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■夏の日の想い出・花園の君(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-06-09
 
仙台公演の直後にヘビーな『砂漠の薔薇』の収録をし、それと同時進行で槇原愛の音源制作、それからワンティスのプロジェクトに、ゆきみすずさんのプロジェクトなども進む中、さすがの私も疲れ果てていた所で氷川さんから連絡がある。
 
「『サーターアンダギー』と『ネオン〜駆け巡る恋』の票差がわずか18票だったでしょ? これも入れられないかという話があってね」
「あはは、政治的な判断という奴ですね。上島先生の作品だから」
と疲れているので私は言っちゃう。
 
「まあ、それは言いっこ無しで」
「じゃボーナストラックに納めましょう」
「ああ、なるほどね」
 
「ボーナストラック使うなら、ディスク2枚あるから、もう1枚の方にも何かサービス品を入れたいですね」
「26位の『若草の思い』を入れる?」
「いえ。未発売曲を入れましょう」
「あ、それはうまい手だね。適当なものある?」
 
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そういう訳で『焼きまんじゅう』という曲を入れることになった。ディスク2のラストに『サーターアンダギー』が入るので、ディスク1のボーナストラックに『焼きまんじゅう』を入れるとバランスが良い(発売後に「マリちゃんらしい」
という声を多数もらった)。
 
この曲は昨年5月に群馬のFM局で「ぜひ群馬県の名物ソングを書いてください」
と言われて、焼きまんじゅうを大量にもらい、それを食べて政子が書いた曲である。
 
その他、ベストアルバムに収録することになった曲の中で録音品質の良くない『遙かな夢』だけ録り直すことになり、この2曲を5月21日、スターキッズに伴奏してもらって収録した。
 
『焼きまんじゅう』から収録しようとしていたら、政子が
「あ、この曲懐かしい!」
と言ってから
「冬、私、焼きまんじゅう食べたい」
などと言い出す。
 
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「えっと・・・じゃ、この曲を収録している間に誰かに買ってきてもらおう」
「よっしゃ」
 

私は誰に頼もうかと少し悩んだのだが、正望に電話した。
 
「フーコ・・・・僕、もうフーコに捨てられたんじゃないかと思ってた」
「そんな。私がモッチーを捨てる訳ないじゃん。愛してるよぉ。それでお願いがあるんだけど」
 
政子が隣で楽しそうに私と正望の会話を聞いていた。
 
正望はふたつ返事で引き受けてくれて、その日大学を休んで愛車のアクセラを飛ばし、高崎まで往復して、焼きまんじゅうを32パック!買ってきてくれた。
 
私たちは結局予定を変更して先に『遙かな夢』を収録していた。スターキッズのアコスティックバージョンを使用する。近藤さんのアコスティックギター、鷹野さんのヴァイオリン、酒向さんのドラムス、月丘さんのピアノ、七星さんのフラウト・トラヴェルソ、更に私のクラリネットと、マリのグロッケンシュピールを入れた。
 
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その伴奏の上に私とマリのボーカルを重ねる。
 
そこまでの録音が終わった頃にちょうど正望が到着したので、休憩にして、みんなで食べる。
 
「あれ、僕たちもいいの?」と麻布さんが言う。
「ええ。32パック、64本買ってきてもらったから、充分あるはずですし。もし食べきれなかったら持って帰って食べて下さい」
 
と言って、麻布先生と有咲の前に2パックずつ積み上げた。
 
スターキッズの5人にも2個ずつ配り、政子の前に16個積み上げる。そして残りの2パックを私と正望で分け合って食べた。
 
「あ、そこ、わざと分け合って食べて愛を確認してる」
と七星さんから指摘されたので
「七星さんも遠慮せずに、近藤さんと分け合って食べてください」
と返した。
 
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「あ、えっと・・・・」
 
焼きまんじゅうで満腹した政子は、とても楽しそうに『焼きまんじゅう』の歌を歌った。なお、この曲は全員の<今焼きまんじゅうを食べたばかり>という感覚をそのまま利用するため、伴奏と歌を同時に収録した。近藤さんのギター、鷹野さんのベース、酒向さんのドラムス、月丘さんの電子キーボード、七星さんのアルトサックスである。
 
発売後「マリちゃんが本当に美味しそうに歌っている」という声が相次ぎ、群馬県の観光物産課からキャンペーンに使いたいという照会があった。
 

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『遙かな夢』『焼きまんじゅう』の録音をした翌日は、私たちはワンティスの『トンポロ』の録音に立ち会った。nakaさんがギターを弾いたが、私のフルートとマリのノコギリ!もフィーチャーした。
 
そしてその翌日今度はまたローズ+リリーの方の『あなたがいない部屋』の収録をした。
 
この曲の演奏は、私と政子のふたりだけで行った。今回のアルバムの中で唯一、雨宮先生の歌詞を使用した曲である。
 
伴奏は私が、ピアノ、胡弓、フルート、クラリネット、ウィンドシンセを演奏し、政子がヴァイオリンとパンフルート(ナイ)、ソプラノリコーダーを演奏した。胡弓とヴァイオリンという洋の東西の擦弦楽器が共演する曲だが、多数の木管楽器を使用した曲でもある。ミクシングしてみると、木管楽器の重層なサウンドが美しく、それを背景に鳴るふたつの擦弦楽器がすれ違うかのような音を出している。
 
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「でもこの歌詞、何だか物凄くエロティック」
「さすが雨宮先生だよね」
 
「この詩は別の意味で私には書けない」などと政子が言っていた。
 
「ね、ね、この歌を歌っている内に変な気分になってきた。今夜はHしようよ」
「いつもしてるじゃん!」
 
副調の卓そばで聞いていた七星さんが笑っていた。
 
「でも済みません。フルートとサックスの専門家が目の前にいるのに、私の素人っぽいフルートやウィンドシンセで収録することにして」
と私は言ったが、
 
「そんなことないよ。ケイちゃん、フルートかなり頑張って練習したでしょ?小学生くらいにはフルート教えられる程度にうまい」
と七星さんは言う。何とも正直な褒め方だ。
 
「大学1年の秋にマリから唐突に中学の時に使っていたというフルートを押しつけられて、一週間で覚えろと言われました」
 
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「ケイはどんな楽器でも一週間でできるようになるはず」
 
「そんなことできたら化け物だよ」
「いや、ケイは化け物を超越してる」
 
七星さんが可笑しくてたまらない様子であった。
 

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更に翌日はまた政子とふたりで『夜宴』を収録する。今度は私のピアノ演奏の上に、私と政子がふたりでヴァイオリンを弾いて音を重ねる、ということにしていたのだが、政子がグロッケンを弾きたいと言ったので、星のきらめきを表すようなグロッケンパートを作り、ピアノのパートは再調整した。
 
「マリちゃん、こないだも思ったけど、グロッケン結構弾くね」
と七星さんが褒めてくれると
「えへへ。そうかなあ。いづみちゃんに追いつけたかな?」
などと言っている。
 
私は正直に言う。
 
「まだまだ、和泉にはかなわないけど、和泉はもう5年やってるからね。マーサはまだ始めて4ヶ月だもん。1年くらいやってれば、少しは追いついていくと思うよ」
 
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「そっかー。15倍長く向こうがやってればさすがに差があるね。でも頑張っていづみちゃんを追い越す」
「うん、頑張って」
 

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収録順序的には、私がピアノ、政子がグロッケンを、同時に弾いた所を収録し、それにふたりのヴァイオリンを重ねた。政子がメインパートを弾き、私がサブパートを弾く。
 
「以前何度か見た時にも思ったけど、ケイちゃん、凄いヴァイオリン使ってるよね?」
と七星さんが言った。
 
「ああ、ケイってヴァイオリンも結構弾くよね。私のヴァイオリンも調弦はいつもケイにしてもらってるし。でも、いつ練習してるんだろ。私、ケイがヴァイオリン弾く所ってあまり見てないんだよね。一度弾かせてもらって、感覚的に高そうなヴァイオリンだとは思ったけど、そんなに高いんだっけ?」
と政子。
 
「少なくとも鷹野さんが使ってるの(UTPが所有して無期限貸与しているもの)よりは遥かに高い。たぶんケイちゃんのヴァイオリンの弓だけで鷹野さんのヴァイオリンが1個半買える」
と七星さん。
 
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「えー!? ケイってそんな高いの使ってたんだ?」
 
「いや、そこまで高くはないよ。これは従姉のアスカさんが小学生の頃に使ってたヴァイオリンを安く譲ってもらったんだよ。そもそもアスカさんも先輩が使っていたものを安く譲ってもらったものと言ってたしね」
と私は笑って答えておいた。
 
「演奏技術だって『私、ヴァイオリン科の学生です』と言ったら信じてもらえそうなくらいありそう。簡単な曲しか弾いてるとこ見てないからよく分からないけど、ひょっとしたら鷹野さんとそう違わないレベルという気がする」
 
「ケイってそんなにうまいんだっけ? 本人は自分のヴァイオリンは鷹野さんには遠く及ばないと言ってたけど」
 
「まあそれは謙遜というものでしょ」
「嘘。ケイが謙遜する時ってあるんだ?」
 
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「こないだ名古屋ではピアノの件も謙遜してたね。私もあそこは山森さんを立てないといけないから、ケイちゃんのピアノを素人に毛が生えた程度みたいな言い方したけど、本当はケイちゃんのピアノは凄く筋が良い。専門的な教育受けてないってのは絶対嘘。かなりしっかりした教育を受けている。ピアノのコンクールに出場しても恥ずかしくないレベル」
 
「それはさすがに買いかぶりですー」
 
「ケイって自分の過去については嘘つきだからなあ。あ、そういえばアスカさんのリサイタルの伴奏してたね」
 
「うん。あれは毎年のようにやってるよ。でも従姉妹のよしみでやってるだけだから。今年はアスカさん、年末にドイツのコンクールに行くから、できるかどうか分からないけどね」
 
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「そうだ。アスカさんのお母さん、私じゃもうとてもアスカさんの伴奏を務められないから冬ちゃんに頼んでるんですよ、なんて言ってた」
 
「なるほどね。あのアスカさんの伴奏を務められるんなら、それなりの技術があるってことだよね」
 

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そして最後の曲『花園の君』の収録に入ったのはもう6月になってからであった。スコアを見た七星さんが言う。
 
「このアルバムの中核は『砂漠の薔薇』と『花園の君』なんだね」
「はい、そうです」
「どちらも大変な曲だけど、対照的」
「ええ」
「『砂漠の薔薇』はとにかく演奏するのが大変な曲。歌うのも大変な曲」
「です。私とマリもライブで歌うのが大変そう」
 
「『花園の君』は歌うのはそう難しくない。多分カラオケではみんなが気安く歌ってくれるだろうけど、音源収録が大変だ」
 
「全くです。ある意味では上島先生と雨宮先生の競作なんですよ。『花園の君』
は私とマリの作品を雨宮先生が編曲したもの。雨宮先生無茶苦茶リキが入ってる。この編曲料に私100万円払ってますから」
「うっそー!」
「高校生からでも100万取るのか」
「出世払いにしてもらっていて、実際はローズ+リリーが売れてから払いましたけどね」
「なるほど」
 
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「『砂漠の薔薇』はとてもレアな、上島先生がご自身で作曲・編曲なさった作品です」
「うん。上島先生が編曲した作品というのは、あまり見ないよね」
 

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曲の中核となるヴァイオリン6重奏を録音するのに、ヴァイオリニストの人たちに集まってもらった。
 
「6重奏と聞いたから、同じ譜面を6人で弾くのかと思ったら全員違う譜面なんだ!」と鷹野さんが驚くように言う。
 
「雨宮先生のアレンジなんですよ。これは2008年の春にデモ音源として制作して、それで雨宮先生があちこちのレコード会社に売り込んでくださって、それで実はローズ+リリーのメジャーデビューの話が立ち上がったんですけど、その音源制作の時も、この部分を弾くの大変でした。でもこのヴァイオリン多重奏で凄いインパクトが出るんです、この曲」
 
「その時は冬がひとりで6回弾いたの?」
「ええ。でもその6つの演奏の重ね合わせに雨宮先生はけっこう苦労なさっていたようです」
「そうだろうね。これ一度に演奏するなら、ある程度の腕の人を集めてやれば、そんなに難しくないけどひとりで弾いたのを重ねる場合は、けっこう微妙なタイミングの調整が必要だったはず」
「そうなんです」
 
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