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■夏の日の想い出・誕生と鳴動(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-08-02
 
那覇に日帰りしてきたあと、私は沖縄のお土産を持って私の姉・萌依の家を訪問した。むろん政子もくっついてくる。
 
「こんにちは〜、赤ちゃんの様子どう?」
と私が尋ねると
「なんか元気すぎる〜。もう今にも飛び出してきそうな感じ」
と萌依は言っている。
 
「予定日はいつでしたっけ?」
と政子が尋ねる。
 
「一応6月20日なんだけどね。でもお医者さんはこの子元気そうだから早めに出てくるかもって言ってる」
「20日だったら、私たちが帰ってきた後だね?」
と政子は私を見て言う。
「まあ私たちが居ない間に生まれちゃったら御免ということで」
と私。
「冬が産むんじゃないから大丈夫だよ。うちのお母ちゃんもよく顔を出すし、昼間は結構麻央ちゃんも来てくれているから、たいてい誰かいるしね」
 
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「麻央はまるで自分が父親になるかみたいにそわそわしてるね」
「あの子父親になりたい訳?」
「佐野君に産んでもらえば」
「男の子がどこから産むのさ?」
「帝王切開かな」
 

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帰る車の中で私と政子は話していた。
 
「小夜子さんの所も産まれるの近いよね?」
「うん。向こうは7月下旬が予定日だったはずだけど、もうすぐだね」
「あそこは人工授精したんだったよね?」
 
「うん。あきらさんのおちんちんはもう立たないんだよ。でも女の子みたいに指でおさえてぐりぐりすれば、立たないまでも射精はするんだ。だからそれで精子を取って人工授精したんだよ」
 
「精子は作られているけど、大きくはならないのか」
「男性の身体って微妙だから」
「だったらおちんちん取っても射精できるのかな?」
「可能ではある。おちんちん取っちゃったけど射精できる人というのは存在するから」
「へー」
「栗ちゃんを刺激することで射精するんだよ。睾丸は除去せずに体内に温存している前提」
「見てみたーい」
「動画サイトにたまにアップロードされてるから探してごらんよ」
「よし検索してみよう」
 
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政子はこういうのには熱心である。
 
しかし人工授精といえば、千里の(元夫の)所も人工授精だよなと思い起こしていた。千里はまるで自分の卵子に彼の精子を受精させたかのような言い方をしていたが、千里に卵子は無いだろうし。ひょっとして卵子の提供者は桃香なのだろうか?というのも考えていた。
 

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「でも上島先生の所は赤ちゃんできないのかなあ」
と政子が言う。
 
「ここだけの話だけど不妊治療してるみたいだよ、茉莉花さん」
「へー。どういうのやるの?」
 
「基本はタイミング合わせ。茉莉花さんの排卵のタイミングをチェックしながら、ちょうど排卵が起きる少し前にセックスして精子を子宮の少し先の付近でスタンバイさせておくようにする。精液が薄くならないように、そのセックスのしばらく前から男性は禁欲」
 
「なるほどー」
「でも茉莉花さん、そもそも凄い生理不順なんだよ。だから色々お薬飲んで調整したりもしているみたい」
 
「大変そうだね」
「人工授精も一度やってみたけど、失敗したらしい」
「失敗することあるんだ?」
「おそらく茉莉花さんが妊娠しにくい体質なんだと思う。上島先生自身はこれまで子供何人か作っているから精子の質にはあまり問題無いと思うんだけどね」
 
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「上島先生、子供がいたんだっけ?」
「人前では言わないでよね」
「でも上島先生、初婚だよね?」
「別に法的に籍を入れなくても赤ちゃんはできるから」
「そうか、籍を入れなくても、おちんちんを入れさえすれば赤ちゃんはできるんだ?」
 
「政子、発想がおやじ化してる」
「うっ・・・・」
 

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私たちは数日の休日をはさんだ上で、6月4日からローズ+リリー初のワールドミニツアーに出発した。
 
これは実はアルバムのロケハンを兼ねたものである。
 
2月に都会をテーマにしたアルバムを制作することを決めてからその話を聞いた上島先生から「実際に彼女らに世界各地の都市を見せて、それで曲を書いてもらったら」という提案があった。それに○○プロの丸花社長が賛同。更にせっかく世界各地の都市を見て回るなら、そこでコンサートをしようよ、などと言い出したのである。
 
しかし単に見て回るだけなら観光ビザで良いが、コンサートをするには興業ビザ(アメリカだとPビザ)の取得が必要で、そのためには各国の招聘元を決める必要がある。
 
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そこであの後、★★レコードが提携していて『Flower Garden』『雪月花』の外国語版の発売元にもなっているFMIが中心になって、公演地と招聘元の選定、そして私たちおよび伴奏者・スタッフのビザ取得、また楽器等の国境通過に伴う免税処置に関わる作業をしてくれたのである。その準備作業に4ヶ月かかり、この時期の渡航になった。なお今回のツアーのライブチケットは全部ソールドアウトしているということであった。
 

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渡航するのは、私と政子、スターキッズ&フレンズ(Gt.近藤嶺児 Sax/Fl.近藤七星 Bass/Vn.鷹野繁樹 Dr/WoodBase.酒向芳知 KB/Marimba.月丘晃靖 Gt/Vc.宮本越雄 Vla/Tp.香月康宏 Org.山森夏樹)、ヴァイオリン演奏者(凜藤更紗・鈴木真知子・伊藤ソナタ・桂城由佳菜・前田恵里奈・佐藤典絵)、琵琶/Gt:若山鶴風(田淵風帆)、胡弓/Fl:若山鶴海(今田七美花)、演奏の補助をしてくれる線香花火(松川杏菜・野乃干鶴子)、サックス奏者としてバレンシアの心亜、ダンサー(近藤うさぎ・魚みちる)、そしてマネージングスタッフとして、秋乃風花(演奏者登録)・近藤詩津紅(演奏者登録)・近藤妃美貴・甲斐窓香・町田有咲、★★レコードの氷川真友子・奥村照枝・加藤銀河・則竹星児・弓川恭介・松田幸作、それにFMIのJean Marie de La Patelliere といった面々が付きそう。総勢35名である。
 
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なおビザはステージに上がることになる人は興行ビザ(アメリカならPビザ)を取っているが、それ以外の人は一般ビザ(但し今回訪問するほとんどの国ではビザ免除になることを確認済み)になる。
 
しかし、これだけの人数が8ヶ国を回るとなると凄まじい費用が掛かることになる(今回のツアーの費用は大半をサマーガールズ出版と★★レコードが折半し損益も出資比率に応じて分配する協定になっている。私は損益はトントンくらいかなと考えていた。
 
この人数が6月4日の朝、成田空港に集合した時、政子は
「歌うのは私と冬だけなのに凄い人数だね」
と言った。
「これだけの人たちのおかげで私たちが歌えるんだよ」
と私が言うと
「そうだよね。私、いつも感謝してます。私ひとりだとお財布とかも落としちゃうし」
などと言うと風帆伯母が笑っていた。
 
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今回、政子の監視係(政子がふらりとどこかに行ってしまわないよう、常にそばにいるお仕事)として同行してくれる甲斐窓香は、トイレにでも一緒に行きますのでと政子に言っていた。政子はトイレに携帯やバッグを忘れる常習犯なので、政子が出たあとの個室は毎回チェックする必要がある。
 
★★レコードのスタッフで則竹さんと弓川さんは音声・映像の記録係で全公演のPAを担当する有咲と一緒に全ての映像・音声を記録してくれる。あとで編集しDVDにして発売予定である。
 
松田さんと奥村さんはいづれも2014年に★★レコードに入社した社員で今回は雑用係だ。松田さんは空手の有段者ということでボディガード含みもあるということであった。近藤妃美貴は今回サマーガールズ出版の臨時職員資格にして風花の補助、要するに彼女も雑用係をしてもらうことになった。ふだんは風花が雑用も引き受けてくれるのだが、今回はスタッフの人数が多いだけに一部の演奏に参加するほかは「デスク」役に徹してもらうことにし、雑用係は彼女に任せることにした。
 
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近藤うさぎはマリンシスタに参加する前の2002年にタイで性転換手術を受けたらしいが、女性のパスポートを取ったのは初めてということで、Sex:F という記載を見ていると涙が出てくるなどと言っていた。私も2013年に台湾公演の前にパスポートを作った時は、やはりSex:F の記述に感動したものである。
 
「へー。本名は近藤幸(こんどう・さち)さんなのか」
と言って政子が彼女のパスポートを覗き込んでいるので
「こらこら、他人のパスポートを勝手に見ない」
と言って私は注意する。
 
「出生名は幸一なんです。でも中学の頃は生徒手帳の『一』の字に鉛筆で書き加えて『子』にして『幸子』にしたものを、定期券作ったり図書館の利用者証を作ったりするのに使ってました」
 
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「まあそういう公文書偽造同行使は、経験のあるGIDさん多い。見付かったらj厳罰くらうけどね」
 
「でも高校時代の友人が、最近は子の付く名前は少ないし、一を取っちゃって幸(さち)にしたら?というので、高校以来、子を付けない『幸』を名乗っているんですよ」
「へー」
「棒を取っちゃいたいんでしょ?と言われたし」
「なるほどー」
 
「マリンシスタに参加する前、いろんな歌手のバックダンサーとかコーラスとかしていたんですけど、たまたま芹菜リセさんのバックダンサーとして海外公演に行った時、初めてパンフレットに名前を書いてもらって。その時Sachi Kondo と書いてあったのを芹菜さんがステージ上でダンサーを紹介してくれた時に『サキ・コンドー』と読んじゃったんですよね」
 
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「まあchiはキとも読めるけど」
「それで芹菜さんにそう読まれたのなら、あんたサキになりなさいと言われて」
「うん。芸能界ってそういう世界」
 
「それでその後『近藤さき』の名前で活動するようになったんですが、マリンシスタに参加した時に、名前を近藤さきで提出していたのに、事務の女の子が入力する時に u を2度打ちしてしまったみたいで『近藤うさき』で登録されていたんですよ。それをマネージャーさんに言ったら『さき』という名前より『うさき』の方がインパクトあるから、そうしちゃえよと言われて」
 
「ああ、そういうのもありがち」
「まあ要するにめんどくさがってるんだけど」
 
「それでマリンシスタで初期の頃は『近藤うさき』の名前だったんですよ。だけど、私の所に来るファンレターの大半が『近藤うさぎ』になってて」
 
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「それで『うさぎ』になっちゃったんだ?」
「もうどうでもいいや、という感じで」
「あはは」
 

FMIのJean Marie de La PatelliereさんはFMIのアメリカ本社に勤務するフランス人で、日本や韓国・中国の歌手やバンドのCDを欧米で発売する部門に勤務しており、語学に堪能なことから、今回このツアーに参加してくれることになった。主として現地との折衝役である。
 
「こんにちは、マリさん、ケイさん、よろしくお願いしますね」
と笑顔で私たちと握手をしながら言う。日本語の発音もきれいでとても自然である。
 
「私、氷川さんからのメールでジーン・マリーさんと思ってたから女の人を想像してた」
などと政子が言う。
 
「ああ、私の名前、よくアメリカ人や日本人には性別を誤解されます」
とにこやかに言う彼は190cm 100kgくらいのたくましい男性である。学生時代は柔道をやっていて、二段の段位を持ち、全仏高校選手権にも出たことがあるらしい。
 
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「Jeanという名前は英語だとジーンと読んで女性名だけど、フランス語ではジャンと読んで男性名。英語のJohnに相当する名前なんだよ」
と私は解説する。
 
「でもマリーというのも付いてる」
「そうそう。私もマリさん。あなたもマリさん」
などと彼が言う。こういうのは日本人だと、思っても遠慮して言わない発言だが外人さんは割とこのあたりがストレートである。外人さんとの交流経験が少ないと馴れ馴れしく感じたりもする所だ。もっとも政子はこういうのは全く気にしない。
 
「マリーという名前はフランスでは男女どちらにも使うんだよね。イタリアだと女性がマリアで男性がマリオだけどね」
と私は更に解説する。
 
「de La と付いているのは貴族さんですか?」
と私は尋ねたが
 
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「ああ、先祖に貴族がいたらしいですけど、今は世俗にまみれてます」
と彼は言う。一瞬考えてから、もしかしてしてダジャレだった?と気がついて私は笑顔になった。
 

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夏の日の想い出・誕生と鳴動(5)

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