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■夏の日の想い出・誕生と鳴動(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-08-04  
18時半頃に空港に入った。例によって出国審査を通った後で夕食を取った。
 
アントニオカルロスジョビン国際空港を21:55発のブリティッシュ・エアウェイズ BA248(B777)に乗り込み11時間15分のフライトでイギリスのヒースロー空港(LHR)に到着する。到着したのは6月8日(月)の13:10, 9300kmの旅である。時刻帯はUTC-3からUTC+1に変わる。
 
長旅が続いたので6月8日は午後いっぱい休養日になっている。更に明日9日は20時からのライブである。
 
「ね、スコットランド行って来ようよ」
と政子がもうすぐヒースローに到着するという頃になってから言い出した。
 
「休んでようよぉ。前回パスしたウェストミンスター寺院とか見に行ってさ」
と私は言うが
 
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「スコットランドで男の人がスカート穿いてるのを見たい」
などと言う。全くどういう趣味なんだか。
 
それで氷川さんが付き添ってくれて、そのままヒースロー空港から国内便に乗り継ぎ、LHR 16:40 BA1452(A319) 17:55 EDI というタイムスケジュールでエディンバラ空港まで行った。
 

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「いや、もう事務処理が何だか膨大にあって疲れていたので逃げ出したかったんです。伝票の数が凄まじいのに無関係の伝票を紛れ込まそうとする人がいるから、チェックも大変で」
 
などと氷川さんはエディンバラ行きの飛行機の中でで言っていた。
 
「エディンバラまで車で行けるかと思ったら飛行機でないと厳しいのね?」
と政子が言う。
「600km近くあるから車だと移動で1日潰れてしまう。東京から青森くらいの距離があるよ」
「そんなにあるのか。イギリスにも新幹線があればいいのに」
「インターシティ225という高速列車が走っている。最高速度200km/h。一世代前の新幹線の感覚かな。それでもロンドンからエディンバラまで4時間半掛かる」
 
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「やはり遠いんだなあ」
「今日はヒースローからキングクロス駅までの移動時間も考えるとヒースローから直接エディンバラに飛んだ方が早いという結論に達したんだよね」
 

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「2年前にイギリスにいらっしゃった時はスコットランドまではご覧にならなかったんですね?」
と氷川さんが訊く。
 
「そうなんですよ。あの時はストラトフォードアポンエイボンで1日過ごした後リバプールに行ってマジカルミステリーツアーのバスに乗ったんですよ」
と私は言う。
 
「それで『花の国』とか『恋人たちの海』とか『Back Flight』とかお書きになったんですよね?」
と氷川さん。
 
「そうです、そうそう。もっとも『恋人たちの海』は黒海上空、『Back Flight』も飛行中に書いた曲ですが」
と私。
 
「『花の国』はストラトフォードでしたっけ?」
「そうです。ほんとによく覚えておられますね」
 
氷川さんは私たち自身が忘れてしまっているようなことまで、しばしば覚えてくれている。
 
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「だけど今回のツアー行程4万kmの内、既に3万kmは移動したんですよね」
「そうなんですよね。まだライブは半分も終わっていませんけど」
 
今回の行程では、日本−アメリカ、アメリカ−南米、南米−欧州、欧州−日本が各々1万kmクラスの移動である。
 
「あれ?地球一周って約4万kmだっけ?」
と政子が言う。
 
「そうそう。約じゃなくて正確に4万km」
「へー、39800kmとか41800kmとかじゃないんだ?」
「そもそも地球1周の長さの4000万分の1を1mと定めたんだよ。正確には赤道と北極の間の子午線長の1000万分の1を1mにした」
 
(その後「メートル」の定義が変遷したこと、また地球は実際には球体ではなく楕円体であることから、正確な地球一周の長さは赤道一周が40075km, 子午線一周が39941kmである。つまり「横に1周」するほうが「縦に1周」するより134km長い)
 
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「そうだったのか! でも誰が決めたの?」
「フランス革命政府。1799年だからナポレオンが第一統領だった時代」
 
「なるほどー!さっすがナポレオン。でも私たち凄い旅をするんだね!」
「まあ世界一周旅行だよ」
「すごーい」
 
と言って、政子は今日は『赤い情熱』で詩を書き始める。『Around the world towards to your arms』などと書いている。
 

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到着したのは17:55だが、まだ日は高い。確認すると、この日の日没は21:53, 日暮れは23:12である。高緯度地方の夏の夜は明るい!(翌日の夜明けは3:10, 日出は4:29)
 
「せっかく『街』を見に来たんだから、庶民の街を見ましょう」
と氷川さんが言って、ホテルのフロントで尋ねて女性でも安心して入れるような庶民的なパブを紹介してもらい訪れた。
 
「取り敢えずビール」
などと言って、スコティッシュ・エールの樽出しを注いでもらい乾杯する。
 
「あ、これ結構好きかも」
などと政子は言う。
 
日本などではビール(ラガー)は冷えていて泡がたっぷりというイメージだがイギリスのビール(エール)は15度くらいの温度で出てくるし、泡も少ない。
 
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「コーヒーとかもアイスコーヒーって味が分かりにくいから深煎りにして砂糖も多めに入れたりしますよね。たぶんビールもギンギンに冷えたものよりこのくらいの温度で飲んだ方が味わいが分かりやすいんですよ」
と氷川さんは言う。
 
「ああ、なるほど。そうかも知れないですね」
 
ビールは基本的に上面発酵型と下面発酵型に分けられる。エールは上面発酵であり、15-20度程度の高温で1〜2週間という短期間で発酵させる。これに対して日本で主流となっているラガーは下面発酵で8-10度くらいの低温で1ヶ月から1ヶ月半ほど掛けて発酵させる。
 
またビールは基本的に水・麦芽(モルト)・ホップ・酵母の4つで作られるのだが、イングランドのエールではホップが多く使われているのに対してスコティッシュ・エールはホップを使わないのが基本で、その分、本来の燻製されたモルトの味が強く出るのである。
 
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政子はスコットランドに来たらハギス食べなきゃと言って、それを注文して美味しそうに食べていた。私はスコッチブロスを頼んで食べていたのだが、これがまた絶品であった。
 
私たちは食事しながらも大衆的なパブの雰囲気を楽しみ、そして詩や曲を合間合間に書いていた。
 
その内、ライブが始まった。この日ステージに立ったのは女性2人組。年齢は40代であろうか。姉妹か友人かは分からないがお揃いの黒いドレスを着て1人がピアノを弾き、ひとりが歌を歌っている。歌っているのがAnnieさん、ピアノを弾いている人がLoraさんらしい。
 
シーナ・イーストンのナンバーを多くカバーしているようで、私たちにも馴染みの曲が多かった。しかしクリアで美しいソプラノボイスだ。
 
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私たちが結構熱心に見ていたら、こちらが日本人というのに気づいたようで『Wings to Fly(翼をください)』を歌ってくれた。
 
「歌詞が結構直訳っぽいね」
などと政子が言うので
「これ多分、スーザン・ボイル(Susan Boyle)版だと思う」
と言って氷川さんを見ると
「ええ。私もそう思いました」
と言っている。
 
「誰だっけ?」
「エディンバラ出身の歌手だよ。48歳の時に歌番組に出たのがきっかけでデビューするとことになった、いわば中年シンデレラ」
「へー!」
「ああいう人が出てくると、売れてないけど音楽やっている人たちは凄く勇気付けられますよね」
と氷川さんも言っている。
 
「たぶんマーサの好みだと思うよ」
「うちにCDある?」
「最初に出した自主制作盤だけは入手できなかったけど、大手から出たものは全部あるはず」
「帰ったら聞いてみよう」
 
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歌が終わった所で、私たちが大きな拍手をするとアニーさんもこちらに一礼してくれた。
 
「Was I right?(間違ってませんでした?)」
と彼女が訊く。おそらくややうろ覚えで歌ったのだろう。
 
「Yes, You were right. It was beautiful singing」
と私は答えたのだが
 
「でも1ヶ所だけ音が違ったよね」
と政子が言い出す。音の違いに気づくとは政子もなかなか耳が上達している。
 
すると政子の発言を聞いた男性客が
「Point out any mistake, if there were. That is more kind」
などと言い出す。
 
ステージ上のアニーさんも「Please」と言うので、私は1ヶ所だけメロディーが違っていたところを歌ってみせた。
 
「In chorus part, you sang like this "La la la- La la la, La la la-La la la",while the original melody is "La la la- La la la, La la la-La la la"」
 
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と私は彼女が歌ったのと、大元のメロディーとを歌い分ける。
 
「Oh, thank you. I'll confirm there」
と彼女は言ったが
「But you sing very well! Would you sing with me?」
などと言い出した。
 
すると客が大勢拍手をする。私は困ったなと思ったのだが、氷川さんも頷いているので私は政子を連れてステージにあがった。
 

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「What would you sing?」
と私が訊くと
 
「Can you sing "Memory" from Cats?」
と訊くので
 
「Yes, yes」
と答えて伴奏が始まる。
 
最初ユニゾンで歌い始めるが3人とも音程が正確なので声が1つにまとまり、自分の声が全体に溶け込んで自分で聞こえない状態になる。初心者は不安になるのだが、これが音程がちゃんと合っているという証拠である。アニーさんもこちらが音程・歌詞ともに正確に歌うので、喜んでいるようである。最初はユニゾンだったもののサビの途中「The streetlamp dies in the cold air...」で盛り上がっていく部分では、お互いの呼吸で三和音唱にすると、客席から歓声があがっていた。音を伸ばしたところで拍手も来る。
 
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その後は語り部分もずっと三部唱で歌っていく。ピアノ伴奏のローラさんも歌いやすいように音のヒントをくれるので政子もノーミスで歌っていく。Touch meと歌う所を政子がうっかりMemoryと歌おうとしてMetch meみたいな感じになったのは、まあ愛敬だ。
 
きれいに終止して、大きな拍手をもらう。
 
「Wonderful!」
「Brave!」
などという声も飛んでくる。さっき間違ってたら教えてあげなよと言った男性客など
「You can be a singer!」
などと言うので、私たちは曖昧に笑っていた。
 
歌い手さん・伴奏者ふたりと握手して私たちは客席に戻った。
 

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彼女はその後、ビートルズの『Fool on the Hill』、ユーリズミックスの『There must be an Angel』と歌った後、彼女が言う。
 
「Next, the last song. I will sing a song from Japan again. It is very beautiful song, that I prefer so much. "Room you are absent" from the album "Flower Garden", by Rose plus Lily」
 
私も政子も思わず食べていたポテトフライを喉に詰まらせそうになった。
 
「What happened?」
とステージ上の彼女が戸惑いがちにこちらを見る。
 
それで氷川さんが笑って
「These two is the Rose plus Lily」
と言うと、驚いたような歓声がパブの中に広がる。
 
「Then, sing yourself!」
と声を掛ける客が何人もいる。アニーさんも拍手しているので、結局私たちはまたステージにあがり
「Let's sing together」
という。
「OK,OK」
ということで、私たちはアニーさんと握手して『あなたがいない部屋』を歌うことにした。酒場の隅にふるぼけたヴァイオリン(フィドル?)があるので
 
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「Can you use that violin?」
と尋ねると、酒場の人が取ってくれた。一礼して受け取る。弦が完璧に緩んでいるのを締めて急いで調弦する。
 
ピアノ担当のローラさんと頷いて彼女のピアノに合わせて私が前奏のヴァイオリンを弾く。やがて歌の部分が始まるがAメロ・Bメロは私は歌わずにヴァイオリンに集中する。それでアニーさんとマリがデュエットする形になった。
 
元々高校時代に政子がタイに転校して行くと聞いて、そのショックを慰めるかのように私が弾いたヴァイオリンを雨宮先生がまとめてくれた曲である。「モーリー作詞・ケイ作曲」という変わったクレジットの曲だ。但し英語歌詞はマリが翻訳している。
 
私はその時のことを思い出しながらヴァイオリンを弾いていたが、いつしか涙が目に浮かんでいた。客も息を呑むかのように静かに聴いている。間奏のところでは私は自由な音の並びを紡ぎ出しいく。それにピアノのローラさんが合わせてくれる。こんなの元の曲には無いのにという感じの長い展開になり、私の超絶技巧に拍手が鳴る。そしてやがてヴァイオリンの旋律は元の曲に戻ってくる。
 
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私はその後Aメロ・Bメロはヴァイオリンを身体から離してアニーさんと一緒にケイのパートをユニゾンで歌った。それにマリが歌う「だいたい3度下」の音が絡んでいく。
 
サビで絶唱のような感じで長い音をたくさん歌う。更にサビを2度繰り返して曲は終曲へと進んでいく。
 
歌い終わると、物凄い拍手と歓声があり、私たちは何度もお辞儀をした。そしてアニーさん・ローラさんと握手してステージを降りた。
 

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パブを出たのが21時すぎであったが、まだ太陽は沈んでいない!
 
「私、時計を合わせそこなったかな?」
と政子が言うが、私や氷川さんの時計と同じなので
「大丈夫、間違ってない」
と言う。
 
「まだ昼間なのに」
「うん。今日の日没は21:53,日暮れは23:12だから」
「なんでそんなに遅いの〜?」
「高緯度だから」
「うーん・・・」
「今は夏だからね。冬になると極端に日が短くなる。15時くらいで日が沈んでしまう」
「こういう地域で生活していると、昼や夜という概念が日本の東京あたりとは違う物になりそう」
「まあそうだろうね」
 
それで政子は街灯のあかりの下で、『Short Night』という詩を書いていた。
 
「前回イギリスに来た時は特に何も感じなかった。リバプールって緯度はどのくらいかな」
「リバプールは北緯53度くらい。でもあの時は9月で秋分に近かったから18時くらいで日没だったんだよ」
 
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「なるほどー」
「夏至の頃は夜が短い、冬至の頃は夜が長い」
 
「でもブエノスアイレスではふつうだったよね?」
「あそこは南緯35度くらいだったはず」
「そっかー。今回もっと高緯度の所に行ったりする?」
「サンクトペテルブルグは北緯60度くらい」
「サンクトペテルブルグの日没は?」
 
訊かれたので計算サイトで確認する。
「サンクトペテルブルグの今日の日没は22:15, 明日の日出は3:40」
「日暮れ・夜明けは?」
「日暮れ・夜明けは起きない」
「起きない〜?」
「太陽はずっと地平線のすぐ下にあって、空はずっと明るいまま」
「白夜なんだ!」
「サンクトペテルブルクでは夏至を中心にして1ヶ月くらいの間は日暮れが起きないみたいね」
「ちょっと楽しみ〜」
 
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■夏の日の想い出・誕生と鳴動(9)

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