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■夏の日の想い出・神は来ませり(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-01-27  
そういう訳で、千里が運転するインプレッサはパトカーにつかまることもなく事故を起こすこともなく、松江の市街地に入って行く。
 
もうすぐ予約していた旅館に着く、という時、政子が
「あ、千里、停めて停めて」
と言う。
 
千里が車を脇に寄せて停めると《鳥取方面》と書いたホワイトボードを掲げた信子がいる。
 
「まだ、このあたりにいたんだ?」
と助手席のゆまが窓を開けて声を掛けた。
 
「あ、どうも昨夜はお世話になりました」
と信子。
 
「大変そうね」
と政子。
 
「11時頃まで出雲大社に居て、神在祭の巫女舞とか垣の外から撮影して証拠写真にして、そのあと境外社の命主社・出雲井社を見てから、電車と徒歩で万九千社まで行って、これでもう15時過ぎたんですよ。そのあと松江市内まで行くトラックに乗せてもらってここまで来たのですが、そのあと誰も捉まらなくて」
 
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と信子は言っている
 
「東京から出雲まではどのくらい掛かったの?」
「実は4日かかりました」
「きゃー」
「以前東京から福岡までヒッチハイクして2日半掛かったと言っていた人がいたのですが、余裕見て4日前に出て良かったです。12日のお昼過ぎにやっと出雲に着きましたから。だから帰りもそのくらいは覚悟で」
 
「着替えとかどうしてるの?」
「たくさん持って行っても仕方ないので2着持って来て実はもう2度着替えてしまいました」
「お風呂とかは?」
「トイレの中で、ボディ用のウェットティッシュで全身拭いてます」
 
「ね、ね、私たち、今夜は松江市内の旅館に女の子4人で六畳の部屋1つに泊まり込むんだけど、信子ちゃんも一緒に泊まらない?」
と政子が言った。
 
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私は千里、ゆまと一瞬顔を見合わせた。
 
「え?それはまずいですよぉ」
と信子は言っている。
 
「大丈夫だよ。信子ちゃん、女の子だもん」
と政子。
 
「え?でもちょっと私特殊事情が・・・」
「平気平気。こちらも変な人多いし」
 
「あれ?女の子4人と言いました?」
と言って信子がゆまを一瞬見る。
 
「1部屋しか取れなかったんだよ。だから、ゆまちゃんも今夜は女装して女の子を装ってもらうから」
と政子が言うと
 
「わぁ。ゆまさんがいるなら、私もいいかなあ」
と信子は言った。
 
ゆまは苦笑しているが、私と千里は素早く視線で会話して
 
『まあいいかね?政子が言ってるんだし』
『多分この子変なことしたりはしないよ』
 
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という感じで私たちは信子を旅館に同行することにした。
 

私が後部座席中央に移り、信子を乗せる。そして5分も走ると、旅館に到着した。
 
旅館の人に
「人数1人増えましたけど、同じ部屋でいいですので」
と言うと5人を見回してから
 
「あのぉ、男の人も混じっているんですか?」
と、明らかにゆまを見て言う。
 
「この子、男の子に見えるけど一応女なんですよ。スポーツとかするので髪を短くしてるんです」
と千里が言うと
 
「ああ。女性5人だったらいいです」
と了承してくれる。
 
「食事を1人分多くしてもらえますか?」
「はい。それは大丈夫ですよ」
 

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それで私が代表で記帳し、部屋に案内してもらう。六畳ではあるのだが、やや広い感じがした。
 
「京間かな?」
と私がつぶやくと
 
「山陰は六一間と言って、京間より少し狭いけど江戸間や団地間よりはずっと広い畳を使うんですよ」
と仲居さんが説明してくれた。
 
「ほほお」
 
仲居さんにお茶を入れてもらい、ウェルカムスイーツの『どじょう掬い饅頭』を頂く。この饅頭の顔を見て政子が
 
「可愛い!」
と言って騒いでいた。仲居さんに「お土産に4箱くらい買って行きたい」と言うと「ではあとでお持ちしますね」と仲居さんもにこやかにこたえていた。
 
「まあ《ひよこ》系のお菓子かな」
「この系統のものって各地に結構ありますね〜」
 
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一息ついた所で「お食事の準備ができました」と案内されるので、一緒に下に降りて行く。
 
「わあ!蟹だ!蟹だ!」
と政子が嬉しそうな声をあげるので、先に食事を始めていた他のお客さんもほっこりした感じであった。
 
「私がおごるから信子ちゃんも思いっきり食べていいから」
「すみません!ごちそうになります」
 
松葉蟹・アオリイカ・ヨコウ(小型の黒マグロ)・レンコダイ(連子鯛)などの新鮮なお魚の刺身盛り合わせ、蟹の茶碗蒸し、蟹の土鍋ごはん、蟹の天ぷら、と続いて、メインディッシュの松葉蟹の釜茹でだが、私たちはこれを3杯頼んでおいた(当初2杯だったが信子が加わったので3杯にした)。
 
旅館の人は女性だけのグループなので「大丈夫かな?」という感じの顔をしたが、政子が1匹半くらいひとりで食べてしまうし、千里もゆまも結構食べるし、信子もよく食べるので、30分ほどの内にきれいに無くなり、板前さんが
 
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「お姉ちゃんたち、いい食べっぷりだねぇ。これサービスであげるよ。松葉蟹じゃないけど」
 
と言って、紅ズワイ蟹の足を5本もらったものの、これもきれいに無くなってしまった。
 
(ちなみに私はもうお腹いっぱいだったので、ゆま・千里・信子が1本ずつ、政子が2本食べた)
 

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信子が着替えを使い切ったと言っていたなと思い、私は千里に頼んで信子をインプレッサに乗せて近くのイオンまで連れて行き、下着2セット、Tシャツと長袖のポロシャツ、スカートにパジャマも兼ねてジャージのズボンなども買ってあげた(お金は私が渡した)。
 
「すみません。ここまでしてもらって」
「冬子がお金持ちだから気にしないで」
と千里が勝手に言っている。
 
「ありがとうございます。助かります」
 
「あと、ここまで着替えたのとか、宅急便で自宅に送っちゃえば荷物が軽くなるよ」
「あ、そうしようかな」
 

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ふたりはおやつも買ってきたので、それを摘まみながらおしゃべりしていたのだが、やがて、ゆまが言い出す。
 
「まあ、そういう訳で性別暴露大会をしようぜ」
 
「そうだね。一応クリアにしておいた方がお互いすっきりするかな」
と千里も言う。
 
私も頷く。信子は苦笑いしている。
 
「この場で聞いたことは他の人には言わないということで」
と千里は付け加える。
 
「うん。それがいいと思う」
と私も言った。
 
「じゃ私から」
と千里が言う。
「私はポストオペのMTF」
と千里が言うと
「うっそー!?」
と信子が驚いて言う。
 
「生まれた時は男の子だったけど、多分小学4年生頃から女性ホルモンを身体に入れていた。そして高校1年の時に性転換手術を受けて女の子になった。高校3年間は女子制服で通学したし、既に戸籍も女性に変更している」
と千里が言うと、ゆまが頷いている。
 
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もしかしたら高岡まで往復してきた車の中でそのあたりの話もしたのかなと私は思った。しかし千里が自分で「高校1年の時に性転換した」「高校は女子制服で通学した」と言ったのは初めてだ。私はその方が彼女について考える時自然な気がした。しかしバスケットのために丸刈りにしてた話は?? あと桃香と一緒に精液を保存した話を聞いたけど、その精液ってどうしたの???
 
「じゃ私が行こうかな」
と私。
 
「私も同じくポストオペのMTF。私は小学5年生の時にGIDと診断してもらって女性ホルモンを処方してもらっていた。それで大学1年の時に去勢して2年の時に性転換手術を受けた。私も戸籍は既に女性になっている」
 
と私は言ったのだが
 
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「この場で嘘はつかないように」
とゆまから言われる。
 
「私と千里と政子の3人の共同見解によれば、冬子は生まれた直後に去勢して幼稚園の時に性転換手術を受けている」
とゆま。
 
「幼稚園で性転換手術は無いよぉ」
「だって冬の古い友だちが、冬は幼稚園の時に既におちんちんが無かったと証言してるよ」
と政子が言う。
 
「うーん・・・・」
 
私はチラッと千里を見たが、笑いを殺しているようだ。千里、自分はどうなんだ〜?と思う。
 
「中学でも高校でも女子制服だよね?」
と千里は開き直ってこちらに訊いてくる。
 
「高校の時、女子制服で通学していたのは私が証言するよ。うちのマンションに冬が着てたセーラー服も置いてあるよ」
と政子。
 
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なぜそういう証言になる!?
 
「まあいいや、好きなように想像して」
と私は苦笑して言った。
 

「この中では私だけが普通の女の子なんだよね〜」
と政子が言うが
 
「絶対普通じゃない!」
と全員から突っ込みが入る。
 
「まあレスビアンだよね?」
「レスビアンぎみのバイセクシュアルであることは認める」
 
「で私だけど」
とゆまが言う。
 
「私は一応戸籍上は女なんだけど、自分が女であるということに違和感がある。それでこういう感じで男っぽい服を着ていることが多い」
 
「え?男の人じゃなかったんですか?」
と信子が驚くように言った。
 
「私は男の子たちと同じ部屋で寝るのは平気。むしろ女の子たちからは拒否されることが多い」
 
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「まあ今夜は1部屋しか無かったから、ゆまには自制してもらうということで」
 
「恋愛対象は女の子だし、FTXとかレスビアンとか分類されることもあるけど、個人的には、自己認識は《女だという自信はないが男になりたい訳では無い》くらいで。自分の性別についての認識が不安定だから、実は《レスビアン》と名乗るのにも違和感がある。女の子が好きだけど、それは同性愛のような異性愛のような微妙な線なんだよ」
 
とゆまは少し苦悩するように言った。
 
「まあ性別って人間の数だけ存在するという人もある」
と千里が言っている。
 

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「でも私、ゆまさんが男性で他の3人が普通の女性と思ってました」
と信子は言う。
 
「でも何か私も自分のこと言いやすくなりました」
と前置きをしてから彼女は言う。
 
「私はこの通り、女装者です。戸籍上は男性です。でも実は女装で旅に出たのは初めての経験で」
「初めての女装旅行でヒッチハイクとかは難易度が高すぎる」
 
「罰ゲームだったもので」
「どのあたりから罰ゲームなの?」
とゆまが訊く。
 
「すみません。女装する所からです。これまで実はふつうに男として生活していたのですが」
 
「いや、それにしては君の女装は自然だし、目の使い方が女なんだよ」
とゆまが言う。
 
私も千里も頷いた。
 
「目?」
と言って信子はきょとんとしている。
 
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「男と女では視線の使い方が違うのさ。男は対象を刺すように見る。女は対象を自分の中に受け入れるように見る。君はちゃんと受け入れるように見ている。だから、私は君はきっと女装自体は長いんだろうなと思った」
とゆまが解説する。
 
「これここだけの話ですよね」
「そうだよ。他では誰にもしゃべらない」
 
「じゃ告白します。小さい頃から女の子だったら良かったのにとは思ってました」
「小学生の頃はわりとバレてたのでは?」
 
「そうなんですよ。小学1〜2年の頃は、半分女みたいな扱いだったんですが、その頃の知り合いも減っていったし、高校生頃にはほとんどの友人が私のことは普通の男の子だと思うようになってました」
 
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「その罰ゲームで女装して出雲まで行って来いなんてのも、誰が提案したのさ?」
「実は自分で書いて投稿していたのですが、本当に自分が引くことになるとは思いませんでした」
「まあ他の人が引かなくて良かったね」
 
「そうですよね!」
と彼女はそのことに今気付いたという顔をした。
 
「でも不思議なんですよね」
「ん?」
「私は女装して岩手まで行って来いと書いたつもりだったのに、出雲になっていたので。書き間違ったのかなあ」
 
「まあそういうことはあるかもね」
と千里。
 
「私、日本史のテストで《加藤清正》って書かないといけない所を間違って《加藤剛》と書いちゃったことあるもん」
と政子が言うが
 
「さすがにそういう人はめったにいない」
とゆまから言われている。
 
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「それに岩手だったら、野宿で凍死してたかもね」
「う・・・確かに」
 

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■夏の日の想い出・神は来ませり(9)

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