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■夏の日の想い出・花園の君(7)

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「冬って、中学の卒業アルバムにも高校の卒業アルバムにも女子制服で写ってるし」
 
「卒業アルバム制作委員の子にハメられたんだよ」
「ああ、また嘘付いてる」と政子。
「ほんとだよぉ」と私。
「信用ならないわよね」と雨宮先生。
 

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伊豆大島から帰った翌日から2日間はローズ・クォーツ・グランド・オーケストラと一緒に『Rose Quarts plays Easy Listening』の音源制作を行った。そちらの音源制作は前半は5月3-4日に行ったのだが、その後、5日に仙台に来てもらってローズ+リリーのライブにゲスト出演してもらった後、6日に東京で更に音源制作の作業をしている。そしてこの11-12日の土日で作業は完了した。この一連の作業にはアスカも参加した。
 
めったに他人を褒めることの無いアスカが、グランドオーケストラでピアノを弾いている美野里を褒めていた。
 
「美野里ちゃん、無茶苦茶ピアノがうまいね」
「私は、アスカさんのヴァイオリンに聞き惚れていました」
「ね、ね、12月にドイツまで一緒に来てくれたりしない?」
「何があるんですか?」
「****コンクールがあるのよ。それの伴奏とかお願いできないかなあ」
「きゃあ。そんな凄いコンクールで私が伴奏していいんですか?」
「美野里ちゃんもコンクール優勝経験あるでしょ?」
「国内のコンクールに2回、***杯と***賞で優勝しただけですよぉ」
「それだけ実績あれば充分うちの先生に紹介できるよ」
 
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なお、一応5月12日までの音源制作でローズ・クォーツ・グランド・オーケストラを結成した用事は済んでしまったのだが、せっかく作ったので、この後は秋まで、ゆっくりしたペースで公演活動を続けることになっている。一部の団員が5月12日までで退団したので私たちは追加団員を募集して補充したが、退団する団員さんも希望者には「RQGOフレンズ会員」になってもらった。もし時間の取れる時にはまた参加してくださいという趣旨である。
 

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なお、グランド・オーケストラで収録した曲は次のようなものであった。ポール・モーリア・グランド・オーケストラの作品を4曲カバーしている。基本的にボーカルは「ラララ」や「アー」などのスキャットやヴォカリーズであり、元々歌詞のある曲でも「歌」は歌っていない。(これが仙台ライブ版との違い)
 
『エーゲ海の真珠(Penelope)』Augusto Alguero作曲。
1970年にスペインの男性歌手Joan Manuel Serratが歌った曲で、同年ポール・モーリアがカバーしてヒットさせた曲。モーリアの初版では《スキャットの女王》ダニエル・リカーリがスキャットを歌っているが、今回は私のソプラノボイスとマリのアルトボイスでデュエットしている。モーリアのアレンジでピアノとトランペットが呼び合うように演奏する所は美野里のピアノと七星さんのフルートでの呼び合いにしている。冒頭のファンファーレは香月さんのトランペットであるが、これはこのアルバム自体のファンファーレでもある。
 
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『恋はみずいろ(L'amour est bleu)』Pierre Cour作詞,Andre Popp作曲。ギリシャ出身の歌手Vickyが1967年に歌った曲でモーリアは翌年にこの曲をワールドヒットさせ、ポール・モーリア・グランド・オーケストラの出世作となった。ストリングス・セクションが事実上の主役であるが、メロディーラインは美野里のチェンバロ、アスカのヴァイオリンソロ、七星さんのフルート、タカのギターが交替で担当している。
 
『オリーブの首飾り(El Bimbo)』Claude Morgan作曲。
フランスのラテン・ディスコ・グループ Bimbo Jetが1974年『El Bimbo』の名前でヒットさせた曲で一般には同グループのリーダー Claude Morgan の作品であるとされている(Ahmad Zahir作曲説もあるが疑問)。ポール・モーリアも1975年にBimbo Jet風の編曲でこの曲を再ヒットさせた。
 
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ポール・モーリアが当初のムード音楽からディスコやラテンなどに転換していく時期の作品。仙台ライブでは月丘さんがメロディを担当するシンセサイザを弾いたが、音源制作では私がシンセを弾き、コンガ・ボンゴ・ティンパレスを酒向さん、月丘さん、ヤスに叩いてもらって、マラカスをマリが振っている。
 
『恋人たちのバラード(Paris Ballade)』Paul Mauriat作曲。
モーリア自身の1982年の作品。モーリアは1975〜1980年頃ディスコやラテン、更に電子音楽など様々な試みにチャレンジしたが1981年の『再会(Je n'pourrai jamais t'oublier)』で再びムード音楽の世界に戻ってくる。そしてこの作品では『エーゲ海の真珠』で共演したダニエル・リカーリのスキャットを再びフィーチャーした。このアルバムでは私とマリの掛け合いでスキャットしている。
 
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『シバの女王(La Reine de Saba)』Michel Laurent 作詞作曲
レーモン・ルフェーブル・グランド・オーケストラの代表作。エレクトーンで弾くと左手で分散和音を弾きつつ右手でメロディーを弾くという、エレクトーンプレイヤーにとっては結構技術を要求する曲である。今回のアルバムではストリングスによる分散和音をバックにアスカが美しくソロパートを弾いており、アスカのヴァイオリンソロと、私とマリの声がきれいに和音になるように歌った。山森さんのオルガンの音色も取り入れている。
 
『夏の日の恋(Theme from A Summer Place)』 James Owen, Max Steiner 作詞作曲。1959年の映画『避暑地の出来事(A Summer Place)』の主題歌。1960年にパーシーフェイス・オーケストラの演奏でヒットした。金管楽器群が刻むリズムを背景にアスカのヴァイオリンソロがのびやかに歌う曲。サビの部分は七星さんのフルートが入っている。
 
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『愛の歴史(Une Belle Histoire)』Pierre Delanoe作詞,Michel Fugain作曲。原題は直訳すると「美しい歴史」だが、サーカスが『ミスター・サマータイム』
のタイトルで1978年にカバーしたことから日本では有名になった。
 
『愛のオルゴール(Music Box Dancer)』 Frank Mills作曲。
フランク・ミルズ(Frank Mills)の代表作。1974年の作品だが1978〜1979年頃からワールドヒットとなった。今回のアルバムでは、美野里のピアノ、アスカのヴァイオリン、七瀬さんのフルートが掛け合いをしながら演奏している。
 
『ロマーナの祈り(The Lonely Shepherd)』Einsamer Hirte作曲。
ザンフィルの1984年のヒット曲。パンフルート(正確にはザンフィルが使用しているのは《ナイ》という楽器である)の日本での知名度を大きく広めた曲。原曲は「孤独な羊飼い」というタイトル。今回のアルバムでは、七星さんのフラウト・トラヴェルソと山森さんのオルガンが交替でメロディーを演奏している。
 
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『愛のテーマ(Love's theme)』 Barry White, Aaron Schroeder 作曲。Barry White and Love unlimitted orchestraの代表曲。1973年の作品。今回のアルバムでは、ストリングセクションの華麗な音を背景に、アスカのヴァイオリン・ソロ、七星さんのフルート、そして私とマリの声が交替でメロディーを歌っている。
 
『幻しの道(Mirage Road)』マリ&ケイ作詞作曲。
今回のアルバムで唯一のオリジナル作品。中学生の時に八尾で書いた作品で、能登半島の「地図に無い道」珠洲道路のことを聞いて書いた曲であるが、実は阿蘇のミルクロードのイメージも混入している。流れる霧を表すかのような(マントバーニー・オーケストラ風の)カスケード・ストリングスを背景に、疾走する車のイメージをタカのギターで表現している。サビの部分でクラクションのような香月さんのトランペットと鳥の声のような七星さんのフルートも活躍する。
 
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『ロシア風ロンド(Rondo Russo)』Saverio Mercadante作曲。
オランダのフルート奏者Berdien Stenbergの1983年のヒット曲。メルカダンテは19世紀のオペラ作家だが、現代ではオペラ作品より『フルート協奏曲ホ短調』
が有名でこれはその第三楽章である。この曲はよくイージーリスニングとしても演奏されている。七星さんのフルートが主役だが、アスカのヴァイオリン、美野里のピアノ、山森さんのオルガン、タカのギターにも見せ場があるように編曲した。
 

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「ところで俺たち今回は何したんだっけ?」
とマキが言っていたが
 
「気にしない、気にしない」
と言ってタカが笑っていた。
 

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『砂漠の薔薇』の歌唱部分の録音に入る前に、5月14日(火)には、槇原愛の新譜の音源制作、伴奏部分の収録を行った。5月1日に町添さんと会った時に、町添さんとしては特に深く考えた言葉では無かったとは思うのだが、槇原愛の売行きの悪さを指摘されていたので、私もちょっとリキが入っていた。
 
その日は今回のシングル制作と8月までのライブでの伴奏を担当してくれる女性二人組、Sirena Sonica(シレーナ・ソニカ:音の魔女)の穂花さん・優香さんと初顔合わせをした。ふたりは既に槇原愛本人とは会って、実際に少し曲を合わせてみたりはしているし、またメールでは結構こちらとやりとりをしていた。
 
「短期間だけでの仕事依頼で申し訳ないです」
「いえ、しばらくまともな演奏活動できなくて、凄くストレスが溜まっていたので嬉しいです。後先考えずにふたりともファミレス辞めて来ました」
「おお!ロッカーだ!」
 
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ふたりには音源制作における演奏料に加えて、5月から8月まで△△社から給料方式で報酬が支払われることになっているが、あまり大した金額ではないのでバイトなど無しではけっこう生活はきついハズだ。しかしふたりはひじょうにテンションが高かった。
 
ライブ演奏では槇原愛本人がギターを弾くことになるのだが、音源制作では代わりに私が弾くことにする。
 
最初に普通のロック曲である『お祓いロック』を演奏することにする。
 
「何か、この歌詞、すごーく冗談がきついんですけど」と優香さん。
「全くですね。で、少し投げやり風に演奏してもらうといいです」と私。
「会社クビにされたことなら何度もあるから、すごーく現実感があります」
と穂花さん。
 
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そんなことを言いながらも、私のエレキギター、優香さんのベース、穂花さんのドラムスで「かるーい」感じ、やや「投げやり〜な」感じで演奏する。政子が副調で楽しそうにその演奏を見て、あれこれ注文を付ける。朝10時から始めて13時頃まで掛けて、政子が満足する出来映えになった所のテイクを活かすことになった。
 
なお、お昼は政子はひとりで外食してきて、帰りにお弁当を買ってきてくれたので、この曲の収録が終わった所でみんなでそれを食べた。
 

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お昼の後、2曲目『遠すぎる一歩』を収録する。これはフォークロック系の曲なので、私はアコスティックギターを弾き、優香さんの(エレキ)ベース、穂花さんのドラムスと合わせる。
 
「あ、杏梨先生、庶民的なギターを使ってる」
「うん。私はこちらの方がやりやすい。ギブソンなんて本当はもっとうまい人が使う楽器」
「私たちは一貫して庶民的な楽器使ってるなあ」
 
演奏した感じでは、シレーナ・ソニカのふたりは『お祓いロック』よりこちらの曲の方が、良い雰囲気で弾いている気がした。元々そういう系統の曲の方が得意なのかも知れない。
 
この曲は2時間ほどで収録が終わった。
 
お茶を入れて休憩する。自宅から持って来たクッキーの箱を(政子がいるので)5個開けたが、この日、クッキーの減る速度が何となくいつもより速いような気がした。
 
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17時頃から『灯りの舞』の収録に入る。
 
私が作っておいた「仮」の伴奏音源は、アコスティックギター、胡弓、それに電子キーボードで弾いたハンドベルの音で構成されている。シレーナ・ソニカのふたりと事前にメールのやりとりで相談した結果、ドラムスの穂花さんにチューブラーベル(NHKのど自慢でおなじみの鐘)を打ってもらい、優香さんが小学2年生の時以来というヴァイオリン(楽器は取り敢えず8月まで貸与)に挑戦することになっていたが・・・・
 
「ごめんなさい。頑張って練習したけど、まだこの程度です」
 
という感じの音であった。そこで今回の音源制作では予定を変更して仮音源の線で進めることにし、私が最初アコスティックギターを弾いたのをベースに更に私の胡弓の音を重ね、そこにハンドベルの音を加えることにする。ハンドベルは23音セット(A4-G6)のものをスタジオから借りて、優香・穂花の2人に、私と政子も両手に持ち、それを2度(A4-G5/A5-G6:半音略)録って完成させた(ハンドベルの練習に1時間掛けた)。
 
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「ヴァイオリン、発売日まで頑張って練習してね」
「はい!」
 
「でも杏梨先生、色々楽器なさるんですね! 作曲する時はギターですか?」
「あ、自宅で書く時はエレクトーンが多いですよ」
「わあ!キーボードも弾かれるんですか!」
 

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収録が終わったら22時近くだった。「お腹空いたよね」と言って出前を取って食べてから解散することにする。希望を訊いたらピザがいいということだったのでLサイズのピザを5種類注文した。しばらく雑談をしていて、やがて宅配が来た所で食べ始めたのだが・・・・・
 
「穂花ちゃん、ペースが速い」
「鈴蘭先生、ペースが速い」
 
「私、第2のギャル曽根と言われてました」と穂花。
「むむ。私も第2のギャル曽根と言われた」と政子。
 
「穂花に対抗できそうな人を初めて見た」と優香。
「私も鈴蘭に対抗できそうな人初めて見た」と私。
 
そして5枚のピザ(約20人分)はあっという間に無くなったのであった。
 
「優香ちゃん、何切れ食べた?」と私は訊いた。
「私2切れ。杏梨先生は?」と優香。
「私は1切れ」
 
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「ふたりとも食べるのが遅いのよ」
などと政子は言っていたが、そういう訳で政子は穂花に親近感を持ったようで何だか握手をしていた。
 

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夏の日の想い出・花園の君(7)

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