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■夏の日の想い出・誕生と鳴動(8)

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この日はライブが終わった後4時間くらいのフリータイムとなった。さすがに外国人女性が2人だけで歩くのは危険ということで、★★レコードの松田さんが付いて3人で町に出て散策した。
 
「東京とかはどこ行ってもきれいになっているから、こういう混沌とした町を見ると郷愁のようなものを感じる」
と政子は言う。
 
「今回アルゼンチンとブラジルを入れたのはこの2国でのCD売り上げが良かったこともあるけど、上島先生が強く推したのもあったみたいね。都会を歌うのなら、南米の都市も見て来て欲しいということみたい」
と私は答える。
 
「最近の日本人は純粋培養すぎる。もっとたくましくならないといけないよ」
「まるでお年寄りのような発言」
「食べ物を床に落としたりした時にさあ、3秒ルールとか5秒ルールとか言う人いるけど、そんなの関係無いよね」
「うーん。確かに秒数は関係無い気がする」
 
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「食べ物であれば落ちてから何秒経っていようと拾って、ゴミとか付いてたら払って、それで食べればいいんだよ」
と政子。
「うん、まあ落ちた場所にもよるけどね」
 

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一応観光名所ということでカミニートにも行ってみたが、政子はちょっと見ただけで「パス」というので、一応写真だけ撮った上で、結局サンテルモ地区を通り抜けた後で、タクシーで移動してサン・マルティン広場で政子は詩を幾つか書いた。
 
「まあ観光客が多すぎて空気が変質してたね」
「うん。私はふつうの空気の方が好き」
と言って、政子は子供が走り回ったり、恋人たちが戯れている情景を見ながらボールペンを走らせている。しかし・・・・
 
南米の恋人たちはさすが大胆だ!
 
今回の旅に持って来たボールペンは《赤い旋風》と《金の情熱》であるが、昨日から《金の情熱》の方をメインに使っているようだ。このボールペンは瞬間的な情景から得られたイメージを脳内にキープしてくれるような効果があると私は思っている。
 
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3人で市内のステーキハウスでたっぷりとアルゼンチン・ステーキを堪能してから直接空港に入った。
 
エセイサ国際空港(EZE)を22:00発のリオデジャネイロ行きアルゼンチン航空AR1254(B737-700)に乗る。3時間のフライトで日付が変わって6月7日(日)1:00リオデジャネイロのアントニオ・カルロス・ジョビン国際空港(GIG)に到着する。時間的には沖縄から東京に飛ぶくらいの感覚である。なおブエノスアイレスとリオデジャネイロは時差は無い。どちらもUTC-3の時刻帯である。
 

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ブラジルは今回の訪問国の中で数少ない「ビザが必要な国」なので入国に時間がかかるかなと思ったものの、アルゼンチン入国の時とそう差は無かった。
 
深夜の到着なのでそのままホテルに入って朝まで寝る。
 
政子が「キリスト像が見たい」と言っていたので、朝5時に起こして早い朝食を取った後で、現地レコード会社の女性警備員さんに付き添ってもらって、コルコバードの丘(Corcovado)まで行った。レコード会社の車で麓まで行き、タクシーに乗り換えて展望台まで昇る。更に展望台から専用のバンに乗り換えてキリスト像の傍まで行った。
 
ここは日中に来ようとすると混雑していて麓から展望台まで昇るケーブルカーが2時間待ちとかになるのだが、早朝来たおかげでまだ人が少なく、景色をゆっくりと楽しむことができた。
 
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「これ凄く大きいね!奈良の大仏様より大きい?」
「高さ30mだからね。奈良の大仏様は14mだから倍くらい」
「すごーい」
「ウルトラマンが設定40mということだからそれくらいかも」
「ウルトラマンってこんなに大きいのか!」
「まあキリストさんは怪獣じゃなくて悪魔とかと戦うのかも知れないけどね」
「悪魔かぁ。私ルシファーさん好きだけど」
「そういう発言はキリスト教国ではしないように」
 
付いてきている警備員さんも日本語は分からないようである。私たちは彼女と英語・ポルトガル語混じりで会話している。
 
「あれ?キリストが磔(はりつけ)になったのはゴルゴダの丘だったっけ?」
「ゴルゴタ(Golgotha)の丘。最後のタは濁らない」
「あれ〜?」
「濁音の次に清音だからついゴルゴダと言っちゃうよね。アボカド(avocado)なんかもアボガドと言う人が多い」
「日本語難し〜い!」
 
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政子はそんことを言いながらも、この像の下で『Sob o Grande Homem』(偉大な人の下で)という詩を書いた。しかしタイトルはポルトガル語だが、書いている詩はスペイン語だ!?
 
おそらくポルトガル語では想像力を直接文章に焼き付けるほどうまく言葉を操れないのだろう。英語・スペイン語・フランス語あたりとは、やはりスキルが少し落ちるのかなと思って私は見ていた。
 

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「あれ?そういえば007ムーンレイカーでジョーズがぶら下がっていたロープウェイはどこだっけ?」
「あれ?それが無くなってケーブルカーになったのかな?」
と私も不確かだったので、付き添ってくれている警備員さんに尋ねてみたら
 
「それはここではなくてポン・ヂ・アスーカルです。ほら、あそこに見えますよ」
と言って彼女が指さしてくれたのは、海岸近くにある巨大な岩塊である。
 
まるで地面に大きなラグビーボールでも立てたかのような形をしている。
 
「高さ396mあります」
「凄い!」
「あそこ行く時間ある?」
 
「あそこも人気観光地なので、今から行くとたぶん1時間待ちになってしまいます」
「じゃ帰りに車であそこのそばを通るだけでもしてもらえます?」
「いいですよ」
 
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ということで、この巨岩は私たちは真下から見上げるだけにして会場の方へ向かったのであった。しかし政子はこの大きな岩の下で『あなたの顔が大きくそして遠く見える』という詩を書いていた。
 
政子の詩ってしばしば「まんま」だ!
 

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この日の公演も昨日と同様に13時から始めた。今回のツアーでは土日は昼間に公演をすることにしている。今日のライブ会場も体育館で、今日は観客は7000人ということであった。
 
この日は前座も入っており、doces flocos という名前のブラジル人の女の子2人のペアが過激な露出の衣装(?)を付けてセクシーに踊りながら歌っていた。観客はもう盛り上がって盛り上がって、こちらがやりにくいほどである!
 
舞台袖で出番を待ちながら見ていて
「可愛い女の子だね」
「歌も踊りもうまいね」
などと言っていたら
 
「Elas sao transgeneras」
と現地主宰者の人が言う。
 
「え〜〜!?」
と政子が驚いているので
「何?」
と訊くと
「あの子たち男の娘なんだって」
と答える。
「へー!」
 
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政子がその後いくつか主宰者さんと会話を交わしている。
 
「おっぱい大きくしてタマタマは取ってるけど、おちんちんはまだあるらしい」
「ほほぉ」
 
しかし2人ともかなりハイトーンの声で歌っている。恐らく変声期前に睾丸は取ってしまったんだろうなと思いながら彼女たちの歌を聞いていた。
 

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彼女たちが歌い終わって下がってくる。私たちは彼女たちと握手した。握った手が女の子の感触! ほんとに早い時期に去勢してHRT(女性ホルモン療法)しているんだろうなと私は思った。
 
彼女たちが下がった後で、別の2人組の女の子が出て行く。なんかさっき出ていた子たちと顔が似てる? 名前も doces flores という。
 
政子がまた主宰者の人と話している。
 
「ああ、こちらの方が本家なんだって。このふたりは天然女子」
「へー!」
「だから名前もこちらはdoces flores、甘い花。さっきの2人はdoces flocos、甘いフレーク。フレークというのでやや人工的香り」
「なるほど。でもうっかりしてると間違えそう」
 
「元々このdoces floresが出て、そこそこ売れていた時に、そっくりさん、でも男の娘というコンセプトで doces flocos を別のプロダクションが売り出したらしい」
「ほほお」
 
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「本人たちは顔が似ているというだけで別に女の子になりたい男の子ではなかったらしいけど、口説き落としておっぱい大きくする手術受けさせたんだって」
「え〜?いいの〜?」
「更に売り出したらマジで人気出たから、男性化が進まないように睾丸も抜いちゃったと」
「本人たちの希望で?」
「それも半ば強引に手術受けさせたらしい」
「ひっどーい!」
 
「でも他の国でも強制的に美容整形とか豊胸とか受けさせる事務所はありがち」
「確かに。まあ去勢も美容整形の一種かも知れないけど」
 
そんなことを言いながら「本家」だというdoces floresの歌を聞いていたのだが・・・・
 
「ねえ、こちらの方が下手(へた)じゃない?」
と政子。
「うん。さっきの男の娘たちの方がうまい」
と私も言う。
 
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それで政子がまた主宰者の人と話している。
 
「実際さっきの男の娘たちの方が売れているらしい」
「ほほお」
「それでだいたいこの2組、doces flocosがdoces floresの《前座》を務めるという形でライブしているらしいんだけど」
 
「セット売りになっちゃったんだ!?」
「実際の売り上げもdoces flocos、男の娘たちの方が多いらしいよ」
「だってそちらがうまいもん」
 
「でもあくまで向こうは前座という形を取っているらしい。演奏時間も前座のflocosが1時間で本家のfloresは30分なんてこともよくあるって」
「なるほどね〜」
 
実際今日の演奏でもdoces flocosは30分ほど歌ったのに、doces floresは15分ほどで演奏を終えた。彼女たちとも握手する。しかしなんか客席の盛り上がりもさっきより少しトーンダウンした感じであった。
 
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もっとも私たちのライブの演出上は、その方が助かる。
 
機材の設定のため10分間の休憩をあけて私たちのステージが始まる。
 

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「Boa tarde! Nos somos Rosa plus Lirio」
と挨拶して演奏を始める。前座で1時間掛かったので結局私たちのライブの開始時刻は14時頃になってしまった。
 
このブラジル公演も基本的にアルゼンチン公演と同じ進行であるが、アルゼンチンでタンゴ風にアレンジした所をここではサンバ風に演奏して結構うけていた。席から離れて踊ろうとする客を警備の人が抑えるのに苦労していた風であった。洋服を脱ぎだして真っ裸になり、警備員に取り押さえられて退出させられていた女性もあったらしい。
 
ここでもやはり最後に『ピンザンティン』を歌いますとマリが言った後で私が横やりを入れ『Virtual Surface』を歌う。
 
そしてあらためて『ピンザンティン』を歌って幕を下ろしたあとで、アンコールで呼び戻され、『月下会話:ムーンライト・トーク』、そして私のピアノのみの伴奏で『あの夏の日』を演奏して公演を終了した。
 
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ライブが終わって撤収したのが16時、飛行機の時刻は21:55で19時までに空港に入ればいいということだったので、朝のコルコバードに付き合ってもらった女性警備員さんの運転する車でリオデジャネイロ市内をあちこち見て回った。観光地とかには行きたくない。街の表情が見られるところがいいと政子がややたどたどしいポルトガル語で言ったら「All right」と彼女は英語で答えて、ほんとに雑然とした感じの街並みに連れて行ってくれた。ただし車のドアをロックし、窓は絶対に開けないようにと言われた。
 
街のあちこちに車を停めては、政子はいろいろ詩を書いていた。何だか凄く楽しそうな表情をしている。今朝はスペイン語で詩を書いていたのだがやや疲れたのかこの午後は英語で詩を書いていた。ただ時々政子が詩を書いている最中であっても、警備員さんは車を急発進させたりした。おそらく危険を感じて移動したのであろう。
 
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『Handshake through the window』なんて詩もあった。恋人っぽい男女が別れぎわに名残惜しくて窓を通して再度キスをしていたのを目撃して書いた詩だがKissではなくhandshakeにしたのは自主規制か。
 
私の方も着想したメロディーをいくつか五線譜に書き留めておいた。
 
 
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■夏の日の想い出・誕生と鳴動(8)

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