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■夏の日の想い出・十二月(9)

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(C) Eriki Kawaguchi 2019-08-05
 
ローズ+リリー『十二月』の制作で、『メイクイーン』に続いて制作したのは『うぐいす』、3月の歌である。春と秋は季節感が似ているので、この時期に制作したほうがいいだろうということで、ここで制作した。
 
これも春の内にPVの大半を制作していた。うぐいすは里では2〜3月頃に鳴くのだが、北陸の山間では5月頃まで鳴いている(里で鳴いていたうぐいすが山間に移動する)。5月の段階で、わりと山間に家がある、富山の清香伯母に訊いてみると「うん。毎朝鳴いてるよ」ということだったので、その鳴き声を録音してこちらに送ってもらった。それで生のうぐいすの声を入れて制作することができた。
 
梅の花が咲いている所で男女がデートしている場面を使用しているが、これは『メイクイーン』のビデオを撮った後で、柳川さんに北海道に飛んでもらい、三笠市(岩見沢の近く)の梅の名所“三笠あすか梅の杜”で撮影したものである。
 
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本州では梅は2〜3月頃に咲くが、北海道の梅の季節は5月なので、この映像を撮ることができた。
 
「あのぉ、私、近畿や北陸なら協力できると言ったんですけど」
「出張費をこのくらい出しますけど。もちろん交通費・宿泊費別で」
「行きます!」
「ついでに北海道観光してきていいですよ」
「洞爺湖見てこようかな」
 
柳川さんにはその他、原生花園など、北海道のあちこちの花の景色を撮ってきてもらい、この映像は実は、北里ナナの『花園の秘密』のPVにも転用させてもらった。
 
なお『うぐいす』のPVに出演しているのは、○○プロと関係のある現地プロダクションに所属している、北海道ローカルの俳優さんである。これにスタジオで撮影した串団子を食べている私とマリの映像も混ぜている。
 
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『うぐいす』の音源製作は和楽器を入れておこなった。
 
篠笛.風花
龍笛.千里
箏.若山鶴朋(今田友見:七美花の母)
胡弓.ケイ
AGt.近藤
Vn.香月
Vc.宮本
Bass.鷹野
Dr.酒向
Mar.月丘
Pf.詩津紅
ASax.七星
 
篠笛・龍笛はドレミ調律のものを使用、箏も琴柱をドレミ音階が出る位置に置いている。こんな変な設定の箏を弾けるのは私以外には風帆伯母と友見くらいかもという気はする。“ふつう”の箏奏者だと「この箏は音が変だ」と感じる。通常の位置に琴柱を動かしたくなるらしい。
 
もっとも、変だと感じないほど音感の悪い演奏者のほうが数的には圧倒的である!困ったことに。
 
この置き方は私と風帆伯母が共同で開発したものである。むろん私は胡弓をドレミ音階で弾く(和音階で弾く時とは頭のスイッチを切り替える)。要するに和楽器を混ぜた時にどうしても出やすい“うねり”を排除するのにこういうことをしている。
 
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篠笛のドレミ調律のものは普通に売られており、風花は囃子用(等間隔に穴を空けたもの)・唄用(和音階で穴を開けたもの:尺八と合わせられる)・このドレミ調律、更にはKARION用に特注した純正律調律!のどれでも吹きこなせる。彼女も頭のスイッチを切り替えると言っていた。
 
龍笛のドレミ調律というのは見たことが無かったのだが、春頃にマリの意見を入れて“和音の回復”をはかることを決めた段階で、千里(たぶん千里2)と一緒に和楽器の制作をしているお店に依頼し、そのお店と共同で試作した作品の初使用となった。
 
実を言うと、千里にしても青葉にしても、和音階(ピタゴラス音階)で作られた龍笛を使って、ちゃんとドレミ音階の音を出すことができる。指で穴を微妙にふさいで、他の楽器が出している音と同じあるいは響き合う音を出すだけの耳と技術を持っている。
 
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しかし元々ドレミに調律したものがあれば、もっと楽に吹けるのでは?と千里に相談したら「それ作ってもいいよね?」と言い、千里が懇意にしている和楽器屋さんと相談の上、作ってみたのである。
 
花梨製の管に理論的にここに穴を開ければドレミで出るはずという所に穴を空けて七美花・風花・千里の3人に吹いてもらったものの、最初はドレミ(幾何学的平均律)からは結構ずれていた。微調整を続けて試作品を10本作ったが、この内No.9,10の差異は僅かだった。実際吹き方による周波数の変動が、穴の位置による差異の範囲を超えていた。しかし3人が試奏した音を聞いた範囲では、私も千里も9の方が10より平均律に近いと感じたので9を採用することにした。七美花や風花は「両者の差異が分からない」と言ったのだが。
 
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念のため他にも音感の良さそうな、ヴァイオリニストの鈴木真知子(大学4年)と信濃町ガールズの町田朱美(中学2年)を呼んで聞かせたが、
 
朱美は「9がいいです。10はレ#とファの音が低すぎます」と言い、真知子は「10はレソシ以外の音が僅かに低い。特にレ#・ファ・ラ#が低い」と言った。
 
2人の意見も一致しているので、9を“標準楽器”として職人さんの手元で保管してもらうことにし、正確にこれと同じ位置に同じ大きさの唄口と指孔を開けた燻竹の管を今回の制作に使用した。練習用に同じ穴位置の花梨製龍笛も取り敢えず5本製作し、その内2本を千里に渡し、風花と七美花にも1本ずつ渡した。1本は私の手元に予備として保管する。
 
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最終的には(この6本を含めて)樹脂製20本・花梨製20本・燻竹製12本を納品してくれるように頼んでいる(代金は標準楽器の1年分保管料を含めて1210万円)が、燻竹の龍笛の納品は材料の調達に時間が掛かるので全ての納品には1年程待ってくれと言われている。
 

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しかし今回、龍笛を吹くのが千里と聞いて、有咲がホッとした顔をした。青葉や天津子が吹けば、確実に機器が壊れたりデータが蒸発する!
 
千里は
「壊すように吹けば壊せるけど」
と言っていたが
「いや、壊さなくていい!」
と答えた。
 
「ちなみに今、1番が吹くと確実に壊れると思うから気をつけて」
「ああ」
「あの子、全然コントロール効いてないから。それでいてパワー増大中」
「うーむ・・・」
「今対策検討中」
「たいへんね〜」
 

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「ところで茜(町田朱美の本名)ちゃん、彼氏のおちんちんはどうなった?やはり切っちゃうの?」
と千里が訊いた。
 
「はい。来月手術して切ることになったので、今おちんちんとの別れを惜しんで毎日オナニーしているようです」
と茜が答えるので、私はびっくりして
 
「彼氏、女の子になるの?」
と尋ねた。
 
「冗談です。一切メスを入れずに治療可能という最終診断が出ました」
と茜。
 
「良かったね!」
 
「彼氏、おちんちんの病気か何か?」
と私は尋ねる。
 
「おちんちんの根本に腫瘍が出来ていたんですよ。最初はおちんちん切るしかないという診断だったのですが、その手術当日に本人が病院から逃亡して別の医者に診てもらったら、切らずに治療できる特効薬があるということになって」
 
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「それは良かった」
 
「もし特効薬が効かなくても、その部分だけ切って前後を繋ぎ合わせる手術が可能ということだったんです」
 
「あれ?それ一度聞いたことある」
と言って、私は千里を見る。
 
「うん。留実子の旦那が中学時代に受けた手術と同じだよ。だからもしどうしても手術ということになったら、あの先生を紹介できると私が言ったら、茜ちゃんの彼氏も万が一の場合はその同じ先生を紹介するとこちらの医者から聞いていたみたい。あの手術ができるのは、日本ではあそこだけらしくて」
 
「じゃ留実子ちゃんの旦那さんも運が良かったんだね」
「そう思う」
と千里は言った。
 
「実際におちんちんの腫瘍部分だけを切って前後をつなぎ合わせた人が醍醐先生の知り合いに居たということ、その人が今は普通に女性と結婚して普通に夫婦生活もしていると聞いて、私も平野も凄く勇気付けられました」
と茜は言った。
 
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「あれはかなり稀な病気だけど、どうも中学生くらいで発症するみたいだね。もしかしたらこの治療法を知らずに、ちんちん切られちゃってる男の子が結構居るかも知れない気がするよ」
 
「男の子が中学生でおちんちん失ったら人生変わるよね」
と私。
「ショックすぎるよね」
と千里。
 
「だけど茜ちゃん、信濃町ガールズに入って東京に出てきたおかげで、彼氏のお見舞いにもたくさん行けるね」
と千里は付け加えた。
 
「えへへ」
 
「ああ、彼氏はこちらの病院に入院しているの?」
 
「入院はしていないんだけど、通院の都合で、お祖母ちゃんの家に住んでいて、こちらの中学に通っているんだよ。茜ちゃんや岬(東雲はるこの本名)ちゃんとは別の中学だけどね」
 
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「ああ、それは色々都合が良かったね」
 
と言いながら、この子が東京に出てくるのに積極的だったのは、それもあったのかな?と私は思った。
 

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2019年10月9日(水)、北里ナナの5枚目のシングル『花園の秘密/レジンの首飾り』が発売された(両A面)。
 
『レジンの首飾り』は8月の小浜のイベントで葉月・ルンバのデュエットで披露した曲であるが、いつも北里ナナに楽曲を提供している加藤珈琲・琴沢幸穂コンビの曲である。お嬢様は豪華なダイヤやルビーのアクセサリーを付けているけど、私はお母さんが作ってくれたレジンの首飾りでいいわ、と歌う可愛い曲である。デュエット曲で、音源は実際にはアクアNとアクアFに生デュエットさせたものを収録した。アクアは伴奏音源作成にも参加させているのだが、ここでピアノを弾いたのはアクアMである。つまり3人のアクアの共同作品にしている。
 
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『花園の秘密』は、演奏時間が8分にも及ぶ長い曲である。歌詞は6番まである。常に監視されていて窮屈な思いをしていた貴族のお姫様が、偶然見つけた花園。そこは姫の憩いの場となった。ある時、その花園に若い男子がいたので、思わず悲鳴をあげそうになったが、彼は紳士的で、ふたりは打ち解け、楽しくおしゃべりして過ごすようになる。彼は近くには住んでいないらしく2〜3ヶ月に一度くらいしか来られないものの、彼と会うのは姫にとって楽しみとなる。ふたりは名前は名乗らなかったものの『M』『C』とイニシャルだけで呼び合っていた。
 
しかし姫はある日、王子様と結婚するよう言われる。もうあの花園とも『C』とも会えなくなることを悲しみながら嫁いでいく姫。しかし結婚式で初めて見た自分の夫となることになった王子。彼の顔を見て姫は驚いた。そして王子も驚いた。
 
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2人は『M』『C』と呼び合って誓いのキスをした。
 
むろんMとCはバーネット夫人『秘密の花園』の主人公、メアリーとコリンから採ったものだが、この歌詞の中ではメアリーとかコリンという固有名詞は出て来ない。
 
見知らぬ王子と結婚しなければならなくなった姫の悲哀を歌う5番はもの悲しいヴァイオリンの調べが美しく、幸せな大団円となる6番は明るく金管楽器を鳴らす。実は渡部賢一グランドオーケストラに協力してもらって伴奏音源を制作した。
 
実はこの曲は私が宮古島のお花畑を見て書いた曲である。北里ナナへの最初の提供曲となった。
 
これまで北里ナナの曲では『花の伝説』『青い城の姫』『風車小屋の娘』にマリ&ケイのクレジットをしている。しかし実際には歌詞を書いたのはマリだが、『花の伝説』は和泉、『青い城の姫』と『風車小屋の娘』は青葉が、いづれも私の名前で書いてくれた曲であった。
 
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『レジンの首飾り』のPVには、ヒロインの母親役を演じてくれたスイート・ヴァニラズのEliseが実際にレジンのアクセサリーを制作している所の映像が映る。彼女は最近デブコンETを使用したレジン・アクセサリー作りに凝っているので、物凄く様(さま)になっていた。ビデオの最後でヒロイン(演:アクアF)が首に掛けているネックレスも、Eliseのお手製のもので、Eliseから
 
「アクアちゃん可愛いから、それあげるよ」
と言われて喜んでいた。
 
それを見て、葉月が
「アクアさんって、可愛いアクセとかもらって喜ぶんですね」
と言うと
「だってアクアは女の子だもん」
とEliseは言う。
「そうだ、葉月ちゃんにもブローチあげるよ」
と言ってEliseが可愛いハートのブローチを渡すと
「可愛い!」
と言って葉月も喜んでいた!
 
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なおこのビデオで“お嬢様”役を演じたのはコスモスである!
 
アクア以上に忙しい彼女だが、何とか時間を空けて、豪華な宝石のアクセサリーを身に付けた“お嬢様”を演じてくれた。
 
『花園の秘密』は、北海道にアクアNと原町カペラおよび数人の信濃町ガールズを行かせて、遠軽町の“太陽の丘えんがる公園”で、満開のコスモス畑の中で撮影をしている。ここは有名な原生花園から内陸に20kmくらい入った所にある。紋別空港からもそう遠くない。
 
この撮影にいつもの葉月が同行しなかったのは、翌週葉月は奄美に行く仕事が入っていたからである!(後述)葉月本人は北海道の翌週奄美とやるつもりだったようだが、アクアFが山村に葉月の体力がもたないと訴え、北海道行きはカペラに代わってもらうことにした。
 
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葉月とカペラは「でもアクアさん大丈夫ですか?」と心配していたが!
 

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夏の日の想い出・十二月(9)

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