民がロシア語を話せるのだが、彼女はフランス語の発音もきれいなので私は尋ねてみた。
 
「私、大学を出たあと3年ほどパリに留学してたんですよ。実は昨年こちらに戻って来たばかりで」
「ああ、そうだったんですか」
 
「ヴィリニュスも充分都会と思ってたけど、パリはまるで別世界。最初はかなり戸惑いましたよ」
「ああいう巨大都市は全てが混沌としてますからね。東京もだけど」
 
「私の住んでいたアパートの同じ階にアルジェリア人のシーメールの人がいてですね」
「あ、そういう話、私大好き」
 
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「見た目は完璧に女の人なんだけど、声が男なんですよねー」
「女の声の出し方って難しいんですよ。小学生の内に睾丸取っちゃえばいいんですけどね。ケイなんて幼稚園のころ取っちゃったらしいから」
「え?そうだったんですか?」
 
私はもう笑っておいた。
 
「いや、その問題には触れるなと上司から言われていたんですけど、ケイさんって元男性と聞いていたから、パリで会ったその人とのこととか想像していたら、何だかふつうに女の子だから、ほんとに元男だったのかなと疑問を感じていたんですよ」
 
「これってトランスした時期で随分変わるみたいですよ。やはり17-18歳くらいまでに手術した人ってすごくきれいだし、変声期前に睾丸を取るか女性ホルモン両方始めた人は体付きがほんとに女らしいし声も女だし」
「やはり、そういう子は10歳くらいで睾丸を取ってあげればいいんですよね?」
「それがいいですよ」
 
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「でも、そのアパートの住人の女の子数人で誘い合ってプールに行った時、彼女も一応女の子の仲間かなということで誘ったんですよ。すごい布面積の小さいビキニ着て、スタイルも良かったですよ」
「おお、そういうのが着れるというのは偉い」
 
「おっぱい大きいね〜とか言ってみんなで触ってたけど、触られると嬉しいみたいで」
「ああ、そういう傾向の人は多い」
 
「だけど泳いでいた時に外れちゃってですね」
「おお!」
「お股の所にあってはならないものが」
「あはは」
「周囲の人がギョッとしていたのを私たち数人で壁になって隠してあげて、慌てて水着を直して、あるべからざるものを隠蔽してました」
「大変ですね」
 
「ケイは小さい頃に取っちゃってたから、そういう事故の経験は無いでしょ?」
「幸いにも事故はないけど、そんなに早く取った訳でもないけどね」
「今更嘘つかなくてもいいのに」
 
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その後はヴィリニュス市内をあちこち歩き回ったが、政子はその途中で更に3篇の詩を書いた。
 
今回のツアーは平日は20時から21時半の時間帯で設定しているのだが、当日のヴィリニュスの日没時刻は21:53である(日暮れは23:06)ので、結局日没前に公演は終わってしまうことになる。
 
17時頃、会場入りしたが、既に入場を待つ人がかなりの列を作っていた。
 
今日の会場は体育館でキャパは4000人である。
 
ところで今回のツアーでリトアニアを公演地に入れたのは『雪月花』がリトアニアで物凄いセールスを挙げていたからである。前のも無いかという問い合わせが凄まじく、急遽『Flower Garden』の英語版、更には過去のアルバム(日本語版)にFMI側の責任で制作した英語とリトアニア語の解説書を付けたものも同国で発売して、それも随分売れているという。
 
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「『雪月花』だけに限ってもヨーロッパの国別ではいちばん売れたのがイギリス、2位がフランス、3位がリトアニアなんですよね」
とパトリエールさんが言う。
 
「なんでリトアニアなんでしょうね。人口もそう多くないのに」
「そうなんですよ。人口300万だから横浜市程度。そこで9万枚売れているから、人口比で言うと日本の1.5倍売れている」
「すごーい!」
 
「何かリトアニアの国民性にマッチした所があったんでしょうね」
 
なお『雪月花』は同じバルト三国のエストニアでもかなり売れているということで、バルト三国での公演を決めてから、リトアニアにするかエストニアにするか結構日程決定の段階で悩んだらしい。
 

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会場は物凄い熱狂であったが、彼らも前半のアコスティックタイムは静かに聞いてくれる。そして「雪を割る鈴」からアップテンポの曲になると物凄い歓声が上がる。全員が席から立ち上がって激しく手拍子を打ってくれる。
 
この日のMCはむろんマリがしているのだが、マリもさすがにリトアニア語は知らなかったので、公演が決まってから「Learn Lithuanian in one week」なる本を買ってきて覚えていたようである。それでも話す台詞についてはFMIのリトアニア人スタッフの人に翻訳してもらい、一応丸暗記した上でカンペを手に持って話していた。
 
もっともマリは話している最中に、唐突に思いついたことを結構ロシア語で話していたので、観客にはリトアニア語の部分が台本でロシア語の部分がアドリブというのが分かったようであった。そしてどうも反応を見ているとリトアニア語の部分ではかなりの言い間違い(読み間違い)もしていた雰囲気ではあるが、できるだけ現地の言葉でというこちらの姿勢は伝わったと思う。
 
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「雪を割る鈴」ではリトアニア出身の世界的人気バンドの女性メンバーが登場して、シンデレラに出てくるかのような《魔法の杖》で鈴を割った。彼女は曲の後半を私たちと一緒に日本語で!歌ってくれたのでまた大いに沸いていた。彼女は私たちと固い握手をして下がって行った。
 

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翌日は4時に熟睡していた政子を何とか起こしてチェックアウトする。そして空港に行き6:05のドイツ・フランクフルト行き LH889(A321) に乗った。
 
ちなみにロシアからリトアニアに入った時は入国手続きが必要であったが、ここから先はシェンゲン協定に入っている国同士になるのでその手の手続きは不要になる。国内の移動と同じだ。
 
ヨーロッパの「シェンゲン国境」は、フィンランド・バルト三国・ポーランド・スロバキア・ハンガリー・スロベニアの東側にある。他に飛び地のギリシャもシェンゲン圏である。それらの国と国境を接しているロシア・ベラルーシ・ウクライナ・ルーマニア・セルビア・クロアチア等がシェンゲン圏外だ。但しルーマニアとブルガリアは近い内にシェンゲン入りする予定である。するとギリシャが飛び地ではなくなる。
 
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入国管理に関してはシェンゲン圏は「ひとつの国」のようなものなので、この内部では自由に移動できる代わりに、ここに外部から入る時、外に出る時には入出国検査が統一ルールに従い厳密に行われる。
 
ヴィリニュスからフランクフルトへは2時間15分のフライトだが時差がUTC+3からUTC+2に1時間戻るので6:05に出て7:20に到着する。私も政子も機内ではひたすら寝ていた。
 
他の人たちもみんな眠いといってホテルを取ってもらったりあるいは会場の隅で寝ている人たちが多かった。私と政子も会場近くのホテルに入って10時頃まで寝ていた。
 
10時半にホテルを出て会場に戻る。今日の会場は8000人入る多目的ホールである。会場に入る時に、既に周囲の多数の人が集まっているのを見た。
 
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今日は6月14日・土曜日なので公演は13:00-14:30の時間帯に設定されている。
 
13:00、客電が落ちた後、私のヴァイオリンソロで演奏を始める。前奏が終わる頃に幕が上がり、私はヴァイオリンを手放してマイクを持ちマリと一緒に歌い始める。そして歌が終わった所で
 
「Guten tag! Wir sind Rose plus Lilie」
と挨拶して、最初のトークを入れる。むろんしゃべるのは主としてマリである。私もドイツ語ならある程度分かるので、マリのトークを聞きながら頷いたり、時々横やりを入れたりしていた。
 
ロンドン公演に準じた進行で進めていく。この日の「雪を割る鈴」での鈴割り役は、地元オーケストラの指揮者さんがしてくれたのだが、この指揮者さんは凜藤さんのヴァイオリンを聞いて「あんた、うちのオーケストラに来る気無い?」とスカウト(?)していたようであった。
 
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この日は公演が終わった後で、私と政子の2人だけでフランクフルトの街に出た。
 
「ドイツでもミュンヘンなんかはまた雰囲気違うだろうし、ハンブルクとかはまた違うんだろうけどね」
 
フランクフルトに来たら当然ということで、政子はフランクフルトソーセージを食べてご機嫌である。
 
「今回ウィーンにも寄れたら良かったんだけどなあ」
「ウィンナソーセージを食べるわけね」
「もちろん」
「ミュンヘンに行くとミュンヒナー・ソーセージがあるけどね」
「それも食べてみたい!」
 
この街でも政子はまた詩を5篇書いた。元々政子は1日に2−3篇の詩を書くのだが、やはり旅に出ると生産量が上がるようである。
 

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