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■夏の日の想い出・十二月(11)

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千里が持ち込んだ sociable bike は、250ccバイクの座席が左右に作られていて、2人が並んで座った状態で走行できるようになっているようだ。ハンドルも2個並んでいる。
 
しかし車輪は前後に2個だから、あくまで自動二輪車である。
 
こんなバイクは多分道路交通法の想定外であるから公道を走ることはできない。それでサーキットに持ち込んだ訳である。
 

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千里は sociable bicycle も持ち込んでいた。
 
「ソーシャブルバイクに乗る前にソーシャブル自転車に乗って少し慣れた方がいいと思う」
 
と千里は言い、千里2と千里3がソーシャブル自転車の左右に乗って、走ってみせる。そのままコースをぐるっと一周(1100m)を走って来た。
 
山村がその様子をスタート地点から撮影している。
 
千里たちが戻って来て
「今度はバイクの方に乗ってみせるね」
と言い、バイクスーツに着換える。
 
「女性ばかりだからここで着換えてもいいよね?」
と言って、平気で着換えていたが、少なくともアクアMは男の子だと思う!山村も性別が怪しい。
 
ともかくも千里2と3はソーシャブルバイクの左右に乗り、華麗にスタートして、またコースを一周走ってきた。これも山村が撮影していた。
 
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「さて、次は龍ちゃんたちの番だよ。誰と誰で行く?」
と千里は訊いた。
 
「これバイクも自転車も右側に主導権があるんですね?」
とアクアFが確認した。
 
「そうそう。右側がパイロットで左側はコーパイ。自転車の場合、前輪ブレーキ・後輪ブレーキの双方を右座席の人が操作する。バイクの場合もアクセルとクラッチは右側の人が操作する。どちらも左側のハンドルにはそういう機構が付いていない。後輪ブレーキやチェンジペダルも右座席だけに付いている」
と千里は説明する。
 
(ソーシャブルは残っている写真を見ると、製品によって右側がパイロットのものと、左側がパイロットのものが存在したようである。実は現代でも制作しているメーカーは存在するらしいが、二輪ではなく安定しやすいように三輪にしているそうである)
 
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「だったら、サイドカー付きバイクと大差ない気がするんですが」
 
「それが分かれば運転できるね」
と千里は感心したように3人に言った。
 
「自転車の方は左座席に座る人もペダルを踏んで動力に貢献できるけど、バイクの方は左座席の人はすることがないんだよね。まあハンドルは物理的に連動してるから、ハンドルの向きは左側の人が操作してもいい」
 
「動力操作していない人がハンドル動かすのは怖いです」
とアクアM。
 
「でもこれ2人の体重差があるとうまく走れない気がします」
とアクアN。
 
「まあ40kgの男と120kgの女では厳しい」
と千里。
 
それ例えが変じゃないか?
 
「それと体重移動はお互いの意思を伝えあって連動しないといけないですよね?コーパイもバイクの免許持っているか、タンデム走行の後部座席に慣れている人でないとカーブで転倒しやすいと思う」
とアクアFが言っている。
 
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「まあそのあたりが、すたれちゃった主たる理由だろうね」
と千里も言った。
 

「じゃ念のため自転車から行こうか」
というので、自転車はMとFで行くことにし、ズボンを穿いた男の子衣装のMとスカートを穿いた女の子衣装のF(インプレッサの車内で着換えていた)とで、左右に乗り(Mが右側のパイロット席に座った)、少し走ってみて
「行ける行ける」
と言っている。
 
「そのままコース一周行ってみよう」
「はい」
 
それで2人で走って行く。走行している所をスタート地点からカメラで追いかけながら撮影した。またリモコン付きのカメラを山村のインプに取り付けてあったのだが、これで走行している所を後ろから撮影した(運転は千里)。更にインプの後ろにカメラを取り付け、アクアたちにもう一周させて、その前を走って前方からの映像も撮影した。
 
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自転車に乗るのは最初の1周は右M左Fでやったが、2度目はFが右に乗り、男装のNが左に乗って1周した。
 
「左Fの前からの映像も欲しい」
と山村が言うと
 
「要するに左が女の子の前からの映像が欲しいんですよね?」
とFが確認する。
 
「そうそう」
 
すると、Fが着ていた衣装をMに着せて!女装のMが左、男装のNが右に乗って1周走り、これを先行するインプのリモコンカメラで撮影した。
 
MはFの服を着てと言われて「僕がスカート穿くの?」と抵抗したが、「だってMは左座席経験してないでしょ?」と言われて、ぶつぶつ言いながら着換えていた。ちなみにFが女の子衣装を脱いで普段着に着替えるのは車の中でやっていたが、Mが女の子衣装を着けるのは外でやっていた。
 
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しかしこれで3人とも左右の座席を経験したことになる。
 

「それじゃバイクで行ってみよう」
と山村が言うが私は提案した。
 
「インカムを付けたほうがいいと思う。バイクはエンジン音で会話が聞こえにくい。お互いの意志が伝わらないと危険」
 
「千里さんたちは実際には脳間通信してたでしょ?」
とアクアが指摘する。
 
「よく分かるね〜」
と、どちらかの千里。
 
「インカムある?」
ともうひとりの千里が山村に訊く。
 
「あったはずだ」
と山村は言い、自分のインプレッサの荷室から出してきた。念のため電池は新品と交換する。カップリングしていることを確認する。操作方法を教え、ちゃんと会話できることも確認した。
 
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それでアクア3人がバイクスーツに着換える。用意したスーツは3つとも同じデザインのものである。これはどういう組み合わせで乗っても映像が流用しやすいようにするためである。ちなみにスーツは全て女性用で胸の所に余裕がある。バイクブーツを履き、インカムを取り付けてヘルメットをし、バイクグローブをつける。
 
ヘルメットは撮影する時に顔が映りやすいように、透明シールド付きジェット型を使用した。
 
最初は練習でお互い右座席・左座席を交替しながら短い距離を走る。なお速度は30-40km/hをキープするよう厳命した。2人乗りバイクは左右バランスが不安定なので、低速走行は危険である。それで30km/h以上で走るように言ったのだが、万一事故を起こした時に怪我が少なくて済むように40km/hまでと言ったのである。
 
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これで練習を兼ねてまた交替しながらコースを3周してくる。
 
「じゃ本番行こうか」
 
それでまた単独走行の所を1回、インプの後ろを走って1回、インプの前を走って1回撮影した。全員同じ服を着ているとどれが誰だか分からないが、3人の会話を聞いていると、単独は右N左M、インプの後ろは右M左F、インプの前は右F左Nで走ったようである。
 

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撮影が終わってから、千里たちもアクアたちもバイクスーツを脱ぎ、普段着に戻って、ピクニック用テーブルを広げ、お茶を飲んだ(建物は施錠されている)。
 
「でもこういう複数のボクを使っての撮影って、あまりやりたくないんですけど」
と文句を言っているのはFのようである。
 
「まあめったにしないよ」
と私は言っておく。
 
「ところで千里たちの1番がやばくない?」
と山村が言った。
 
「そうなんだよねぇ。既に犠牲者が12人」
「霊場巡りで停まると思ったんだけどねぇ」
と千里たちは言っている。
 
「何、犠牲者って?」
と私が訊くと、千里がこちらに訊き直してきた。
 
「冬さぁ、夏頃以降、生理が重くなってない?」
 
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「・・・なんでそんなの分かるの?」
と私は尋ねた。
 
私は(みんな信じてくれないけど)2011年4月に性転換手術を受けて人工のヴァギナを作ってもらったのだが、その年の秋頃から唐突に毎月1回出血が起きるようになった、婦人科で見てもらったら、
 
「普通の生理だと思いますけど」
と変な顔をされた。
 
「いや、私は性転換手術を受けていて、膣は人工のもので、卵巣や子宮が無いので生理が起きる訳無いんですが」
と説明すると、内診台に乗せられクスコも入れて調べられたが、
 
「どうも人工的に作った膣の奥の部分が仮の子宮のような役割を果たしているようです」
とよく分からないことを言われた。その後、青葉から
 
「それは瞬嶽師匠の悪戯です」
と説明されたのである。
 
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この“生理”はだいたい28日周期で来て、通常1日で出血は終わっていた。
 
しかしこの8月に来たのは3日間出血して、その間かなり気分が悪かった。婦人科に行くと「この程度普通」と言われそうで行かなかったのだが、9月・10月に来たのも3日間続いた。私はアルバム制作が終わったら、精密検査でも受けに行ったほうがいいかも、などと思い始めていた。
 

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「まあそもそも生物学的な女ではないはずの冬に生理があったのは変なんだけどね」
「あれは瞬嶽さんの余計な親切なんだよ」
「でも冬はもう完全な女性になったからね」
「そうそう。正望さんとセックスする時はちゃんと避妊してね。妊娠するから」
 
「まさか・・・私、妊娠できる状態?」
「最近健康診断行ってる?今MRIで見たら、ちゃんと卵巣も子宮も見えるはず」
「膣も“本物”になっているから、妊娠した場合、ちゃんと経膣出産できるよ」
「うっそー!?」
 
「今(千里)1番と握手すると、性別に不安を抱えている人はみんな性転換しちゃうんだよ」
「何それ〜?」
 
「霊的な能力が暴走している。妖怪とかの類いはあの子が見ただけで粉砕されてしまうし、幽霊は成仏しちゃうし、呪いは除去されるし、魔神は封印されるし、生き霊も破壊されて結果的に生き霊飛ばしていた人はしばらく寝込むことになる。自業自得という気がするけどね」
 
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「呪い掛けていた人も呪い返しをくらうね。それも自業自得」
 
「それで性別に不安がある人は性転換しちゃうの?」
「冬、1番と握手したでしょ?」
 
私は考えたが、すぐ思い至った。
「握手してる」
 
その日、私は気分が悪くなって一晩寝ていた。そうかあの時“性転換”しちゃったのか。
 
「私たち2人でフォローしたけど、元の性別に戻さないといけなかった人は12人中4人だけ。残りはそのまま性転換した身体でいいと言って、半陰陽だったことにして性別訂正した人もいる」
 
「1人は既に妊娠中。すごく嬉しがっていた」
 
「1人は接触不能な状態が続いているから取り敢えず放置中」
「あの人はもう今更女には戻れない気がする。拘置所では男房に入れられているし」
 
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拘置所って、何やったの!?
 
「冬にはわざわざ尋ねなかったけど、女のままでいいよね?」
 
私は一瞬考えたがすぐ答えた。
「そのままでいい」
 
「男の身体に戻すことは可能だけど」
「それ絶対嫌」
「男の身体に戻ってから再度性転換手術をしてもらう手はある」
「何のために!? それにあれ以降、身体中にパワーがみなぎる感じなんだよ」
と私が言うと
 
「やはり性腺があるのと無いのとでは、基本的なパワーが違うからね」
とひとりの千里。
 
「冬の作品は中学生時代の作品に良い作品が多いのは、当時はまだ睾丸があったからかもね。高校入る前に性転換手術を受けたことでパワーダウンしたんだよ」
などともうひとりの千里。
 
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それは・・・あるかも知れない気がした。もっとも睾丸は大学1年の時まであったんだけど。でも高校1年の秋に精液の保存をした後は、女性ホルモンの量を増やして、ほぼ機能停止したからなあと思う。
 
「今は卵巣ができたから、これで本当に冬は復活すると思う」
 
そうなると・・・いいな。
 

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しかし私は尋ねた。
 
「それ1番をそのまま暴走させていたらまずいのでは?」
 
「ある人に尋ねたら、あと半年くらいで何とか収まると思うという話」
「性別に不安の無い人は問題ないんだよね〜」
 
「だからアクアたちも気をつけてね。1番と握手したりすると性転換しちゃうかも」
「たぶんNが握手すると女の子になっちゃう」
と千里たちが言うと、Nはドキッとした顔をしている。この子、とうとう女の子になりたくなっちゃったのかな?と私は思った。
 
「まあNが女の子になっちゃったら、Fも性転換して男の子に変えて、Mは去勢して中性にしちゃえばいいね」
などと千里が言うと
 
「男になるとか嫌!」
「去勢は勘弁して」
と言っている。どうもこの子たちは自分の性別に満足しているようだ。
 
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最後の曲『Winter's tale』は森之和泉+水沢歌月から提供した曲である。これもエレメントガードの標準編成に、私と千里2のヴァイオリンを加えて伴奏音源を作り、それにアクアの歌を乗せている。この歌も歌詞を読んで涙を流したFが、自分が歌いたいと言うので、彼女に歌わせた。伸びのある色気のあるハイソプラノが美しい物語を歌い上げる、アイドル歌謡からは完全に逸脱した、大人の女性ポップス歌手の歌であった。
 
制作が11月になったので、PVは、葉月とアクアMを雪のちらつく旭川に行かせて撮影している。市内の観光名所“雪の美術館”で撮影した映像もある。Mはお姫様のコスプレをさせられて・・・喜んでいた!?
 
(Mは男性器は失いたくないものの女装自体は好きである)
 
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そういう訳で、この曲は熊谷市のスタジオでFが歌唱録音しているのと同じ日程で、Mが北海道でビデオ撮影をして、土日だけで制作してしまったのである。
 
アクアたちは文句言っていたが!
 

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夏の日の想い出・十二月(11)

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