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■夏の日の想い出・誕生と鳴動(10)

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この日はむろんエディンバラのホテルで過ごす。私と政子はスイートルームを取ってもらい、氷川さんは隣のダブルルームをシングルユースで取って休んだ。氷川さんもぐっすり眠ることができて、旅疲れを少しでも解消できたようである。今夜は政子も1回セックスしただけであとは朝まで熟睡していた。やはり3万kmの旅で疲れが溜まっていたのだろう。
 
なおロンドンで私たちが泊まることにしていたスペシャルルームには加藤課長が最初近藤夫妻に泊まりませんか?と言ったものの遠慮されて、線香花火の2人に打診したら、そんな豪華な部屋では眠れないと言われて、結局風帆伯母と七美花が使用したらしい。七美花は豪華な部屋に単純に喜んでいたという。
 
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翌日朝御飯を食べながら今日のスケジュールを確認する。
 
「午前中エディンバラ城に行き、市内でお昼を食べた後、エディンバラ空港に移動。15:35-17:05 Easy Jet U2808 (A319)でロンドンのガトウィック空港(LGW)に飛びます。それから会場入りして20時からコンサートです」
 
と氷川さんが言ったのだが、
 
「電車じゃ間に合わないんですか?」
と政子が言う。
 
それで氷川さんが時刻を確認すると、12:30の特急に乗るとロンドンに17時に着くことが分かる。
 
「到着時刻は飛行機と同じか」
「いや到着後の手間を考えるなら多分列車の方が早い」
 
「じゃそれにしましょうよ。飛行機ばかりじゃ詰まらない」
「いいですけど、お昼が食べられませんよ」
「1食くらい平気」
 
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政子の言葉とは思えない発言だ。それでチケットを予約する。1等を3席取ろうとしたら、政子が旅の雰囲気を楽しむには2等席でというので、2等をテーブルを挟む向かい合わせの席で確保した。
 

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食事が終わった後で、ホテルをチェックアウトし、出かけようとしていたら、FMIのエジンバラ支店の男性がやってきた。
 
「パトリエールに言われてやってきました。何かお手伝いすることがあったら何でも言って下さい」
などというので、荷物をエディンバラ駅に移動してくれるよう頼む。
 
「鉄道でロンドンに入るんですか?」
「ええ。イーストコーストの風景が見たいというので。そうだ、私たちは12時頃に駅に入るので、もしよかったら、サンドイッチとノンアルコールドリンクでも何か調達しておいていただけませんか? エディンバラ城を出るのが恐らく11時半頃になると思うので」
 
「いいですよ」
 
それで彼に荷物を預け、サンドイッチと飲み物を買うお金も渡して、私たちはバッグひとつでエディンバラ城に行くことができた。
 
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入場は9時半からなのだが、朝8時半から並んだおかげで開くとすぐに入ることができた。政子は列に並んでいる間もずっと詩を書いていた。
 
城内を見学していて政子が何だかキョロキョロしているので「どうしたの?」と訊いたら「キルト穿いた衛兵さんとかが居ない」などと言っている。
 
ああ!それが目的であったか!!
 
衛兵さんは見るものの、普通に(?)ズボンを穿いてるのである。
 
「どこかにキルトの人もいると思うよ」
と言っておいたのだが、残念ながらこの日は城内でキルトを穿いた人は見ることができなかった。
 

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エディンバラ城を出たのが11時半くらいである。その付近で昼食を取ってから空港に行きましょう、ということでロイヤルマイルの坂を下っていく。
 
「あ、いた!」
と政子が嬉しそうに声をあげる。
 
道にキルトを穿いてバグパイプを演奏している男性が立っていたのである。
 
政子がニコニコとした表情で見つめていると、彼はちょっと照れている感じであった。たっぷり彼が1曲吹き終えるのを聴いてからパチパチパチと大きな拍手をする。彼もお辞儀をしてくれた。政子がとっても褒めるので彼は照れていた。ついでに一緒に並んだ記念写真も撮らせてもらった。
 
その後、エディンバラ・ウェイバリー駅に向かうが、FMIの人から荷物と昼食用サンドイッチを受け取る。
 
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列車は10分ほど遅れてきた。乗り込んで予約していた席に行くと、中年の男性が座っている。氷川さんが「We have reservation here」と言うと「Sorry」と言って隣の席に移動してくれた。指定が入っている席には"Reserved"と印刷された紙が差してあるのだが、誰か来たらどけばいいやという感じで予約を無視して座っている人がいるのは、日本と同様のようである。
 
しかし隣に移った4人がかなりの下ネタトークをしている。しかし私たちは気にするほどウブでもないので、聞き流しつつ買っておいてもらったサンドイッチを出して食べていた。しかし・・・・
 
「量が少ない」
と政子が言う。
 
「ああ、どのくらい買っておいて、というのを言い忘れたからなあ」
「ふつうに女性3人で食べる程度の量を買ってありますね」
「取り敢えず、私の半分あげるよ」
「私のも半分あげます」
 
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と言って政子は私と氷川さんから分けてもらって喜んでいた。
 
しかしそれを見た、隣の席の男性達が
 
「あんたスポーツ選手か何か?たくさん食べるね」
と声を掛けてくる。
 
「私は歌手ですけど、胃袋はスポーツ選手並みだって言われます」
と政子が答えると
 
「おお、だったら、このスコーン食べない?」
などと言うので
「頂きます」
と言って美味しそうに食べていると
「あんた、感じいいね!」
「歌手志望なの?」
「あんたきっと売れるよ」
 
などと彼らから言われた。ビールやウィスキーも勧められたものの、この後仕事があるのでと言ってお断りしておいた。
 
しかしそのあと4時間ほどの汽車の旅は彼ら4人との楽しいトークで過ごすことになったのである。彼らはけっこう際どいネタも話すものの、政子が割とうまくあしらうので、それも彼らに気に入られたようである。
 
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「CD出したら教えてよ。買うからさ」
などと言われて、握手して別れた。
 
政子は上機嫌な感じで、ロンドンのキングクロス駅から会場までタクシーで移動する間にもレターパッドに赤い情熱を使って楽しい詩を2篇書き綴り、会場に到着してからも更に2篇書いていた。
 

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20時、この日会場となったオペラハウスでローズ+リリーのロンドン公演が幕を開ける。
 
オープニング。幕が開く前から私のソロヴァイオリンが鳴り響く。今回持ってきているヴァイオリンは6000万円の「ガルネリもどき」のヴァイオリンAngelaである。私が弾く『あなたがいない部屋』の前奏の調べに合わせて野乃さんの弾くスタインウェイのグランドピアノの音が鳴り響き、そして幕が開く。
 
大きな拍手がある。
 
私はステージ前面に立ってヴァイオリンを弾いており、そばにマリがマイクを2本持って立っている。やがて前奏が終わる。私はそのタイミングで近づいてきた氷川さんに楽器を渡すと、マリからマイクを受け取って、この曲を歌い始めた。
 
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伴奏は野乃さんのピアノのみである。
 
歴史を感じさせるオペラハウスに私たちの声が染み渡るように響く。
 
間奏になるが、ここで凜藤更紗と鈴木真知子が出てきて、一緒に演奏してくれる。この演奏が実は昨夜エジンバラのパブで弾いたものを使用している。本番の直前に譜面を見せられて、これだけ弾きこなしてくれる2人も大したものである。その超絶技巧に観衆がどよめく。
 
ちなみに凜藤さんのヴァイオリンは2億円の《Tuala》、真知子ちゃんが弾いているのは1500万円の《Monica》である。なお、野乃さんが弾いているスタインウェイのコンサートグランドは2000万円で、ここに並んでいる楽器の合計金額は約3億円ということになる。全く恐ろしい。
 
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演奏が終わった所で私たちは挨拶する。
 
「Good evening! We are Rose plus Lily」
 
拍手があったところでマリがトークをする。今日はエジンバラから特急列車でロンドン入りしたが、とっても楽しい人たちと出会っておしゃべりしていた。頂いて食べたスコットランド風スコーンが美味しかった、などと言っていたが、これを聞いたファンがライブ修了後、深夜にも関わらずホテルに大量のスコットランド風スコーンを届けてくれて、政子は嬉しい悲鳴をあげていた。
 
(それを検査して食べられないものを見付けて廃棄しなければならない氷川さんはうんざりした顔をしていた。FMIロンドン支社の技術部の人に試薬の類いを持って来てもらって夜通し検査していたが、実際には悪意のあるものは全く無く、全て10日中に政子のお腹の中に消えた)
 
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イギリス公演ではアメリカ公演と構成をかなり変更している。
 
『あなたがいない部屋』の後は、スターキッズが入ってきた上にヴァイオリン奏者6人を並べてこれもまた超絶演奏を第1・第2ヴァイオリンにさせている『花園の君』『花の里』と続ける。スターキッズはアコスティック・バージョンで演奏しているので、ここまではクラシックコンサートっぽい雰囲気である。
 
箸休めに七美花の胡弓をフィーチャーした『坂道』、近藤・魚ペアが巫女衣装を着て躍る『女神の丘』と続ける。『女神の丘』には七美花の龍笛もフィーチャーしている。七美花は千里の所に半年通って龍笛を習ったらしい。
 
その後、山森さんのオルガンを入れた『時を戻せるなら』『アコスティック・ワールド』、そして再び弦楽器の魅力を見せる『眠れる愛』と続けた。この『眠れる愛』にはツイン・サックスもフィーチャーしていて、これは七星さんと七美花が吹いた(フルートは松川さんと風花が吹いている)。
 
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ここまでアコスティックな曲を8曲続けてきたので、ここで『雪を割る鈴』の出番である。
 
今日は振袖を着た近藤・魚ペアが入って来て、前半はゆったりとしたペースの音楽にあわせて2人も踊る。そしてそこにイギリスに人気アイドル歌手が入って来て、彼女の希望で急遽用意した薙刀(なぎなた)で鈴を割ると、大量の小鈴が飛び出して歓声が上がる。
 
そして曲は突然アップテンポに変わる。
 
近藤・魚ペアは振袖を脱いで一分袖のシャツとミニスカで踊り出す。アメリカでは水着になったのだが、ヨーロッパの客は下品と思うのではないかということで、こういう衣装になっている。
 
そしてこのリズミカルに転じた後、スターキッズは電気楽器を持って演奏を続けて行く。
 
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『Step by Step』『恋人たちの海』『月下会話:ムーンライト・トーク』、『Spell on You』『ファイト!白雪姫』と続けて、ホログラフィが天井で踊る『影たちの夜』まで演奏する。
 
そしてマリが「最後の曲です。『ピンザンティン』」
と言った所で私が横やりを入れて先に『Virtual Surface』を歌う。この演出はさすがにイギリスの観客には既に知れ渡っていたようで、私がタイトルを言う前に客席から『Virtual Surface!』という声が掛かってきた。
 
その後ほんとうに『ピンザンティン』を歌って、いったん幕が下りる。
 

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拍手は鳴り止まない。「Encore!」という声も聞こえてくる。
 
主宰者が頷くのを見て私たちはまたステージ中央に出て行く。幕が上がる。スターキッズの入って来て『キュピパラ・ペポリカ』を演奏する。この無国籍な歌にまた会場は興奮する。
 
それで再度アンコールとなる。
 
今度は私とマリのふたりだけで出て行く。私がスタインウェイ・コンサート・グランドの前に座り、マリはいつものように私の左に立つ。そして私のグランドピアノ演奏だけを伴奏として『夏の日の想い出』を演奏する。
 
静かに曲は終わり、割れるような拍手と歓声の中、私たちは何度も何度も客席に向かってお辞儀をした。
 

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ロンドン公演が終わった後は、翌6月10日(水)の朝6時にホテルを出てヒースロー空港に行く。とにかくここは時間のかかる空港である。出国手続きを通った後で9:20のロシア・サンクトペテルブルク(旧レニングラード)のプルコヴォ空港行きBA878(A320)に乗り込んだ。
 
約3時間の旅だが時刻帯がUTC+1からUTC+3に変わるので到着は14:35である。
 

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この日は朝早くからホテルを出てきているので、公演の時間までホテルでひたすら寝ていた。そして20:00、サンクトペテルブルク市内のコンサートホールでローズ+リリーの公演を始める。座席は3000人だが、どうも立見が500人くらい出ている雰囲気であった。
 
ロンドン公演と同様に幕を下ろしたまま私のヴァイオリン演奏で始め、幕があがったところで『あなたのいない部屋』を歌い始める。そして歌い終えたところで
 
「Здравствуйте! Мы роза плюс лилия!」
と挨拶して最初のトークをする。
 
その後も基本的にロンドン公演と同様に進めていく。『雪を割る鈴』は人気の若手バレリーナさんにお願いしたのだが、彼女は鈴を割った後、サービスでピルエットをきれいに決めてくれた。またこの曲には地元のバラライカ奏者・さん・バヤン奏者さんに入ってもらった。
 
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ロンドン公演と1曲だけ入れ替えたのが『Spell on You』の代わりにロシア歌謡で、私たちの最初のアルバムのタイトル曲にもなっている『長い道』を入れたものである。むろん日本語歌詞で歌わせてもらったが、ロシアの人たちにはなじみの深い曲なので、反応も良かった。
 
歌詞の中に歌い込まれているсемиструнною(七弦ギター)をこのロシア公演のためだけに実は準備していて、間奏の所で近藤さんがこれを持って前面まで出てくると、歓声があがっていた。
 
しかしロンドン公演にしてもこのサンクトペテルブルク公演にしても、観客は概してお行儀がよくて、ハメを外して警備員に取り押さえられたりするような人もいない。手拍子もしっかり打ってくれるし、超絶ヴァイオリン演奏の所には曲の途中であっても律儀に拍手してくれる。
 
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こちらも気持ち良く演奏して行くことができた。『ピンザンティン』の前に『Virtual Surface』を入れる演出のところは、また律儀に「О!」などと驚いてくれたし、アンコールもしっかり2回呼び戻してくれた。
 

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夏の日の想い出・誕生と鳴動(10)

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